ヴィシュヌ自身としての神話
ガジェーンドラモークシャ  最も有名なのはガジェーンドラモークシャ(象のインドラの救済)と呼ばれる物語でしょう。『バーガヴァタ・プラーナ』によってそのあらましを述べてみます。

 ―――パーンドゥヤの王インドラデュムナは熱心なヴィシュヌの信者だった。彼は老年に達すると国を息子にゆずり、自分はマラヤ山に行って苦行者の生活を始めた。あるとき彼が沈黙の行を行っているところへ、高名な聖仙アガスティヤがやってきたが、インドラデュムナは挨拶をしなかった。怒ったアガスティヤは呪いをかけ、彼を象の姿に変えてしまった。象となったインドラデュムナは、野生の象の群れと一緒に何年ものあいだ森の中をさまよい、やがてトリクータ山に着いた。

ガジェーンドラモークシャ  そこには湖があり、一匹のワニが棲んでいた。そのワニはかつてフーフーという名のガンダルヴァ(天界に住む半神)であったが、天女アプサラーたちとこの湖で好色な遊戯にふけったため、苦行者デーヴァラの呪いによってワニの姿に変えられていたのである。インドラデュムナが湖に入り、水を飲もうとしたとき、ワニはその足にかみついた。象とワニの戦いは長いあいだ続いたが(プラーナはきわめてインド的に一千年と書いています)、力の尽きかけたインドラデュムナはただひたすらにヴィシュヌ神を祈った。するとガルダ鳥に乗ったヴィシュヌが現れ、武器である円盤を投げつけてワニの首を切り落とし、彼を救った。ヴィシュヌはインドラデュムナをもとの人間の姿に戻すと、自分の住処である天国ヴァイクンタへ連れて行った。

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