松下幸之助の「商いの心」
平成19年12月
最近は、競争がなかなか激しいこともあって、個々のお店なり商店街が、それぞれいろいろと工夫を凝らし、販売を進めています。いわゆる景品つき販売というものもその一つで、多くのお店、商店街が少しでも多くお客さんの関心をひくものをということで、いろいろ知恵をしぼっています。その結果、はなはだしい場合は外国への招待旅行といった景品まで出ているようです。 私は、こうした景品つき販売というものは、お客さんに喜ばれることでもあるし、また商売の促進に結びつくことであれば、大いに意義のあることだとも思います。 ところで、お客さんにおつけする景品のうちで、何にもまして重要なものは何かということになったら、皆さんはどんな景品をあげられるでしょうか。 考え方はいろいろありましょうが、私はそれは、親切な“笑顔”ではないかと思います。もちろん、ハワイ旅行というような景品も結構には違いありませんが、いつもご愛顧いただいているお客さんに対して、感謝の気持ちにあふれた“笑顔”の景品を日ごろからおつけしていれば、あえてハワイ旅行というようなことをせずとも、お客さんはきっと満足してくださるのではないかと思います。 また逆に、そういう景品がなければ、たとえ外国旅行に招待したとしても、お客さんとのつながりは一時的なものに終わってしまうのではないでしょうか。 したがって、かりに私どもが、他のお店がただ売らんがために高額の景品をつけているからということで、その表面の姿に惑わされ、自分のところも同じような景品をつけなければならないと考えるならば、それは決して好ましいことではないと思います。結局そこからは過当競争しか生まれないでしょう。 “あのお店はあんな、いわば常識はずれの景品をつけているが、自分のところは親切な笑顔のサービスに徹しよう”というように、いわば“徳をもって報いる”方策で臨んでこそ、お客さんに心から喜んでいただけ、お店のよきファンにもなっていただけるのではないでしょうか。考え方はいろいろありましょうが、私はそう信じています。 (『商売心得帖』より) |
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