魚の化身 (1)魚の化身

―――サティヤヴラタという聖仙がクリタマーラー川で祭祀を行っていると、手のひらに小さな魚が入った。川に戻してやると、魚は口を開き、大きな魚がいるので保護してくれと言った。サティヤブラタは魚を連れ帰り、壷に入れて飼っていたが、どんどん大きく成長するのでついに飼いきれなくなり、海に話した。すると魚はサティヤヴラタに告げた。「7日後に大洪水が世界を襲う。そのとき私が大きな船を送るから、いろいろな植物の種をそろえ、7人の聖仙とあらゆる生物とともに乗りなさい。」
 果たして水が世界をおおった。すると金色の姿を現した魚はヴァースキ竜をロープの代わりにして、サティヤヴラタたちの乗った船を自分の角に結びつけ曳いて行った。魚がヴィシュヌ神であることを悟ったサティヤヴラタは讃歌を唱えた。



 この神話はノアの方舟の話とよく似ています。洪水神話は諸民族に広く分布しており、海を知らないはずの内陸の民族にまで見ることができます。その同一の起源を古代メソポタミアに求める説もありますが、立証はむずかしいと思います。

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