2007年3月17日(土)
10:30-12:00の公演は、恥ずかしながら参加者少数。とほほ。
自分の動員力の足りなさを腹の底から思い知る。
第二部のトークでは、参加者とじっくりおしゃべりができ、密度は濃かった。
とはいえ、徳島県の大切な公金を無駄にさせてしまった気がして、恐縮。
昨夜、だらしなく飲んだバチが当たったかな・・・。
16:15 再び現世への別れを決意して、JALのシートベルトを締める。
非常口、エアマスク、ライフジャケットの位置を指差し確認。
余裕を装いポケットの通販誌をめくるが、どうしたことか足の貧乏ゆすりが止まらない。
17:23 着陸態勢。瞼の筋肉がつりそうなほど、強くきつく目を閉じて家族の幸せを祈る。
17:25 なにもなかったように、晴れ晴れとした気分で羽田の地上に降り立つ。
しかし。これからは、どこであろうと、いくらかかろうと線路で行こうと固く決意。
毎回のことなんだけど。
2007年3月16日(金)
10時 『あまいね、しょっぱいよ』のふくだじゅんこ氏、デザイナーの大野隆介氏と渋谷でミーティング。次作『ふわふわ、ぽかぽか』のレイアウト確認。
今回は、ふわふわ感を出すために、温かさと弾力性を表紙デザインに注入してもらった。
平面の印刷物にできることは、まだまだ可能性に満ちている。まだまだチャレンジできる楽しい世界なのだ。
「うん。このセンでいきましょう!これがベストのデザイン案だね」
社に一旦戻り、荷物を整えて羽田へ。
17日の徳島県主催のシンポに単独公演のため、現地に前日入りするのだ。
16:55 徳島行きのJALに。
3/13に高知空港で火花を散らしながら胴体着陸したボンバル機の映像をどうしても思い出してしまう。
飛行機に乗るたびに、今度こそ一巻の終わりだ、という不安が今回は特に強い。
18:15 徳島空港着。今回も生き延びた。しかし、間違いなく飛行機は僕の寿命を縮めている。
19時すぎ、同時開催のシンポジストのみなさんと会食。
僕は単独なので、打ち合わせ不要で、のん兵衛モード突入。
他のみなさんは、明日の段取り確認に余念がない。
「ごくろうさま」と小さくつぶやく。
22:00 お開き。僕は飲み足りず、コンビニで買出し後、ホテルで単独二次会。
25:00 窓を全開にして就寝。ホテルは息苦しいので苦手だ。
2007年3月15日(木)
18時半より、銀座教文館にて、絵本の勉強会。
今日は、僕が発表する番なので、遅刻は出来なかった。
テーマは、「『さんびきのやぎのがらがらどん』は、なぜミリオンセラーになったのか。」
1965年の発売以来215万部を売ったマーシャ・ブラウンの作品研究だ。
前日、区内の図書館を自転車で走り回り、類書をかき集め、どうにか発表に間に合わせた。
怖いトロルの存在と、それを木っ端微塵に粉砕するカタルシスが、大人ではなく、子どもたちの心に強烈なインパクトを与え続けているのでは?というのが発表の主旨。
大人、特に母親サイドから、この絵本は残酷表現が含まれているので、子どもにはよろしくないという意見があるらしい。
こうした考え方によって、この15年ほどの間に昔話は去勢され、誰もが納得できるようなありきたりで自己完結的なお話しに作り変えられてきた。
「こぶとりじいさん」は、こぶの有無、つまり外見で人間の善悪を決めつけてはいけない、という博愛主義によって潰された。
「白雪姫」は、鏡が答える世界一の美女がブロンドの白人であることが、フェミニストの攻撃対象になった。
「ノートルダムのせむし男」の話は、身体差別を理由にタイトルが捻じ曲げられた。
『ちびくろさんぼ』は、黒人差別と搾取肯定の槍玉にあがり血祭りにされた。
「舌きり雀」も残酷。「一寸法師」も身体差別。
「うらしま」にいたっては家父長制の悪習との理由で。
だけど、何百年何千年も語り継がれてきた昔話には、その着想、コンセプト、設定、プロットそして話しの進め方や設計の中に、時代を超えて通用する、生き残るだけの理由があるのだ。
「くまのジャッキー」や「ペネロペ」や、いもとようこの絵本のような毒もトゲもない予定調和に満ちた一過性の流行ものとは土俵が違うのだ。
それに。
議論を続けるためには、作品を改変し、あるいは消去するのではなく、万人の目に触れることができる場に残しておくことが大切なのではないだろうか。
作品の評価は、誰か特定の個人がするものではなく、黙ってても時代年月がやってくれるはずなのだ。
『がらがらどん』が生き残っているのは、怖い怖いと言いながらも「もう一回読んで!」を繰り返した子どもたちに支えられてきたことに他ならない。
この件は、そのうち詳しく書きたい。
2007年3月13日(火)
昨夜、おやすみ前の絵本に、アイクが「カーズ」のキャラ本を引っ張り出してきたものだから、一悶着。
「アイク、こーゆーのは、自分で読んだらどう?」
「ドウシテ ナノヨ〜」
「父さん、苦手なんだよ。こーゆー本」
「ヨンデ〜。チュッチュ シテアゲルカラ」
「いや、やっぱりヤダ。違う絵本を選びなさい」
「ジャア、ママト ネル〜」
「ふん、そうか。じゃあ、ママに頼みなさい」
「トーサンノ イジワル〜。モウ アソンデ アゲナイカラ ネ」
「・・・」
偏屈なのだろうか。
子どもには申し訳ないが、とにかく嫌いなのだ。
ディズニー的なるものが。
キャラ商品先行型の脂ぎっててあざとい商法が。
翻訳者もデザイナーも編集者名も表記されないような無責任な本が。
ディズニーランドも、存在は否定しないけど、僕は金輪際行かないことに決めている。
以前、カミサンとコータに騙されて、一回だけ行ってしまったのだ。
並ぶことにカネを払う神経が僕には理解できなかった。
白黒のでかいネズミがオーバーアクションで近寄ってくるのも、正直言って怖かった。
あそこに行くということで、スイッチを押したみたいに「楽しい!」と言わなきゃならない風土も。
父親は、車の運転係と並び係とカメラ係とお財布役を笑顔でこなさないといけないらしい。
第一、 テレビのお笑い番組と同じで、楽しいことを人任せ、テレビ任せにしちゃまずいと思うのだ。
もちろん、反論も多いはずだ。
「いいじゃないの。そんな屁理屈抜きで楽しめるんだから」
うん。でも多数派の「楽しい」を押し付けられるのだけは、やっぱりゴメンだ。
「それは、アナタが心の中で思っていればいいことで、わざわざ人前で言わなくてもいいでしょ? 嫌われるわよ」と妻にはいつも叱られてるのだが、性懲りもなく、ここで書いてしまった。
夜は、神楽坂のここでパパ’S絵本プロジェクト・ジャンボリーの運営会議。女性二人に囲まれ、いい気になってミーティングそっちのけで、おかわり連呼。
帰りは3人で腕を組みながら、坂を降りたのだった。
2007年3月10日(土)
今日は、神奈川県橋本市の私立「星の子保育園」でのお話し会。
9時半に京王線橋本駅で、安藤パパ、西村パパと待ち合わせ。
西村パハは、ウクレレ、安藤パパは、ギター、僕はカフォン持参。
初対面で僕らの職業を当てられる人は、まずいないだろうなぁ。
おっ、今日はヒロシもいるぞ。丸刈り頭も、だいぶ堂に入ってきて、少年らしい。
「ヒロシ〜、今日は邪魔しないでくれよ〜」
「星の子保育園」は、園庭も広く、施設内もフローリングを基調にした明るくて伸び伸びとした開放的な雰囲気だった。
お話し会のきっかけを作ってくれたのは、元保母&元ベースボールマガジン社旧姓大江さん。この保育園に通う一歳児のママでもある。
彼女とは、安藤パパを通じて知り合い、ジャンボリーでも酒を酌み交わした仲。
「来年は、結婚して、子どもを連れて参加したいです」なんて言ってたのが、現実になったね。

参加者は、園児が20人ぐらい、外部から1〜3歳ぐらいの子ども連れファミリーが15組ほど。
お父さんの参加者は、4人だった。
まずは西村パパのウクレレソングから。
「かっぱ」
「かにさん」
「いるか」

プログラムとしては、
「ねえ、どれがいい?」僕
「わごむはどこまでのびるのかしら」安藤パパ
「うんちっち」僕
詩集「金のストロー」から数曲。西村パパ
「おんぶはこりごり」安藤パパ
「メチャクサ!」僕
3人で演奏したのは、
「キリンさん」
「がらがらどん」
「あかちゃんにないしょでおしえてあげましょう」
毎日顔を合わせている園児たちの反応は、遠慮もない仲だからこその屈託なく明るいものだった。
この後、サプライズなイベントが。
園の子どもたちと一緒にお昼の園食をいただくことになったのだ。
献立は、春雨とキクラゲ、挽肉の炒め物、コールスローみたいなもの、汁物、ごはん。
思っていたより、味もしっかりしてて旨かった。
パパ’Sのメンバーは、班ごとに分かれて食事。僕の班は、女の子一人に男三人。
「田中パパ、大きくなったら、なにになりたい?」
おっ、さっそく質問攻撃かぁ。第一、その質問は・・・。
「・・・大きくなったら、か。う〜ん、保育園の園長先生になりたいな」
「アノネ、ボクネ、ペンキヤサンニ ナリタイ」
「おお、いいねえ。ペンキ塗るの、おじさんも大好きだぜ」
「ネーネー、アタシハネ、ブリキヤ ガ イイ」
「ブリキ屋? 珍しいね、それ。君んちのパパは、ブリキ屋さんなのかい?」
「チガウ、チガウ!ブリキュヤ ダヨ」
「だから、ブリキ屋さんだろ?」
「・・・ブリキュア」
「えっ? あっ、そうか。プリキュア、のことね。がはははは」
いいなぁ。こんなランチなら毎日でも飽きないな。
ランチビールがついていれば、言うことなしだ。
「ところで、君たちのパパはどんなお仕事してるのかな?」
「ボクノパパハ、ペンキヤサン、ダヨ」
「そうか、それで、ペンキ屋さんになりたいんだね」
「ボクハ、パパ、イナインダヨ」
「・・・そうか。おじさんもパパ、いないんだぜ。一緒だな」
「アタシノウチ、パパガ カワッタンダヨ」
おっと。またしてもクセ球か。それもバット手前で落ちる変化球だ。
いろんな家庭の形があるわけだね。
両親がオリジナルのまま揃っているからといって、幸せとは限らない。
親の苦労を見ながら育った子どもは、理想の家庭像がしっかりしているし、思いやりが深い場合が多いんだ。世の中をよく観察して、強く生きておくれ、と胸の中でつぶやく。
13時半 園児用の小さすぎる椅子で、お尻が痛くなったし、ぼちぼち引き上げよう。
駅まで送ってもらって、解散。
ヒロシは案の定、お話し会の最中、破壊工作に余念がなかった。
でも、こういういたずらな時期もあるのだ。
なにしろパパが、大のいたずら好きなんだから。
「じゃあね〜、お疲れさま。次は岩国遠征だね」
2007年3月4日(日)
昨夜は、コータと深夜までこの DVD。
コータは、途中で船をこぎ始めたので、先に寝てもらった。
カミサンと4歳児がいないと、どうもだらしなくなるけれど、たまにはいいよね。
白波のロック×4。27時半、就寝。
07時00分起床。
コータを叩き起こし(言葉では起きなかったので、文字通り、叩きました)、朝ごはん。
朝食は、ご飯をチンして、納豆と白菜の漬物、しらす干し、昨夜の残りのなめこ汁。
今日は、西東京市中央図書館でお話し会の日。
カフォンを担いで、8時出発。コータは8時30分出発でサッカーの練習へ。
「今晩、アイクとママが帰ってくるから、寄り道すんなよ」
「父さんもね」
「こら、言い返すなよ」
「ちっ」
「旨い晩飯作ってやるから、さ」
「あいよ」くそ〜、愛想のないやつだぜ。
10時 お話し会スタート。
今回は、安藤パパ、金柿パパ、そして僕の3人組。
図書館の担当は岡安さん、八藤後さん。二人とも明るくてチャーミングな女性だった。
会が始まる前から、金柿パパは、『やさいのおなか』で子どもたちとコミュニケート。
これをしておくと、子どもたちのリラックス度合いが全然違うんだよね。
読んだ絵本は、
『うしろにいるのだあれ』金柿パパ
『きょだいなきょだいな』安藤パパ
『うんちっち』僕
『おまえ、うまそうだな』金柿パパ
『わごむはどこまでのびるのかしら』安藤パパ
『なにをたべたかわかる?』 僕
『おおきくなるっていうことは』金柿パパ
新ネタ2冊。今日もとっても元気で明るいレスポンスを受け取れた。
岡安さん、八藤後さん、お招きありがとうございました。
参加者から、こんな感想もいただけた。
「読み聞かせとおはなし会との違いを知れたこと。3人のパパの読み方は、予想していたよりも上手でなかったことで親近感を覚えました。エプロンはしなくていいと思います。ジジ'S絵本プロジェクトを目指して皆々ご活躍下さい。」
ギクッ。エプロンつけてオカマみたいだったかな…。
とはいえ、僕らは読み聞かせのプロじゃなくて、子どもと生きた会話を交わすのが好きな、ただのオッサンなのだ。
真剣に言い訳をするけれど、読み方が下手クソだと、「ああ、こんな読みかたでいいんだ」とパパやママたちに安心してもらえる。
第一、 隙がたくさんないと、読んでいる最中に子どもたちが口を開いてくれない。
ツッコミを入れてくれない。笑ってくれない。
静粛なムードの絵本読みは、どうにも気まずいんだよなぁ。
16時半 帰宅。
米を4合研いで水切り。途中で買ったカブに昆布と柚子を押して浅漬け。二重チャックの付いたビニール袋が役に立つ。味噌汁は、カブの葉っぱと油揚げ。
17時過ぎ カミサンから品川で新幹線を降りた、とのメール。よし、今から1時間後の帰宅だな。
鳥のもも肉をぶつ切りにして、タレに漬けておく。
タレは、ニンニク醤油(特売品の醤油を瓶に入れて皮をむいたニンニクを漬け込んだもの)に、白胡椒、老酒、牡蠣油、卵などに片栗粉をまぶして、コテコテした状態にしてから揚げると油が汚れないし、香り高くカリッと仕上がるのだ。
唐揚げは、そこらの店で食うよりも僕に任せてほしい。
「ただいま〜。ママはまだ?」コータ帰宅。
「もうすぐだよ。風呂を洗って、沸かしてくれ」
「あいよ」
19時 サッシ戸がドンドン鳴る。
「トーサン、アケテ、アケテ。」
「だれだ〜。ウチの玄関をがたごとさせるのは〜」
「アイクニ キマッテルデショ、ネ〜ハヤク〜」
カミサンとアイク帰宅。
「あれ、荷物が少ないね」
「宅配頼んじゃった。生きてるお荷物がいるから…」
「ん、予想以上にアイクは元気だな。アイク、やけど、見せてみろ」
「コレヨ〜、コレコレ」
うひゃ〜、これはひどいじゃないか。
右手首付近は、皮がよじれて剥がれ落ちそうだ。
左は、手首から手の平がつるっとただれている。
「これは、お手上げだなぁ。下手な治療してると跡が残るから、皮膚科に通わないと」
本人がケロッとしているのが救い。
この日から、毎日皮膚科通い。
なぜか、アイクは病院では人気の的。
お爺ちゃんの院長先生と娘さん(たぶん)の若先生が2人がかりで治療してくれるという贅沢待遇に。
2007年3月3日(土)
「父さん、起きてよ!今日、スタメンなんだからさ」
「む〜」6時半起床。
チーズトーストと、ハッシュドポテトの朝食。
コータはサッカーの試合のため、7時出発。
僕も7時半出発して、08:00新宿駅で西村パパと待ち合わせ。
今日は二人で、上尾市立かわらぶき保育所でお話会の日だ。
新聞記者で、この保育所の父母会長でもある萩原ママが今日の依頼者。
9時 東大宮駅で、役員のママの車に乗り込む。
保育所に入ると、すでに子どもたちが楽しそうに騒いでいる。ママやパパたちも勝手知ったる仲なんだろうね、みんな朗らかでテキパキしていた。
同じく役員の西川パパにも再会。園のパパママたちは日ごろの仕事モードの顔と違って、伸び伸びしている感じがするなぁ。
09:35 お話会スタート。
ホールにピアノがあったので、西村さんは本領発揮のチャンス。
最初からプロの表情で歌からスタート。
「でておいで」
「いるか」
「かっぱ」
『ことばあそびうた』などから3曲。
僕が読んだのは、
『ねえ、どれがいい?』
『うんちっち』
『つきよのかいじゅう』

子どもたちのこの笑顔を見てしまうと、『うんちっち』がやめられなくなっちゃうんだよなぁ。
いつも出かける前は、今日こそは違う絵本にチャレンジするぞ〜、と新ネタの絵本をカバンに詰め込むんだけど、結局こうなっちゃうんだ。
前半は、大騒ぎしすぎてしまったので。

後半は、西村パパが、Jazzyなナンバーや、しっとりした曲をプレゼント。初めての曲だとカフォンで調子を合わせるのに汗をかくよ。叩いている自分に聞こえるより響いているみたいだから、、あまりいい加減をしづらい。
とはいっても、温和な西村パパが全てプロのテクでカバーしてくれるから安心。
ラストはお約束の「がらがらどん」で盛り上げてお開きに。
今回も、ランチのビールがやたらに旨かった。
毎回子どもたちの放射熱を浴びているせいか、汗もかくし、咽喉も渇く。
お話し会後のビールがまずくなったら、僕は脱退するしかない。
16:30 帰宅。先に帰宅していた泥だらけのコータを連れて、銭湯へ。
19:20 夕飯は、たこ刺し、白菜漬け、冷奴、とろろ、なめこ汁。
汁もの以外は、切るだけのイージークッキングだけど、実はこれが田中家の好物オンパレードなのだ。コータはてんこ盛りご飯×3。なめこ汁×2。
銭湯後のビールは格別だ。
「父さん、CCRって知ってる?」
「おおっ!クリーデンスクリアウォーターリバイバルじゃないか。何で知ってるんだ?」
「それそれ。聞いてみたいんだけど、ウチにある?」
「ベスト盤ならあるけど。だから、なんで知ってんだよ?」
「あれだよ。『20世紀少年』だよ」
「な〜んだぁ。びっくりしたぜ」
「T.レックスの『20センチュリーボーイ』も聞きたいんだけどな」
「おお。あれはカッコいいぜ。ギターのエッジがギンギンに立っててさ。
『エレクトリック・ウォリアーズ』っていう名盤ならあるけど、その曲が入ってるアルバムはなんだったっけ…」
「ところで。アイクは、火傷、大丈夫かなぁ」
「だから、『20センチュリーボーイ』は、ウチにあるわけ?」
「ない。おまえ、アイクの心配しろよ。二度の火傷なんだぞ、まったく」
2007年3月2日(金)
7時15分起床。昨夜これとこれで夜更かしして、大寝坊。
アイクとカミサンがいないと、どうもルーズになってしまうなぁ。
「コータ、昼飯は学食で頼むわ」
「いいよ〜。じゃあ、500円ちょうだい」
「う〜む、仕方ないな」
会社は終日内勤。
最近、返品了解の電話が増えた。
グランまま社は、書店に対して買い切り条件なので、こちらが了解しない限り返品は出来ない。
しかし。
本来、どんな商売だって、売ると決めて仕入れた商品は、何としてでも売るしかないのだ。
売れなかったからといって返品できるのは本の業界だけで、これは商売とはいえない。
とりあえず取次店に納品すれば、納品額の7割近い現金が入ってくる。
そんな商習慣が、見せかけの売上確保のためのしょうもない本の量産を支えてしまうのだ。
立ち止まると資金ショートするから、会社存続のために作り続けるしかないわけだ。
そんな自転車操業のリングに一度でもハマッたら、脱出不可能。
だけど、そんな虚構の構造が日本の出版界の真の姿なのだ。
とにかく。そうならないよう、ゆっくりでもいいから、納得できる絵本を作りたい。
11月に発売予定の新作は、2年越しで取り組んでいる自信作。
2500年以上も昔から伝承されてきたイソップの世界を、見開きページの展開を活かした絵本として制作中。再話は、詩人で作家の木坂涼さん、絵は降矢ななさん。
手前味噌承知で言うけれど、イソップのスタンダードになる素晴らしい絵本になるはず。
グランまま社は、1年に1冊の新刊が出るか出ないか、といった超スローな絵本出版を続けてきたが、このペースは今後も変えず、ゆっくりじっくりとやっていく。
なにしろ、絵本というのは、親から子へ、子から子へと世代を超えて初めて成り立つ継承物だと信じているから。
夕方、カミサンからメール。
東大寺のお水取り観光中、アイクが火傷を負ったとのこと。
すぐに医者に連れて行ったが両手に二度の火傷という診断。
切り傷擦り傷なんてのはどうでもいいけど、火傷は始末が悪い。
境内のダルマストーブに手を付いてしまったらしい。
状況がよく分からなかったので、カミサンの携帯に電話。
「大丈夫なの? 本人は。跡は残りそう?医者はなんて言ってる?」
「だいたい、こういうことはメールじゃなくて、すぐに電話してよ、頼むからさ。」
声が自然に大きくなる。ま、しかしアイクがそんなに泣いてないなら一安心。
これは4日後の左手の写真。虐待のサイトもあるらしいが、これは皮膚科の待合室の写真みたいで、かなり痛々しい。
僕は、1歳の時に魔法瓶の熱湯を左手に浴びて、大火傷を負った。
今もしっかりと傷跡が残っているので、火傷だけは子どもにさせたくないと思っていたのに。
とにかく、毎日お医者さんに通って、上手に治療して貰うしかない。
熱湯の火傷は皮膚が溶けるから跡に残るが、ストーブなど熱いもので火傷した場合は比較的きれいに治る、というお医者さんの言葉を信じて。
子育て中の方、どうぞ気をつけてくださいね。
19時半 コータようやく帰宅。
「遅いじゃないか」
「・・・」
「電話できなかったのか?」
「・・・」
「7時が門限!、遅れる時は電話、分かったか?」
晩飯は、もやしの韓国風浅漬け、牛肉のバター焼き、わかめの味噌汁、厚揚げ焼き。
久々にコータとゆっくり90分間おしゃべりしつつ僕はビール×3、浦霞を冷やで3杯。
しかし、家に女性がいないと、どうもガサツでいかんなぁ。
2007年3月1日(木)
今日から日曜日までの3泊4日間、カミサンとアイクは、義母と共に奈良〜大阪旅行へ。
僕とコータは、ヤロウだけのお留守番だ。
アイクには、昨夜絵本のまとめ読み。
『ワニのライル、どうぶつえんをぬけだす』
『さんびきのこぶた』
『へんなどうぶつ みつけたよ』
『かようびのよる』
ライルとこぶたが長い絵本なので、途中意識を失いそうになったが、そのたびにアイクに「トウサン、ソレカラ?」と揺り起こされる。う〜これは拷問に近い。
読み終わるまで、決して寝ない奴なのだ。
4冊読み終わった後も、ダメモトで「モウイッコ、ヨンデ」と毎回5回ぐらいはリクエストしてくる。
6時50分 起床。お弁当は、ブタ挽肉とネギ、生姜を豆板醤と甜麺醤でごま油で炒めた肉味噌、昨夜漬けた胡瓜漬、ゆで卵、竹輪など。
肉味噌は冷めるとブタの油が白く固まってしつこく感じるはずなのでお弁当に入れる時は、赤味が多い部分を使い、ごま油も香り付け程度にしておく。
お弁当作りで大切なのは、手早く作ることではなく、6時間後にふたを開けて食べる時にいい感じになっているか、つまり冷めても旨いかどうか、ということ。
この季節、書店の料理実用書コーナーは、新入学シーズンを反映して、お弁当レシピフェアが多い。海苔やグリーンピースを使って可愛い盛付けをした写真満載のムックを、ついパラパラすることもあるけど、どうも現実離れしている気がしてならない。
それでも、この本は飾り気がなくて好感度高かった。
共働きの家庭では、ピカチューの顔に盛り付けた凝った弁当なんか作れるわけない。
弁当作りは、忙しい朝の15分以内に、朝食の支度と並行して手際よくこなさないとならないし、男の子は、カバンを投げたり振り回したりするから、弁当は盛り付けた原形を保つことなんてできっこない。
だから盛り付けは、隣合わせるおかずの味や匂いが混ざることを想定しないといけない。
例えば、唐揚の隣はブロッコリーとか卵料理ならオッケーだけど、野沢菜とか胡瓜の酢漬けはダメ。
沢庵漬は、肉料理と匂いが混ざると、蓋を開けた瞬間に周囲にヤバイ香りをばらまくことになる。
バランや銀紙のカップを使っても、あまり解決にならないんだよね。
ま、長年の経験というか、残ったおかずの残骸を見て、色々とノウハウがたまったよ。
午前中は、会社でくみっちりと編集会議。
午後、図書館流通センターに行って、帰宅は18時半。
コータはすでに帰宅していた。
「ママとアイクは、奈良できっと旨いもんを食ってるからさ、今晩は外食するか?二人分だけの夕飯作るの、面倒臭いしさ」
「いいね〜。高速の入り口のほうにあるお寿司屋さんに行こうよ、父さん」
「ばか。調子に乗るな。あそこは高いんだぞ、意外と」
「じゃあ、トンカツ屋は?」
「う〜む。脂っぽいのは今日はヤだな」
「・・・なんだよ。じゃ、天狗でいいよ」
「おお、近くていいね。決まりだな」
ということで、ナショナルチェーンの天狗に行き、コータはカツ煮定食ライス大盛、僕は手羽先の唐揚やら大根サラダを肴に生ビール×2、レモンサワー×2。帰り途中、ツタヤに寄って、お互いに立ち読み。
帰宅後、コータは期末テストの勉強(してるフリ)。
僕は、『フィーヴァー・ドリーム』を読み始め。
この作家のこれは、表題作が『新アウター・リミッツ』で映像化されてたっけ。小説も映画も一度見たら忘れられない、かなりの秀作。
さて、吸血鬼テーマのゴシックホラーをどう料理してくれるのか。
このテーマでは、これが無茶苦茶怖かった。
小野不由美のこれは、スティーブン・キング原作の『Salem's Lot』へのオマージュであることを冒頭で表明している。
『フィーヴァー・ドリーム』の祟りじゃないけど、翌日、アイクが奈良で大変なことになることに、僕もカミサンもまだ知る由もない・・・。
2007年2月18日(日)
6時起床。夜明けからの豪雨で、家の雨漏りを総点検。
なんとか持ちこたえた様子。
ボロ家は、色々気を使うけれど、マンションに比べて補修が楽なのがいい。
7時 出発。今日は昨日に引き続きソロでお話会&講演の日。
雨脚が強い。こういう日にこそ、この靴の出番。
品川に出て、掛川までのこだまに乗る。目的地は浜松大学のトコハホール。
キオスクで『プレジデントファミリー』を購入。
うへっ。「お宅の父親力」特集だってさ。
「ダメパパ改造7日間」「セレブ妻の常識」という見出しもある。
ひどい内容だった。
これをすれば「いい親」、これをしないのは「ダメな親」…そういう短絡は、「ディズニーランド連れて行けば、ガールフレンドは喜ぶ。家族には幸せな思い出になる」って信じ込んでいるのと全く同じ感覚というか、ひどい勘違い。
どうしてここまで「イマドキの親」という仮想相手に特集が組めるんだろう。
読み捨てだからって、無責任すぎるよなぁ。
教育産業の広告が取れるから成り立つのだろうけれど、ね。
ま、一過性の流行だろうから、あまり目くじら立てるのも無駄か、とも思いつつ、マスコミはろくすっぽ調べずにこういうガセネタを鵜呑みにして「今、パパの育児が大事です」とかいって社会現象として捉えてしまうからバツが悪いんだよ。
家庭や家族関係ってのは、雑誌やテレビ見て改革できるような見せかけの甘っちょろいもんじゃないと思うんだよ。
感電してガイコツが見えちゃうくらいに、腹の底から思い知らないと、何も変えることなんてできないんじゃないかな。
10:30 掛川着。あれ、こっちは青空じゃん。
バスみたいな天竜浜名湖鉄道に乗り換え。
茶畑の中をゆっくりと揺られて、気分はもう、気ままな一人旅。
11:50 掛川から21駅目の「浜松大学前」で下車。
あちゃ〜、キオスクどころか、自販機もない無人駅。
畑の向こうに小さく見える建物が目的地らしい。
到着後、「浜松子育てネットワークぴっぴ」の理事長、原田さんにご挨拶。国立女性教育会館の山川氏とも久々のご挨拶。
おっ、三重県教委の石井さんも来てくれてる。
13:00 お話し会スタート。ホールなので、子どもたちには舞台前に出てきてもらい、床座り。
『これなーんだ』『うんちっち』『つきよのかいじゅう』『おつきさまって どんなあじ?』の4冊を40分間楽しみ、その後は講演。
講演時間が40分程で短かったので、ちょっとまとまりがつかなかったかな・・・。
終了後は、浜松まで車で送ってもらい、ビールを2本買って「こだま」に乗車。
主催者からは名物「うなぎパイ」をお土産に戴いた。
成分表を見たら、これ、本当に鰻エキスが入ってるんだね。
「夜のお菓子」という名コピーも、しっかり健在。
僕が土産に買ったのは、納豆の佃煮「濱納豆」と貝類の佃煮盛合わせ。
ビール2本は、砂漠にしょんべんする如く物足りず、缶チューハイにチェンジ。
22時 ゴキゲンモードで帰宅。
2007年2月17日(土)
今日は、荒川区男女平等センター「アクト21」にて、ソロのお話し会とグループトーク。
都民のくせに都営荒川線に初めて乗車。途中三味線屋さんがあったりして、ちんちん電車の車窓から目が離せない。
できればアイクみたいに靴を脱いでシートに上がり、外を眺めていたい。
荒川区では、父子だけの子育てセミナーイベントは今回が始めての試みとのこと。
推進者は、荒川区の永田正代さん。チャーミングなママだったなぁ。
こうした取組みは、行政の中で行動力のあるキーマンがいないと実施できないんだよね。
参加者は、パパと子ども10組ほど。
このくらいの人数だと、参加者全員がおしゃべりできるから、座談会としては内容が濃くなるはず。
前半は、僕のお話会。
『これなーんだ』『ねえ、どれがいい?』『うんちっち』の3本立て。
子どもたちが少ない分、ゆっくりと一人一人に話しかけることができた。
その後、「じゃがいも共同保育所」理事の藤田さん、その保育所の父兄の幸田パパと共にフリートーク。
娘が恋人、と笑顔で自慢するパパ、僕以上に毎日の絵本時間を大切にしている様子の張り切りパパなど、なかなかやるじゃないの、というパパが多かった。
少人数で、ママチェックが入らないと、意外とパパたちも饒舌になるんだよね。
20代後半〜30代前半のパパに比べ、第一子が40過ぎてから、というパパは、職場でのポジションや人生経験の差なのか、緩さというか余裕が生まれて、育児にいい具合に力が抜けているなぁ、と感じた。
お開き後は、「じゃがいも共同保育所」を見学に。
園児、父母、保育士さんたちが家族みたいな一体感を自然に培っている気がした。
こういうムードの保育園、理想なんだよなぁ。
狭くて少人数だからこその密度は、家族だけでは得られないものを補ってくれるのだ。
子どもは伸び伸び育てたい、というのは、家や保育園の面積ではなく、たくさんの人と触れ合い、ぶつかり合い、肌で感じる実感の濃度と頻度なんじゃないかな。
インド留学中、カルカッタのネパール人スラムに、6畳1間で8人の家族と6匹の猫が寝起きする家に3泊させてもらったことがある。
確かに寝るときは、身動きできないくらい狭くてマイッたが、この家族は僕が今まで会ったどんな家族よりもお互いを思いやり、支えあっていた。
プライバシーもなんにもないじゃないか、と思うでしょ?
不思議なことに、5人の子どもたちは皆、自己主張も強く個がしっかりと息づいていた。
お母さんは、貧しいのにいつもにこにこして息子たちの自慢話をしていた。
お父さんは戦争に行ったきり帰ってこない。
だから、22歳の長男、ディパック君が家族を支えていた。
僕にはバカ話ばかりして陽気な奴だったけど、痩せぎすの働き者だった。
むろん、テレビなんてない。
拾ってきた何日も前の新聞を回し読みし、長男が妹や弟に文字や読み方を教えていた。
猫から蚤を戴いたのには参ったけど、その家にはカルカッタに行くたびにお世話になったっけ。23年も前の話だけどね。
2007年2月15日(木)
午後は、戸田公園駅付近のこどものとも社本社で商談。
18時 フリーライターの太田氏と「串げん」で飲み。
太田氏は、ここで連載中。
育児のこと、ファザリングジャパンのことなど、大いに飲みつつ歓談。
育児のこと、家庭のこと、みんなそれぞれ色んなテーマや問題点を抱えて生きているんだよね。大事なのは、義務感や責任じゃなくて、どれだけ自然体で素の自分を見せていけるか、ってことのような気がする。
「また、一献しようね」と約束しあって解散。
僕は駅を降りて、「とり八」が赤提灯を閉まっていなかったので、うっかり暖簾をくぐってしまった。芋焼酎のお湯割りと茄子焼きで30分。
12時半 帰宅。
2007年2月12日(月)
7時起床。
コータとアイクは、朝食後すぐにキックボード遊び。
晴れた朝、子どもの笑いあう声が外から風に乗って聞こえてくるというのが、実に嬉しい。
当たり前のことのはずなのに、東京暮らしの身には、これほどのゼイタクはない。
仕事があるから、我慢して東京暮らしをしているが、これは大人の都合なんだよね。
子どもが大事、なんて色々なところで吹聴しまくっている割に、まだまだ育児については有言無実であることを強く自戒。
僕自身のためでもあるけれど、もっともっと家族と過ごす時間を増やさなくっちゃ、な。
午後は、網戸のネット交換、窓枠の補修、そして扉などへの油注しなど家の保全作業。
網戸の補修は得意なのだ。
18時 伊豆高原出発。途中小田原の西湘バイパス付近で渋滞に遭ったがスムーズに鎌倉経由して23時半、世田谷着。アイクはお菓子喰いの後、意味不明の歌をメドレーで歌い続け、パタッと睡眠。
最近、コータが助手席でおしゃべりの相手をしてくれるので、ドライブが楽しい。
2007年2月11日(日)
07:00 コータ起床。休みの日だけは早起きなヤツだ。
「父さん、父さん。温泉浴びてくるわ」
「何だよ、起こすなよ〜。ん、俺も次に入るから、お湯、出しっぱなしにしといてくれ」
「わかった」
09:00 朝食は、ガーリックトースト、チーズとトマトのオムレツ、レタス。僕は黒ラベル350ml×1。
10:30 コータとアイクを連れて大川漁港へ散歩。
廃屋になったホテルを覗いたり、海に石投げをしたり。
「父さん、あのホテル、かなりヤバくない?」
「ヤバくない?って変な語尾上げしないでくれよ」
「あそこ、マジで幽霊がいそうだよ」
「・・・根性出して、覗いてきたらどうだい?」
「いいの?」
「よかぁないよ。廃屋だって、勝手に入ったら不法進入なんだぞ」
「ちょっと、見てくるわ」
「ふふ、知らないぞ〜。ガラスに気をつけろよ」
ホテルは、割られた窓の内側が口を開けたみたいに暗く、昼前なのに、なぜか付近の明るさを拒否するみたいな重々しく荒んだ雰囲気なのだ。
破れたカーテンや、海向きのビニールの日除けが潮風で気まぐれにざわつく。
絶好のロケーションにも関わらず撤退したオーナーの無念さが、燻り続けているようだ。
コータは動物的直感で何かを察したのか、結局半開きの正面ドアに顔だけ突っ込んで、すぐに走って帰ってきた。
「なんか、やな感じがしたよ。やっぱ、怖いわ。」
「ほら、あの4階の海側の窓。いま、誰かが横切ったぜ」
「うわ〜ッ! やめてよ父さん。シャレになんないよ」
「わははは。やっぱり怖いわけ? こら、アイク、そのガラス、触るとケガするぞ」
12:30 昼食は釜揚げうどん。久々に食うと旨い。
でも、うどんは四国に限る。関東のくにゃくにゃした腰抜けのうどんとは全く別文化だ。
うどん食いに行きたいなぁ、四国。以前高松に出張した時は朝昼晩3食、うどんをすすったっけ。
夕飯は、地元大川の魚屋さん自家製の鯵干物がメインデッシュ。
酒の肴は、スモークチキン2本、カマンベールチーズ、キャベツの浅漬け、冷奴。
ロング缶4本、安葡萄酒ほぼ一本。一人で飲んでいると酒が効きやすい。
ということで、アイクの絵本は、カミサンにバトンタッチ。
2007年2月10日(土)
今日は、パパ‘S絵本プロジェクト86回目のお話し会アット茅ヶ崎市。
09:30 セレナで出発。
10:30 湘南の海を左に見つつ会場近辺に。早く着き過ぎたのでデニーズで、ペンネのランチ。
12:30 茅ヶ崎駅で安藤パパ、西村パパに合流。
「おっ、ヒロシ、久しぶりだな」短髪バリカン頭のヒロシに一声。
園で頭ジラミが流行った関係で、こうなったとか。
でもグッと少年らしくなってカッコいいぞ。
13:10 公民館着 安藤パパと西村パパは早速リハーサル、というか、ウェルカム・ソング。
LET IT BE、LUCY IN THE SKY WITH DIAMOND、そしてHERE COMES THE SUNの3曲。
13:35 絵本ライブスタート。
「おおっ! パパが12人もいるぞ!」
読んだ絵本、歌った歌は、
『ねえ、どれがいい?』田中
『わごむは、どこまで のびるのかしら』安藤
『かっぱ』『いるか』(歌) 西村
『うんちっち』田中
『ボヨンボヨンだいおうのおはなし』安藤
『きりんさん』『船長さん』『がらがらどん』(歌) 西村
15:20 終了。実行委員の田村さんたちとお茶。
16:00 茅ヶ崎駅でお別れ。
僕はその後カミサンの実家がある鎌倉へ。先週に続いて今週末も伊豆高原に行くのだ。
18:30 友だちと遊んでから、そのまま直行してきたコータを藤沢駅でピックアップ。
彼は駅で25分も待たされたはずなのに、文句も言わない。
ゲームしてたんだな、と確信。本読んでる姿のほうがカッコいいんだぞ、コータ!
21:30 伊豆の家、到着。コータ、おにぎりと即席ラーメンをガツガツと平らげる。
23:00 温泉入浴後、アイク就寝。お話し会から直行したため、おやすみ前の絵本はたくさんあるぞ!
『へんなどうぶつ みつけたよ』
『エドワルド』
『つきよのかいじゅう』
『エドワルド』は、途中まではバーニンガムらしい皮肉の暴走が気持ちいいんだけど、オチが平凡。
せっかくなんだから、パトリック・ノーマン・マクヘネシーぐらいのぶっ飛び方をしてほしかった。
もったいないから子どもには読まないけど、『なみにきをつけて、シャーリー』が僕はなにしろ大好き。
彼の特徴なんだけど。左右のページにトーンやタッチで描きわけられた心象の違いを、見開きで同時に見せることで、アンバランス感を見事に調和させている。
『おじいちゃん』では、その作風が最も効果的だな。
バーニンガムは今年で71歳。スタイグぐらいは長生きしてほしい。
グランまま社に余裕があれば・・・ん、それは今晩の夢の中で考えよう。
アイクの横顔を覗くと、グフグフ笑いながら眠りについたのか、口元に白いヨダレ跡を残している。
彼がいったいどれほどデタラメハチャメチャな夢を見ているのか。
どれほどおっかなくて楽しい夢をみているのか、どうしても覗き見してみたい。
たぶん僕の狭量さでは、一瞬で気が狂ってしまうんだろうな、きっと・・・。
2007年2月9日(金)
今日は、千葉県柏市立図書館で『絵本でつちかう、パパの家庭力 〜パパが絵本を読むと、子どもとママの笑顔が増えるよ』と題した単独講演の日。
金曜なので、アイクの送りは久々にカミサンに任せ、通勤ラッシュの小田急線−千代田線−常磐線の直通電車で柏を目指す。
ウォークマンでこれを聞きつつ、文庫はこれを読み始め。
著者の川端裕人氏、実はこの本の時に発売版元にいた関係で知っていたのだが、
体当たりルポの作家という印象が強く、小説は読んでいなかったのだ。
ネットが題材なんだけど、加速的に進化する世界なので、
10年前のこの小説が何を予見し、何を投げかけてくるのか、それを楽しんでみたい。
柏駅で図書館の三浦さんと待ち合わせ、公用車で柏市中央公民館に。
10時 講演スタート。ブックスタート事業の委員の方に混ざって、子連れのパパの姿も。
絵本読みはないので、お話し会の模様をビデオで流しつつ、おしゃべり。
ひゃ〜。アイクの気管支炎を伝染されたのか、トークを始めて10分足らずでハスキーボイスに。
後半の質疑で、「腑に落ちない謎がある絵本って、大事なんですね」と同意の感想をもらえたのは、嬉しかった。
その時は分からなくても、後になって「ああ、あれはこういうことだったのか」と気づくことって、あるよね。
それに気づくってことは、疑問や心に引っかかることを忘れずに抱えて生きてきた、ということになるわけよ。
逆に、自己完結的で、どこにでもありそうな理屈や筋が通ってるお話というのは、飲み込みやすいけど、
心に引っかかるトゲみたいなものがないから、当然すぐに忘れ去られてしまうことになるわけ。
だから、子ども向けだからといって、「これは、子どもには理解できない」「これは、子どもにはむずかしい」と
大人が訳知り顔で決めつけちゃいけないと思うんだ。
絵も同じ。例えば、赤ちゃんには細かい絵は理解できないから、ブルーナみたいな黒のアウトラインと原色だけのシンプルなものを与えておけばいい、という短絡的な発想になる。
ブルーナは先駆的で、色使いもデザインも素晴らしいけど、あれを真似た絵本のやたら多いこと!
描いてて恥ずかしくないのか、編集してて恥ずかしくないのか、と思ってしまう。
赤ちゃんは、ママやパパの細かい表情の変化や声の調子だって、完璧に受け止めることができるんだよ。
単純さを追い求めて、デフォルメしすぎたら、余計に分かりづらくなり、実体からかけ離れていく気がしてならない。
例えば、『ちいさいおうち』は、かわいい動物キャラも出てこないし、
ありきたりの友愛や安っぽいヒューマニズムのモチーフも含まれていない。
あの絵本にあるのは、何十年間という時の流れと都市化が引き換えにした「なにか」だ。
その「なにか」が、子どもの心に残り、居座るからこそ、
世代を超えたロングセラーであり続けられるのだ、と僕は思う。
明るくて可愛くて、楽しくて優しげな絵本を好むのは、
もしかしたら赤ちゃんではなくて、実はママ本人なんじゃないの?
参加者の頷きや笑いに助けられつつ、12時、無事終了。
駅付近の回転する鮨屋で、いわし、あじ、さばのヒカリモノオンリーの速攻ランチ後、会社に戻る。
担当の三浦さん、お招きありがとう。僕のいい加減な講演で始末書を書かされないといいんだけど。
2007年2月4日(日)
7時半 起床 快晴だ。大島や利島がくっきり見える。
すべての布団を南側のベランダに干す。
11時 ドライブに出発。今回はカミサンの希望で、「便所の神様」を参詣するのだ。
うっすらとピンクのつぼみが開きつつある河津桜を横目で追いつつ、河津から天城峠を越え、明徳神社へ。
この神社は、トイレの神様、つまり下半身の健康、要するにシモの問題を解決してくれるとのこと。
順路を巡って、神社の裏手に入ると、うん!あったあった!
男根女陰崇拝の民俗信仰が色濃く残る世界だった。
稲取のどんつく神社もそうだけど、古来のあっけらかんとした風情が僕は好きだ。
インドでも、シヴァ神の象徴は男性のシンボルだった。チベットの神様は常に女神を抱いている男女合体神だ。
子孫の繁栄が農耕地を広げ、家族や村に糧をもたらすことに直結しているわけで、
本来、性は明るくて解放的なことだったのだ。
明治維新と敗戦以来、お行儀のいい見せかけの家族観を鵜呑みにしてしまった僕たち日本人が失ったものは、
大らかな開放性なんじゃないかな。
性を隠そうと躍起になった挙句、僕らは動物であることを忘れようとした。
サカリをケダモノだけの無様な本能だと、思い込むことにした。
そして今、日本人は少子化に悲鳴を上げ始めた。
子育て環境の整備だとか、男性の育児参加とか、ワークライフナントカとか、
行儀のいい理屈はインテリの暇つぶしに見えてしまう。
そんなこと、作ってから考えることで、
転職じゃないんだから、カネや業務負担について生む前に考えるなんて、本末転倒だ。
ことは、単純だと僕は思う。
夫婦が過ごす時間を増やせばいいのだ。
停電の日に妊娠することが多いのは、そういうことでしょ? むふふ。
と、自戒も込めつつ。
この神社の本尊は大黒天だった。
古代の拝火教の神、インドラがルーツで、インド・アーリア語族の移動と共に大陸を渡ったパワフルな神様。
浅草の帝釈天さまもこのインドラがルーツと聞く。
その後、稲取に寄って、「吊るし雛」を見学。
夕方に別荘に戻り、急ぎ帰り支度して、最後の温泉に浸かる。
18時 出発。熱川の「錦」で、鯵のたたき丼を堪能。
てんこ盛りの鯵タタキがそびえ立ち、ビジュアルも、ボリュームも味も120点。
ビールが飲めないのが、拷問のように辛い。
21時半 鎌倉で義母を降ろし、22時半、我が家着。
アイクは、車中ずっと、いびきをかいて快眠。
23時半 全員 眠。運転疲れで目が回ってる。
「カ、カラダが揺れてる〜」
「伊豆から帰るといっつも、そう言うのね〜」とカミサン。
2007年2月3日(土)
6時半 起床
コータは、すでに起き出している。
平日もこうあって欲しいもんだよ、まったく。
7時15分 長男殿は、チーズトーストと、即席のコンソメスープの朝食を取って、サッカーの練習に出発。
「じゃ、行ってくるよ」
「おう。家の鍵持ってるか?」
「持ってるけど、なんで?」
「もしかしたら、父さんたち、伊豆に行くかもしれないから、さ。」
「あ、ずるいなぁ。いっつも僕がいない時に行くんだからなぁ」
「いっつも、って、今回が初めてだろ」
「サッカー合宿の時も行ってたじゃん」
「わかったよ、次は連れてくよ」
「あ、でも昼過ぎに、一度、家に戻るから」
「ほいよ」
僕は、ゆっくりと新聞&コーヒー&J-WAVE。
9時半 アイクとカミサン起床。
「朝食のご用意が整っております、奥さま、お坊ちゃま。
卵は、トマトオムレツでよろしいですか? それとも目玉焼きになさいますか?」
「アイクハ アマイ ジャムノ パン タベル」
10時過ぎ アイクとマシンに乗って皮膚科に。
このシーズン、アイクは肘の内側や腿が痒くなって、掻きむしってしまうのだ。
おまけに、チンチンをいじくるもんだから、雑菌がついて赤くなっちまっている。
僕も経験あり。チンチンってのは、いくつになっても悩みのタネなのだ。
「アイクくん、急に大きくなったね〜」世田谷クリニックの若い方の先生がにっこりと微笑む。
13時 伊豆行きを決意。これから用意して、鎌倉の義母をピックアップして、伊豆着は、夜だな。
昼ごはんは、焼きそば。6人前を一気に作る。
14時 コータ帰宅。焼きそば3人分と、大盛り飯を平らげた。
あまりの食欲に、見てて気持ち悪くなってしまった。
僕もこんなに食べたっけ。
彼は今夜、僕の姉の家にお泊りなので、
着替えやらゲームやらをプーマのエナメルバッグにぱんぱんに詰め込んで、30分後に出発。
15時 車に荷物を積み込んで出発。
鎌倉で義母を乗せ、相鉄ローゼンで食糧を買い込み、いざ伊豆高原へ。
20時 伊豆の共同別荘に到着。
アイクは、久々のニンゲン襲来に慌てる真の住人、カマドウマと大蜘蛛に戦々恐々。
ハイテンションで、家中を走り回っている。
慌しく温泉の掃除、空気の入れ替えを済ませて、食卓で一息。
太巻きと寿司の盛り合わせだけのインスタントな夕食。
それにしても、太巻を節句に食べる習慣なんて、関東生まれの僕は知らないぞ。
どっかの方角を向いて、無言で一気食いするとメデタイのだそうだ。
コンビニが商魂たくましく焚き付けた新習慣であることは、わかっている。
家族の夕飯時に、無言で食え、なんていう習慣は、どうも気に入らない。
が。初めて「恵方巻」なるものを買ってしまった。
だって、スーパーのお寿司コーナーにこれしかなかったから。
クリスマスイヴに売れ残ったケーキみたいにね。
味は、予想通り。
なるほど、無言で一気食いしないと喉を通らないシロモノだった。
今後、死ぬまで買わんぞ。
25時 2回目の温泉を堪能して就寝。
慌てて出動したので、本を忘れた。
活字とアルコールとロックの中毒患者としては、キツい夜だった。
2007年2月2日(金)
6時50分 起床
弁当は、豚生姜焼き、きゅうりの塩もみ、笹かまぼこ。
8時45分 保育園へ。
「オウチニ 帰リタイヨ・・・ウワァ〜ン」
先月入園したばっかりなので、登園時にいつも大泣きのK君、
今朝はかなり悲しそうな泣き声だ。送る側も辛いよね、実際。
こういう時は、泣くなと言っても意味がない。
優しい眼差しで落ち着くまで辛抱強く見守るしかないんだ。
そういえばアイクも入園して1年2ヶ月たったけど、最初の半年は毎朝泣かれた。
何とか引き離して、自転車をこぎ始めても、彼の絶叫が背中を追いかけてきたもんだ。
でも・・・今でも月一回は激泣きする。
「アイク、K君と遊んであげるんだぞ」
「ウン、ワカッテル」
「アノネ、トウサン。Kクン、デンシャガ スゴ〜ク スキナンダヨ」
「そぉかぁ。じゃあレールで一緒に遊べるね」
「ウン」
「よし。今日もた〜くさん遊べよ」
14時 曙橋のギャラリーカフェにグループ展見学。
この店はスズキコージさんと親睦が深そうな気配。
イラストレーションやデザインの現場でキャリアのある人たちが出展していたので、身構えずに作品鑑賞できた。
何人かは、メモを取らせてもらったよ。
こういう作家さんのタマゴは、自分で探さないと、いい出会いが生まれないからね。
会社への帰途中、昨年末にオープンした絵本専門店『ことり文庫』へ寄り道。
オーナーの川崎ふみ(旧姓高野)さんは、渋谷阪急ブックファーストの絵本売場で経験を積んだ昔からの知り合い。
小田急線「梅が丘」駅下車、ネタがでかくて安い(らしい)ことで有名な『美登利寿司』の長蛇の列を斜めに見つつ、
歩いて3分ほどの静かなロケーションにお店はある。
外から何度も眺めてからお店に入る。
「こんちは〜、高野さん、久しぶり〜」
狭いけど、だからこそ落ち着く感じ、わかるかな。
そういうムードの絵本屋さんだ。
高野さんが好きなんだろうな、バーニンガムやスタイグ、長さんの絵本もばっちり並んでいる。
細長い店内の奥は、一段高くなっていて、ここでお話し会ができるような団欒スペースになっていた。
今のところ、地元のママさんが覗きに来る程度で、まだまだ認知されていない様子だったけど、
町の本屋さんが新刊の絵本しか売らなくなった今、こういう専門店がしっかり根付いて欲しいと思った。
本というのは、面白いもんで、並べ方が違うだけで、新たに発見したような感慨がある。
本屋さんというのは、並べ方を売るパフォーマーなんだよな、と頷く。
アイクへのおみやげに、馬場のぼるのこれとこれを2冊購入。
ちなみに、こぐま社のサイトは作家さんのコメントが充実してて、とっても楽しいんだよ。
僕用には、これ。
3冊とも、確かにウチの本棚にあったんだけど、探しても探しても見つからないため、再度購入。
もしかして、カミサンがブックオフに売って、ヘソクッてんじゃないだろうな・・・いや、ありえない。
んなことしたら、血の雨が降ることになるからね。
21時30分 風呂で、
「アイク、今日はウヒアハだぞ」 コータは、10年前、この絵本にやたらとハマッたのだ。
「ウヒャ〜ハッテ ナアニ?」
「わはははは。ウヒアハはウヒアハだよ。ウヒアハの絵本だよ」
「ナ〜ニ、ソレ。コワイコト シナイデネ」
22時20分
「ウヒアハ!ウヒアハ・・・」 つぶやきつつアイク就寝。
今宵もナンセンスな夢を見ておくれ。
でも、隣で寝てる俺を蹴るんじゃないぞ。
2007年1月27日
今日は、三鷹市子ども家庭支援センター「すくすくひろば」で85回目のお話し会。
10時45分、三鷹のスタバで安藤パパ、金柿パパに合流。西村パパはチャリで会場に直接来てくれるとのこと。
11時 すくすくひろば着 日当たりの良いコージーな施設だ。
「今日はお招きありがとうございます。」所長の小川さんにご挨拶。
安藤パパと西村パパは、早速ギターとウクレレのチューニング。
「0-3歳児対象だから、今回も巻き込みは苦労しそうだね」
「僕は、これでいきますよ」金柿パパがカバンから取り出したのは『ぴょーん』
うんうん。金柿パパ、こういう絵本のムード作り、うまいよね。
11時半 スタート。
わぉ、30組ぐらいの親子の内、パパが20人もいる!すごいね、三鷹は。
パパの参加率は、今までの85回の公演中、ナンバーワンでしょ、これは。
おまけに、パパたち、とっても清々しい顔してるし。
子どもたちは、0-2歳児が中心。どの子を見ながら絵本読もうかな…
一番手は、金柿パパの『ぴょーん』
パパズのお話し会では、初登場かな。
ページをめくる動作にあわせて、絵本も「ぴょーん」。
子どもたちは、不思議そうに金柿パパの表情を見ている。
こういう動きのある絵本から導入すると、
心よりも先に体がほぐれるから、とっても効果的だね。
それにしても、金柿パパ、ホントにいいムードを作るよなぁ。
二番手の僕が選んだのは『これなーんだ?』
「首の長いセーター、誰のセーターかな?」
「キリン!キリン〜」
前列の3歳ぐらいのおかっぱの子が叫ぶ。
うんうん。一人ムードメーカーがいると進めやすいんだよ。
「ん? でも、ろくろっ首のセーターかもしれないよね」
「ろくろっ首って、お化け、みんな知ってる?」
・・・・沈黙。ありゃ、滑っちまったぜ。
この絵本の作家さんの新刊『かんかんかん』も楽しいんだよ。
次はこれをためしてみようかな。
あるいは、『ぶたたぬききつねねこ』もいいんだよなぁ。
お次は、安藤パパの『きょだいなきょだいな』
安藤パパは、相手が0-2歳児でも、自分が読みたい絵本を読んじゃうツワモノなのだ。
「あったとさ〜、あったとさ」の節回しは、彼の十八番だね。
「でんわ、でんわ〜」
「もも〜」
おっ、3歳児くらいの子たちが食いついてるぞ。
この絵本、実際に原画を見たことがあるんだけど、すべて切り絵のコラージュなんだ。すごく細かい作業をしたんだね。降矢さんも、制作途中に「大変なことを始めてしまった…」と後悔したとか。
でも、絵の完成度、テキストのテンポ、構成、どれをとっても素晴らしい作品だと思う。

さぁ次は、お待ちかね。西村パパの「ウクレレわらべ歌」だ。
『なわとび』『かっぱ』など、元気で動きの大きい歌を披露。
会場は、一気にほんわかムードになったよ。
歌やリズムの力ってすごいね。
西村パパの温かいパーソナリティがみんなに伝わっていく様子が
手に取るようにわかる。
せっかくパパさんたちの参加が多いので、ちょっと読み過ぎだけど、これをやっちゃうことにした。
若いパパとママが多いので、それなりにウケた。
親が笑うと、子どもたちも笑顔になるから不思議というか、よく考えれば当然というか。
お次は、金柿パパがエンディング用に気に入っている『おつきさまって、どんなあじ?』
登場する動物にあわせて、声色を変える読み方は、優しげで時に力強い。
「お月さまは、みんなが いちばん好きなもののあじがしました」
「みんなだったら、どんなあじがいい?」
これが、この絵本の一番の魅力。
「僕はね・・・、特上カルビだな」と金柿パパ。
そうそう。ラーメンだっていいし、アワビの姿煮だっていいのだ。
僕だったら・・・熱々の春巻きとビールのセットがいいな。
エンディングのライブは、すっかり定番になった『がらがらどん』
会場のパパママたちも大ノリ。
この歌、本気で「みんなのうた」に売り込みたいんだけど、いいツテはないかなぁ。
ラストは、西村パパの『あかちゃんに ないしょで おしえてあげましょ』
これは、何度聞いても泣ける。
お話し会が終わって、送り出しは、『ルーシー・インザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンド』
歌詞は日本語の西村パパ・バージョン。
そして、安藤パパのfavorite number 『ヘイ・ジュード』。

金柿パパの背中も、ほんわかしてたよ。
この子、かわいかったなぁ。
参加者の中に、以前仕事で知り合った旧姓Sさん夫妻&生後8ヶ月のkidも。
現在育児休業中とのこと。
そうそう。あかちゃんは可能な限り長い間、自分で育てたほうがいいに決まってる。
こんなに可愛い時期を、保育園に独り占めさせちゃあ、もったいないからね。
う〜ん。やっぱりもう一人欲しいなぁ、とため息。
2007年1月24日
今日は、カミサンが友だちと晩御飯の約束をしているため、18時15分に保育園にお迎え。
「おならジジー!」元気なF君がむしゃぶりついてくる。
「ジジーじゃないってのに〜。こいつめ〜」捕まえて逆さづりにする。
「おならジジー!」
「あっ、おまえもか」ってことで、4〜5人を逆さづりに。
「アイク モ ヤッテ〜」
サミットストアが今日は5倍ポイントなので、途中買い物に寄る。
『極生』ロング缶2本(給料日前は、表向き倹約ナノヨ)、鳥もも、豆腐など。
アイクは、お菓子コーナーで、熱心に市場調査中。
頼むから「コレカッテ〜」だけはやめてくれよ、と念じる。
19時 すんなりと帰宅。コータは既にご帰宅。テレビを見ている。
米をといで、ざるにあげている間に鳥の唐揚げ準備とキャベツの千切り開始。
19時45分 男3人の夕食。
唐揚げは、明日の弁当分含め、大量に揚げた。キャベツの千切りもボールいっぱい刻んだ。
あとは、きゅうりに「梅びしお」をつけてバリバリ食うのだ。
コータもアイクも生キュウリと生カブが大好きで、急いで参戦しないと取り分がなくなってしまう。
揚げたての唐揚げは、ビールに最高に合う。
「こら、ばっか食べ禁止!」
ばっか食べ、とは、同じもの「ばっか」独り占めして食べ進むこと。
男ばっかりの食卓は、常にバトルモードなので、円満な食卓作りには、ルールが必要なのだ。
21時 アイクと風呂に。
「たい焼き、たい焼き、たい焼き…焼きたい〜っ!」へんしんお風呂だぞ。
「からす、からす、からす…巣からカラス〜ッ!」う〜、ちょっと無理があるかな。
何のことだかわからない人は、この絵本を読んでね。
22時 ベッドイン
今夜も『へっこきあねさ』
2冊目は『ぜつぼうの濁点』
ちょっとアイクには、むずかしいんじゃないの、とは思ったが、彼が持ってくる本を読むことに決めているのだ。それにアイクは、読み終わるまで決して寝ないのだ。
ここに出てくる「おせわ」という登場人物がなかなか秀逸。
「おせわ」は、大きいのだ。つまり大きなお世話なのだ。
23時 カミサン帰宅。
寒くて布団から出れず、寝床から「お帰り〜!」と一声。
「唐揚げ、お弁当用にも使うから、全部食べちゃだめだぞ〜」
2007年1月23日
20時 夕飯後、コタツで夕刊を読もうとしたら、アイクが「コレ、ヨンデ〜」と、昨夜の『へっこきあねさ』を差し出す。
22時 再び『へっこきあねさ』。昨夜から3回目だ。
もう一冊は『アンガスとあひる』
これもアイクのお気に入り絵本。あひるの鳴き声に、布団の中で足をバタバタさせて喜ぶ姿は、とにかく愛らしい。もっともっとたくさん読んであげよう、と胸に誓う。
そうそう。
僕とカミサンは今、訳者の木坂涼さん曰く『ねこせん』、つまり『ねこのせんちょう』にハマッている。
この絵本には、まんまとダマされたよ。
中盤までは、ふてぶてしそうなネコの怠惰な一日を追った展開と思いきや、禁じ手すれすれの大どんでん返しが待っているのだ。
ネコの秘密が鮮やかに暴かれるのだ。
物憂げで怠惰な昼寝は、この秘密のためだったのか、と。
初めて読んだ時は、仰け反ってしまったよ。
で、カミサンにすぐに「ねえ、これ読んでみてよ」とリコメンド。
「ぎゃはははは!」カミサンも大笑い。
「木坂さんて、猫好きでしょ?」とカミサン。
「うん、かなりふてぶてしそうなヤツ一匹と暮らしてるみたいだぜ」
2007年1月22日
就寝前の絵本
『へっこきあねさ』
アイクは、「だっぼ〜ん、す〜。ぼっが〜ん、す〜」と繰り返すたびに身をよじって反応。
この分だと、今週一杯、この絵本を読まされそうだ。
22時 アイク 眠
僕は、これ
2007年1月21日(日)
9時 起床
朝ご飯は、カリカリに焼いたパンと、ベーコン。
オムレツの中味はカミサン特製のトマトソースを仕込んでみた。
「めし、できたぞ〜。早く起きろ〜」
11時過ぎ 昨夜の約束通り、プールへアイクと出発。世田谷通りを20分かけて、マシンをこぐ。
「よ〜し。へんしん自転車で行くぞ〜。しょうゆッしょうゆッしょうゆッ、優勝〜」
「プール、イクンダヨネ?」
「いや、ユニクロにパンツを買いに行くんだよ」
「トウサン ウソツキ」
「じゃなかった。ドーナツ屋さんにポンデリングを買いに行くんだったかな」
「プール イクンデショ。アイク、シッテルンダカラ」
「ふはは。そうか、知っておるのか。では、いたしかたない。参るぞ。かっぱかっぱかっぱかっ」
11時半 プール到着
Wao!空いてるじゃん。
まずは、アイクを騙して背の立たない25メートルプールへ引きずり込む。
「アイク、水の中では口を閉じるんだよ。足が下に着いたら蹴って上がるんだよ」
そう言って手を離した。
案の定、脅えたアイクは、筋肉の緊張のために水を少々飲む結果に。
「トウサン、テヲ ハナサナイデ〜。アイク モウ デル」
「まぁ、いいから。もう一回!」
「ギャ〜、ヤメテ〜」
「まぁ、いいから」
「ギャ〜、モウヤダァ。ギャ〜」
「こら、口を閉じないと、水を飲んじゃうぞ」
「ギャ〜、トジナイ〜。トウサン バカ〜」
プールが空いてたので、アイクの絶叫が場内でガンガン響く。
こっちも慣れてるので、どんなに目立ってもお構いなし。
「じゃ、今度はビート板を掴んで、足はウルトラマンみたいに後ろで揃える」
「ギャ〜、モウ、デル〜。トウサン、キライ」
こんな問答を約20分間。
中途半端に水から上げると、二度と入らなくなるので、こういうやり方の場合は根気が必要。
アイクが水を飲んでゲーゲー言い始めたので、試練はこれでおしまい。
しっかりと両手で抱き上げて、幼児用の深度30センチのプールへ。
態度豹変のアイク。
「トウサン、アオイノ、モッテクルネ」いそいそとビート板を取りに行く。
幼児プールでは、70分間笑いっぱなし。
潜ったり飛び込んだり、ビート板に乗ったり、それはそれは楽しそうに遊んでいた。
「アイク、顔を水につけたら、両足で壁を蹴ってごらん」
そうそう。うまいじゃないか。
「今度は、水の中で目を開けてごらん。父さんの足が見えるか」
「サッキカラ ミテルヨ」
よし。なかなか筋が良さそうだ。
水に慣れるまでは、ゴーグルはかえって悪影響なのだ。
浮力体や、ライフジャケットも、安全とは限らない。
特にライフジャケットは、引っくり返った時に自力で反転できないと溺れ死ぬわけで、むやみに幼児に着けさせるのは、かえって危ないんじゃないかな、と僕は思っている。
腰に着ける浮力体も、危ないだけで、泳力の向上には向かない。
途中何度も「帰るぞ」と言ったけど「マダ アソブ〜」
こちとらパンツ一丁で突っ立ってるだけなんだから、寒いっつうの。
僕も隣の50メートルプールでひと泳ぎしたいけど、なにしろ人間ってのは、膝までの深さでも溺れることがあるから目を離すわけにはいかない。
20年間の遠泳コーチの経験上、水の怖さは思い知っているのだ。
引き上げる前に、もう一度25メートルプールへ誘い込む。
今度は大丈夫。力を抜いて僕の手に捕まりながら体を浮かせてみせてくれた。
顔も笑っている。口も閉じている。
さっき、僕のやり方を批判的な眼差しで注目してた監視員のお姉さんが、びっくりしているぞ。
ふふふ。年季が違うんだよ、チミたちとは。
14時 帰宅。
焼きそばとビールの昼食後、アイクと昼寝。
18時 夕飯は、昨夜の続きで豆乳鍋。
鍋つゆが足りないので、豆乳を買ってきて工夫。
味の決め手は、練りゴマと薄口醤油であることを会得。出来合いの鍋つゆより旨いぞ。
ふふふ、年季が違うんだよ。
21時半 一人、銭湯へ。アイクとコータを連れて行きたいが、この寒さで湯冷めされちゃ敵わない。
体を拭かずに脱衣場に入ってきた学生に一喝「こら、拭いてから上がりなさい」
「あ!す、すいません」
うるさいオッサンの歳になっちまったもんだ。
サウナ×5回、水風呂×3回、ジェット風呂×2回で、900グラムの減量。
24時 帰宅
27時 『照柿』やっと読了。ある出会いをきっかけに、無能の秀才警部補と有能な不良工員二人の主人公が過去と現在に見え隠れする自分の虚ろな本性に向き合うのだ。凄まじいぶつかり合いだった。
高村薫って男っぽい硬派、という印象だったけど、この作品は濃厚にベタつく息苦しさが基調をなしていた。他人の男同士というより、兄弟の確執に近い粘度だった。
『リヴィエラを撃て』は始めて読んだ時、大衝撃を受けた。その後も彼女は、男を描き続ける。生き様は「男」だけど、心象世界は女性的であるところが、逆に小説としての充実度を高めているように思える。
日向ぼっこしながら、だらしなく読めるような小説世界じゃないな、とつくづく感心。
2007年1月20日
6時半 起床。コータも公式試合ということで起き出して来た。
足が大きくなったらしくスパイクがだいぶきつい様子。
「今度、学校帰りに祖師ヶ谷大蔵で待ち合わせして、買うか?」
「うん。フル試合出ると、爪がヤバいんだよ」
「ほっとくと、また爪が剥がれちゃうぞ」
「わかってるよ!」
7時 コータ出立
7時半 僕は、みなとみらい駅のランドマークタワーに向かう。
今日は、FM横浜のこの番組に出演するのだ。それも生放送。
早めに出たつもりだったけど、みなとみらい駅構内で迷い、あせってしまった関係で密閉されたスタジオに通された時は、案の定、アガッてしまった。
おっ、小山薫堂さんは、小学高学年らしきお嬢さんを連れてるぞ。
お父さんの仕事場を見学するのって、とってもステキな体験だよね。
9時31分 オン・エア
しゃべっている先から、何を言ってるのか分からなくなる。
パーソナリティの小山薫堂さんと、柳井麻希さんは、二人とも明るくて、いたずらっぽい目で好印象。スタジオも二人の息が合ったアットホームな雰囲気だった。
それなのに、アガッてしまった。大汗かいてしまった。
おまけに、オススメの絵本として、『うんちっち』と『ねえ どれがいい?』2冊しか紹介できなかった。これでは、おバカ絵本の伝道者みたいじゃないか。
軌道修正せねば、と心で焦ったが、15分間というのは想像以上に短かった。
9時45分頃 放送終了。風呂上りの犬みたいにブルブルッとやりたくなったよ。
CM中、スタジオから出てきた薫堂さんと名刺交換&『絵本であそぼ!』の献本。
窓の外に見える横浜港に初雪がちらついている。
10時 喫茶店でコーヒータイム。
さっきの15分間、自分がしゃべったことが思い出せず、もだえ苦しむ。
一言でいえば「…こんなはずじゃなかった」
わはは。この言葉を僕は44年間で何回つぶやいただろう。
で、カミサンに電話。
「前半は、アガッてたわね〜」
「やっぱり、わかった?」
「そりゃあ、わかるわよ。でも、ま、ご苦労さま」
励ましになってないぞ〜、それ。
11時 東横線乗車。すべてを忘れるべく、ウォークマンでハードロックをがんがん鳴らして、ときたまエアドラム。おかげで隣に座ってたオバサマが、席を移ってしまった。かたじけない。
途中カミサンからメール。アイクがしつこいので、上野の近代博物館に行って来る旨。
小雪の降るこんな寒い日に、タイヘンだなぁ。ごめん!明日は僕が面倒見るからな。
13時 下北沢タウンホール着
これから、世田谷区文化財団主催のシネマ&トークなのだ。
上映されたのは、パパの育児休業をテーマにした『ダブルシフト』というスウェーデン映画。
トークは、この本を書いた山田正人氏。
FJの仲間、棒田さん、高祖さん、西村さんも一緒だ。
映画の感想は…
スウェーデンと日本の育児意識、夫婦の愛情表現などにかなりのギャップを感じた。
パパの育児の解決を夫婦のLOVEでまとめた結末も合点がいかなかった。
全てを夫婦愛で解決することには、くすぐったいものの賛成だよ。
でもさ、仕事と家庭という縦軸と、妻と子という横軸を横断する「パパ=自分」の立ち位置を決めないと問題提起にならないんじゃないかな。
で、結局は仕事したい妻と夫のワガママなシーソー関係に振り回される子ども、可哀そうだな、と感じてしまったわけ。
これは日本ではもっと顕著だよね。
地域、世代間交流から自らを断絶したことで、育児モデルを持てなくなった団塊以降の世代、つまり「自分たちさえ良けりゃ、あとは知らんぷり」が普通の夫や妻は、「育児に自分たちをあわせてマネジメントする」ということは思いつかず、「自分たちの都合に育児をあわせる」ことだけだもんね。
その中間というか、歩み寄りのチャレンジの中に新しいモデルが生まれると僕は思ってるんだけど・・・。
16時 そんなことを西村パパと棒田ママと近くの喫茶店『ザック』でおしゃべり。
18時 帰宅
「トウサン〜、ホラ、ホラ〜」
「なんだなんだ?」
「コレ、カッテモラッタンダヨ〜、イイ デショ〜。カシテ アゲナイカラネ」
アイクは、海の生物のミニチュアがアソートになったミュージアムグッズを誇らしげに見せる。
いきなりハイテンションだなぁ。
「博物館、面白かったか?」
「ウン!タクサン ハシッタヨ〜」
「そうかそうか。おっ、なんかいい匂いがしてるぞ」
「晩ご飯は、豆乳鍋よ〜」とカミサン。
「おおっ、旨そうだな。あ、コラ、アイク、ご飯中におもちゃを触らないこと!」
オヤスミ前の絵本は、『ちいさくなった おにいちゃん』と『ジークとまほうのハーモニカ』。
「二冊ともスタイグの絵本じゃないの。すごいね、これ、アイクが選んだの?」
「そうなのよ」とカミサン。
「作家で選ぶとは。おぬし、なかなかのデダレでござるな」とアイクの頭をぺたぺた叩いてやった。
「ヤメテヨ〜、ソンナコト ヤメテヨ〜」
「いいの、いいの。父さんはやってもイイノヨ〜」
2007年1月19日
ここの過去記事を再び転載。
エッセイとして読んで貰えると嬉しいな。
『しんぶん赤旗』?ん?田中って「アカ」だったのか。ってチラッと思った人、今どき頭がカタイよ。だいたい何色ならいいの?
無色透明で自分の意見を表明しないことが日本人的美徳ってこと?
政府批判したら、アカってこと?
僕の場合、そのつど色んな色を選んでいるよ。
好きなこと書かせてくれるのであれば、僕はどの新聞にも書くからね。
ただ、これからの仕事も人生でも、決して付き合いたくない企業や取組みはある。
三菱、トヨタなど、表向きとは裏腹に戦争や紛争危機で儲けている軍需産業。
ウラン処理や安全を未来のツケにして核施設作りに励む電力会社。
弱い人をエサにしている一部の健康産業と一部の教育産業…。
そして、国、というか国体を愛すること、奉仕精神を押しつける全ての取組み。
結婚してるんだから妻を、子どもを愛しなさい、なんて憲法や教育法で縛られたら、どう思う?愛し方を細かく指図されたい?
ね、ナンセンスな話だと思わない?
僕は日本人意識を結構熱く持ってるし、家族と過ごす時間が何よりも好きだ。
でも、好き、という表現方法は僕自身のものであって、
誰かに教わったり、従ったりするものなんかじゃないよ。絶対に。
おっと。クドい話になっちゃったかな…。
■『どうぶつのことば』
スティーブ・ジェンキンズ/作、佐藤見果夢/訳 評論社 1300円
家庭でも学校でも会社でも、僕らは口が発することばと文字に頼りすぎて、感性のアンテナを磨くことを忘れていないだろうか?子どもが言外に発するサインを、僕らは、どれだけ受信し往信できているだろうか?
『どうぶつのことば』を開くと、動物たちの伝達力の豊かさに改めて舌を巻いてしまう。そのことばには、僕らが慣れきってしまった嘘や虚飾などはまったくない。そこには仲間に危険を知らせ、食物のありかを分かち合い、求婚するための、つまり次世代を生み育てるために絶対欠かせないことばだけがあるのだ。
■『ハルばあちゃんの手』
山中恒/文、木下晋/絵 福音館書店 1500円
でも、人間だってまだ捨てたもんじゃない。こんなに美しいことばがあるんだから。
ハルばあちゃんの半生を静かに語り継ぐものは、彼女の器用で美しく力強い手。悲しみにくれた顔を覆い、生活を支え、最愛の伴侶を導くハルの手こそが、こころのことばとなって僕らに伝わり、僕らの胸を熱くさせるのだ。際だった成功もなく、むしろ辛くて味気なく見える人生だけど、それでも「幸せだったよ」とふり返るハル。彼女のことばを裏付けているのは、体裁のいい上っ面のことばではなく、自分の手で受けとめ、包みこんできた実感そのものなんだね。
■『おじいちゃんが おばけになったわけ』
K.F.オーカソン/文、エヴァ・エリクソン/絵、菱木晃子/訳 あすなろ書房 1300円
そう、もうひとつ大事なことばがあるじゃないか。それは、記憶の共有。お互いの失敗談、嬉しかった経験、嫌な思い出を、晩ご飯やお風呂で思い出しあうことが、どれだけ互いの絆を深めることになるか。
お化けになって戻ってきたおじいちゃんが、大好きだった孫の少年と夜な夜な探すものは、この世に残した、「わすれもの」。やがてそれは、たった一つのかけがえのない「ことば」であることに気がつくあたりから、読んでいる声の震えが止まらなくなってしまったよ。
■『おんぶはこりごり』
アンソニー・ブラウン/作、藤本朝巳/訳 平凡社 1500円
でも、言葉が通じないときもあるよね。そんなときは、こんな実力行使も効果があるかもしれない。
何しろ家事に疲れたお母さんが、ある日突然「ブタさんたちの世話はこりごり」と一筆残して姿を消してしまうんだから。
食事、洗濯、掃除をすべてお母さんに押し付けて自分たちはテレビを見たり新聞を読んで、それが当然のことだと思っているお父さんと子どもたちにとって、この絵本は、
決してお母さんには読んでほしくない禁断の書になるはず。逆にお母さんには、大きく頷きすぎて首が痛くなるほどの爽快感をもたらすはずだよ。
【ロングセラー/今週の1冊】
■『魔法のことば』
柚木沙弥郎/絵、金関寿夫/訳 福音館書店 1300円
今回は「ことば」を視点にして絵本を並べてみた。
幼児と交わす微笑みに満ちたことば、難しい思春期の子どもと交わすことば、プロポーズ、そして長年連れ添った夫婦で交わすことば。それぞれの世代やステージこそあれ、僕らは「ことば」に一喜一憂してしまう。振り回されてしまう。
インディアンに伝わる口承詩『魔法のことば』を開くと、ことばには理屈では計り知ることができない領分が厳然とあることに改めて気づかされる。ことばの力を信じたくなる。
ヒトゲノムが解明される時代であっても、ことばが心に及ぼす化学反応だけは、永遠の謎であってほしい。だけど、せめて嘘のことばを見抜く力だけは授かりたいもんだと選挙のたびに思うのは僕だけかな。
【以上、『しんぶん赤旗』2006年7月8日 くらし家庭欄掲載記事を転載】
2007年1月18日
昨夜は、池袋のここで、毎日新聞の旧姓Hママと、彼女に紹介された西川さん、彼の仲間の伊藤さんとお初の飲み会。
伊藤さんは、西川さんと共に焼き芋活動しているパパなんだけど、なんと、10升炊きのmy大釜を自宅に持っているというスゴイというか、リミッターが外れたツワモノパパ。
目にイタズラ坊主の面影が残ってて、好印象だった。
西川さんは、手広い活動の中でしっかりと手応えを得た人特有の、エネルギッシュな目差しのパパだった。僕より若いけど、こうした活動を一人で始めてここまで拡大した彼は、大先輩だと思った。
とにかく最初から打ち解けられて、楽しい一献だった。
焼き芋が焼けるのを待っている間、絵本のお話し会をやったり、オープンエアのもと、楽しいタイアップができそうな予感がする。
キンダーガーテンプロジェクトにも一枚噛んで貰いたい人材だ。
締めに手打ち蕎麦をすすって、散会。いい酒だった。
14時 会社を早退して遅めのランチは、八兆蕎麦の春菊天蕎麦。
今日は、コータの中学の父母会なのだ。
15時半 学校到着。ここは僕の母校なので、来るのが好きだ。
キャンパスで、グランドを走るコータを発見。
10分ほど植え込みからこっそりと盗み見。
あいつ、逞しくなったなあ。
なんだか急に胸が熱くなってきて、「鳥八」で一杯引っかけたくなった。
16時 父母会スタート。
今回は大きな争点はなかったが、話題の最後はケータイとゲームの話に。
コータの学校は生徒による自治を尊重しているので、ゲームもケータイも生徒会で持ち込み可になっている。休み時間にオヤツを食ってもいい、というからオドロキだ。
僕が通ってた頃は、そんなデタラメなルールは例え生徒会でも通過しなかった。
で、3学期になると、ルーズになって、授業中にケータイしたり、ガム噛んだりするタワケが増えるらしい。
手ぬるい!ワシならガツンと一発、と、つい思ってしまうが、中学生の学校生活をあれこれ親が言ったって意味がない。
家でルーズにしてることを、学校でシメてもらおう、なんて都合良過ぎるし…。
でも、先生という存在は、不条理の塊でいいわけで、なんでもにこやかに許してくれる流行のパパみたいな先生ばっかりじゃ、インパクトないんじゃないのかな、とちと思ったよ。
僕のルールは簡単だ。生徒会や先生が決めたルールがあったって、全てに優先するのは、ウチの、つまり田中家のルールである。ということ。
電車内での飲食、ゲームは×、家事勉強を後回しにしたゲーム遊びは×、ということ。
17時半 中座して銀座に急行。
19時 銀座教文館着。しまった30分の遅刻だ。
今晩は、月一度の絵本研究会。今回のテーマは「『ぐりとぐら』は、なぜ売れるのか」だ。
この絵本の元本『たまご』をSさんが音読してくれたんだけど、これがとっても良かった。
「絵なし」で聞いてみたら、キャラクター色がなくなった分、あっけらかんとした幼児世界がふわっと広がったよ。この『たまご』は、ここに収録されている。キャラだけで売れたわけじゃないんだね。お話しそのものが幼稚園児の志向性と嗜好性をがっちり掴んでいるんだね。
更に面白かったのは、作者の中川李枝子さんが、当時大ヒットしていた『ちびくろサンボ』に過剰反応して、「パンケーキなんかより、やっぱカステラでしょ」と対抗心を燃やした、ということ。
舞台裏って、意外と単純なのだ。
だけど。
実は、コータもアイクもこの絵本を読んで欲しい時は、必ずカミサンに頼んでた。
僕は、子どもたちに一回も読んであげたことがないんだなぁ。
20時 勉強会はここに移動。
それにしても、レディースたちの食欲は凄まじい。
40代のオッサンは男として眼中にないらしく、遠慮も慎ましさも存在しない喰い意地丸出しの姿は、一歩引けば爽快感すら感じる。
24時 帰宅
梅酒ロックを片手に、布団をかぶって『照柿』の下巻を読み進む。『罪と罰』をモチーフにしたこの作品、読後、重たい荷物を背負いそうな予感。いや、既に背負ってしまったわ。
25時半 眠
2007年1月14日
9時 男子起床。朝食は洋風雑炊。
正月の残り物のスモークハム、コンソメキューブでスープを作り、牛乳を少し加え、仕上げにチーズをたっぷり投入。たまには、こういうコッテリ系も食が進むのだ。
アイクとコータは一週間前に僕が大事に作ったあんこ(もとはお汁粉だった…)を食後にさらえてくれた。
「このアンコ、手作りにしちゃあ、なかなかイケるだろ?」
「お店のより全然旨いよ」とコータ。おっ、父のおだて方を習得したのか?
「トーサン、モット〜」
10時 カミサン起床。「雑炊、できてるよ〜」
コータ出発。今日はサーカー部の練習試合。
11時30分 アイクと僕も出発。
今日は新松戸アシーネブックセンターで今年最初のお話し会なのだ。
「ひゃ〜。今日は寒いなぁ、アイク」
「テガ ツベタイケド アイク ツヨイカラ ガンバル」
「父さんは、手袋するわ」
「アイクノ ハ?」
「ん?今度、ママに探してもらいな」
「・・・」
11時40分 駅前の駐輪場到着。
「寒いね〜。おっ、今日は近場なの?」
駐輪場のオッサンは僕がお話し会をしてることを新聞で読んで知ってるのだ。
13時過ぎ 西村パパと新松戸のマクドナルドに。
おっ、安藤パパもあそこにいるじゃん。
「ひゃ〜、混んでるねぇ。あ、そうかMEGA マックが発売なのか…。しかし、並んでまで食うシロモノか?」僕は、ここのハンバーガー屋、NG。とにかく脂の匂いがダメナノヨ。
アイクにパンケーキを食わせてから、徒歩でダイエーに向かう。
13時40分 ブックセンター到着。
ゲーセンの隣が会場というシビアな環境だけど、すぐさま準備に取り掛かる。
詳しくは、安藤パパの日記で読んでね。
読んだり歌った作品は、
西村パパ・オリジナルソングは、『かにさん』『でておいで』『キリンさん』『かっぱ』『いるか』『かたつむり』『船長さん』『がらがらどんのうた』
絵本は、『わゴムはどこまでのびるのかしら』(安藤パパ)、『やさいのおなか』(僕)、『すてきなさんにんぐみ』(安藤パパ)、『うんちっち』(僕)。という70分程のプログラム。
想像してたよりもゲーセンの騒音は気にならず、子どもたち、ママパパたちと楽しく遊べたよ。
アイクは、というと。
絵本コーナーの片隅にある回転棚(ボール紙製のキャラクター絵本がびっしり詰っている)の本を1時間以上に渡って立ち読み。僕を振り返りもせず…。ったく大したタマだよ。
彼にとっては、日頃僕に拒否されるウルトラマンナントカとか、仮面ライダーナントカとかとかを好きなだけ読み倒すことができたわけで、大変ご満足の様子。
終了後、駅周辺でビールを飲める店を物色。店はあるんだけど、5時開店ばっかり。
4時前だからなぁ…。
でも安藤パパが、執念と持ち前の飲兵衛的嗅覚で「一源」という24時間居酒屋を発見。
ふふふ。さすがだね。
店内はほぼ満席。
「うん。こういうことなんだよな。人がやってない時に営業する、これは成功の秘訣だね」と安藤パパ。
都教育庁のMさん、Sさんも参加してくれて楽しく乾杯。
酒の肴は、どれも及第点。期待してなかったけど、旨かった。
帰りは、千代田線でアイクと熟睡。
19時帰宅。夕飯は、カミサンが腕まくりしてくれた。
大根と牛肉、小松菜の朝鮮風煮物、春雨のスープ、カレー。
おおっ、旨い旨い。「コータ、冷蔵庫から発泡酒取ってくれ〜」
とにかく頂きものの旬の野菜が有り余ってる。
バチが当たらないよう、おいしく食べるのだ。
9時 コータの英単語レッスンをして、一人銭湯へ。
ありゃあ、1.5キロも増えてるじゃないか!全部ビールだよ、これは。とほほほ。
2007年1月13日
3ヶ月に一度位のペースなんだけど、ここに新刊紹介風の記事を連載している。
僕はこの欄で、従来のランダムな新刊紹介ではなく、テーマを決めて絵本を探し、個別のトピックに関係を持たせてみる、という手法に挑戦中なのだ。
今回は、父親像をテーマに繋げてみた。
【新刊4冊】
■『うんこのあかちゃん おとうちゃんの出産絵日記』
長谷川義史/作、クレヨンハウス 1600円
父親というものは、赤ちゃんの出産と同じ日に生まれ、赤ちゃんの成長にあわせて育つ生き物なんだよね。だから、赤ちゃんの誕生をどのように受け止めたかということが、すべての育児のスタートになるはずなのだ。
これは、絵本作家の長谷川義史が立ち会った3回の出産を綴った絵日記だ。赤ちゃんが生まれるたびに、「よく生まれてきてくれました。ありがとう」と妻と赤ちゃんに心から感謝する言葉に、体全体がほっこりと温まった。僕はこの絵日記で、父親の誕生に立ち会うことが出来た気がするよ。
■『ぼくのパパは おおおとこ』
カール・ノラック/文、イングリッド・ゴドン/絵、いずみちほこ/訳、セーラー出版 1500円
子どもにとって父親は、スーパーマンなのだ。人間のお手本なのだ。少なくとも思春期まではそういう存在でありたいよね。
何でも知ってて、何でもできて、大きくて力強くて、面白くて、謎に満ちていて、ときたま怖い。
そんな期待を裏切らないためには、父親は無理をしなくちゃいけないんだ。
子どもの前で、仕事の泣き言を言わず、疲れた背中を見せず、休日は子どもよりも早く起きて、遊びの準備に励む。そんな姿を見せ続けるしかないのだ。何しろ、大人のお手本なんだから。
■『うちのママってすてきなの』
アンソニー・ブラウン/作、久山太市/訳、評論社 1300円
いつもパパばっかりカッコいいのは、ずるい。
ここは、ウルトラ級のママにも登場していただこう。この絵本では、娘の視点で母親のオールマイティぶりを面白おかしく紹介している。家族のために食事を作って、片付けて、掃除洗濯して、という無間地獄で汗水流すママも、視点を変えればとても新鮮に見えるという皮肉としても楽しい。
他人の視点だけでなく、実際にアクションを起こすべきだと僕は思ってるけどね。だいたい、日本のママたちは子育て以外で、関心を持てること、自慢できることが少なすぎるんじゃないかな?
■『オオカミだー!』
ステファニー・ブレイク/作、伏見操/訳、PHP研究所1200円
これは、「オオカミが来たぞ」のイソップ寓話をヒントにした絵本。
「オオカミだー!」と叫んでは周囲を驚かせて楽しんでいるウサギの子。イタズラがどんどんエスカレートし、それをいさめるために父親の出番が来た……はずだった。ところが、新たなイタズラのヒントを授けてしまう思わぬ結果に。
しかし、これでいいのだ、と僕は思うのだ。子どもは反社会的なイタズラを繰り返しては、怒られつつ成長する、もともと手におえない生きものなのだから。父親は、時に叱り、時に目をつぶる、大らかな存在でいいのだ。
ロングセラー【今週の1冊】
■『とうさん おはなしして』
アーノルド・ローベル/作、三木卓/訳、文化出版局 854円
今回のテーマは、父親。
戸籍の上では父親だけど、仕事して金を運ぶ以外に、父親としての存在理由を発見し楽しむためには、思い切った頭の切り替えと、仕事と生活スタイルの立て直しが必要だし、妻の協力も欠かすことができない。
まずは、どんなことでもいいから、毎日子どもと過ごす時間を確保し習慣化することから始めてみよう。
それには、お休み前のお話タイムがおすすめ。忙しい父親は、朝の出勤前だっていい。絵本を読むのが苦手なお父さんは、自分の会社を動物王国に見立てて作り話にして聞かせてあげたって楽しいはずだ。この絵本は、そんな父親だからこそのお話の扉になる僕の秘密のネタ本なんだ。
【以上、『しんぶん赤旗』2007年1月13日 くらし家庭欄掲載記事を転載】
2006年12月31日
Bye-bye2006年!
家族全員で、なんとか年を越せることに感謝。
今年の収穫
■とっても気に入った絵本
『いいからいいから』
『ぜつぼうの濁点』
『エドワルド せかいでいちばんおぞましいおとこのこ』
『ワイズ・ブラウンの詩の絵本』
■「ごちそうさま!」、心から笑みがこぼれたもの
・牡蠣と帆立の炊き込みご飯(自分で作って感激感涙)
・宮古産の岩牡蠣、ウニ、毛蟹
・広島で食べたここのお好み焼き
・ここの焼き竹の子
・義母が作った『ごま汁』、妻が焼いたサーモンパイ
・松山市内で飲んだ、みかんジュース
・パパ‘Sお話し会後、何十杯にも及んだ生ビール
■そして。家族と仲間たちの笑顔と健康に
2006年12月26日
9時 アイクと保育園に。
アイクの通う保育園は、お父さんの同伴率がとても高い。
さすがにネクタイ姿のパパは少ないわけで、僕みたいな生業の人が多いのかなぁ。
で、2つ下のクラスには、リトルドッグプレスの大泉さんのお子さんも通ってて、彼も毎朝送りに来ているのだ。
昼過ぎ 竹橋の毎日新聞社へ。パパ‘Sの活動に注目してくれているHさんと2時間程おしゃべり。
会話中、埼玉でNPOハンズオン埼玉、そして、お父さんによるヤキイモ作りを通して、子ども、地域と触れ合う活動をしている西川さんというパパの話題に。
「それ、すっごく面白そうですね。会いたいなぁ、その人に」
焼き芋ってよりも、火起こしや焚き火に惹かれちゃうけど、西川さんの意図していることが、直感でわかるから。
年が明けたら、3人で飲む約束をして、商談成立。
僕はサツマ芋を蒸留した悪魔の発明品を楽しむことにしようっと。
一旦会社に戻り、18時 予約した神楽坂の店へ向かう。
すごい土砂降りだった。年末にこんなに降るなんて、異常すぎる。
今夜は、詩人で作家の木坂涼さんを囲んで絵本編集者の忘年会。
岩波書店、偕成社、平凡社、光村教育図書、セーラー出版、理論社、ポプラ社…
男性はセーラー出版の高橋社長と僕だけなのは、僕が幹事だから?
ふふ。でもこういう会に福音館ってなかなか顔を出さないんだよね〜。
岩波のAさんは、お嬢さんのメグちゃん同伴。
か、かわいいなぁ。「あの〜。アイクと交換しません?」
話題は、
編集者が購読している定期刊行物は何か。
自分で最初に選んで読んだ本は何か。
小学生男子の読む本は、ズッコケシリーズ以外にないのか。
どうして推理、SF、冒険ものが消えてしまったのか。
そして、今年のイチオシ本とは。
料理はイマイチだったけど、酔ってられない密度の濃い時間だったよ。
その後、高橋さんとここで男の二次会。
雨が上がった26時、同方向なので、二人でタクシータイアップして帰宅。
2006年12月25日
06時
「ガ〜!!」アイクの絶叫で起床。
「トーサン、サンタ ガ〜!」
「なにっ!来たのか?」
「プレゼント ガ〜!」
「ガァガァ、言ってることがよくわかんないぞ」
「アイク、イウコト キカナイコナノニ プレゼント ガ〜」
「どこに」
「テレビノ ウエ。ガ〜ッ。トーサン、トッテ〜」
アイクが貰ったのは、バズ・ライトイヤー・ザ・スペースレンジャー。
胸のボタンを押すと、「無限のかなたへ」「レーザーキャノン発射!」「ザーグが射程内に入った!」とか声が出たり、腕に仕込んだレーザービームを照射したりできる玩具。
まさにトイストーリーに登場するバズなのだ。
ただし、輸入品なので、声は所ジョージじゃなくて、吹き替えなしの英語。
だから実際は「I’m Buzz Lightyear to the rescue.」みたいな感じ。
コータがゲットしたのは、ソニーの携帯音楽プレーヤー。
なぜか、僕の愛用してるウォークマンと同タイプの色違い。なぜか…。
中学生にもサンタさん来るわけね。
「おまえさぁ、イヤホン付けたまま外歩いたり、チャリ乗ったりするのは、禁止だぞ」
「あいよ」
昨夜はカミサンMADEのショートケーキ、ビスケットの家。
メインデッシュは鳥の丸焼きとチーズフォンデュ。
なぜかイブの晩は、年一回だけのチーズフォンデュの日と決まっているのだ。
「おおっ、旨い旨い」『千と千尋』でブタにされるパパになった気分だ。
本当はここで田中家恒例のクリスマスミッションについて説明したいんだけど。
中1の息子殿がどこでこの日記を読むかもしれない。
とにかく。
今年もサンタは来た。今年もサンタは存在した。そういうこと。
毎年子どもたちに言うんだけど。
「誕生日プレゼントは、父さんが買うんだから、好きなものを要求して構わない。しかし、クリスマスは、サンタさんが君たちにあげたいものを勝手に選ぶわけ。だから、父さんやママに、これが欲しい、あれが欲しいなんて、クドクド言ったって意味ないんだからね」
9時 保育園着
「みんなぁ、サンタさん、来たか?」
「わたし、バズのCD貰ったよ」Aちゃんが元気に答える。
「アイクハ、アイクニハ…」
彼は女の子のしゃべるスピードに付いていけないらしい。わはは。
9時半 30分遅刻で出社。
あっ、今日は約束してたんだっけ。
渋谷に急行。今日は日本生活協同組合のFさん、安藤パパとランチ。
彼女のオファーで年末の2ヶ月間、ここでブログ連載していたのだ。
お店は、陳健一のレストラン「陳」。
「旨いなぁ、ここのマーボーは!今まで食ってきたマーボーは何だったの?って感じだね」
四川料理の香ばしい辛さは、生山椒の使い方が決め手とみた。
ひゃ〜。でも汗が止まらない。
14時 駆け足で帰社。
そのまま年納めの総括会議に突入。
「今年はキビシー年でしたね〜。こりゃあ、来年、身を粉にして働かんと、マジで年越せないぞ」
絵本が想像以上に売りづらい。
問題なのは、ロングセラーの既刊本がグラついているのだ。
刹那的に、瞬間的に売れる本があるのは構わないけれど、
世代を越えて、地味にゆっくり売れる本が、ないがしろにされつつある。
木や花、子どもの成長だって、一見止まってるように見えるけど、確かにゆっくりと成長してるよ。
そういうのって、効率悪いってことかな。
町の本屋は、大書店やコンビニにどんどん潰されていく。
弱肉強食なんだから仕方ないよね?
アイデアとスピードと資本力が欠落してるから潰れるんだよね?
でも、過去紡がれてきたことを後世に伝えようとしない成功至上主義って、虚しいと思わない?
マナーや人間味のない実績本意って、志低くない?
いつも近道ばかり考えてるって、セコくない?
これだけネットが発達して、どこからでも商品検索できるようになった。
一見、選択肢が広がったようにも思える。
しかし、許容できる情報が度を越した時、動物が取る行動はだいたい決まっている。
群れの論理、つまりランキングや他者評価に従う無思考無判断行動だ。
となれば、話題になったものだけが一人勝ちする公式だけがふんぞり返ることになるわけだ。
その傾向が明らかに加速している。
テレビで放映されてるから、ペネロペが売れ。
誰かがダイエットに成功すれば、町から納豆が消える。
DSが流行っているらしいから、子どもにDSを買う。
選択肢は、広がったのではなく、逆に狭まってしまったのだ。
選択肢が増えたことで、選ぶという人間行為最大の個性がふやけ始めてしまった。
食べ過ぎ食べ続けて、空腹状態を忘れてしまえば、何を食べたいかすら感じなくなる。
味覚も鈍化するから、味が濃くて刺激の多いものにしか反応しなくなる。それと一緒さ。br>
2006年12月23日
今日は山中湖村の図書館、情報創造館で特別編成のお話し会。
遠征メンバーは、僕と西村パパそして、「おはなしポット」というグループから2人のレディース、秋山さんと尾崎さんがゲスト参加してくれた。
8時 新宿駅集合 前日夜更かししたおかげで瞼が重い。
もっと土着性、民俗信仰の深い部分の描写が欲しかったなぁ。
小野不由美にしては、かなり荒削りなキャラクター設定だったけど、推理エンタテイメントなので、まあ楽しめた。
8時14分 「ホリデー快速河口湖1号」に乗り込み、いざ山中湖へ。
車窓から見える富士山がどんどん近づき、どんどん大きくなるので、一同観光客モード。
11時 図書館到着。山中湖畔の景色にマッチした木造の素敵な図書館だ。
「坂口さん、はじめまして。お招きありがとう!」
会場は同じく木造のきれいな講堂。東田さんにもご挨拶。
会場は坂口さんと東田さんの手作りデコレーションでクリスマスムードばっちりだ。
スタートまで時間があるので、しっかりとリハーサル。
今回はボーカル&ギターの安藤パパがいないから、西村パパのウクレレと僕のカホン、そしてレディースたちのパーカッションとダンスが頼み。
昼食は湖畔のチャイニーズレストランに。
「ビール、ビール。中瓶で!」ひゃ〜、天気がいいし、眺めもいいし、ビールが格別に旨い。
「僕もアルコールがちょっとだけ解禁になったんですよ〜」と西村パパ、にっこり。
レディースは、さすがに「お話し会の前は…ちょっと」
「わはは。お話し会の前と後に飲むのが旨いのになぁ…」
お話し会には25人ぐらいの子どもたちが集まってくれた。
僕がスタート前に導入で『やさいのおなか』を読んでいたので、子どもたちの声も顔も元気で明るい。一番手は、久々に僕の『ねえ、どれがいい?』
お笑いの続きは、アッキーこと秋山さんの『へんしんマラソン』
「カマッカマッカマッ…真っ赤になっちゃいました〜」
後ろで聞いているお母さんたちがくすくす笑っている。秋山さんはさすがに小学校の図書室の先生だ。子どもたちの表情をしっかり捉えながらページをめくっていく。
3番手は、尾崎さん。
彼女が選んだのは
『ガスパール びょういんへいく』
「みんなの中で、風邪ひいている子、いる?」
ぜんぜん元気そうな子どもが2〜3人、さっと手を挙げる。いるんだよなぁ、こういうのが。
尾崎さんも秋山さんも絵本を読むっていうよりも、子どもたちの反応を受け止めながら、やり取りを楽しんでいる様子だ。
パパ‘S絵本プロジェクトは、今まで男のパパだけでやってきたけれど、たまにはこうしたジョイントも楽しいだろうな。きっと。
お次は西村パパ。『ことばあそびうた』や、みずかみかずよさんの詩をオリジナルで曲付けしたハートウォーミングな演奏。
彼の優しい人間性がストレートに伝わってくる。
西村パパと僕のエプロンは、クリスマス用のスペシャル仕様。
このあと、それぞれもう1冊ずつ読んで、最後はみんなで sing & dance の時間だ。
西村パパオリジナルの『さんびきのやぎのがらがらどん』、「おはなしポット」ダンスーズも加わった「とうがらしのうた」
最後は「ハンガリー舞曲」に合わせて新聞を破いて遊ぶ「新聞ビリビリ」で第一部は終了。
特に印象的だったのは、お母さんたちのノリの良さ。
とっても楽しんでもらえた気がしたよ。ここも見てね。
第二部は、僕と西村パパのフリートーク。
おはなしポットダンスーズは、後ろのほうで子どもたちに絵本読み第二部。
こういう分担だと、保育ママさん不要なので、すごく具合がいいなぁ。
海沿いの子どもたちも元気だけど、山の子どもたちも表情が豊かで、ノリがいい。
お話し会としては最長の約100分間、楽しい時間を共有できた。
帰りは、電車のタイミングがあわなかったので、新宿までの高速バスに。
「おいおい、お決まりのビールはどうするわけよ」
バスに持ち込もうにも、このバス、トイレ付いてないじゃん。とほほ
「わ〜、こっちの富士山、すごぉい!」
「わ〜、ジェットコースターだ〜」
「わ〜、きれいなイルミネーション〜!」
お話し会が盛会に終わり、バスの中ではしゃぐお嬢さまたち。
「今回はたっぷり時間があったから、ゆっくり楽しめたね」と僕。
「とうがらし、うまくいきましたね〜」と西村パパ。
19時 新宿西口到着 「は、はやくトイレに行きたい!」
2006年12月21日
7時半 起床。
コータは冬休みに入ったため、弁当作りはしばしの休憩。
しかし…これから2週間、家でゴロゴロ昼寝三昧のコイツの昼食を心配せにゃならんのか。
世のママたちが、春夏冬の休みにカリカリする気持ちがよく分かるよ。
子どもがずっと家にいるってのも、鬱陶しいもんだからね。
9時 アイクを保育園にドロップ。
「ヒゲジジイ〜」リス組のチビ猿たちがむしゃぶりついてくる。
「まだジジイじゃないぞ〜」
「ドロボー!ヒゲのドロボー!
「あっ、おじさんの正体を見破ったな。蝋人形にしちゃうぞ〜」
「じゃあな、アイク」
「ヒゲジジイ〜」
とほほ。
さて。今日は面倒くさい日なんだ。
たまにだけど、胸が痛くなることがあってさ。
新しい恋?って、んなわけないぞ。
昨日循環器科に行って調べてもらったら、今日から24時間携帯型の心電図を取り付けるってことに。
看護婦さんが、アイクと同じリス組の子のママだったもんだから、赤面。
お酒と旨い物をたっぷり投資した俺の腹を生で見せなきゃならんとは…。
わはは。しかしこれが性病科や肛門科だとシャレにならないよな。
ってことで、体中スパゲティみたいに配線グルグルにされてしまった。
発作が起きたら、ということでニトログリセリンの処方も。
「これを飲んで効くようなら、陽性です」
「え、じゃ、効かないほうがいいわけね?」
「う〜ん。そんなに単純でもないですが…。とにかく年明けに検査結果が出ますから」
「この配線を止めたテープが、かゆいんですけど…」
「ガマンしてください。はずれたら、再度24時間やり直しですよ」
11時 出社。
今日は外出せずにイイコにしていよう。
とはいっても、テープがかゆいし、グルグルにされているので変に肩が凝る。
仕事に身が入らないので、この日記を数日分書く。
18時 早めに退社。
夕飯時、家族の前でシャツを脱ぎ、
「どうだ、すごいだろ」と自慢。
誰も面白がってくれないので、
「父さん、心臓病かも知れないんだぞ〜」ともう一度自慢。
「…あ、そ」皆、飯を食うことに忙しそうだ。
とほほ。
2006年12月16日
昨夕は、Fathering Japan スタッフと、WEBコンテンツの初ミーティング at 渋谷セルリアンタワー。
詳しくは、安藤パパのblogのここで。
彼も書いてるけれど、たった4人のスタッフでも、男の育児について色々な考え方、立場、体験があるのだ。
その中から最大公約数と最小公倍数を掘り起こして、他のパパママたちの共感を得られる領域を設定しなくちゃいけない。
ここで、「う〜ん」とうなってしまったことがある。
「子育てパパのポータルになるようなサイト」を議論中、棒田さんから、「パパたちって、どんなサイトを見てるんですか?」というシンプルな問い。
聞かれて初めて省みたが、僕が日常的に覗くのは、ニュースと、自分の記事についてのレスポンスチェックぐらいで、ロクなものがない。
もちろん、仕事絡みのネットワークや調べものは、ある。
だけど個人的に毎日アクセスしているサイトがないことに気がついた。
「共感しあう」ことで群れなすことができるママたちに比べると、オトコは面倒くさいぞ。
「ひゃ〜。まいったなぁ」
モノ作りの端くれとしては、「自分が欲するモノを作れ」という常道は外せない。
群れ集うよりも自分の趣味に埋没したがるのがオトコたちの傾向。
ゲーム、出会い系やエロサイト以外に、オトコたちを集めるコンテンツとは?
仕事帰りに、ついふらっと30分だけ立ち寄りたくなるような赤ちょうちんのような、コージーなサイトとは、どんなサイトだろう?
世のパパたちは、居心地の良い定位置を持つことへの渇望があるはずだ。
特に都市に住むパパたちは、さまよい続けているはず。
職場では、居心地を良くするために同僚同士の飲み会に気を使っている。
自分の家よりも行きつけの飲み屋に居心地の良さを見出しているパパも少なくない。
家族と過ごすことに、居心地の良さを知らないから。
妻や子どもたちの気持ちを後回しにして、仕事関係の人間関係に全ての関心を寄せているから。
サンセットタイムになれば、自分は自由人だと勘違いしているから。
「オヤジの背中を見て育てばいい」なんて、カッコつけてるうちに真正面を家族に見せられなくなっちゃって、顔もない背中だけになっちゃったから。
って、やっぱりカッコつけてるクセに…
18時半。ミーティング終了後、妻に電話。
「早く終わったから、ちょっと寄ってもいい?」
「くしげん、ね?」
「はい。そうでございます」
「飲み過ぎないように!」
「はい。もちろんでございますとも」
ってことで「くしげん」に直行。
ここは、パルコ時代からの行きつけの焼き鳥屋さんだ。
主の高橋さんとは、山仲間で、コータが5歳の時に一緒に石老山に登った仲。
NHK国際センターでウルドゥー語の重鎮S氏と久々に出会い、トーマス・マンやラヴェルから、中東、インドの言語についてなど緊張感の高い談義。最近少なくなったけど、こういう硬派な話題は大人の愉しみだ。
20歳の年齢差を超えて話すこと5時間。気がついたら25時半。タクシーで帰宅。
26時 寝相が悪い妻と愚息二人の布団をかけ直し、いい気分で眠。
「うっ、まずい。明日は、丸善丸の内本店でパパ‘S絵本プロジェクトのお話し会クリスマススペシャルだったっけ」
2006年12月○日
アイク4歳の誕生日
次男アイクは、4年前の21時頃生まれた。
陣痛が予定より5週強早かったため、妻は遅らせる薬を与えられ、僕はコータに晩飯を食わせるために汗だくで一時帰宅した矢先だった。
看護婦さんから緊張した声の電話があった。
「奥様がもう出産されます。薬は効きませんでした。何分で来れますか?」
「5分で駆けつけます」
しかし、僕は帰宅してすぐにビールをロング缶で2本飲んでいた。
妻からの陣痛の電話を夕方に受け、走り続けた関係で咽喉がカラカラだったし、ひとまず安心してしまったのだ。
でも、何か大変なことが起こっている予感がした。
僕はコータに留守番を頼み、再び車をスタート。
ところが、こういう時に限って…
引っかかっちゃったわけ。一斉検問に。
お巡りさんは、窓が開いてすぐに酒の匂いを嗅ぎつけたんだね。
「お父さん、今日は飲みましたね?」
「うん、しっかり飲んだよ」
「・・・。じゃ、エンジン切って降りてください。免許証、車検証出して」
「それは、困る。俺は5分で病院に行かなくちゃいけないんだよ」
「はい。降りてください」
「俺の赤ん坊が生まれるんだよ。緊急出産なんだよ」
「とにかく降りて」
「分からないヤツだなぁ、あんたは。免許証ならやるよ、ほら。後でどうにでもしてくれ。とにかく、車、出すぞ、このバカモンが!」僕はお巡りさんに免許証を投げつけて、車のギアを入れた。
すると、いきなり笛を吹かれたと思ったら、数人のお巡りさんに車を囲まれてしまったのだ。
その中から、年配のお巡りさんが近づいてくる。
「どうしました?」
これこれこういう事情なのに、この若いロボット頭が、融通利かないんだよ、と僕は大声。
すると年配のお巡りさんは、免許証を一瞥してから僕に返し、
「運転できますか?」と聞いた。
「当たり前ですよ」
「じゃあ、安全運転で行ってください」
「えっ?」
するとお巡りさんがにっこり笑った。
「お父さん、次の赤ちゃんの時は、タクシーに乗ってください」
その時は、妻と赤ちゃんのことで頭がいっぱいだったから、びっくりしたけど、そのまま病院に向かった。
でも、しばらくして思い返してみると、あのお巡りさんの温情のおかげで僕は出産に立ち会うことができ、妻を励まし、アイクを両手で受けとめてあげることができたのだ。
官憲嫌いを公言する僕だけど、この日のお巡りさんのことは、忘れたくない。
なので、毎年、アイクの誕生日にその話をすることに決めているんだ。
と、ここまで書いたら疲れちゃった。
アイクは生まれてすぐに、NICUに送られて、50日間生死をさまよった。カミサンは出産前の誤診のおかげで病気が長引き、今も検査と投薬が続いている。書くことはいっぱいあるんだけど。
でも、今日家族揃って誕生日を迎えられたことに、大感謝。
そうそう。
こんな本に出会ったよ。
お父さんって、赤ちゃんと同じ日に生まれて、赤ちゃんと一緒に成長するんだなぁ、ってつくづく思った。
この絵日記、すごくナチュラルでいい。
本にしようとして描いたんじゃなく、感動させようとして編集したんじゃないんだね。
3人の赤ちゃんの出産に立ち会うたびに「よく生まれてきてくれました。ありがとう」と素直につぶやく、長谷川義史のポジショニング、とっても共感できた。
父親たちにぜひ読んで欲しい1冊だ。
ただ、タイトルの「うん このあかちゃん」は、ちとエグ過ぎて、どうかなぁ、と思ってしまうんだ。
お誕生会は、アイクのリクエストでカレーライスとスパゲティ。
昨夜から仕込んでいたビーフカレーが完璧な出来具合だ。
インド修行の僕としては、カレーはチキンとマトンしかありえないわけで、邪道を承知で作ったのだ。
わざとたくさん作ったから、明日から4日間はカレー地獄。覚悟しろ。
スパゲティとサラダ、オードブルは、妻が用意してくれた。
ケーキは、アイクの祖母、僕の実母がコータと一緒にヴォアラで買ってきてくれた。
コータからはバルタン星人、僕と妻からは、「ショワッチ」「ダーッ!」と声が出る初代ウルトラマンの人形がプレゼント。
チープに見えるだろうけど、これこそがアイクが一番欲しがっているオモチャなんだな。
どんなにたくさん絵本読んであげたって、怪獣ごっこしたいわけよ。
食後、アイクはオモチャに没頭。
僕は実母と、「浦霞」を冷酒で。ボクの母は、日本酒党なのだ。
22時 入浴タイム。
『ウルトラマント イッショニ オフロ ハイル〜』
『アイク、このウルトラマンは、お風呂に入れないんだよ』
『ナゼ ナノヨ〜』
『ウルトラマンは、お風呂に入ると「ジュワッチ」って言わなくなっちゃうんだよ』
『ナゼ ナノヨ〜! ドーシテ ナノヨ〜』
…タメイキ。
2006年12月7日(木)
7時半起床。
「しまった、寝坊だ」
「コータ、学食で飯食ってくれ。いくら必要だ?」
「500円」
「えっ、学食でそんなにかかるの?」
「ラーメン2玉分だから」
「う〜、なるほど。やっぱり弁当の方が安あがりでいいなぁ」
「ボクは学食が好きだけど…」
「バカモン。俺が作る弁当は特製なんだぞ。根性入ってんだぞ」
「・・・」
8時55分 保育園着。
なに? ウチのクラスでもノロウィルス発生か。
これは覚悟を決めないといかんぞ。
「トーサン、オウチニ カエッタラ、スチームショベルノ テレビ ミテイイ?」
「いいよ。お昼ご飯、お残ししなかったらね」
「アイク、オノコシ シナイモン」
「そ〜かぁ? 先生に聞いちゃおうかな?」
「ダメ〜」
「わはは」
13時 ランチは「万代」でワンタンメン、麺少なめ。510円。
少年ジャンプをめくりつつ、フハフハッ。
しかし、「NARUTO」も、もう息切れだなぁ。
連載引き伸ばしのために編集者がかなり介入している気配が感じられるよ。
主人公のNARUTOには、もはや少年らしい志の高さやバカさ加減が影をひそてしまった。
「ドラゴンボール」みたいに、戦っても戦っても次から次へと新たな敵が出現する、単純な戦闘マンガになっちまった。敵が強すぎて、敵との融和も、心の成長も描ききれていない。
18時 区内のW小学校図書館へ。
今晩は、地域の保育園の先生グループを前に講演。
ひゃ〜、アイクの保育園の先生もいらしてるぞ。ヘタなこと言えないぞ。
ところが。テーマは、「保育園や幼稚園の先生が読まない絵本」。
ナンセンス絵本、子どものしつけに向かない絵本、ビロウで下品な絵本をたくさん持ち込んで、一冊ずつ紹介した。
先生たち、笑って聞いてくれていたけれど、「こういう絵本は、自分の家では楽しんでいるけれど、園で購入するのは、勇気がいる、というか無理」という感想。
まぁ、そうだろうな。でも、それって自主規制だよね。
特に園長先生から、「おばかな絵本は買っちゃダメですよ」というお達しが出てるわけじゃないんだから。確かに急におばか絵本ばかり揃えたら目立つだろうけど、1冊ずつ、こっそりと揃えたら?と僕は思う。
どんな仕事にも、いたずら心があったほうが楽しいから、ね。
紹介した絵本、
『なにをたべたかわかる?』
『せかいいちおぞましいおとこのこ エドワルド』
『ショッピングバスケット』
『メチャクサ』
『うんちっち』
『おおかみだぞ〜』
『いやといったピエロ』
『なぜ あらそうの?』
『もっとおおきなたいほうを』
などなど。
2006年12月6日(水)
お知らせ@
来年、1月18日より、ニューファミリー新聞にて、コラム連載スタートします。ネットでも読めるはずなので、ご注目を。
絵本紹介って、あらすじを書いて、適当に褒めて一丁上がりっていう体裁が多いけど、このコラムでは、僕とアイクの実際の絵本時間をベースにストレートな絵本評を書いてみたい。自分も編集者の片割れなので、滅多なことは書き辛いんだけど、連載打切りになるまで勝手に書かせてもらうよ。この際。
お知らせA
来春のパパ‘S絵本プロジェクトお話し会と田中のソロ講演の予定。
近辺在住の方で都合が合えばぜひ。
1/14 | (日) | 「お話し会」 新松戸アシーネブックセンター (安藤+西村+田中) |
1/27 | (土) | 「お話し会&フリートーク」三鷹市子ども支援センター (安藤+金柿+田中) |
2/ 9 | (金) | 講演 (田中 ソロ活動) 柏市教育委員会 |
2/10 | (土) | 「お話し会&フリートーク」茅ヶ崎市 (安藤+西村+田中) |
2/17 | (土) | お話し会+講演 (田中 ソロ活動) 荒川区 |
2/18 | (日) | 「お話し会&フリートーク」藤沢市片瀬公民館 (安藤+金柿+西村) |
2/18 | (日) | お話し会+講演 (田中 ソロ活動) 浜松市 男女共同参画 |
2/25 | (日) | フォーラム出演 小平市男女共同参画 (安藤+田中) |
3/ 4 | (日) | 「お話し会&フリートーク」西東京市中央図書館 10:00- (安藤+金柿+田中) |
3/10 | (土) | 「お話し会&フリートーク」橋本市 星の子保育園 (安藤+西村+田中) |
3/24 | (土) | 「お話し会&フリートーク 広島県三原市本郷こども図書館 (安藤+西村+田中) |
3/25 | (日) | 「お話し会&フリートーク』岩国市立図書館 (安藤+西村+田中) |
19時 今晩は、sassyの輸入元でもあるベビー玩具メーカー、ダッドウェイの久世さんと紀伊国屋書店のYさん夫婦と町田で飲み。
久世さんは、パパ‘S絵本プロジェクトの本の本文に素敵なカットを書いてくれた人で、そもそも彼とは、新宿OZONEでお話し会をした時からの仲間なのだ。
新宿で打ち合わせを終え、小田急線で町田へ。移動が長いと読書タイムが増えるから嬉しい。
ところが、車内の向かい側に座ったミニスカートの女性が足を開いて居眠りしてるもんだから、気になって本が進まない。
僕の隣に座った皮ジャンの兄さんと目が合い、テレパシーでピースサインの交換。
19時ジャストに町田駅到着。ふう〜、いいもん見せてもらったぜ。ラッキー。
走って、待ち合わせ場所の東急ハンズへ。
しかし、町田はなんとも賑やかというか雑然とした街になっちまったなぁ。
お店は、僕の弟に紹介してもらった焼き鳥屋さん。何食っても旨かった。
Yさんのオットは、今年のジャンボりーにも来てくれてアイクの面倒を見てくれた周知の仲。
彼の求職話を聞きつつ、僕と久世さんが辛口アドバイス。
真意を受け取ってくれるといいんだけど。
2006年12月5日(火)
6時半 昨夜、アイクと一緒に22時就寝したおかげで、さわやかに起床。
今週は今晩から4連チャンの飲み会だ。頼むぞ! my liver、my五臓六腑。
う〜寒い〜。階下に降りてファンヒーターをオン。
保育園でファンヒーターの吹き出し口前を占拠する子と、しない子がいるよね。
暖房がエアコンとか床暖だと、いつも部屋中が温かいけど、ファンヒーターだとストーブの前だけが特等席だから、生活習慣がにじみ出ちゃうわけだね。
コータの弁当…昨夜早寝した関係で何も考えてなかった。
冷蔵庫の中でおかずになりそうなものは、漬物、卵、納豆、豆腐の基本常備セットだけだ。
こういう時、コータは冷凍食品を嫌うので実に困る。
更に探索したら、賞味期限を1週間過ぎた蒸し焼きそばの麺を発見。
「よし、これでいこう!」
具無しのソース焼きそば一人前を手早く仕上げ、オムレツに包む。弁当箱半分にそれを押し込み、後は白いご飯に「混ぜ込み若菜」を振り掛けて一丁上がり。
「なんだか、でかいオムレツだなぁ」コータがヒーターの前でつぶやく。
「何を包んだか、当ててみろよ」
「どうせ挽肉を炒めたもんでしょ?」
「ふふふ。今日は開けてびっくりだぞ〜」
8時 アイク起床。
「アイクハ コンフリート ダカラネ」
「コンフリート?コンクリート?」
「コンフリート ダヨ。牛乳カケテタベル…」
「ふわっはっはっ。コーンフレークか」
「トーサン、キノウ ノ エホン オモシロカッタ ヨネ〜」
「あの絵本、ちょっと残酷じゃない?」と妻
「いやいや、あれ、最高に楽しいよ。あのくらい過激なほうが印象に残るしね」
8時55分 ママチャリならぬパパチャリ、スタンバイ。
「アイク、クツがあべこべだぞ」
「キータゾ、ワレラーノ ウル〜トラマ〜ン♪」
「保育園に謎の怪獣が出現。アイク隊員、出動せよ」
「ハイ、タイチョ〜」
しめしめ。今日もこの手に引っかかってくれた。
9時10分 デスク着
おっ、『すくすく子育て』 に『くんくん、いいにおい』リコメンド記事発見。
筆者の内海裕美さんは、いつかお会いする機会が楽しみな方だ。
伊那の北原パパが詳しそうだなぁ。
13時すぎ 池袋リブロ児童書売場で、詩人で作家で翻訳者の木坂涼さんにばったり遭遇。最近の新刊を見比べつつ、おしゃべり30分。
実は、グランまま社は木坂涼さん作のある絵本を制作進行中なのだ。
年内の飲み会で再会を約束。
14時 池袋ジュンク堂絵本売場にYさんを訪問。彼女は神戸のジュンク堂絵本売場を長年支えた実力派。東京でも笑顔と元気全開だ。
新刊の棚で、くもん出版の昔話絵本のシリーズを見て、びっくり。
「なんだよ、これ。岩波書店の『てのひらむかしばなしシリーズ』のパクリじゃん。ひで〜なぁ、まったく」
19時半 新宿の居酒屋「樽一」。今晩は教文会という絵本版元の若手による研究会の忘年会。
ボクは、歳だけは最年長。ぼちぼちリタイアしないと…と思いつつ、宴と聞けば条件反射的に足が向いてしまうのだ。
23時 結局絵本の話はそっちのけで、シモネタを披露して大笑い。酔っ払ったSさんの「次、行こう!飲みあかずぞ〜!」の声を背中に受けつつ、歌舞伎町の雑踏へ逃げ込み、退散。なにしろ4連チャンだからね、ボクは。
24時 帰宅。コータもまだ起きている。
「父さん、お帰り。弁当、旨かったよ。でも、焼きそばは予想外だったよ」
「だろ?結構イケるだろ?」
「うん。また作ってよ」
「ほいよ」
「今日は、あまり酔ってないね」と妻。
「明日もあるから、ね」とボク。
24時半 『黒祠の島』 読み始め。小野不由美には、『屍鬼』でハマッた。ラストまでの展開は、おどろおどろしさ、スピード感満点だけど、ラストシーンがガクッと来た。今回はどうかな…。
2006年12月2日(火)
今日はパパ‘S絵本プロジェクトのお話し会アット品川区。結成から3回目のクリスマスを迎えることになっちゃった。
読み聞かせプロのおばさまたちからは、「ウケ狙いのパフォーマンス活動。どうせ長持ちしないわよ」なんて言われてたけど、来年で4年目、100回目のお話し会も目前ダヨ〜ン。
100回!でかいパーティしようっと。確かに石の上にも3年だね。
8時 「アイク、速くクツ履けよ」「トウサン、ハカセテ〜」
「マイクマリガン」の歌を歌いながらチャリで駅に急行。
急行電車は、メチャ混みの為、次の各停を待つ。
子連れの時は鷹揚に構えないと、電車に乗れないのだ。
「トウサン、スワリタイ〜」
「ん?じゃあ、父さんのタイコに座ってもいいよ」
箱型のカフォン(こんな楽器です→)に座らせてほっとひと息。
「モウ、スチームショベル、ナンテ♪」
「アイク、電車の中では大声で歌わないでくれよ。まいったなぁ」
9時20分 五反田駅着。
「ア〜、ニッシィパパダ」アイクは西村パパをこう呼びます。
「おはよう。いい天気だねぇ」
9時30分 安藤パパ、ヒロシくんと登場。
ヒロシとアイクで破壊力200%だ。お話し会でイイコにしてくれるといいんだけど…
タクシーで品川区立五反田文化センターへ。今日の主催は品川区の生涯学習課なのだ。
金柿パパは、マイカーで急行。
10時 お話し会スタート。うわっ、0-1歳児ばっかりだわ。
子ども向けというよりは、パパママを意識した絵本読みだね、今日は。
ということで、西村パパのパフォーマンスを軸に絵本4冊。
「うしろにいるのだあれ?」金柿パパ
「つきよ」ボク
「かっぱ」「さんびきのやぎのがらがらどん」西村パパの歌
「わゴムはどこまでのびるのかしら」安藤パパ。
「うんちっち」ボク
そして、大きな布を広げて遊んだり、ウクレレに合わせて行進したり、音楽とボディアクション満載の60分間の後は、子どもたちを託児室に預けてパパママとフリートーク。
お父さんの参加率が多くなったことをつくづく実感。
しかし…案の定、アイクとヒロシは数限りない妨害活動に励んでくれた。
お話し会の途中、託児のおばさんに座布団をぶつけ始め、さらに押入れで大騒ぎしたので、二人の頭をバシッと叩く。
「コラッ。いい加減にしろ!」
12時 五反田駅近くのファミレス「ジョナサン」にてランチ&ビール。
ツマミに頼んだイカリング揚げ2皿は、サル2匹にほぼ食われた。
「もう治ったと思うけど、保育園でヒロシが毛ジラミをもらっちゃってさ」と安藤パパ。
「ひゃ〜、あれはしつこいんだよね。でもオレは、インドでシラミ、ダニ、南京虫など寄生虫オールスターを養育&駆除経験があるから、だいじょうぶさ」とムシ談義。
「あれ、金柿パパは、アイスクリームソーダ?」
「こういうの、家族の前では、オーダーできないんですよ〜。太るよって言われるから…」
「わはは〜」
「アイクモ〜」「ご飯を全部食べたら、考えてやるかもな」
13時すぎ 安藤パパ、ヒロシ、西村パパと表参道に移動。
安藤パパの知り合いのマナーサロン開設イベントに、出席&ライブ乱入。今日はダブルヘッダーなのだ。
15時半。昼寝なしで動き続けたアイクの電池がレッドゾーンへ。
天下御免の暴れ猿変身へのカウントダウンの兆し。ワガママ度のピークレベルが振り切れ寸前だ。
「アイク、おうちに帰ろう」』
「ヤダ。トーサン、ダイキライ」おっ、始まったな。
「ゴメン、先に失礼するわ。アイク、電池切れだからさ」
安藤パパに一言言って退散。
骨董通りでボクとアイクを目撃した人がいるなら、きっと人相が悪い誘拐犯が無理やりコドモの手を引いている、と映ったに違いない。
夕飯後、アイクを風呂に入れて、いつもより念入りにシャンプー。
シラミはたまらんからなぁ。
アイクもコータもベビーの時からシャンプーハットを使ったことがない、というか存在すら知らないから、頭洗うぞ、って言うと目をつぶって頭を向けてくれる。
僕は泡が目に入ってもお構いなし。お湯をざぶざぶとぶっ掛けるのだ。
オヤスミ前の絵本は、
『くんくん、いいにおい』
「アイクネ〜、お砂場ノニオイ、シッテルヨ」
「へえ〜、どんな匂いがするの?」
「ツチノ ニオイ ダヨ」
「土の匂いって、どんな匂いなの?」
「アノネ、クサインダヨ」
もう一冊は、『スースーとネルネル』
「すこし こわいよね」「たのしいわよ」この繰り返し、アイクのお気に入りなのだ。
「おやすみ、スースー、おやすみ、ネルネル。おやすみ、アイク」「今日も楽しかったね」
22時 銭湯へ。
24時半 『昔話と昔話絵本の世界』を読み始める。そうだよね、昔話は口承による伝承だから、その物語世界にリスナーを引き込む奥義に満ちているわけだね。
26時 オレも素語りのレパートリーをもっともっと増やそう、と誓いつつ眠。
2006年12月1日(火)
6時30分 起床 コータの弁当は、挽肉と冷蔵庫のくず残り野菜でカレー味のチャーハン。
8時00分 駐車場でセレナ号に乗り、会社へ。
激重の額20枚を積み込み、中央自動車道でいざ八ヶ岳の絵本の樹美術館 へ。
天気はいいし、道路もすいていたので、真っ白い富士山を左に見つつ快走。
BGMは、ヘビメタの元祖ブラックサバス。そして、ザ・フーの「 Quadrophenia」
11時20分 美術館到着 さすがに空気が旨い。
搬入出の力仕事を終え、美術館の冬季休館の支度を済ませ、館長を積み込んでから清里で蕎麦を食って、14時 再び東京へ。
帰りは、72歳の社長相手にさすがにロックンロールなドライブは出来ず、あくび連発の末、16時帰社。
19時 帰宅 今日はコータに手伝ってもらい、ワンタン作り。
ネタは、豚挽、ねぎ、生姜、大蒜、白菜そしてウーシャンフェンと柚子。
ネタコネと皮に包むのはコータの得意分野。サルはおだてるに限る。
鳥ガラのスープにオイスターソースと醤油、ネギで鍋のつゆを作り、ザク切りの白菜(異常に安いよね、最近)、正味期限4日オーバーの豆腐を投入して、ワンタン鍋の完成。うどんはきしめんにしてみた。
「旨いなぁ」「温まるなあ」「フハフハ、フーフー」
「コータ、ビールのおかわりを取ってきてくれ〜」
「短いほう?」
「長いほうだよっ」
「父サン、ノミスギ、ダヨ」とアイク
「い〜の、金曜日なんだから」
この食べ方だと、ワンタンを一人頭20個ぐらい食べてしまう。
アイクも、熱々のワンタンやうどんに涙を流しつつ参戦。
一人目の時は、冷ましてから食べさせてあげたり、色々と気を遣ってあげたもんだけど、次男はほっぽらかしだから、必死に追いつき、しがみつかないと、アイデンティティを示せないのだ。
僕も3人兄弟の真ん中だったから、よ〜くわかるんだ。
「コータ、ビール!」
「父サン、ノミスギ〜」「しつこいなぁ、アイクは」
オヤスミ前の絵本は、『やまのむにゃむにゃ』
どんばらタヌキとイタチのやりとりがアイクはお気に入りで、セリフ部分を僕が読むと、彼もグフグフと笑いながら真似をして繰り返す。
せっかくの楽しいストーリーなんだけど、最後のシーンは、ありきたりでピンと来ない。
どうせなら、「だいだらぼっち」とか山や土に関係しつつも突飛な馬鹿馬鹿しさが欲しかった。
アイクも最後のページは、わけが分からないらしく、沈黙。
そういえば続編『うみのむにゃむにゃ』もあるんだよ。
作家の内田麟太郎さん 、飄々とした言葉遣いのユーモアとナンセンス精神がとっても好きだ。いつかお願いしたい企画もあるんだけど、忙しいんだろうな…きっと。でも、いつか、きっと…。
2冊目は、『マイク・マリガンとスチームショベル』
勤労礼賛みたいなテーマが底流にあるものの、すっきりと物語世界に入り込めるのが魅力。
造本や印刷が荒っぽいのが残念だが、アイクがこれだけ何度もリクエストするのは原作の力だ。
そういえば、以前YAMAHAから出ていたVHS版の同名ビデオは、編集者としては「脱帽&ゴメンナサイ」したくなるような素晴らしい作品だ。
歌が入っているんだけど、作品を邪魔せず、しかもすっごくいい歌なんだ。DVDで探しても見つからないんだよなぁ。
2006年11月28日(火)
06時50分 起床。弁当は、しょうが焼き、ブロッコリー、高菜明太子。
「コータ、ブロッコリー残すなよ」
「あ〜」ちっ、今日も機嫌悪いわ。
今日は、待ちかねていたビリー・ジョエルのライブ イン 東京ドーム。
アイクを16時45分に引き取って、17時に帰るコータに子守りさせ、カミサンは夕飯の弁当を買って帰り、17時半前に夫婦二人でお出かけ、という段取りを確認。
「コータ、絶対に5時まで帰ってきてね。子守り代、はずむからさ」
「マジで?」急に表情が変わる。現金なやつだ。
カミサンは、アイク生まれて初めての子どもだけのお留守番を心配しているが、他に方法がない。
「10時頃には帰るから、アイクと飯食って、風呂入って、寝かせてやってね」
「あ〜、わかった」
「アイクに好きなビデオ観せてやってね」
「あ〜」
うん、まぁ大丈夫だろ。中1だし。
「アイク、コータの言うこと、聞くんだぞ」
13時 「万代」でランチ。今日もカタヤキソバ。
パリパリの太麺と激熱のあんかけに、どうやら中毒になっちまったようだ。
別に自虐的なわけじゃなんだけど、口の内壁イジメには、これが一番だ。
16時45分 アイク引取り。
「今日は、どこかお出かけですか?」と保育士さん
「うん、今晩は女の子とライブ行くんだよ」
「え〜、隅に置けないですね」
「ははは。カミサンですよ、相手は」
「あっ、いいですね」
横で聞いていたママさんも「私、子どもが生まれてから、デートしたことない〜』
『ははは。いいでしょ〜?」
17時、コータはすでに帰宅済み。
17時20分、駅までチャリで暴走。
「ライブにチャリで行くってのも、何だか盛り上がらないなぁ」
18時20分 ドーム着。ホットドックと生ビールで腹ごしらえ。
会場に向かう人の群れは、みんな僕たちみたいなオッサン世代。異様だ。
ライブが始まっても「きゃ〜きゃ〜」声は皆無で、かわりに「お〜っ!」という地響きみたいなうなり声。
ライブは最高だった。カミサンもとても喜んでくれた。
往年のゴキゲンなナンバーを全部演奏してくれた。
ビリーのライブは、カミサンとは結婚前、つまり17年前にも来たんだ。だから、感慨もひとしおだ。
2時間半の贅沢な時間が終わって、普通なら一杯飲みに行きたいところだったけど、子どもが気になるので、家路を急ぐ。激混みのJR水道橋駅はパスしてタクシーで四谷まで。
オッサンは、時間をカネで解決する術を持っているのだ。
10時ちょい過ぎ、帰宅。すぐにビリーの「ライブ・ミレニアム」を取り出してBGMに。
「コータ、ありがとう、な」
「アイクはまだ寝てないよ。コンサート、どうだった?」
「いやぁ、すっごく良かったよ、ゴキゲンだよ。なぁ?」
「うんうん」とカミサン。
「ラストの息絶え絶えの『ピアノマン』、泣けたよなぁ、なあ?」
2006年11月27日(月)
昨夜は、19:30から23時過ぎまで、ノンストップで連立方程式の猛勉強。
サビついていた数学脳から軋むような音が確かに聞こえたような気がしたよ。
もちろん、僕の勉強じゃない。中1のコータに、だ。
移項とか、代入法、加減法…久々にやると、その解き方や公式よりも、なぜそうなるのか、という理論部分がとっても気になる。
今さらだけど、もう少し深く勉強しとけば良かったと反省。
そんなことは、コータの前ではおくびにも出さず、「父さんは、なんでも知っているのだ」と、ゆったりとした懐の深さを見せつける。
怒鳴り声もゲンコも出ず、穏やかに父子レッスン終了。
コータは、勉強中は必ず熱い煎茶を所望するんだよ。パブロフの犬みたいで、笑える。
だからお茶を所望しない時は、勉強するフリしてマンガ読んでるってことがすぐにわかっちゃう。
単純なヤツだよ、まったく。
でも、2元方程式や関数は、僕も殆ど記憶にないから、もうじき教えてあげられなくなるからね。
頼むよ。塾に行かせるような余り金はウチにはないのだから。
仮にあったとしても、あんなとこ行くぐらいだったら、家で本読んだり、映画を見てたほうが本人のためだ。
しかし一体全体、世のママたちはどうして子どもに勉強させたがるのかね。
23時40分 風呂に入る前に、コータから家庭教師代として10分間の肩もみ。
オツムは悪いが、肩もみはプロ級になったな。
24時 読みかけの『
エピタフ』(あせごの まん/角川文庫)
を持って、布団へ。土俗的な伝承を巧みに絡み合わせた、ねっとりとした怪奇譚集。
ん〜。タイトルにもなった「エピタフ」は秀逸だったけど、他のはすっきりしなかったな。
このタイトル、「エピタフ」は、僕の永遠のfavorite、
キング・クリムゾンのファーストに収められた耽美の名曲をモチーフにしたとのこと。
1962年生まれのこの作家、僕と同い年だから、音楽的にもシンクロするわけだね。
25時半 読後、何だかザラザラした違和感を押さえつつ、天井を睨んで就寝。
06時50分 起床。まずは布団の中で弁当のおかずを考える。
頭の中で、冷蔵庫の中身がバッとよみがえる。うん、今日はあれにしよう。
お湯を沸かして、ご飯をチンして、青海苔入りのオムレツをサクッと仕上げ、昨夜漬けたキュウリのピリ辛漬のタッパーを出す。
ご飯の上には、高菜明太子を乗せていっちょ上がり。
「コータ〜っ、起きろ〜。」「う〜」
07時25分 コータ登校。あいかわらず朝はムスッとしててゴキゲンが悪い。
くそ〜、なんだよアイツ。感じ悪いなぁ。
08時 カミサンとアイク起床
「父サン、今日モ オモラシ シナカッタヨ!」
「そっか。寝る前におしっこ、ちゃんとしたんだね」
アイクは、寝巻きのままエアコンの吹き出し口の下で遊び始める。
「直接、風にあたると、かゆくなるぞ〜」
カミサンは、コーヒー片手に洗濯機のスイッチオン。
08時55分 アイクとチャリンコ登園。
月曜日だから、今日は布団カバーや着替えの追加など、仕事が多いけど、飛び回り走り回るアイクに邪魔されつつ、手際よく処理。
「父サン、ジャアネ〜」
「アイク、上履きが右左アベコベだぞ」
「先生、今日も元気ですので、今週もよろしく〜」
09時15分 パンジーでカレーパンを買って出社。
保育園と会社が近いのは本当に恵まれているよ。
13時 飯田橋。お気に入りだったとんかつ屋が今月いっぱいで閉店するという話を聞いてたので、近所の印刷屋さんに訪問する用事を作ったのだ。
が、楽しみにしてたお店には、準備中の札と閉店のお知らせ。
「む〜、これまでか。残念だ。とても無念だ」
なにしろこの店のカツ丼、ねぎや卵でとじないんだよ。
揚げたてのヒレ肉を濃い目の天つゆにジュッとつけて、白いご飯に乗せるだけ。
これが、すっごく旨いんだなあ。
食欲が失せて、ランチ中止。文教堂で時間潰し30分。
15時 帰社
17時 六本木ヒルズへ
今日は、大きな仕事がもう一つあるんだ。
お父さんが主体的に育児や家庭にコミットしていくことを支援するための非営利法人『Fathering Japan』の設立総会なのだ。
17時50分 ヒルズの受付。
『身分が分かるものを拝見します』とロボットみたいな案内嬢。
『ん、身分は、最下層のグータラです』
『…免許証をお持ちでしたら、拝見します』
『ん、それを見せるとしたら、個人情報の取扱い資格がキミにあるかどうか、まず聞かないといけなくなるけど?』
『・・・・』
カミサンによく言われるけど、歳くって、だんだん性格悪くなってきた。
だけど、僕は思考停止した杓子定規を見ると、ガマンがならないんだよなぁ。
適当に切り上げて、18階の会議室へ。
設立総会ということで、定款や事業予算、収支計画など、それこそ杓子定規の頂点、お役所に提出する書類の採決。
形だけの議決じゃなくて、皆で意見を言いあって納得できる案を作り上げた。
19時半過ぎ、近所の居酒屋へ移動。
24時半 帰宅。京王線が運休したけど、西村さん、無事帰れたかな。
25時 子どもたち、カミサンに布団をかけ直し、『私が売られた日』(あすなろ書房) を読みつつ 眠。