松下幸之助の「商いの心」

    お客様づくり・そのB

衆知を生かす心構え

平成21年7月

 自分はある程度儲けて売り、またそれを使う人が喜んでいる姿に楽しみを覚える、というのは生きがいがあります。また、そういうような考えでお得意先を回っていけば、また接していけば決してお得意は逃げないと思います。「むこうは、なかなか値はまけないけれども非常に親切だから、むこうで買うことに決めているのや」ということになってくる。実際そういう需要者がたくさんありますね。そういう人たちは、そこで初めてファンというか、ひいきになってくれる。そういう基礎の上に立ったひいきというものは、今度はひいきがだんだん固まってきて、もう絶対逃げないようになってくると思うんです。
 だから、われわれ電器屋が電器屋としてのファンというものをもつことができるかどうかということです。そういうファンに対してなら、適正利潤であれば必ず通ります。そのファンもつくれないような商売人は、私はあかんと思います。ファンづくりというてもそうむずかしいものではない。やはり自分の主張すべきことは主張し、正しい姿というものがピシッと先方に入れば、先方がファンになるんです。「なかなか話せる商売人、話せる店やなあ。わしはおまえのところで買うてやるで」とこうなる。これは離れません。もちろん実際に価値のないものを売っているのであれば、これはいつか離れますよ、ファンでも。けれどもそうではない。適正利潤を取ってあとは感謝しながらサービスをちゃんとして見守ってあげていたら、私はお得意というものは離れないものだと思うのです。

(『松下幸之助 経営の真髄』より)

解説 

【解説】

 上記の話は、昭和40年、弊社創業者・松下幸之助が「ナショナルテレビ600万台達成感謝セール」の会合で販売店の方々に向けて語った一節です。
 このように松下は事あるごとにファンづくりの重要性を訴えていましたが、長年の商売の体験からお得意に愛される秘訣、ファンをつくる秘訣を、社員に、あるいは外部の人たちにいろいろな表現で述べています。その主要な項目を10ポイントにまとめると、次のようなものが挙げられます。

 とくにこの3つについて松下は、「商人としての要件は何か」と問われると必ず挙げていました。
 さらに加えるならば、

 などを日頃から重視していたようです。
 不況が長引き、厳しい商売を余儀なくされていると、いったい何をどのように改善すべきかもわからなくなりがちです。しかし、本当に商人としての根本のあり方として、自分たちがファンをふやすような態度や行動を取れているかを謙虚に見直すことも必要ではないでしょうか。

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