ジャクボーの納戸


 ついに、ここまで来てしまいましたね。ここから先は文鳥とは関係のないことしか載ってませんよ。ここはジャクボー(雀坊)、またはユウ・ジャクボー(有雀坊)、「有若亡」(有って亡きがごとし)からくるペンネームを称する人物が好き勝手をし、まったく脈絡なしに突発的に出現する危険なページで、その中身は何ら意味がありません。引き返されることを強くお薦めします。

▼△目次に逃げる△▼表紙まで遁走する▼△


10、正統コロッケ論

 何でコロッケの話しをしようと思ったのか。確かテレビを見ていたらビールのコマーシャルで「私はひそかにここのコロッケが世界一だと思う」とか何とかいって、女が男を連れて肉屋だか総菜屋だかでコロッケを買い、男が歩きながらそれをつまんで食べるコマーシャルを見ながら、「ふざけんなタコ!」と思ったことに端を発している。

 まずあんな行儀の悪い食べ方を得意げに実行しているのが腹立たしい。コロッケなどというものは庶民のしけた食べ物には違いないが、そのようなしょうもない物を大事に食べるから庶民なのだ。肉屋の妙に軟らかいへぼコロッケを、大切に抱えて、キャベツの千切りとともに家で『ブルドックソース 』の『中濃』をかけて食さねばならない。そこに食パンやコッペパンなどがあったら、それで適当に包んでかぶりつくのが無上の幸福というものだ。バカづら下げて公道を歩きながらソースもかけずに手でつまんで食べるなど、行儀知らずの外道行為といわざるを得ない。
 当然、我輩なども肉屋で当時40円くらいだったコロッケを友達と何個か買って、それを外でつまんで食べたりしたこともないではないが、それは小学生の時の話し、まさにガキだった。そんな幼少時の経験のない奴に限って
「私って庶民的」などと勘違いした行動をとるんだ、まったくもってブツブツブツ…。

 といった、およそ通常どうでもいい事で妙に腹が立っていたところ、さらに追い討ちがあった。ニュース番組でコロッケが流行っていると報道されていたのだ。渋谷だか原宿といったせせこましいところに集う小僧と小娘たちが、コロッケをベターと地べたに尻をついて道端で食べている。何でもコロッケの屋台がチェーン店として展開しており、いろいろ奇抜な内容を作り出し、それが受けているらしい。
 まあ、ガキは馬鹿でもある程度仕方がないので、地べたでエサを食うぐらいの事をとやかく言うつもりはない。あの甘ったるいにおいだけでも気色悪いクレープなどより、食生活ボロボロの彼らにはよほど気が利いた食べ物だと思う。しかしあくまで
コロッケの正統(と勝手に決め付けた)からすれば、邪道だ。第一こう言う食べ方ではソースをつけることが出来ない。などと考えていたら、良くしたもので、パン粉に味がついているのでソース不用だそうだ。まあ、ジャリガキの栄養フードとしてはそれでも良いだろう。我輩は寛大なのだ
 続いて紹介されたのは「デパチカ」(デパート地下街)という、さらにおぞましくせせこましいネズミの巣のような場所で売られているコロッケ。
 
「十分味はついておりますので、おソースはおつけ頂かない方が宜しいかと思います」
 などと店員のおばちゃんは言っている。妙に丁寧なのが気色悪い。しかしまあ、デパートで買い物して喜んでいる女性というのは、流行を追っているつもりでいる物を知らないおっちょこちょいが多いから、これも勝手にするが良い。
我輩は我慢するぞ!
 ところがさらに高級料亭とかのコロッケが紹介される。深刻顔の料理人いわく、
 
「素材を大切にしてますから、ソースをかけると味が死んでしまいますね」
 もはや勘弁ならない!!完全に怒った。庶民の食い物だといって懐かしがっているくせに、高級料亭のへなちょこが生意気づらに作ったものに何の意味があるのか。素材を大切にするなら、はじめからコロッケ何て出来るものか。ジャガイモを練りつぶして油で揚げるなど、
素材の良し悪しなど無視できるための料理法なのだ。もったいぶりたければ一品料理を小皿にちまちま盛り付けていれば良いのだ。コロッケなど能書き聞いて食えるものか。

 あんなもの、町の肉屋でもでっち上げられるくらいに簡単な料理だ。有り難がって、買おうというのが根本的に間違っている。 有志よ、自分の好みで作れ!下町出身者は、肉屋のコロッケなどにノスタルジーを感じるのは背骨が曲がってからで間に合うぞ!
 ・・・というわけで、「男子厨房に立たず」というのは
「厨房では役立たず」の不器用人間の負け惜しみと考える我輩は、自分好みのコロッケを自作せねばならないのである。

材料 ひき肉(合びき)300g、ジャガイモ中8個、タマネギ大1個、「ベジタブル」(トウモロコシとグリーンピースとニンジンの入っている冷凍食品)4分の1袋(80g以下)、パン粉、玉子1個
 実に陳腐で素敵だ。間違っても「ひき肉は和牛でないと」とか「ジャガイモは静岡産だ」、とかいったわかりもしないくせに意味のないこだわりは持たない。煮ていためてこね回すので素材などにこだわっても意味はない。ただジャガイモは細長いメークイーンでは粘りがなく後で整形しづらくなるので、男爵イモ系の丸いものを選ぶ。
 合びき肉などスーパーで100g100円である。ジャガイモは一個50円と高く見積もっても400円、玉ねぎ50円、玉子30円。「ベジタブル」はメーカーなど何でも良いので一袋250円といったところ。パン粉は生パン粉などとしゃらくさいものを使うと、かえって扱いが面倒なので『7』印の特売されているので十分、安っぽくてコロッケ向きである。これは100円といったところ。揚げる油を除けば、すべてで
1000円と少しの投資
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@ なべの中に水を入れ、ジャガイモをそのまま放りこんでフタをして煮る。

A 煮ている間に玉ねぎをみじん切りに刻み、ひき肉といためる。塩コショウを強めに振る(小さじ1ずつくらい)。玉ねぎが透き通ってきたら「ベジタブル」をぞんざいに加えてさらにいためる。玉ねぎが透き通るまでずっと強火。
 あまりいためすぎると玉ねぎの存在感がなくなってしまうので、適当なところでやめねばならない。

B いためた具材はそのまま放っておき、ジャガイモの煮えるのを待つ。串が通るほど軟らかくなるまで煮る(実際は菜箸を突き刺して具合を見る)。まあ、20分はかかるだろう。煮えたらザルにあげてさめるのを待つ。
 さめたら皮をむきボールの中でつぶす。丁寧な人はこしたりしたがるだろうが、
当然そんなことはしない。粒粒にジャガイモが残ったりしていてこそチープでまっとうなコロッケなのだ。大きいフォークなどで適当につぶすのが良い。

C つぶしたら、いためた具材を叩き込んで練り合わせる。しゃもじか何かで適当に混ぜる。大雑把な方が良い。
 この時水分が多くベチャベチャだったりしたら、黙ってボールに入れたままふたをせずに冷蔵庫に放りこみ、数時間から半日
存在を忘れる。水分は飛ぶ。臭いが移るとか何とかいった細かな事は、わかりっこないので考えない。
 これで中身は完成。

D 次に整形。
 チープなジャガイモコロッケは
小判型と決まっているので、片手で適当な量を取り、粘土遊びの要領で形作っていく。ピッタリそろった形にする必要はどこにもないが、しっかり握って作らないと後で形が崩れる。素材の味などすでに死んだも同然なので、遠慮せずにギュウギュウやっても差し支えない。
 形になった時点で、しばらく冷蔵庫に入れておいたほうが余分な水分が飛んで良いが、面倒な場合は早速衣つけ作業に移る。

E 衣といえば、小麦粉をまぶして溶き卵にくぐらせてからパン粉をつけるのが筋と言うものだが、そうはしない。これだと衣が柔らかすぎて個人的な嗜好には合わないのだ。そこで小麦粉に水と玉子をボールにいれて、トロトロになるくらいにかき混ぜる。広島風のお好み焼きの生地のようなものだ。これに件のコロッケの原型を漬けてから、たれない内に素早くパン粉をまぶすと言うより、からめつける。これにより嫌がうえにも頑丈な衣を身にまとうコロッケになる。自分の好みの世界に正統もヘチマもないのだ。

 完成。普通の肉屋のコロッケより大きいものが18個出来た。こんなに食べれないので、一つずつラップにくるんで冷凍庫に入れてしまう。一ヶ月は平気だろう。解凍してから揚げれば割れて油はねするような事はほとんどない。とにかくキツネ色になるまで十分揚げたい。
 当然キャベツの千切りは絶対必要。しかも
糸のように細く切らねばならない。その幅2ミリ以下。出来ない不器用の仁は機械の力を借りるか、切ってある物を買ってくるのみだ。短冊切りのものを『千切り』とは呼ばないので注意。これを脇に従えて鎮座するコロッケ。 『ブルドックソース』の『中濃』をかけて熱い内に食したい。

お終い


次回予告 日本人は占いがお好き


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