雑穀


日本古来の五穀とはコメ、ムギ、アワ、キビ、ダイズである。

アワ

草丈1〜1.5mのイネ科植物。糯(もち)と粳(うるち)があり、粉食、粒食される。寒冷地の春アワと温暖地の夏アワに生態が分かれている。多湿をきらう。
5〜6月種蒔き−9月下旬〜10月中旬収穫
日本では稲の伝来以前では三穀(アワ、ヒエ、キビ)が主食にされており、その中でもアワは最も重要な作物であった。

アワ飯

5〜6回とぎ洗いし、1晩浸水の後、1.6倍量の水と塩で炊飯。10分〜20分蒸らす。米と混ぜる場合は、アワは1〜2割。キビ飯のようなくどさはなく、穀物のコクが加わる。おいしいアワ飯を炊くには、湯が沸騰してからアワを入れる。その後、沸騰して鍋の水がなくなりかかったところをみはからって、ヘラで上下にかき回して火を取り除き、蓋をして余熱で蒸らす。

アワもち


米と同じやり方で作れる。

ヒエ

草丈1.3〜2mのイネ科植物。粉食、粒食される。粳(うるち)種のみ。
5月下旬種蒔き−9月中旬〜下旬に収穫
ヒエは丈夫で、冷害、湿害、日照の少ない気候によく耐える。
明治時代までは主食とされていた。
冷めるとパサつき食べにくくなる。ヒエは小粒で外皮が硬いために、精白が大変である。

ヒエ飯

5〜6回とぎ洗いし、1晩浸水した後、もう一度洗ってアクを落として、1.6倍量の水と塩で炊飯。10〜20分蒸らす。ヒエはよくアク抜きをしてから炊くとクセのない味で、食べやすくなる。

キビ

草丈1.3〜2mのイネ科植物。糯(もち)と粳(うるち)があり、粉食、粒食される。
生育期間が短く、耐干性が強い。
4月春蒔き−7月末〜8月お盆収穫、5月末〜6月蒔き−9月末〜10月上旬収穫
桃太郎のキビ団子で有名。

キビ飯

5〜6回とぎ洗いし、数時間〜1晩浸水の後、1.6倍量の水と塩で炊飯。10〜20分蒸らす。
米と混ぜる場合は、キビは1〜2割。甘みと少しのほろ苦味が加わる。塩少々を加えることで。この苦味を薄れる。

キビ餅

炊き立てのキビ(糯)をすり鉢に入れ、とんとん搗(つ)くと、黄色い餅になる。

高キビ

コーリャン、モロコシとも言う。
草丈1.5〜3.5mのイネ科の植物。糯(もち)と粳(うるち)があり、粉食、粒食される。
耐干性は最強。

コーリャン飯

キビ、アワ、ヒエのご飯はまだしも、コーリャン飯(モロコシ)はまずかったらしい。ちょっとしたほろ苦味を持ち、プチプチとした食感と美しい赤紫色である。体を冷やす食べ物である。

小麦

地球上で最も多く食べられている穀物。
現在経済栽培されているのは、パンや菓子に加工される普通の小麦と、マカロニ小麦=デュラム小麦の2系統さ作物が主体である。
味は甘く、少し寒であって、毒はない。皮と取り去ると熱。麺は熱でふすまは涼である。

大麦

糯(もち)と粳(うるち)があり、粉食、粒食される。
麦ご飯のファンも多い。
麦ご飯以外では、麦茶、麦味噌、ビール、ウイスキーへと姿を変えて登場する。

ライ麦

草丈1.5〜1.6mのイネ科の植物。
寒冷に強く、大概は粉に挽かれパン作りに用いられる。
秋蒔きされ夏に収穫される。
ほのかな酸味と独特の食感と香りを持つライ麦パンは、病みつきになるうまさで、腹持ちも良い。

ハト麦

草丈1〜1.5mのイネ科の植物。
薬効のあることで知られる。
粒食されるほか、粉に挽き、餅や団子も作られる。

大豆(ダイズ)

黄色ダイズと色ダイズに分けられる。
夏ダイズは5月〜6月種蒔き、秋ダイズは7月に入ってから種蒔き。
古事記や日本書紀にも登場する古来の五穀の一つである。
味噌、醤油、豆腐、納豆などの加工品としてなじみがある。
ダイズになる前に枝豆で食べられる。
豆についているポッチが黒や茶色の方が古来の在来種である。多くは、多収量目的と見栄えのために品種改良されて白色のポッチになっている。

小豆(アズキ)

古事記、日本書紀にも記載されている。
ハレの日の食事としての赤飯、彼岸のはぎ餅(おはぎ)。

ソバ(蕎麦)

タデ科の一年草。
やせた土地や冷涼な地域でも育ち、初夏(6月)に種を蒔くと9月には収穫できるので、きびしい条件下にあって開拓農民の貴重な食料でもあった。
麺やソバ切りなどの粉食のみならず、ソバ米とも言われるように米同様に粒食もできる。

トウモロコシ

草丈は1〜3.6m。
デントコーン、フリントコーン、スイートコーン、ポップコーンなどに分類される。
米、麦と並ぶ世界三大穀物の一つ。
日本で食べられているのは、甘味種の粒食がほとんどだが、世界的には加工用品種のデントコーンの栽培の方が多い。

アマランス

ヒエ科の植物。
5月末〜6月上旬に種を蒔き、3ヶ月ほどで収穫できる。
子実を食用にするほか、種類により野菜のように食用にしたり、観賞用にしたり、サイレージにしたり、穀粒のみならず、草も役立てられる。
人体に有害な蓚酸(しゅうさん)を持つが、常食、多食するものでもないので、問題視するほどの欠点とは思われない。

陸稲(おかぼ)

草丈が高くて根も大きいが、分けつ数は極めて少ない。
13世紀の文献に陸稲のことが書かれているが、明治中期になって陸稲作が増加した。
陸稲は長い間、水分条件の厳しい畑地に作られてきたので、それに適するような特徴が出てきており、生態型の違いによってのみ分類できる。しかし畑作の中では水を必要とする方である。
籾は水稲に比べて大きくやや長く、芒の残っているものがある。玄米は光沢が悪く、濁っている。粒は厚みが少なく長大で溝が深い。
直播きが普通である。
一昔前、水田のない畑作地帯ではヒエやアワにまさる貴重な食糧であった。

菜種(ナタネ)

ナタネから初めて油が搾られたのは室町時代末期であり、江戸時代になってから栽培が盛んになった。
春に黄色い花を咲かせる。

参考文献


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