文鳥問題.

《ヒナのエサ》

 誤解されることも多いですが、私個人には食べ物の中身にこだわる趣味はありません。文鳥のエサにしても、無農薬云々や産地について神経質には考えていません(雑穀栽培に大量の農薬を使用する必然性が無い。農薬にしても適正に使用する限り完全否定するのは非合理的と考える)。
 しかし、今年のヒナ餌付けを始めるにあたって、文鳥のヒナが食べる加工食品の中身が大体どのようなものかくらいは、それを食べさせる飼い主の責任上知っておいたほうが良いと思いました。この点で、なぜか私がアワ玉に混ぜて使用していた某飼料店のヒナ用のエサには、原材料の表記が何もありません。そこで問い合わせたところ、案外なことに「企業秘密」とのことでした。
 私個人の性格を離れて客観的に見れば、おおまかな原材料も公開しない加工食品を使用することに合理的な説明を施すのは困難です。本来、原材料を示し消費者に検討の余地を提供するのは製造者の義務だと思いますが、これはその会社の方針ですから致し方ありません(ただし人間の加工食品であれば、原料表示は法律上の義務です)。この際、そういった内容のわからないものを除外し使用せず、原材料から自分の頭で考え満足行くように模索してみることにしました。【2005年11月】

※ 青枠の画像をクリックすると、『楽天市場』の当該商品ページが現れるのでご注意ください。
(『文鳥屋』もご参考いただければと思います)


なぜアワ玉を基礎にするのか?

孵化15日目のヒナ。親から粒状のエサを
与えられているのが確認出来る。

 文鳥のヒナの餌付けでは、ムキアワに鶏卵(玉子)のおもに黄味をまぶしたアワ玉を基礎にするのが伝統的で、私は結局これが一番良いものと考えています。なぜなら、普通に飼育し、繁殖させたことがある人なら、親鳥が孵化後10日を過ぎたヒナに何をどのような形で与えているか知っていると思いますが、それは殻をむいた粒々の状態に他ならないからです。

 最近は、文鳥の餌付けでもパウダー状のエサのみで餌付けすることを推奨する人がいますが、それは栄養的には問題ないとしても、文鳥にとって不自然には相違ありません。なぜなら、親鳥は一般に餌付けが行なわれる時期(孵化後2週間以降)ヒナに、主食(配合飼料やアワ玉)噛み砕いて与えたりはしないからです。
 また、パウダーフードを液状化して餌付けする際は、そのうが空になってからでなければ、消化不良を起こすとされていますが、それこそ、『29.文鳥の迷信』でも指摘したように、エサの形態が不自然である結果以外ではありません。一方、アワ玉を主体とする限り、前のエサが残っていても古いものから消化されるだけで、何ら問題にはならないのが現実なのです。

 ヒナを餌付けするに当たって、インコ類にあってはクチバシの形状の関係で、文鳥用の餌付け器(『育て親』)は使いづらい面があるかもしれません。しかし、この単純な器具が、文鳥の餌付けには実に適しています。おかげで、親鳥以上に素早く大量にエサを与えることが出来、なおかつ器具の大きさが適当でエサが固体であるおかげで、誤嚥(食べ物が食道ではなく気道に入ってしまう)を起こすこともほとんど考えられません。
 一方、液状のパウダーフードを注射器(シリンジ)などで与えるのは、慣れない初心者には難しい作業に相違ありません。ヒナの体中にエサをくっつけてしまうくらいならまだしも、先がとがっているので誤嚥させて生命の危険を伴うことすらあるのです。

 さて、不自然なエサを、そのうをいちいち確認しつつ、難しい餌付け方法で与えなければならない理由があるでしょうか?あるとすれば、栄養不足が起きないという、ただその一点のみでしょう。
 確かに、パウダ−フードは人間の頭で考える限り栄養バランスが良いかもしれません。しかし、それに対して、アワ玉を主体とする従来の方法では、栄養不足を起こすとステレオタイプに考えるのは認識不足と言うものです。なぜならそれは、もし市販のアワ玉のみで餌づけをしていればその危険があるだけで、まともな飼い主なら、大昔から、ヒナの餌付けの際にアワ玉にいろいろなものを加えて栄養不足にならないようにしていたのが事実だからです。
 つまり、アワ玉だけでは良くないとしても、アワ玉を主体にすること自体は何の問題も無いどころか、シリンジでパウダーフードを与えるより、はるかに安全で簡単で自然な方法なのは、疑いようも無いことなのです。

≪ある「専門」獣医の思い込み≫

 文鳥のヒナを受診のため連れて行かれた都内在住の方が、鳥専門病院の男性獣医さんから次のように指摘を受けたそうです(原文ママ)。
 (1)ヒナにはムキアワの湯付けしたものだけか、ケイティ社のパウダーフードのみを与えよ。
 (2)アワ玉は雑菌だらけであるし、ボレー粉を与えるなんて、飼い主失格。
 
あまりに無茶苦茶なので、作り話と思いたいくらいですが、「専門」をかかげながら、文鳥の餌付けにはまったく無知な獣医さんもいるのが現実です。
 まず前提として、「飼い主失格」などという言葉は、完全に個人の人格否定ですから、
明らかな名誉毀損である事を認識して頂きたいです(ネット上でも使いたがる人がいますが、そのように他人を断言出来るほど絶対的な存在などいますでしょうか?)。まして親鳥が普通に食べ当然ヒナに与えているボレー粉を、餌付けの際に苦労し粉状にして用いている飼い主が、どうして「飼い主失格」となってしまうのか、まったくわけがわかりません。そもそも、ヒナ飼育でボレー粉を特別に禁じるべきという意見は、今のところ私は聞いたことさえない奇抜なものです。もしそれが大した根拠もなく、その獣医さんだけが持つ特別な思い込みに過ぎなければ、無根拠な誹謗中傷以外の何物でもなく、発言者の人格の方を疑わざるを得ないところです。
 そもそも自宅で作ったアワ玉は半生状態ですから、保存に気をつけ早めに使い切らなければ問題がありますが(餌付けエサを作る際に熱湯をかけるのには殺菌の意味もある)、乾燥して包装された商品が雑菌だらけなはずがないことくらいは、常識的に考えただけでもわかりそうなものです。それでも、もしどうしても不審があるのなら、
無根拠な思い込みで診療に来ている第三者に見当はずれで迷惑な「指導」をする前に、顕微鏡で何とか菌を探すのはお得意のはずですから、しっかり科学的データをそろえ飼料会社を告発するのが、医者であり科学者である人間の責務ではないかと思います。当然ながら、思い込みだけで商品の中傷をすれば、営業妨害となってしまいますが、見識のある獣医さんたちが、あるアワ玉的飼料に抗生物質が添加されているのを問題視され、その撤廃を要求し実現された前例もあるように、根拠さえ明確であれば、改善され多くの鳥たちが救われるかも知れません。少なくとも獣医師の国家資格を持ち、鳥の専門を看板にしていれば、いい加減な思い込みではなく論理性を持った科学的な見解を述べているはず、といった飼い主の甘い期待(思い込み)に背かないようにして頂きたいところです。
 この獣医さんがパウダーフードを推奨するのは結構ですが(当然しっかりと餌づけの実技指導した上で)、なぜムキアワだけで餌付けしろなどと、それこそ
まともな獣医さんや飼育者たちが、何十年も前から栄養学的にも経験的にも否定し続けてきた方法を、わざわざ推奨しているのか不審に耐えません。もし、これを信じた飼い主が実行し、当然の帰結として栄養不足が起きれば、それは医療過誤の問題となりはしないかと心配にさえなります。「専門」の虚名を信じた飼い主の文鳥たちを、脚弱症に追い込んで通院を強制する目先の利益を優先させているわけではないはずですから、無知をさらけ出し医療過誤により病院経営上のリスクを招くのは避けるべきでしょう。
 軽率でいい加減な「指導」という名の思い込みの妄言は、飼い主や文鳥自身のためにならないのみか、その獣医さんのためにもならないのは明らかなのです。早急に考えを改められるべきかと思います。

※日本における鳥専門医の泰斗である故高橋達志郎先生は、開業前に10年間飼鳥経験をされたそうです。それに比して、現在のにわか獣医さんには飼育に関して無知無理解な方が多いように思います。はなはだ僭越ですが、飼育を簡単に考えず、特に鳥種による相違には十分に注意を払って頂きたいところです。

 

気をつけたい栄養素

 文鳥のヒナを育てる上で、特に気をつけたいのは下記の栄養素だと思います。どのようにしたら、これらを不足なく摂取させられるかが問題です。

● ナトリウムの不足 → 食欲が減退し、嘔吐をおこし、脱力症状 を示す。   ● カルシウムの不足 → 骨格形成が正常に進まず成長が滞る。

● ビタミンAの不足 → 免疫力低下で病気にかかりやすくなる。   ● ビタミンB1の不足 → 食欲が減退し、脚が動かない脚気となる。

● ビタミンD3の不足 → 骨軟化症(クル病)となり、骨が変形する。

 まず基礎となるアワ玉ですが、これは穀むき粟に鶏卵の黄味などをまぶした飼料です。その原料である鶏卵自体が「完全食品」と言われるくらいにさまざまな栄養素、当然上記のものもすべて含んでおり、もしこれを十分に添加したものであれば、アワ玉のみでも栄養障害は起きにくいように思えます。
 しかし、市販のアワ玉に統一基準などありませんから、どの程度の鶏卵を添加しているものかわかりません。もし添加量が少なければ、ただのムキアワを与えているのと変わらないことになり、タンパク質もカルシウムもビタミンも不足
(結果として栄養性脚弱症などを引き起こす)してしまいます。
 それでは自宅で玉子の黄身をまぶして、自家製アワ玉を作れば良いでしょうか?確かにそれも良い方法ですが、細菌が繁殖しやすく腐りやすいという欠点があります。ヒナは細菌性の感染に弱いので、その点危険があり、誰にでも薦められる方法ではないように思います。やはり、市販のアワ玉に何か加えたほうが無難でしょう。

 具体的に何を加えたら良いか、実際に親鳥が何を与えるかを見れば、アワ玉をのぞけば、普通の配合飼料、ボレー粉、そして大量に与えるのが青菜です。普通の配合飼料は殻をむいて飲み込み、そのうにあるのを吐き出して与え、ボレー粉はクチバシで砕き、青菜はちぎって細かな破片にしてから与えています。
 これらを栄養的に見れば、普通の配合飼料の穀物から3大栄養素
(タンパク質、脂質、炭水化物)とビタミンB類、ボレー粉からカルシウムやミネラル類、青菜からビタミンA、・・・考えてみれば、いつも食べてるものをたくさん与えているだけとも言えますが、それこそが自然なわけで、当然ながら栄養のバランスは良いはずです。

 人間がアワ玉を基礎に親代わりをする時、市販のアワ玉はたんなるムキアワと考えておくのが無難ですが、たんなるムキアワの栄養価は下の表の「精白アワ」のようなものに過ぎません。カルシウムやビタミンAおよびD3をほとんど含まないのは、穀類全般に共通することで仕方がないのですが、穀類で摂取されるべきビタミンB1が、他と比較して少なくなっている点には注意が必要でしょう。これは、ビタミンB1を多く含むヌカ部分が、「精白」(おそらく殻をむいただけ)によって一部取れてしまった結果と考えられます(以前の栄養成分表の「玄穀」、つまり殻のついたままの栄養価では、B1の数値は2倍であった)
 つまり、少なくともボレー粉や青菜に相当する部分を補う必要があり、ビタミンB1にも留意しておきたいと言うことになります。

  エネルギー タンパク 脂質 炭水化物 ナトリウム カルシウム ビタミンA ビタミンB1 ビタミンD3
乾燥全卵 608 49.1 42.0 0.2 490 210 420 0.29 3.3
乾燥卵黄 724 30.3 62.9 0.2 80 280 630 0.42 4.9
乾燥卵白 378 86.5 0.4 0.2 1300 60 0 0.03 0
精白アワ 364 10.5 2.7 73.1 1 14 0 0.20 0
玄米 350 6.8 2.7 73.8 1 9 1 0.41 0
そば粉/全層粉 361 12.0 3.1 69.6 2 17 0 0.46 0

単位省略。以下栄養成分については、『五訂日本食品標準成分表』 食品成分データベース

 そこでまず参考までに、市販のヒナ用栄養飼料の原材料を見てみましょう。使用されている方も多い『現代製薬』の「ヒナベビー」「ヒナフトール」といった製品ですが、脱脂粉乳を主原料とし、骨髄エキス、酵母、各種ビタミン、ミネラルなどが加えてあるとされています。
 栄養成分はわかりませんが、この原材料を見る限り、脱脂粉乳や骨髄エキスで動物性タンパク質やカルシウムやビタミンD3が補われ、酵母
(どのような酵母か不明)はビタミンB1が豊富なはずです。また、これら3つはナトリウムも含みます。ビタミンAにしても骨髄に含まれており、「各種ビタミン」でさらにカバーされていると考えれば、確かにこれをアワ玉に加えることで、栄養面での問題は起きづらいと考えられそうです。
 脱脂粉乳や骨髄エキスは、文鳥本来の食性からは外れているので、その点抵抗がある方もいるかもしれませんが、栄養価のみで考えれば、合理的な製品といえそうです。

  エネルギー タンパク 脂質 炭水化物 ナトリウム カルシウム ビタミンA ビタミンB1
脱脂粉乳 359 34.0 1.0 53.3 570 1100 6 0.30

※人間にも牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる乳糖不耐症というのがありますが、これは牛乳に含まれる乳糖を吸収できない体質からくるものです。この点、鳥類も乳糖の吸収が出来ないという話があり、一部の人は牛乳を鳥に与えるべきではないとしていますが、私はその説に懐疑的です。なぜなら、昔から文鳥の餌付けに牛乳を加える人はいたようですし、レース鳩に飲ませる人もいるらしいからです。それで特に下痢をしたとの話は聞きませんし、上記の製品利用者にそういった症状が顕著との話も聞きません。もし、乳糖を吸収出来ないのが本当であっても、鳥類では健康問題とはならないと考えた方が良いのかもしれません。

 

人間用食材などの利用

 既製品に不安がある場合、必要な栄養素を飼い主が考えて加えてやらねばなりません。しかし、それ程難しいことではないでしょう。親鳥が与えているように、青菜やボレー粉をすりつぶして加えれば、ほとんど問題は解決するはずなのです。
 青菜は、小松菜などビタミンAの豊富なものをすり鉢ですってペースト状にしたり、細かく刻んで加えるだけで、ビタミンA不足は考えられません。また、ボレー粉やカトルボーンといった親鳥の日常飼料を粉状にして加えておけば、カルシウムやナトリウム不足の心配もなくなるはずなのです。

≪ボレー粉について≫

 ボレー粉、牡蠣(カキ)の殻は人間の漢方薬になるくらいに優れた食材です。カルシウムを補うばかりでなく、各種のミネラルを含み、小鳥の場合は消化の助けにもなると一般的に考えられています。
 私が調べた牡蠣殻の成分表(『軟体動物学概論』)にはヨウ素(元素記号I)の項目はありませんでした。しかし、そもそも貝殻は海の成分(ミネラル)が吸着し石灰化しているわけで、海中にヨウ素が必ず存在する以上、それだけが含まれないことはありえないと思います。したがって、記載がなかったのは検出量がゼロと言う意味ではなく、比較的微量だったからではないかと思われます(ボレー粉由来の成分かは不明だが、右のボレーを原材料とする健康食品には成分にヨウ素が挙げられている)。
 ヨウ素には、不足を気にするあまり、かえって過剰症に陥る危険が多分にあります。人間でも、ヨウ素を多く含む昆布の産地に甲状腺障害が起きて問題になった事もあるくらいです。つまり、ヨウ素は身体の活動に必要ですが、意識的に毎日摂取するのは、かえって良くないと言えます。そもそも島国の日本の場合、蒸発した海水とともにヨウ素が上空に達し、雨水とともに地面に降り注ぐので、土壌はヨウ素を含んでおり、そこで育ったものを食べている限り、ヨウ素不足は起きないとされているくらいです。また、ヨーロッパの飼育セキセイインコにヨウ素不足が起きたのは、その地域の飲み水がミネラル分の少ない軟水であったことに由来するとされています。つまり、少しミネラル分の多い硬水地域では問題にならなかったわけです。
 ヨウ素過剰は危険なので、不足を心配する場合も、ボレー粉で頼りなければ、たまに煮干しをかじらせる程度が無難と思われます。
 ところで、ボレー粉はすぐに消化されるので、筋胃に留まり砂粒のような消化の助けにはならないとする説もあります。確かにクレオパトラが真珠をぶどう酒に入れて溶かして飲んだように、炭酸カルシウムは酸性の水分によく溶けます。しかし、鳥の筋胃の中は消化液で満たされているわけではないので、一瞬で消滅することは無いでしょう。そもそも、牡蠣殻は「方解石」などの結晶体で、これはすでに石と呼ぶしかない存在であり、これが役に立たないのなら、石灰岩系統の石はすべて役に立たないことになってしまいます。したがって、適当に消化に役立ち、徐々に吸収されて消えていくと理解するのが普通ではないかと思います。

 なお、ボレー粉末にするのは大変と言う人もいますが、それは全部粉末にしようとするから大変なのです。すり鉢などでゴリゴリ摺って、少ししたら細かい目の茶こしなどでふるいにかければ、案外楽に粉末になります。どうしてもうまく出来なければ、お近くの漢方薬局で購入すると良いでしょう。また、いちおう通販でも手に入るので、右を参考までに挙げておきます。

 

自家製粉末を作る道具

自家製粉末を作る原料

 私の場合は、2年間ほどコチラのようにしていましたが、行きがかり上、今年から加工食品でありながら原材料がまったく不明とする「ヒナ用フード」の使用をやめ、自家製「粉末」の比重を高めることにしました。この自家製粉末のレシピは極めていい加減なので細かな比率は自分でもわかりませんが、ボレー粉末、カトルボーン粉末、煮干し粉末、米ヌカ、ペレットの『カルシウムバード』を粉状にしたものが混ぜてあります。
 このうちハイペット社の『カルシウムバード』は栄養成分はわかりませんが、原材料にビタミンB1の豊富な脱脂米ヌカやビール酵母を含んでいるので利用しています。しかし、この部分は米ヌカだけで十分かもしれません。なお、この米ヌカは無農薬米のものです。白米であれば農薬などほとんど気にしませんが、ヌカ部分は残留しやすいので少しこだわっているのです。
 煮干しはカルシウム源と言うより、動物性タンパクとナトリウムとビタミンD3源として加えています。煮干しと言うと塩分を気にする人が多いですが、その心配は文鳥と人間では普段食べているものが違っていることを忘れているだけの誤解だと思います。日本人は自分たちが塩分過多の食生活をしていて、それを医者が問題にし騒ぐものですから、「塩分控えめ」が脳に刷り込まれていますが、しょうゆや味噌で味付けするわけでもない以上、ヒナのエサでのナトリウムの給源は乏しいのは明らかで、むしろボレー粉内のナトリウムだけでは不足するものと見なした方が良いと思います。ただ、私の場合はビール酵母を含む『カルシウムバード』にもその点期待出来るので、煮干しは低塩タイプを選んで使用しています。

 自然状態では昆虫類などで動物性タンパクを摂取するはずで、煮干しやフナ粉などを利用するのも良いことだと思いますが(その点野鳥のすり餌を利用しても良いと思う)、植物性にこだわるなら、大豆の粉であるきな粉や、大麦由来のビール酵母がタンパク質を豊富に含んでおり大いに有効でしょう(ただしビタミンD3は動物性以外では摂取出来ない)
 このあたりは飼い主の趣向に合った食材や飼料
(ペレット・パウダーフード)や薬剤で、飼い主各自がいろいろと工夫して、アワ玉の重量比で1〜3割程度を目安に混ぜれば良いものと思います(生の青菜は別枠)。脱線しない程度に独自性を発揮したいところです。

  エネルギー タンパク 脂質 炭水化物 ナトリウム カルシウム ビタミンA ビタミンB1 ビタミンD3
全粒きな粉 437 35.5 23.4 31.0 1 250 4 0.76 0
脱皮きな粉 434 36.8 23.1 29.8 2 180 4 0.12 0
小麦粉(全粒強力粉) 328 12.8 2.9 68.2 2 26 0 0.34 0
小麦粉(薄力粉) 368 8.0 1.7 75.9 2 23 0 0.13 0
米ヌカ 296 13.2 18.3 46.1 5 46 0 2.50 0
ビール酵母(サッポロ) 382 48.6 3.0〜6.0 24〜58 268〜648 40〜314 10.2 0
ビール酵母(アサヒ) 310 53.0 3.7 約30 100〜220 210 10.0 0
煮干し 332 64.5 6.2 0.3 1700 2200 0 0.10 18.0
煮干し低塩タイプ 350 71.4 6.8 0.8 540 2700
かつおぶし 356 77.1 2.9 0.8 130 28 0 0.55 6.0
ボレー粉 210 38000

 米ヌカは四訂日本食品標準成分表の数値。ビール酵母は粉末タイプのメーカーホームページ
の数値(100gで換算)を挙げたが、かなり変動幅があるようだ。
煮干し低塩タイプは『サカモト』というメーカーの商品裏書の数値。ボレー粉は『日本標準飼料成分表の数値。

 シーテック ヴィタ・ヘルス・スピルリナ
ワンワンスピルリナ(粉末)5本セット【1026アップ祭10】

上は高い。
下は量が多い・・・

 その際の注意点を参考までに挙げます。
 まずナトリウムの給源としては、塩を直接混ぜるより、過剰とならないように自然の食材から摂取した方がナトリウムとカリウムのバランスがとれていて無難だと思います
(ナトリウムだけ増えると過剰になりやすい)。具体的にはボレー粉や煮干しやビール酵母などが適していると思います。また、スピルリナという海水性の藍藻(参考商品→)もナトリウムを多く含み、ビタミンAも豊富なので、良い給源になりえるでしょう。
 カルシウムや各種ミネラル類の給源としては、海産物であるボレー粉、カトルボーン、煮干しなどが適していると思います。
 ビタミンAの給源としては、青菜、具体的には小松菜・豆苗・チンゲンサイ・ニンジンといったものが最も良いですが、いちいち細かくするのが面倒なら、仕方がないので粉末状の小松菜粉、大根粉などを利用したいところです。その点前述のスピルリナも有効でしょう。
 ビタミンB1の給源としては、米ヌカ、きな粉、ビール酵母が適していると思います。
 ビタミンD3の給源としては、手近なところで煮干しやかつおぶし、その他にフナ粉や乾燥ミルワームも利用出来るように思います。なお、この栄養素は信頼できるアワ玉をベースにする限り、それほど気にすることはないと思いますが、自然食品では動物性でないと摂取出来ません
(きのこ類に含まれるビタミンDはD2で鳥類には効果がないとされる)

 もちろんペレットやパウダーフードやビタミン剤、さらにキヌアやアマランサスといった栄養価の高い穀物など、いろいろと原材料には事欠かないでしょう。
 ナトリウム含有量の高いものや、人工的なビタミン剤の重複を避けるなどしつつ、組み合わせを考えたいものです。

 なお、飼育書などで、アワ玉に片栗粉を少々加えてとろみをつけるように薦めることがありますが、私は無用だと考えています。なぜなら、普通のかたくり粉とはジャガイモの粉ですが、そこから得られる主要な栄養は炭水化物のみで、特に必要ではないからです。
 また、エサにとろみというか粘りをつけると、人間の見た目は良くなるかも知れませんが、そうでなければならない必然性はまったく存在しません。むしろ、慣れない人がかたくり粉を入れすぎれば固くなってしまい、またその際「一煮立ちさせとろみをつける」などとすると、煮込んでアワをネバネバした状態
(アルファ化)にしてしまい、かえってヒナの生命を危険にしてしまいかねません
 小さい容器に入れたアワ玉に熱湯を注いで1〜3分くらい待てば、煮込みすぎの危険も無くある程度やわらかくする効果が得られるのですから、特に加減のわからない初心者は、なるべく失敗の無い方法を選択すべきかと思います。

  エネルギー タンパク 脂質 炭水化物 ナトリウム カルシウム ビタミンA ビタミンB1 ビタミンD3
かたくり粉 330 0.1 0.1 81.6 2 10 0 0 0

 

【補足】参考数値からの詳察

  エネルギー タンパク ナトリウム カルシウム ビタミンA
(1)飼料100gあたり 290kcal 19% 0.15% 0.80% 270IU
(2)摂取量6g 17.4 1.1g 9mg 48mg 16.2IU
 
精白アワ4g 14.6 0.4
煮干し0.5g 1.6 0.3 9 11
ボレー粉0.5g 1.1 190
小松菜1g 18

(3)合計

16.2 0.7 10.1 201 18

 ヒナが一日にどれくらいの量を食べるかは、そもそも食欲は一定ではなく、また個体差が激しいのではっきりしません。しかも、どのくらいの栄養価を与えれば良いのか、その明確な基準も無いので、何をどの程度アワ玉に混ぜれば良いか考えるのは困難です。
 しかし、6割以上はアワ玉で、残りも普通の食材や、栄養剤なども控えめの量で使用しているのであれば
(補助に過ぎないので説明書以下の量で良い)、問題はおきにくいと思います。その点はさほど神経質にならずに良いでしょう。

 それでもあえて具体化するために、『家禽学』などに掲載されるニワトリの「幼雛」の飼料要求量(1)から、ヒナが一日に食べる量と想定する6gでの要求量(2)を仮定して、精白アワ、煮干し(塩分が普通のもの)、ボレー粉、小松菜をそれぞれの数量で混ぜた場合を試算してみました。
 それぞれの食材の合計値(3)は、いちおうの目標値である(2)に近い数値となっています。カルシウムの合計値のみが突出していますが、食べ物に含まれるカルシウムの余剰分は吸収されず排泄されるだけなので
(ビタミンD3の薬剤などを併用すると過剰摂取になる)、これの過剰は問題になりません。
 家庭で簡単に混ぜるだけで栄養不足は解消出来ることが、とりあえず数値上でも確認されるものと思います。

≪実例 2005年末〜2006年初≫ 2006・2補足

【基礎飼料】  アワ玉 ・・・ 通販で購入して成鳥に与えているもの。全卵使用のため普通のアワ玉よりタンパク質が多いと考えられる。卵殻も入っているので、あらかじめピンセットで取り除く。また少々穀むきが甘いので、軽くすり鉢で摺る。
【補助飼料】  特製粉 ・・・ 米ヌカ10g、ボレー粉8g、煮干し5g、カトルボーン5g、ソバ粉4g、それぞれ自宅で粉末にして混ぜ合わせたもの。今回は人工の加工品は混ぜなかった。
【補助飼料】青菜ペースト・・・ 小松菜8割に豆苗2割程度の分量ですり鉢で摺ったもの。

 真冬に1羽ながら、当然のように、お健やかにお育ちでした。


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