文鳥問題.

《共通感染症》

 人間と動物に共通して伝染する病気を、zoonosis(ズーノーシス)と呼び、日本では、人畜(獣)共通感染症とか、動物由来感染症などと呼ばれます。しかし、特に「人畜共通」の呼び方は誤解を招きます。人間はれっきとしたほ乳類で、本人たちが思っているよりも、遺伝学的にはたいして猿と変わらない動物以外の何者でもないので、「人」と「畜」ははじめから「共通」なのです。
 したがって、動物である人間の近縁種としての「畜」である猿がかかる病気には、かなり高い確率で人間も感染します。一方、まったく遺伝的に遠い動物である「畜」、鳥類と共通に感染する病気は少なく、例えば、人間と犬がかかるような病気でも、鳥には無関係なことが圧倒的に多いのが事実です。つまり、人間対その他鳥獣という認識は、科学的にはありえず、種として近いか遠いかが問題なのです。
 共通感染症について、生物学上かなり遠い関係にある文鳥を飼育する人間の私は、あまり気にしないで良いものと考えています。ところが、近頃、鳥インフルエンザ問題がおこり、人間を生物界で特別なものとする、あまりに素朴な童話なり神話を背景にした感情論が無自覚の無知からはびこり、正直うんざりします。この際素人の私が聞きかじった共通感染症の情報をただ列挙しておくのも、何かの参考になるかもしれません。【2004年4月】


文鳥に関係があるとされる共通感染症
鳥インフルエンザ    西ナイル熱    オウム病

文鳥とは無関係といえる共通感染症
狂犬病    レプトスピラ    パスツレラ    トキソプラズマ
 


鳥インフルエンザ

 まず昨今マスコミの一部が空騒ぎをして、「人のうわさも七十五日」ですでに忘却のかなたの感にある鳥インフルエンザですが、結論から先に言えば、これは文鳥には無関係といって良いでしょう。
 確かに、問題となるH5N型という毒性が強いインフルエンザは、ニワトリに驚異的な致死率を示し、人間を含むほ乳類にも感染し、さらにカラスにすら感染死を起こした恐ろしい病気です。しかし、感染したニワトリと直接接触しない限り、感染する可能性はほとんどゼロといった程度に感染力の低い病気であるのも事実です。この間の騒動でも、結局はカラスからカラスへの感染も確認されませんでしたし、また、人間から人間への感染も全世界で疑い例がひとつある程度です。感染力が低く、基本的に空気に広範囲にただよい感染するようなこともないので、人間の都合で狭い場所に大量に飼育されている養鶏以外では、感染の拡大が発生する可能性は非常に低いと言えます。さらに、東南アジアでの人間への感染には、生きたニワトリを家庭で調理する食習慣が大きく影響していると考えられますが、現在の日本で生きたニワトリを買ってきて家でシメて料理する家はきわめて特殊なので、人間への感染はほとんど想定しがたいわけです。

 それでは、なぜ政府や専門家が警告を発し、理解力に欠ける一部のお茶の間主婦や、一部の有閑ジイさんなどを恐がらせることになったかといえば、それは鳥インフルエンザそのものより、それが変異することを恐れていたためです。もし、香港型などのインフルエンザにかかっている人間が、鳥インフルエンザに感染したら、この不幸な人の体内で人インフルエンザと鳥インフルエンザが合体(変異)する可能性を危惧して、万全の対策をはかったに過ぎないのです。何しろ、もしその変異が現実に起きると、それはまだワクチンの存在しない新たな人インフルエンザ型が出現することを意味しますから、世界で60億超という個体数を誇り、特に都市部で は養鶏場のニワトリのようにひしめき合って生きていて、なおかつグローバル化の進んだ人間の社会では、瞬く間に全世界的大流行となる危険が十分に存在するのです。
 しかし、この話よく考えてみたらどうでしょう。明らかに鳥の問題ではなく、人間の問題だということに気がつくはずです。自分が食べる鶏肉のために養鶏場で不自然な飼育をして、結果的に鳥インフルエンザを培養しているのも人間なら、毎年流行する人インフルエンザの中で生きているのも人間なのです。
 鳥インフルエンザという、共通感染症としては人間への感染可能性が極めて低い病気を、人間にとって危険な感染症にするかどうかの責任は、すべて人間にあります。鳥インフルエンザと言う名前なので、鳥類に問題があるなどと考えるのは、とんでもなく見当違いな話と言えるでしょう。

 結局、文鳥の飼育者として、現時点で特に注意する点はないです。野鳥との接触を避けるために、日光浴禁止を唱える人もいますが、この感染症に限れば神経質になることはないでしょう。なぜなら、感染養鶏場に出入りしたカラスの事例を見る限り、不幸にして感染した野鳥は致死してしまい他に感染させる可能性は低いと考えられからです。
 むしろ、人間には感染しない鳥類固有の感染症が、野生の小鳥との接触でうつる可能性は常に存在することと、他でもないカラスは文鳥を襲うことがある事実を認識していれば、すでに日光浴は短時間に慎重に行っているに相違なく、殊更に付け加えることもないはずです。

【補足】(2008・06)
 その後、強毒性(高病原性)の鳥インフルエンザH5N1型の脅威は年々増してきています。おそらく人間が養鶏場で毒性を高めてしまったこのインフルエンザは、野生の水鳥に伝播して世界的な流行を引き起こし、2005年中国の青海省において渡り鳥の大量死を引き起こし、その系統が変異分離しつつ2006年韓国、2007年日本の養鶏場で感染を起こし(韓国からの直接伝播ではなかった)、さらに2008年秋田県十和田湖などでハクチョウの死骸からH5N1型が検出される状況になっています。
 つまり、不顕性感染(感染していも症状に現れずキャリアーになる)の種か個体により水鳥全体に感染が拡大し(水鳥にとってのパンデミック【爆発的流行】)、それが養鶏などにフィードバックしているようです。これは、水鳥たちにあっては種の存続を脅かしかねない危機であり、人類にとってはかつてないハイパーな人型インフルエンザ(高病原性インフルエンザ)の発生条件が周囲に満ち満ちてきている状況と見なし得るでしょう。もし万一、現在の人から人に伝播しないH5N1型が、そのままの毒性で伝播出来るように変異した場合、免疫過剰(サイトカイン=ストーム、自己免疫力が逆作用し多臓器に炎症を引き起こす)により代謝の活発な若年・壮年により激烈な症状を引き起こす特徴を持っているので(この点が従来の弱毒性由来のインフルエンザと違うらしい)、致死率は20〜60%になってしまう可能性もあります(致死率が高いとウィルス自体が拡散できないので、通常弱毒性になる)。
 実に由々しき大問題ではありますが、家庭内で飼育されている小鳥には、飼い主が感染しない限り無関係です(感染してもヒト型に変異したものが鳥に感染するとは普通考えられないので、ほとんど無関係)。我々人類にとっての鳥インフルエンザ問題とは、あくまでも鳥類にどのよう に対応するかの問題ではなく(かえって養鶏場で毒性を強めてしまった人間のせいで水鳥に多大な迷惑をかけている)、人類が自ら招いた危険性に対して(現在の人口と生活水準で養鶏場を無くすことはまず不可能)、どのように対処出来るかの問題と見なすべきです。そして、すでに危機は目前に迫っており、『鳥』と名がつくからカゴの鳥までが天然自然に そのウィルスを持っていて、飼い主である人間に感染を引き起こすといった、まるで非科学的で無知蒙昧な思い込みをしている余裕は、すでに無いことを十分に認識すべきでしょう。問題は鳥インフルエンザではなく、新型インフルエンザがどのような特質を持っていつ現れるかなのです。

 

西ナイル熱

 ウエストナイルウィルスによって起きる感染症です。おもに、感染した動物の血を吸った蚊に刺されることで感染します。アフリカの風土病でしたが、近年アメリカ合衆国などに伝播し、世界への拡散が心配されています。人間が蚊に刺され感染しても80%は発症しませんが、発症者は発熱を起こし、脳炎などにより一部が致死します。
 このウィルスは鳥類にも感染しますが、鳥類ではほとんど発症しないようです。そのため、感染した鳥が他の動物に感染を拡大する「キャリアー」
(運び屋)になってしまう点が問題とされています。例えば、アメリカ合衆国での感染拡大は、渡り鳥のルートと重なっているという指摘もあるくらいです。
 しかし、実際は人間も80%は発症しないので、立派なキャリアーだということを認識しなければいけません。今現在、輸入鳥類の防疫強化や航空機や空港での蚊の駆除といった対策で、この感染症が日本に入り込むのを防ごうとしていますが、私に言わせれば、キャリアーの人間がファーストクラスでやって来たら、お手上げと言うことになります。そもそも蚊にしてみれば、羽毛に覆われ動きの早い小鳥よりも、人間のほうが吸血しやすいのは明らかでもあります。

【補足】(2008・02)
 参考にした情報がすでに古かったのか、その後研究が深化したのか判然としませんが、本文の内容が現在の解釈から見れば間違っているため、ご指摘を受け訂正いたします
(ご教示いただいた「佐々木」様に心より感謝申し上げます)
 国立感染症研究所の関連ページによれば、人間などほ乳類は終末宿主で、そこから蚊を介して他に伝播することはないと考えられています(蚊に再び感染させるほどほ乳類の体内でウィルスが増殖しないため。なお研究所の啓蒙ビデオでは「動物」「馬」となっていますが、平成19年度横浜市動物取扱責任者研修会での配布物【同研究所客員研究員の本藤良氏の講演資料】によれば「ヒト、哺乳類は終末宿主」とあるので、「動物」はほ乳類の意味と解釈して良いと思います)。また、鳥類に関しても、ニワトリやハトは不顕性(症状が現れない)である事が多い一方、カラスやカケスは感染すると死んでしまうことが多いとされています。小鳥の場合ははっきりしませんが、いちおうカラスと同じスズメ目の鳥類である文鳥が感染すれば、発症致死となる可能性が高いかもしれません。
 なお、本文のように発症は感染者の約20%で、髄膜炎など重症となるのは150人に1人のレアケースとされています。

 結局、文鳥の飼育者として、現時点で特に注意する点はないです。羽毛に覆われ、小さくて敏捷で、しかも室内で飼育される文鳥自体は、蚊に刺されることはほとんどないので、このウィルスに感染する可能性はほとんどゼロに近いのです。つまり、文鳥から飼い主への感染は想定することさえ困難と言えます。逆に飼い主から文鳥へ、蚊を仲立ちにして移してしまっても、おそらく文鳥は無症状と思われるので、心配する必要がありません。

 この文章を書いた時点では、カラスの死亡例はすでに目にしたものの、それについて研究機関の結論がなかったと記憶します。しかし、現在では上記のようにカラス類で感染した場合、発症致死の可能性が高いとの結論が出たようですので、この部分は抹消し訂正いたします。
 現時点では、万一飼い主が感染しても、蚊を介して文鳥を含む他の動物に感染させる可能性はなく、文鳥が外部からの蚊にさされ感染した場合は、そこから2次的に感染を拡大させる前に、発症して致死してしまう可能性が高いと見なせそうです。つまり、万一この病気が日本でまん延した場合、文鳥への感染を防ぐために、蚊の進入を防ぐ努力がいっそう必要になります。

 せいぜい、念のためむやみに輸入鳥類に手を出さないこと、人間も文鳥も蚊に刺されないように気をつけることくらいでしょうか。いずれにせよ、日本に感染が広まっていない現状では、文鳥にはほとんど関係のない話です。 

 

オウム病

 オウム病は鳥類の飼い主として、認識しておくべき唯一といって良い共通感染症でしょう。もともとは鳥類特有のオウム病クラミジア(特殊な細菌)によって起きる感染症です。感染した鳥から、おもに経口感染(排泄物の吸引や口移しによる感染)します。人間に感染すると、1、2週間の潜伏期間後に発症し、発熱などインフルエンザのような症状をしめし、時に肺炎となります。
 鳥類の場合は感染しても発症せず、体力の低下や過度のストレスを受けた際に発症するとされ、症状は食欲減退、鼻水などと言われています。特に発症後の糞便にクラミジアが多く含まれ、周囲に感染を広げると指摘されています。つまり、輸入鳥やヒナなど、密集状態での長距離輸送を経験すると、発病や感染拡大の危険が高まると言えるでしょう。

 昔から知られた感染症ですが、実態はいまだに全容を捉えづらい病気のようです。従来、人間が感染すれば発症するものと考えられていましたが、最近ではそうとは言い切れないようです。また、ハトやオウム類など、鳥類の中でも比較的感染個体の多い種類の飼い主にも、この病気の発症は極めてまれである事実から、感染するかしないかの原因が明瞭ではないとも言えそうです 。
 しかし、感染原因がうやむやでも可能性は否定できないので、研究者や医療関係者などは「鳥との濃密な接触は避ける」と簡単に言って済ませていることが多いですが、「疑わしきはすべて罰する」姿勢で日常生活は営めないのが現実で、感染は非常にまれだと言うのことも事実なのです。
 結局、文鳥の飼い主としては、インフルエンザの症状などで肺炎の診断が出た場合、鳥を飼育していることを伝えることだけは覚えておいた方が良いと思います。オウム病による肺炎には、非常に有効な抗生物質があるので、肺炎の原因がオウム病と特定できれば、治療は比較的容易とされているのです。また、予防面で万全を考えるのなら、ペットショップで感染した事例もあるようなので、特に不潔で輸入鳥類を扱うようなお店には、長居をしないようにすることも必要でしょう。

 


 

文鳥とは無関係な共通感染症の例

 

 人畜共通感染症などと一概に言ってしまうので、犬や猫の飼い主だけが認識しなければいけない病気を、そのまま文鳥に当てはめてしまう人が、一般の飼い主のみならず、人間のお医者さんにすら見受けられるようになります。
 例えば、一般的には耳慣れないレプトスピラ症、パスツレラ症
(犬・猫)、トキソプラズマ・・・などなど、本来は文鳥の飼い主は知らなくても良いことですが、誤解のないように一部を紹介しておきます。

【1】狂犬病
 狂犬病は言わずと知れた共通感染症の王様といっても良い存在です。狂犬病ウィルスに感染している犬や猫その他の動物に噛まれることで、同じほ乳類の人間にも感染します。発症した動物
(人間を含む)は狂気の状態となり、特に噛みつくようになってしまう犬は感染を拡大させます。
 日本では飼い犬に強制的にワクチン接種していることもあり、1957年以来発症は確認されていませんが、世界的には現在でも毎年数万人死亡している恐ろしい病気です。海外で動物と接触する際は慎重にすべきですが、ほ乳類特有のもので文鳥には当然関係のない病気です。

2】レプトスピラ
 レプトスピラ症は、レプトスピラ細菌による感染症で、げっ歯類
(ネズミの類)や犬猫、さらに牛馬などに感染が見られ、感染した動物の尿に接触することで人間にも感染します。発症すると腎炎などを引き起こすこともあり、まれに重篤な症状を示すと言われています。
 犬には予防接種があり、また感染すると発症する
(つまり病気の症状が表に出る)ようですが、問題はげっ歯類で、感染していても発症しないことが多いとされています。つまり、ハムスターなど最近はやりのげっ歯類の飼い主は、掃除の際に注意が必要で、とりあえず手袋をしておいたほうが無難といったところです(特に体力の低下している時)。一方、鳥類である文鳥には当然関係のない病気です。

【3パスツレラ
 パスツレラ症は、犬や猫、特に猫の口腔内に普通に存在するパスツレラ細菌による病気で、感染した動物に噛まれるなどして人間にも感染します。
 しかし、犬猫には症状はほとんど現れず、人間でも思い切り噛まれた時に傷口が化膿して直りにくくなるくらいで、健康な人は感染することもまれなようです
(そう考えないと、犬とコミュニケーションなどとれず、愛犬家でパスツレラにかからないほうがおかしいことになる。「犬とのキス禁止」を簡単に主張する人がいるようだが、口の周りをなめあうのは犬本来のあいさつ行動であることも理解した上で、なめられた後の洗浄、口移しのような行動の抑制こそ主張すべきだと思う)。重篤な状態となることも極めてまれなので、犬猫でもあまり問題にならない感染症と言えそうです。当然鳥類である文鳥には関係のない病気です。

【4トキソプラズマ
 トキソプラズマは、生肉を食べたり扱ったりすると感染することがある原虫で、20%以上の人間がすでに感染しています
(生肉が好きなフランス人は80%以上という)。ただ普通なら、感染していても健康上何ら問題ありません。ところが、ほとんど唯一問題となるケースがあります。今まで感染していなかった妊婦(もしくは妊娠しようとしてる人)が感染した場合、流産や胎児に先天的障害が起こることがあると言うのです。
 ようするに、妊娠初期に検査してトキソプラズマ陰性
(感染していない)とされた妊婦さんは、生肉を食べず、料理もしなければ問題ないわけです(お喜びください!出来合いのおかずでも亭主は文句が言えないのです!)。トキソプラズマは肉質の中で不活性に存在するだけなので、フランス人を含む生き物(他意はありませんよ)と普通に接触しても感染は起こりません。
 ところが、数ある動物の中で猫
(正確には猫科)がこのトキソプラズマに初感染した場合に限り感染の数週間だけトキソプラズマが活性化して排泄するようです。つまり、その期間に飼い猫の糞便を掃除するなどで、飼い主が感染する可能性があるわけです。ようするに、感染はどのような動物にも起こりますが、生きている時に他に感染を起こす可能性があるのは限定的な状態の猫だけという、極めつけに限定的な共通感染症と言えるでしょう。
 人間や他の動物も感染している可能性は十分ありますが、知り合いの人間や飼育するペットを食べてしまう人は存在しないはずなので、猫以外の動物では問題となりません。この点、一部に完全な誤解があるようです。なお、文鳥に生肉を食べさせる飼い主もまず存在しないはずなので、文鳥がトキソプラズマに感染している可能性すら、きわめてゼロに近いです。
 トキソプラズマ陰性の妊婦が、トキソプラズマ陰性の猫を飼っていて、その猫がその時期にトキソプラズマに感染してしまって、その糞便を妊婦が不用意に扱ってしまう・・・何とも低い確率の話ですが、妊娠中、しかも胎児に影響が出るというので、過大に問題とされている傾向がありそうです。しかし、冷静に見ればたいした話ではなく、当然文鳥にはまったく関係のない病気です。
 この感染症で、「ペットは危険」などと単純に考えるのは馬鹿げています。なぜなら、肉を食べないペットよりもレア肉の好きなご主人やご家族などが感染している可能性のほうが格段に高いからです。つまり。一部の産婦人科のお医者さんが「ペットとの接触に注意!」などと言い放つのなら、当然「ご主人との接触に注意!」とも言わなければいけないことになります。これは無茶ではありませんか?

 

 その他、文鳥には無関係な共通感染症は他にもいろいろありますが、このくらいにしておきましょう。

 

【お勧め文献】 藤田紘一郎著 『イヌからネコから伝染るんです』 (2000年講談社)

【補足】(2005・06)
 なお、人間の性病の原因となる「クラミジア」や「トリコモナス」は、ここで問題となるものとは、まったく別種です。
 面倒なので本文では触れませんでしたが、例えば同じ「トリコモナス」でも
文鳥や他の鳥類が発症するトリコモナス原虫は正確には「ハトトリコモナス」(Trichomonas gallinae)という種類です。一般的に「トリコモナス」と呼ばれるものには、ほ乳類の多くに感染する「腸トリコモナス」(Pentatrichomonas hominis)や、ニワトリ類に肝臓障害をもたらすもの(Trichomonas gallinarum)、人間の性病を引き起こすもの(Trichomonas vaginalis)などがありますが、それらは文鳥には感染しないと考えられています。同じ「トリコモナス」だからと言って、安易に混同してはいけません。


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