文鳥の海外渡航困難化に関して


 ご存知の方も多いかと思いますが、今年(2005年)の9月から、海外から日本に個人のペット動物(文鳥を含む)を持ち込む際には、輸入届けの提出が義務化されることになっています。これによって、文鳥と一緒に海外に渡航しても、簡単に帰国することが出来なくなってしまいます。
 具体的には、日本に持ち込む際に「保管施設において蚊の侵入防止措置がなされていることなどを証明した輸出国政府機関により発行される衛生証明書」が必須となります(※動物検疫所の参照ページ:厚生労働省の参照ページ。この衛生証明は、蚊が入らない施設に21日間暮らしていたことを証明するものでないといけませんから、額面どおりに考えると、持ち込む前の21日間、何らかの施設に隔離が必須と言うことになります。これまでは、到着の際に空港などで視認による簡単な検査で済んでいたのですから、一足飛びの厳格化で、飼い主側も今までとは180度考え方を変える必要があります。

 この改正によって、鳥同伴での海外渡航は不可能となると、私は思います。なぜなら、渡航先が規制のゆるい国であれば、文鳥と一緒に行くのは容易であっても、日本に帰るたびに、21日間の隔離が必要となってしまうからです。まさに、「行きは良い良い帰りは怖い」と言って良いでしょう。

日本から海外に文鳥を持ち出す場合、その持ち出し先の国(「輸入国」)の法律、手続きに従わねばならないので、事前に十分に調べておく必要があります。国によっては、全面持ち込み禁止の場合も、日本のように隔離経過での確認を求めるケースもあると思われます。また、アメリカなどは州によって対応が異なるので、しっかりと事前に調べ、手続きをしておくことが必要です。

 まして、渡航先、文鳥とともに滞在していた国で、帰国の際たまたま鳥インフルエンザが発生していた場合、一時的処置として、日本への全面持ち込み禁止処置に遭遇する可能性もあります。もしそのようになった時は、文鳥を抱えて海外で立ち往生することになりかねません。
 つまり、責任ある飼い主であれば、今後は文鳥の海外持ち出しは不可能なものとして、行動した方が良いのではないかと思います。愛する文鳥と別れるのはつらいことですが、出国の際には、預け先・引き受け先を探し、出先の国で小鳥を飼う場合は、帰国の際の引き受け先をあらかじめ探しておくべきでしょう。

 なお、飛行機にのせること自体は、文鳥にさほど負担にはなりません。普通なら、航空会社所定のペット用のケージに、小さい鳥カゴならそれごと入れることも可能ですし(別料金が必要)、そのペットケージは空調の効いた貨物室に置かれるので安心です日本航空の参照ページ
 問題は検疫行政のさじ加減だけなのですが、これはグローバル化で感染症の上陸が警戒される昨今、厳しくなる一方で、緩和の望みは薄いと考えた方が良いかもしれません。

※航空会社、利用便によって異なるので、事前の確認が必要です。手荷物扱いに出来る可能性もありますが、それを希望する際は、やはり航空会社に確認の上で手続きが必要です。無断でポケットに忍ばせるようなことは、国内便ならまだしも、国際便では入国拒否される可能性があります(下手すると収監されます)。ペットとして手続きせず、一般貨物としての輸送となると、航空機によっては貨物室が低温となる可能性もあるので、文鳥にとって危険ですし、当然この場合も、輸出入にはペットとしての輸送同様に入出国の許可手続きが必要です。許可を受けないと当然密輸ということになってしまいます。

 今回の制度改正(検疫の強化)によって、ペット動物の輸入は極端に制限される事になります。犬猫類も昨年から検疫が大幅に強化されているので、政府の目指すものは、ペット動物の鎖国化と言えるような状態なのです。この政府の方向性については、さまざまな考え方があるでしょうが、海外からの小動物の輸入が野放しに近かった今までの方が、よほど異常に思えるので(問題が起きなかったのが不思議なくらいだ)、「10年遅い!」というのが個人的な感想です(しかし、飼養されている犬猫に対する規制は、いくらなんでも厳しすぎるだろうと思っています)。
 文鳥の飼育者の中には、台湾からの白文鳥ヒナやヨーロッパからのシナモンやシルバーの輸入が、ほとんど困難になるのを心配する方もいるかもしれません。しかし、国産でまかなえるはずなので、問題ないものと思います(もともと国産のみの桜は無関係)。今後新しい品種がヨーロッパなどで作出された場合も、輸入が絶対に不可能となったわけではないので、責任のある方が、しっかりと手続きを経て輸入されれば良いものと思います。ろくに固定もしていないような新品種を、一般の素人がほいほい簡単に買い求めにくくなって、むしろ良いのではないかとさえ思います。
 せいぜい、しっかり、厳格に運用して頂きたいものです(ザル法にならないようにとの嫌味ですよ!)。


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