マレーシア(ジャングルトレッキング)

マレーシア(ジャングルトレッキング)写真集


1995年8月26日から9月3日までマレーシア旅行をした。
目的はマレーシア最大の「タマン・ヌガラ国立公園」に行くことだった。
無事帰国できたので、ジャングルにおける私の実体験をここに報告する。

日程

 8月26日 マレーシア入国  8月27日 クアラ・ルンプール観光  8月28日 クアラ・ルンプール観光(旅行代理店でバス予約)  8月29日 クアラ・ルンプールからタマン・ヌガラ国立公園に移動  8月30日 ジャングルトレッキングをして、自然観察小屋に宿泊  8月31日 洞窟探検  9月 1日 タマン・ヌガラ国立公園からクアラルンプールに移動  9月 2日 クアラ・ルンプール観光して、帰国


8月29日(クアラ・ルンプールからタマン・ヌガラ国立公園に移動)

我々は、クアラ・ルンプールのチャイナタウンにある安宿(バックパッカーズ・トラベラーズ・イン)で出会い、行き先が同じだったため、その後、行動を共にすることとなった。我々とは、私と友人のことである。

朝7時過ぎ、宿の前で車が迎えに来るのを待った。昨日、MATIC(マレーシアの旅行案内所)でタマン・ヌガラ国立公園往復のバス(グレイト・バリュー・ホリデイズ)を予約しておいたのである。他のツーリストたちをも、それぞれの宿の前で拾って、9時頃にバスは出発した。
途中、バスは休憩を取った。我々はインド風の食事であるナンとカレーそれにテーオーアイス(砂糖入アイスティー)を注文した。私は手でつまんで食べた。ここマレーシアでは、マレー料理、中華料理、インド料理にありつける。チャイナタウンの中華料理は特に旨かった。

午後1時前、クアラ・テンベリンに到着。受付で、タマン・ヌガラ国立公園の入園料とカメラ使用料を支払った。
これより先の約60kmはボートに乗り換えて進んだ。午後2時にボートは出発し、約20km/h位の速度で川をさかのぼっていった。我々は、先頭の座席に座った。目の前には、黄土色の川、両側には緑の森が広がって見えた。川幅も広く流れもある。いつの間にか、我々は、そよ風とボートの揺れとで、心地よく眠りについていた。
午後5時、タマン・ヌガラ国立公園内のクアラ・タハンに到着。受付で、入園手続きを済ませた後、即座に明日以降の行動計画を立て、ブンブン・クンバン(自然観察小屋)を明日の宿として予約した。今夜は、クアラ・タハンの対岸で探したリアナ・ホステルに泊まることにした。川は、水上レストランのボートが無料で渡してくれるのだ。


8月30日(ジャングルトレッキングをして、自然観察小屋に宿泊)

朝7時半、鶏の鳴き声で目を覚ました。川岸にある水上レストランで朝食を取った。今日は一日中トレッキングなので、ご飯を食いだめした。食後、テーブルに置いてあるまんじゅうをつまんだ。思ったより旨かったので、今日の食事用としていくつか買った。

9時過ぎ、いよいよジャングルトレッキングに出発。
一歩森の中に足を踏み入れると、鳥のさえずりが聞こえ始めた。我々は立ち止まって、鳥を探した。いたいた。

(私)「ピー」
(鳥)「ピー」
(私)「ピー」
(鳥)「ピー」
  ・・・
口笛を吹くと、鳥も答えてくれた。十羽位は、目で確認できた。また、何かが木をつたって動いていた。リスだった。

歩道の脇に、草で覆っただけの簡単な家があった。そして、そばに上半身裸の原住民(オラン・アスリ)がいた。情報によると、彼らは今も狩猟生活を続けているそうだ。

鹿に出会った。近づいても逃げ出そうとしなかった。それどころか、むしろ、我々の後をついて来たではないか。人間慣れしているようであった。レストランで買ったまんじゅうを与えると、鹿はおいしそうに食べた。これが、桃太郎のきびだんごになろうとは、そのときはそこまでは考えなかった。我々は、鹿に口笛とジェスチャーと日本語で、我々と一緒に来るようにと話しかけた。少し歩いては立ち止まって後ろを振り返り、鹿が来ていることを確かめながら進んだ。鹿は、我々との距離をきちんと5m程あけて後からついて来ていた。
歩道が倒木で塞がっていると、鹿が通れるか見守りながら進んだ。鹿も、最初のうちは躊躇していた倒木も、回数を重ねる度に、すんなりと飛び越えられるようになっていった。
途中で何度か、他のツーリストや現地の村人に出会ったりもしたが、鹿は、きちんと我々の後を歩いてきた。鹿も主人を理解しているみたいだった。我々は、すっかり気分を良くし、我々は、鹿を「バンビ」と名付けた。この後、今夜の宿までの約6時間、我々二人と鹿一匹のジャングルトレッキングが続いた。

歩道の所々に、目的地であるブンブン・クンバンまでの距離の標識が立っていたので、歩いた距離と、現在時刻を記録することで、歩く早さを確認しながら進んだ。最初のころ、我々は約1.5km/hの速さで進んでいた。途中からは2km/h以上で進めるようになった。

このトレッキングコースには、アップダウンは少ないので歩きやすいが、小川が多く小石の上を渡ったり、丸太橋を渡ったりした。昼頃になり暑くなってくると、鹿は小川に体を沈めて冷やしていた。「ピー、ピー」と口笛で呼ぶと、鹿は我々の後をついて来た。

もう、何時間も、鹿と一緒に行動している。途中で出会う人には、鹿を「マイフレンド」と紹介することにした。そのくらい、親近感が持てるようになった。

我々は、ジャングル内に二週間滞在したと言うツーリストから、ジャングルトレッキングのコツは、

 ・足元をよく見て歩く
 ・立ち止まって、しばらくじっとして、鳥や動物を探す
と聞いていた。また、ヒルがとりついていないか、ときどき二人でお互いの体を検査した方がよいとアドバイスを受けていた。
それにも関わらず、私は、ふくらはぎから、たらりと出血しているのを発見した。痛みやかゆみは全くなかった。これがヒルの仕業であることはすぐに分かった。傷口は小さいのだが、本当に血は止まらなかった。それで、バンドエイドを傷口に貼って先に進んだ。

直径50cmもの大きな足跡があった。昨夜、象を見たと言う人の話しを聞いていたので、すぐに象のものだと判別できた。「象に出くわしたらどうしよう!」と我々は少し緊張した。我々は、野生の象の性格などの知識・経験は全く持ち合わせていなかった。「もし象に出くわしたら、その場の状況に応じて行動しよう。でも多分、走って逃げるだろうな!」、などと考えていた。しばらく進むと、今度は糞があった。それも、こぶし大のものが10数個集まっていた。これも、間違いなく象のものだと思った。糞はまだ乾燥しておらず、最近のものらしかった。我々は、ますます緊張して先に進んだ。
結局、何事も起こらず、このジャングルのまっただ中にあるバードウォッチング小屋に着いた。午後4時だった。

夜は暗くて何も見えなかった。天気が良ければ月明かりなどでもう少し明るいのだろうが、あいにく、ずっと雨が降り続いていた。


8月31日(洞窟探検)

朝早く、目を覚ました。結構、熟睡できた。そして、小屋のすぐ近くにある小川まで、動物を探しに出かけた。ここは、二日前の夜、水浴びに来ている象が目撃された場所であった。また、我々も、昨日、直径20cm位の動物の足跡を発見した場所でもあった。我々は、これを虎の足跡ではないかと思い少し怖かった。ジャングル内では何が起こるか想像ができないので、背中合わせに立ち、お互いに反対方向を監視していた。
一時間程そこにいて、蛇、カエル、リスが目撃できた。残念ながら、期待していた中・大型動物には会えなかった。

宿から、クアラ・テレガンまで歩いて、そこから、ボートでクアラ・タハンまで川を下った。川は浅く、流れの急な所も何カ所かあった。そんな所でも、ボートは、水しぶきをあげながら上手に下っていった。後ろでエンジンを操作する人と、先頭でボートの通る道の指示をし、体重移動によりボートの舵の手助けをする人の二人で、このボートは運転されていた。この川下りはスリルがあった。

午後、ボートをチャーターして、グア・テリンガ(洞窟)に行った。我々は、懐中電灯の明かりと、道順を示すために張られたロープを頼りに奥へ入っていった。洞窟内は暗く、懐中電灯で進路を確かめながらゆっくりゆっくりと進んでいった。驚いた。コウモリが天井一面にぶら下がっていたのだった。その数は少なく見積もっても100匹以上はあった。一、二匹ならまだしも、この数で、万が一襲って来られたら大変だと思い、我々は光を当てないように、また静かに通り過ぎた。
ロープはまだまだ奥の方に向かって続いていた。こんな所を本当に通るのかと思うような所もあった。リュックサックを下ろして、腹這いでようやく通れるような狭い場所があった。しばらくして、コウモリは襲って来ないということが分かって安心した。ただし、洞窟内はコウモリの糞のおかげで、臭いし、床一面たっぷりと糞のじゅうたんに覆われており、よく滑った。両手、両足を最大限に活用したため、手、靴は当然、ズボンまでもが糞にまみれた。
狭い通路を抜けると、明かりが見えた。出口だった。入口から出口まで約50分の洞窟探検だった。

その夜、川に浮かぶ水上レストランで、国立公園内のガイドと話しをする機会があり、我々が発見した足跡について尋ねた。50cmのは象のもの、20cmのも象の子どものものだろうと言うことだった。彼は、象の耳はだてに大きいのではなく、40km先まで聞こえ、人の気配を感じられると言っていた。また、虎は、国立公園内に確かに存在はするが、もっとジャングルの奥地に住んでいると言うことだった。

その夜、蛍が飛んでいるのを見た。日本の蛍とは光り方が違っていた。


9月1日(タマン・ヌガラ国立公園からクアラルンプールに移動)

また、鶏の鳴き声で目が覚めた。夜中ずっと、部屋の中を、ネズミが這いずりまわっていた。
庭に出て、鶏たちにパンを与えると、がつがつとよく食べた。日本の田舎生活を思い出した。
ボートの時間まで、そこで、のんびりと時間を過ごした。
9:00にボートでクアラ・タハンを出発した。そのとき、友人と別れた。
11:00にクアラ・テンベリンに着き、12:30にバスが出て、午後4時半位にクアラ・ルンプールに戻って来た。

そこから、チャイナタウンの安宿に向かって歩いた。


感想

マレーシアのジャングルとは、つるやコケで人間の足の踏み場もないような森の中を想像していた。実際は、ちょっと違ったが、野生の象の足跡を見たりして興奮した場面もあった。なによりも、一日中、鹿と一緒にトレッキングした思い出は忘れられない。


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