ヴィシュヌ

ヴィシュヌについて

ヴィシュヌ本来の姿

ヴィシュヌ自身の神話

ヴィシュヌの化身

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ヴィシュヌについて

 ヴィシュヌはシヴァとともにヒンズー教の信仰世界を二分する強力な神ですが、その姿は多様かつ非常に複雑です。というのは現在のヴィシュヌは、古代からの多くの神々を自己の化身として取り込みながら成長してきた複合神だからです。『リグ・ヴェーダ』にはすでにヴィシュヌの名が見られ、五編の独立した讃歌が捧げられていますが、役割としては主神インドラの協力者にすぎず、それほど重要な神ではありません。そこでのヴィシュヌは太陽の光の神格化と考えられ、すみずみまで照らし出す光のように天地を闊歩し、人間に対しては慈悲深い存在とされています。語源的にはビシュヌという言葉には「遍く(あまねく)ゆきわたる」という意味があるそうです。
 そのヴィシュヌが強大な主神に成長するのは叙事詩とプラーナの時代になってからです。この時期にヴィシュヌは、おそらく別起源の神ナーラーヤナと結びついて同一視されるようになり、つづいて北インドのマトゥラー地方で興ったバガヴァット=クリシュナ信仰も取り入れて、その神と同じと考えられるようになりました。さらに各地域、各種族の神々や神話を、実はヴィシュヌ神が姿を変えて行ったこととして吸収し、その勢力を拡大していったのです。このようにいわば合併によって大きくなったヴィシュヌは、当然ながら多くの名前と別の姿を持っています。こうした化身思想こそがヴィシュヌ信仰の特色であり、最大の武器と言ってよいでしょう。



ヴィシュヌ本来の姿

ヴィシュヌ  ヴィシュヌが腰かけているのはアナンタ竜王です。アナンタとは永遠という意味ですから、ヴィシュヌの属性の一部で時間を象徴していると解釈できます。千の頭を持つと言われていますが、絵に描くときは五頭あるいは七頭とし、それをヴィシュヌの頭の上に傘のようにひろげています。サンスクリット語のナーガは漢訳仏典では竜と訳しているため、ここでもそれに従いますが、実際は見ればわかるとおり蛇=キングコブラに近いものです。ヴィシュヌはは仏像で言う半跏(はんか=片足を組み片足を下げる座り方)の形で座り、四本の腕にはそれぞれ独特のシンボルを持っています。ヴィシュヌに限らず、ヒンズー教の神は四本腕に描かれることが多いようです。神像の描き方造り方を定めた本にも、神の姿は四本腕が最も正しいと書かれています。理由は明らかではありませんが、インドでは人生や世界を四つの時期に分けたりするように、四を一種の完全な数と考える傾向があるので、その反映ではないかとも思われます。もちろん十本腕のドゥルガー女神のような例外もたくさんあります。

 持物(じもつ=仏教で言う仏像の持ち物のこと)の説明をしますと、右上手の人差し指で回転しているのが、ヴィシュヌの最も重要な武器でありシンボルとも言える円盤(チャクラ)です。古代インドでは、ふちを刃のようにした円盤が実際に武器として使われたようですが、ヴィシュヌの円盤はどこへでも飛んでいって敵を両断し、ブーメランのようにまた戻ってきます。仏教でも仏法をいかなる障害物も粉砕して進む輪宝にたとえていますから、同根の発想と言ってよいでしょう。また、前述のようにヴィシュヌには太陽神の要素もありますので、太陽の象徴ととることもできるかもしれません。

 右下手に持つのは非常に装飾化された棍棒です。棍棒は最も原始的な武器のひとつですが、ヴィシュヌの場合、西洋のメイス(鎚矛=つちほこ)と同じように力と権力の象徴と考えた方がよさそうです。

 左上手に持っているのは法螺貝です。神話では、この法螺貝は元はパンチャジャナという海に棲む悪魔だったのですが、クリシュナに退治されたのだそうです。ヴィシュヌがこの法螺貝を吹き鳴らすと、神々は勇み立ち、悪魔は震えあがると言われます。仏教でも釈迦の説法を「大法螺を吹く」という比喩で表現しますし(今ではいいかげんなことを言う意味になってしまいましたが)、ジャイナ教でも法螺貝は宗教的シンボルのひとつです。このように、三教とも同じ土壌で育った関係から、宗教的形象には共通点が多いのです。千手観音の持物はその総覧のようなものと言えます。ヴィシュヌの法螺貝は普通と逆の反時計回りの螺旋を描いていて、仏教ではこれを仙螺(せんら)と呼んでいます。自然界にもまれに存在するらしく、1887年にセイロン(スリランカ)で発見された左巻きの法螺貝は700ルピーという高額で売買されたという記録が残っています。

 左下手に持つのは蓮華です。蓮の花はインドの宗教世界では最も重要なシンボルと言って過言ではありません。すでにモヘンジョダロで発掘された浮き彫りの中に蓮の花を持つ女神の姿があったそうですが、その意味するところはまず水と大地と生命であり、朝開き夕閉じる習性と形状から太陽を連想させ、さらに再生と創造の象徴となり、ついには世界そのものと考えられるようになりました。


眷族

 ヴィシュヌの配偶神は富と幸運の女神ラクシュミーとされています。最初はラクシュミー、サラスヴァティー、パールヴァティーの三女神ともヴィシュヌの妻だったのを、サラスヴァティーをブラフマーに、パールヴァティーをシヴァに譲ったとする神話もあります。右の図は、ヴィシュヌとその眷族(けんぞく)が勢ぞろいしているところですが、ヴィシュヌに寄りそって足に触れているのがラクシュミーです。へそ(見えませんが)から生えた蓮の花に座るブラフマーに注意してください。



ヴィシュヌの化身

魚の化身 亀の化身 猪の化身 人獅子の化身 矮人の化身
魚の化身 亀の化身 猪の化身 人獅子の化身 矮人の化身
パラシュ・ラーマの化身 ラーマの化身 クリシュナの化身 カルキの化身 ジャガンナータ
パラシュ・ラーマの化身 ラーマの化身 クリシュナの化身 カルキの化身 ジャガンナータ

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