(10)ジャガンナータ
ジャガンナータ
(左)バララーマ (中央)スバドラー (右)クリシュナ


 これまでに延べた以外にも仏陀が加わったり、仏陀をはずしてバララーマ(クリシュナの兄)を入れるというような多少の異同は珍しくありません。最近では、マハトマ・ガンジーや映画の人気俳優を化身にしようとした動きもありました。その気になれば何でも取り込めるところが化身思想の強みと言えるでしょう。ここでは、それらの中でも重要と思われるジャガンナータについてだけ述べます。



―――クリシュナの死後、その遺骨はオリッサのインドラデュムナ王に贈られた。王はその遺骨を収めた木製のクリシュナ像を作ろうと思い立ち、神工ヴィシュヴァカルマンに頼んだ。ヴィシュヴァカルマンは承知したが、ひとつだけ条件をつけた。完成するまで絶対にのぞくなというのである。ところが、ある日王は、どこまでできたかどうしても知りたくなり、そっと盗み見たところ、ヴィシュヴァカルマンは消え去り、あとには未完成の像だけが残された。今に至るもジャガンナータの像に手も足もないのはこのためである。 のぞいたのは王妃とも言われますが、この話はむしろジャガンナータ像の奇妙な形を説明するためにあとから作られたのでしょう。



 ヴィシュヌというよりクリシュナの化身ジャガンナータは、元来はこの地方の古い土着神だったようです。ジャガンナータが有名なのは、オリッサ州プリ―で毎年アーシャダ月(西洋暦6〜7月)に行われる盛大な祭りのためです。ジャガンナータ(クリシュナ)と兄のバララーマ、妹のスバドラーの像を乗せた3台の巨大な山車が信者たちに曳かれて行くのですが、日本で言う祇園型の祭りとしてはおそらく世界最大ではないでしょうか。  この山車にひかれて死ぬと、ヴィシュヌの天国ヴァイクンタへ行けるというので、昔は飛び込んで自殺する人もいたそうです。

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