もう10年も前になりますが、日常の生活に明け暮れていた折、かつて子供時分に蝶の採集に夢中になっていた頃が懐かしく甦ってきました。ただ最早、採集への興味は失せ、蝶の生きている姿を写真に収めたいとの思いで、蝶との係わりが復活しました。
童心に返って野山を駆け巡り、蝶との出会いに期待を膨らます。心が潤い、様々なイメージが想起します。イメージ通りのシーンに出会えたときの喜びもひとしおですが、偶然思いがけない光景を目にしたときは、他力の働きを感ぜずにはいられません。
ここに挙げました蝶は、北海道から沖縄・八重山までの日本国内において、その地では普通に見られるものが主ですが、蝶の写真を撮り始めてから今日までの間に特に印象に残った蝶達です。ややもすれば、希少な蝶に高い評価を与え、ありふれた蝶を軽視しがちですが、いのちの重さ、存在価値は、どの蝶も皆、同じ筈です。普通に見られる蝶に肩入れするつもりはありませんが、普通種といわれている蝶であっても十分に美しく、輝いて見える瞬間があることをお伝えできれば幸いです。
最後に、多くの方々にお世話になりました。蝶の生態や分類をお教えいただきました方々、貴重な情報をご提供いただきました方々に、心よりお礼申し上げます。
植本雅治
植本雅治写真集『風草の蝶』2007 「あとがき」より |