文鳥伝説

 2000年6月『ドッペルゲンガ−』を名乗る人物からメールを頂きました。その内容は感動的で一人占めするのはあまりにも惜しいと思い、氏の許可を得てこのような場でご紹介することにしました。
 信じがたいような文鳥体験をメールしていただければ、今後も紹介していきたいと思っています。



「…実を申せば私、白文鳥ではじまり、メスを次々と
卵詰まりで失い、5番の飼育書を崇拝して室外で大きな物音と共に逃がしてしまったり、文鳥王国を建国したのもつかの間崩壊させたりと心に多くの傷を持つ者なのです。
 
※ 「5番の飼育書」というのは、手乗り文鳥を戸外に連れ出しても逃げないとしている本です。長く文鳥を飼うと、多かれ少なかれ心の傷を持つものですが、氏の場合はかなり劇的だったと思われます。

 とにかく、HP(文鳥団地)などはなしに独立無援、孤軍奮闘、試行錯誤しながら飼育をし続けて参りました。
 …人それぞれ長い人生行き着く所は違います。最後に胸元に桜の花びらひらひらの
桜文鳥のオス1羽飼いにたどり着きました。この鳥の醍醐味である手乗りであることも大切です。そこで問題なのは手乗りならば雛から育てなければならない点です。かなり黒い雛でもゴマ塩化になることは否めません。(もちろん、いままでの私のパートナーがゴマ塩でも仲良く暮らしておりましたけど、、。) だからこの度の鳥は思い切って鑑賞に堪えうる成鳥を買い求めてみることに致しました。
 
※ 氏は私同様『断然桜文鳥派』です。手乗り文鳥にとって容姿の良さは二の次ですが、それが良いにこしたことはないです。なお、氏は四半世紀以上文鳥と生活をともにしてこられたようです。

 たくさんの人々が行き来しているペットショップでは、かなり人間の姿に慣れていて、長い間観察していても普段の姿を見せてくれます。そしてねらいを定めた鳥をいつまでも見ているのです。すると、むこうも反応し始めます。カゴのあみのすぐ近くの止まり木にきたとき、そっと指を入れ、体を触ります。あまがみまでするではありませんか!もしかしたら手乗りに出来るのではと思い、店員さんを呼び、中に手を入れてもらうとお目当ての鳥は逃げ回り、捕まえることが困難な状況でした。
 
※ 手乗りでない文鳥が軽く人の指をかむというのは不思議で運命的なものを感じますが、よほど長く見つめていたので顔見知りとなり、エサを要求するつもりだったのかもしれません。なお、この文鳥はすでに3歳だと店員さんは言っていたそうです。

 家に帰って鳥かごに入れますと、バタバタ大暴れしています。そのまま放っておくうちにカゴの隅にいるだけでした。5時間くらい経た後、ようやくポツリポツリ餌を食べ始めました。日没と共に黒い布を被せ、その日は終わりです。1週間位は、鳥かごに入れたままにしておきました。餌を取り替える度に驚いていました。これが本当にあまがみした鳥だったのかしら。

 次の週から、ダンボール箱の中に小さな竹篭を入れた中で寝かせることにしました。そうすれば、嫌がおうでも朝、夕、人間の手に慣れさせることが出来ると思ったのです。寝かせる時にはやさしく頬の周りをなぜてから竹篭に入れました。鳥をさわりますと、血液の流れがものすごく速くザーザーという音が聞こえそうな感じです。ですから、心臓が正常になることを目安にしてある程度の期間が必要でした。
 半年位のち、手で捕まえられることに恐れをいだかなくなったので寝かせる前
30分間放鳥しました。私は締め切った部屋で無視して新聞(鳥かごの下にはいつも新聞が敷かれてます。)を読んでいました。カーテンを閉じ、明かりを落とし『バタバタ鳥』を捕まえて竹篭に入れていました。

 ある日、「トン」と私の読んでいる新聞紙のうえに乗ってくることがありました。その場から3メートルほど移動してみると、そこへ「トン」その日はそれでおしまいです。あとは『バタバタ鳥』のまま。毎日少しずつ近づいてきていました。
 しばらくたって
「トテ」頭を蹴っていきました。
 長らくたって
「ドン」頭乗り文鳥になりました。
 そうなってきますと頭にふんをされると困りますので、首を振り、肩へ
「ドサ」肩乗り文鳥になりました。

 また時を経、手首へ「ツツツ」手首乗り文鳥になりました。しばらくの間、脈打つ手首でくつろいでいるままの鳥でした。
 それから、また時が過ぎ、ころあいを見計らって
手のひらの中で背中をなぜてあげました。
 そのうち、手へ
「フワ」とうとう手乗り文鳥になってしまいましたとさ。

 こうして容姿端麗な美声の手乗り文鳥ができました!でも、、、、4歳なのです。」

(内容はそのままに、見やすいように少し編集を加えました)

 氏は、三歳の非手乗り文鳥を、一年余の歳月をかけて忍耐強く慎重に接することによって、手乗り文鳥にしたわけです。「バタバタ」が「トン」「トテ」「ドン」「ドサ」「ツツツ」「フワ」に変化していくのは、並大抵のことではなく、よほどの根気と情熱がなければ不可能でしょう。真似するのはかなり難しく、これを達成した氏を尊敬しないわけにはいきません。

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