子どもも大人もお話の世界に入って楽しむ参加型シリーズについて
<おはなしの中に入ってごらん?>

JBBY会報 第96号「2003 INTERNATIONAL CHILDREN'S BOOK DAY」(3003年6月30日発行)に田中裕子が寄せた記事を転載します。

子どもの本の現場から

絵本の樹美術館も今年で9年目となります。
個人美術館にできること、伝えられることを目指す中で、5つの柱を立ててやってまいりました。
その一つは、主に日本の作家の仕事を見ていただきたいこと(ともすれば私たちが日本の文化と歴史の上に寄って立っていることを忘れているために)。
二つ目は都市化の進む現代社会で失われつつある自然から受ける恵みや感性をとり戻せるようにと、ここの風景を背景に自然関係をテーマにした企画を。
そして今回記したいと思っている、来館者自らが参加して楽しむ、参加型の企画が主な柱となります。
その参加型の企画は主に夏休みに行っています。

1999年 “赤ずきんちゃん” と遊びましょ! (グリム童話)
2000年 “ももたろう” になってみようよ!(日本の昔話)
2001年 “したきりすずめ” のお宿はどーこ?(日本の昔話)
2002年 “赤ずきんちゃん” になってみたいな (グリム童話、手直しして再企画)
2003年 ガシャガシャドンドン “さるかに合戦” (日本の昔話)

これらを始める動機になったのは、1998年夏に行った「杉山亮おもちゃ展―なぞなぞ工房の遊びの世界―」でした。
大人も子どもも一人一人の創意工夫で良質の笑いと遊びに皆が夢中になっている光景にワクワクしたのです。
年々バーチャルな世界に浸っていく中で、子どもたちが自らが考え、体験し、楽しむことはできないだろうか?と。
色々の方法があるでしょうが、私の場合は、子どもの本の現場に長らく関わってきたため、まず誰にも親しまれてきた昔話の世界からはじめようと思いました。
が、国内外に前例はなく、お手本もヒントもありません。
正に0(ゼロ)からの創意工夫からはじまりました。

ではどのように構成していったかを “赤ずきんちゃん” で記してみますと、
場面は大小の4場面に分け、まず登場人物の衣装を大中小と壁やテーブルに並べました。

ここで来館者はいそいそと、うれしそうに、または照れながら一人(一匹)を選び、第2場面のドイツの森に入っていきます。

色々の道草の材料を見つけていきますが、ここで男の子や大人達が早々と狼になって現れ出たりしています。

3場面目はおばあさんの家。ここで、かの有名なおばあさん(狼)と赤ずきんのやりとりなどがあって、狩人に石を詰め込まれた狼さんなど、思い思いにお話を終わらせていきます。

4場面目は、国内外の赤ずきんの絵本などの資料を揃えておくのですが、実演にはまりこんだ大人と子どもは、年代物のどんなに貴重な資料でも、殆ど目に留めてくれません。

赤ずきんになりきって幸せそうな女の子、暴れまわる幼児から大人までの狼くんたち、女学生に戻ったみたいと喜んでいる大学生や中年グループなど、自ら参加することに、これほど満足げな光景を見ている内に、来年も作らなくては!ということになっていき5年目に入った、という次第なのです。
正に来館者の満足しきった笑顔に後押しされての続行でした。

ここまでやってこれたのは、案、制作者に野口光世さんがいらしたからです。
20年余にわたって障害者や子どもに布の絵本や布のおもちゃを200種余発案し、製作されてきた、ぐるーぷもこもこの創立者で、おもちゃコンサルタントの小林るつ子さん、杉山亮さんも高く評価されています。
子どもを知り尽くし、ダイナミック且つ細心な仕上げ、デザイン力、落ち着いた色彩感が秀逸です。
何よりも布素材の温かい感触が人の心を和ませるのでしょう。
想像力を羽ばたかせる幼い子。それに寄り添える大人や家族。一方、これらの楽しさを作り出せない親子など、様々な姿が今年も始まります。

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