title

3gods
<ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァ>

 ブラフマーは、一般的なヒンズー教の世界観では、 ヴィシュヌ、シヴァとともに三神一体(トリムルティ)を形成する重要な神です。三神一体はキリスト教の三位一体と言葉は少し似ていますが、その意味するところは、宇宙原理の中でブラフマーは創造を、ヴィシュヌは繁栄維持を、シヴァは破壊を担当するという考え方です。そこから三神は実は宇宙原理の三つの顔であり、究極的には三神は一体のものであると説かれます。


 ブラフマーはヴィシュヌやシヴァに比べると多分に観念的あるいは抽象的な神です。それは元来宇宙の根本原理とされるブラフマン(梵)という観念を男性神として人格化した人工的な神だから でしょう。そのためブラフマーは自らを創造した者(スヴァヤンブー)であり、すべての生類の主(プラジャーパティ)であり、神々の父と呼ばれながらも、神話の中での地位は必ずしも高くありません。神々の長老として尊敬され、何か事件が起きたときの相談役ではあるのですが、シヴァやヴィシュヌのような強大な力はなく、自分を中心とした独自の神話体系も持っていません。これは現実の強力な信仰集団を基板に持つシヴァとヴィシュヌに圧倒されて、相対的に神格が下がったためと考えられます。ヴィシュヌの功業神話の中には古くはブラフマーの事跡だった話がいくつか含まれていますが、これはブラフマー信仰がヴィシュヌ信仰に蚕食されていった結果と思われます。


 ヴィシュヌ系の神話では、ブラフマーはヴィシュヌのへそから生えた蓮の花から生まれたことになっています。彼は宇宙を創造しますが、真の創造神はヴィシュヌなのです。シヴァとの関係はもっと険悪で、どちらが本当の創造者か口論のあげく、怒ったシヴァに五つの頭のひとつを切り落とされてしまいました。このためブラフマーは四面になったと説明されます。



 図像においては、ブラフマーはふつう四ヴェーダを表す四つの顔を有し、四本の腕に数珠、聖典ヴェーダ、小壷、笏(しゃく)を持っています。原初の神として、しばしば白髯の老人に描かれることもあります。配偶神は知恵と学問の女神サラスヴァティー。ハムサ鳥(ガチョウの仲間ですが、白鳥に似ており、高貴な鳥とされています)に乗った姿もよく見かけます。


 ブラフマーはインドラとともに最も早い時期に仏教に取り入れられた神で、漢訳仏典では梵天(ぼんてん)と呼ばれます。護法神の代表として、それぞれ梵天帝釈と二神一対のように言われることもあるほどです。梵天は、釈迦が成道(じょうどう:悟りを開くこと)したとき、その悟りを自分一人のものとせずに万民に説くようにすすめました。「梵天勧請(ぼんてんかんじょう)」と呼ばれるこの話は、仏伝画では必ず描かれる有名な場面です。


TOPへ戻る