その気持ちがあればきっとがんばれる。自分自身にそう言い聞かせて車を出した。
 動物病院に向かう間、シロコは吠え続けた。下痢便とおしっこをしてケージの中はぐちゃぐちゃだ。声をかけても聞くそぶりもない。今まで人間の言う事を聞いた事もないから、あたりまえか。せめて自分の新しい名前だけでも覚えてほしいと思い、「シロコ、大丈夫だよ。シロコ・・・」と声をかけた。








     
 第12章  最高のイヴA
 ケージごと車に載せ、お礼もそこそこに出発しようとすると、これまでシロコたちの食餌や小屋の掃除をしてくれていた女性が駆け寄ってきて車の中で怯えて吠えまくっているシロコに「あんた、よかったね。幸せになるんだよ。」と、ケージに手をやり声をかけてくれた。シロコは一瞬鳴き止んだ。
 責任の重大さに押しつぶされそうになった。そう、私たちのところに来るまでシロコはたくさんの人のお世話になってきたのだ。そして、そのバトンを今、私たちは受け取ったのだ。シロコのこれからの人生(犬生)を私たちが丸ごと抱え込んだのだ。シロコのこれからを幸せにする自身は?と聞かれて「100%あります!」とは、今は答えられない。これからがあまりにも未知の世界で想像もできないが、私たちはシロコが大好きだ。