ヨガ
1.ヨガの紹介
ヨガ(Yoga)は、超越した自己(Self)あるいは神のような高度な自己を実現する可能性を持っている。物質生活には限りがあり、また、身体や心の喜びも同様に限りあることが本当に理解できれば、私達には、新しい知覚が開かれる。私達が求める幸福とは、神経系統や刺激などとは独立したものであり、自分が誰であるかを知ったときに初めて得られるものである。これは、心身、自我、経験を超越した自己へ目覚めるときでなのある。
ヨガの起源は不明である。約2500年前に完成された神の歌 Bhagavad-Gita にはヨガのことが記述されている。また、紀元前約3000年に完成された聖典 Rig-Veda にも見られる。
2.ヨガの重要な分脈
知の道: Jnana-Yoga
知によって、真実、自己、宇宙の基盤が明らかになる。
無我の道: Karma-Yoga
知を得るために瞑想などの儀式を遂行する。
愛の献身の道: Bhakti-Yoga
クリシュナ(Krishna)神を崇拝する。
神聖な音の道: Mantra-Yoga
暗唱や歌を、心を集中したり、感覚を和らげたり、高いレベルに意識を上昇させたり、心を開花させる状態を創造するための道具として用いる。
王の道: Raja-Yoga
約2000年前に書かれたヨガ・スートラ(Yoga-Sutra)において Patanjali が形成したクラシック・ヨガと同じある。
内面の力の道: Hatha-Yoga
ハタ(hatha)は力を意味する。自由へ至る道は、病んだ身体が障害となっている。このため身体を適切な方法で訓練する。これが、西欧などで最もよく知られているヨガである。
3.導師、弟子、道
ヨガは、実践してみなければ理解できない。
4.幸福とヨガの道徳の基盤
ヨガ・スートラには5つの道徳に関する記述がある。
1. 害しないこと
2. 正直であること
3. 盗まないこと
4. 貞節であること
5. 無欲であること
5.リラックス、瞑想、健康のための清めと姿勢
身体を清めるために以下に関連する6つの行為がある。
1. 清潔(内臓、歯、胸、尻)
2. 膀胱
3. 鼻
4. 腹
5. 目
6. 口腔
姿勢は安定した快適なものであるべきである。このためには、緊張せず、無心となる必要がある。瞑想の姿勢には次の2つがある。
1. Siddha-asana(熟練者の姿勢)
2. Padma-asana(蓮(はす)の姿勢)
6.ヨガのダイエット
ヨガのダイエットの目的は、体内の環境、心を維持することである。この知識はアーユル・ヴェーダと繋がっている。ヨガ行者は、大抵、ベジタリアン(lacto-vegetarian)であり、果物、野菜、穀粒、ミルクと木の実、乳製品を食べている。
7.呼吸:生命力と至福への秘密の架け橋
ヨガの呼吸方法は、単純に酸素を肺に吸入するだけではなく、生命力と心の変化の流れを調節する技術である。
1. 吸う、止める、吐くを1:4:2のリズムで行う
2. 右の鼻孔から吸って、左の鼻孔から吐く
3. 両方の鼻孔から吸って、鼻で止めて、口に含む
4. 口から吸って両方の鼻孔から吐く
5. 両方の鼻孔から素早く吸って吐く
6. 吸った後、息を止める時間を伸ばす
7. 眉毛の間(第三の目)に集中してゆっくりと吐く
8. できるだけ長く息を止める
8.集中と瞑想への道
私達は音を聞かないようにすれば、より集中できる。このように、感覚からの入力に対して注意を払わなければ、内面により集中できる。内面を意識すると、心に動揺がわき上がってくるが、これを少なくしていく。このようにして、至福の実現や自己の確立に調子を合わせていく。
焦点を合わせる場所は、精神エネルギーの中心である、脊椎の基、性器官、へそ、心臓、のど、額、頭、の7ヶ所でありチャクラと言われている。瞑想を訓練する方法は、声を出したり、音を使ったり、想像力を働かせたりするものなどがある。しばらくの間集中できるようになれば、意識に目立った変化が現れる。普通の外の刺激はもはや内面の穏やかな状態を乱すこともなく、心の集中が容易になり愉快になる。そして、精神エネルギーを集中し、体の中央を通してそれを頭に到達させる。このときに、エネルギーの通路に障害物があれば不快感を伴い、それを乱す。この障害を取り除くために、清めは絶対に行われていなければならない。
9.力の神聖な音:マントラ
世界は振動で構成されている。マントラ・ヨガでは、精神的な変化や超越の手段として音を用いる。音は、瞑想したりすると、身体を包む生命エネルギーより発生する。ただし、非常に微妙であるため心でしか感じとれない。マントラとは力を蓄えた物(音)であり、これは、精神的救済と自由のための道具として使われる。
10.蛇の力:Kundalini−Shakti
「突然、滝が流れるような轟きとともに、光の川が、脳から脊柱を通って流れるのを感じた。それは次第に明るさを増し、音は大きくなっていった。そして、揺さぶられたかと思うと、光に包まれた自分が、体からすべり出していた。」
クンダリーニとは蛇(へび)であり、精神エネルギーの中心である脊椎の基に、三回転半とぐろを巻いて眠っている。これが目覚めると、心臓、脈、腸、脳などの身体の機能をコントロールされ、さらに、意識は革新されて超越した個性となる。そして、神体となる。
11.タントラ・ヨガ:性エネルギーの変化
タントラ・ヨガでは、性エネルギーを用いて、精神を増幅させる。
12.自己超越、エクスタシー、自由
精神と肉体が同一であるとすることから誤りが生じている。私達の知識からこれを取り除けば自我は消滅し、超越した自己を形成できる。
13.現代世界におけるヨガ
私達は、不確かさ、混乱、絶望の世界に住んでいる。これらの問題は、なかなか克服できそうもない。一方、時代を超えた知識や知恵は、私達の目に触れない地下を流れており、それを探検している人達もいる。
ヨガがフィットネスのためだけのものであると誤解するならば、本当のヨガの力を見過ごすことになるだろう。
参考文献
Georg Feuerstein, The Shambhala Guide to Yoga (Shambhala Boston & London, 1996)
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