2008/10
弐-1 選び方を教えて!
【結論】
健康そうで運命を感じたヒナだろ!
【解説】
お店で普通に買うか、一般の飼い主さんから譲ってもらうかですが、値段や対応は様々です。
例えばお店でのヒナの値段にしても、表のようにお店のよって2、3倍の開きがあります。
品種 | 桜文鳥ヒナ | 白文鳥ヒナ | シナモンヒナ | シルバーヒナ |
価格帯 | 1000〜3000円 | 1200〜4000円 | 3000〜6000円 | 4000〜8000円 |
文鳥には血統書がありませんから、高ければ「良血」と言うわけでも、安ければ不健康というわけでもありません。基準がないため、仕入れ先の違いやお店の裁量で値段が変わっているだけ
なのです。しかし、差があると言っても1万円以下で、10年近く生きる生き物の値段としては、おそろしく安い買い物のはずです。したがって、あまり値段の高低
にこだわらずに、健康かどうかを基準に選ぶのが無難と言えるでしょう。
ペットショップによっては、文鳥のヒナにとっては生命に関わるトリコモナスなどの感染症が蔓延していることがあるので、十分に注意する必要があります。
一般の飼い主さん、もしくは繁殖家(ブリーダー)さんから「もらう」のもいろいろで、「もらう」と言っても有償の場合もあります。
里親募集の掲示板で「転売防止のため」有償とされることがありますが、これは無料で譲られたものを売って収入を得ようとする心無い人が、ごく
稀に存在するためです。市場価格が
高い品種ほど、「譲る」際の価格も高くなってしまい、収入がある以上は課税対象にまではならなくとも、売る側が「動物愛護法」に抵触する危険が生じてしまいます(動物取扱業登録が必要。登録していない場合は無償を基本にされた方が良いでしょう)。無償でも有償でも、簡単には考えず、メールなどでお互いに十分に連絡を取り合って決めた方が良いでしょう。
なお、生き物の宅配は原則禁止の運送業者が多く、可能な場合も死着(運搬の途中で死んでしまう)のリスクがあるので、「商品」と考えることのない一般飼い主さんが、梱包して地方に送り出すのは難しいと思われます。小さく安価な生き物ですが、人間の子供を迎え入れるような気持ちで、直接受け取りに行くのが基本になると思います。
【感想】 無償でもらうにしても、手ぶらでいける人は日本人では珍しい。500円玉1枚で買えるくらいのお菓子などを持っていくのは礼儀だ ろうな。
飼い主である人間がヒナに餌を与え、人間を親鳥と思わせることにより、文鳥は手乗りになります。したがって、しっかり親鳥を確認出来るようになった後からでは、人間と親鳥の違いがわかってしまうのでうまくいきません。
文鳥のヒナは孵化11日目くらいから目が開き始めるので、孵化10日目からの餌づけを薦める飼育本があります。しかし、これは完全な間違いです。
初めて目で見たものを親と認識することを、動物行動学ではインプリンティング(刷り込み)と呼びますが、文鳥の場合少しずつ目が開いてきても、はっきり見てそれが何かを認識できているわけではないので、目が開いたからと言ってあわてて親鳥から引き離す必要はまったくありません。そもそも「はじめて見た物を鳥は親と勘違いする」というのは、ステレオタイプな素人考えに過ぎず、科学的な事実ではありません。実際には、刷り込みが起きる時期、「臨界期」とか「感受期」と呼ばれるその時期は、種類によって大きく異なり、それは目が開いた時とは限らないのです。例えば、孵化した時にはすでに目が開いているカモであっても、刷り込みのピークは孵化の13〜16時間後とされ、「あまり早くても、また、あまり遅くなっても効果はない」とされています(共立出版『比較・動物行動学』)。つまり、孵化してすぐのものを親とは認識せず、13〜16時間後に目にしたものを親と認識するわけです。
文鳥の場合は、孵化14〜17日くらいに親鳥から離し、人による餌づけを始めるのが一般的です。つまり、その時期が刷り込みの「感受期」と考えるのが、経験科学としての常識と言えます。従って、それより早すぎても意味がなく、むしろヒナは幼ければ幼いほど消化不良などで体調を崩しやすく、温度管理も餌づけそのものも難しくなるので、出来るだけ避けるべき行為と言えます。本に書かれていることでも、鵜呑みにしてはいけません。
繰り返しますが、手乗りにすることを理由にして、孵化10日目という早期に餌づけをする必要は、経験的にも科学的にも皆無です。視覚がしっかり機能するようになり、文鳥にとっての「感受期」のピークが過ぎる(ピーク時に親鳥を認識してしまうため、徐々に人間を親と刷り込まれなくなっていく)17、18日目の手前から始めるのが無難と言えるでしょう。
【感想】
孵化して3週間くらいして親鳥から引き継ごうとすると、ヒナに不審の目で見られて恐がられますよね。そうなると、餌づけも口を開けてくれずに大変ですよ!
もし兄弟姉妹で孵化日が数日ずれていたら、はじめの子が生まれた18日目(尾羽のツンツントンガリ羽が開く前)を限度にして、取り出すといいですよ!
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孵化15日目、目は眠たげで尾羽は生えていない。 |
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孵化18日目、目はぱっちりと開き、尾に筆毛が生えている。 |
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孵化21日目、しっかりと飼い主を見つめ、尾羽先が開いてきている。 |
『文鳥団地の生活』