亀の化身 (2)亀の化身

―――神々は不死の霊液アムリタ(甘露)を手に入れるにはどうすればよいか協議し、ヴィシュヌ神に相談したところ、マンダラ山を攪拌棒として大海をかきまぜよと教えられた。そこで神々はアスラたちとも協議することにして、マンダラ山を引き抜き、それにヴァースキ竜を巻きつけ、両側から引っ張って回転させた。ところが、海の底に穴があき山が沈みそうになったため、ヴィシュヌは亀に姿を変えて海に潜り、甲羅でマンダラ山を支えた。

 やがて海の水は乳状に変じ、その中からさまざまな宝が現れてきた。最初に出てきた願ったものを何でも生む牝牛スラビは、聖仙たちに贈られた。つづいて月のように輝く白馬ウッチャイヒシュラヴァ、四本の牙を持つ聖象アイラーヴァタが姿を現した。次に出てきた宝石カウストゥバはヴィシュヌが自分の胸に飾った。さらに聖樹パーリジャータ、天女アプサラーのあとに美しいシュリー女神(ラクシュミー)が出現した。神々もアスラも彼女を欲しがったが、女神はヴィシュヌを夫に選んだ。落胆しているアスラたちに酒の女神ヴァールニーが与えられたのち、最後に神医ダヌヴァンタリがアムリタの入った壷を持って現れた。神々とアスラたちは争ってそれを飲もうとしたが、アスラの方が先に壷を奪ってしまった。それを見たヴィシュヌはモーヒニーという美しい女の姿に変じて取り返しに行った。アスラたちはその美しさにうたれ、アムリタの分配を彼女にまかせた。モーヒニーはアスラたちを幻惑し、神々にだけアムリタを飲ませた。こうして神々は不死となったのである。


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