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東京テクノ・フォーラム21
産業・学界・官界の先端科学技術の情報と参加企業を太い絆で結ぶ
研究交流会
●第60回研究交流会 2002年3月15日
超ミニ産学協同が突き破った 排ガス環境基準とメカニズム
河野雅弘 高知工大 教授
ヒノキ精油、効用に注目
DEP、窒素酸化物…汚染物質を巧みに除去
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河野雅弘氏 高知工大 教授
■浄化装置も登場 間伐材を有効利用
 ディーゼル車などが排出するディーゼル排気微粒子(DEP)の除去技術開発が、大きな課題となっている。高知工科大などが開発した、ヒノキ精油を使ってDEPを取り除く浄化装置がこのほど、「東京テクノ・フォーラム21」(代表=堀川吉則・読売新聞社専務取締役編集主幹)の第六十回研究交流会で紹介された。ヒノキ精油には、DEP除去以外にもさまざまな化学物質の除去、分解を促進する性質があり、環境保全技術に応用の可能性がありそうだ。(吉田典之)

 ヒノキ精油は、雑菌の繁殖を抑えたり、気分をそう快にさせたりする効果がある。ベンチャー企業のジュオンメディカルシステム社(本社・東京)は、ヒノキ精油を使った化粧品や空気清浄器を製造していたが、建材の接着剤に含まれるホルムアルデヒドを除く効果を確認し、「排ガス浄化にも使えないか」(西本徹郎社長)と、同大と共同でこの装置を開発した。 水で希釈したヒノキ精油を蒸発させて排ガスに混ぜると、小さなDEP粒子が互いにくっつき合って凝集し、受け皿に落ちて取り除かれる。除去装置はこの原理を応用している。 特徴の一つは、電気などのエネルギーが不要なこと。水溶液蒸気と排ガスの混合は、「霧吹きの原理」を活用。凝集したDEPの除去は、最近フィルターのない電気掃除機に採用されている「サイクロン原理」(図)を採用した。
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 河野雅弘・高知工科大教授(生命環境工学)は「DEPに含まれる、反応性の高い分子(ラジカル)などの有害成分も化学的に変化させるため、回収したDEPを焼却しても安全」と説明する。
 排気量三千ccのエンジン用浄化装置を、東京都環境科学研究所で測定したところ、DEPは走行一キロ・メートルあたり〇・〇八グラムから同〇・〇五グラムへと減少、今年十月からの国の規制値(同〇・〇六グラム)を下回った。窒素酸化物(NOx)も、規制値をクリアした。
 しかし現在のDEP計測法は、光を反射する比較的大きな粒子の量しかわからない。河野教授らは、DEP中の有害成分の一つ「炭素ラジカル」に着目。このラジカル分子を標識に「電子スピン共鳴法(ESR)」でより精密に測定したところ、有害なDEPを九割以上除去できることを確認している。
 現在、ヒノキ精油中の有効成分を研究中だが、河野教授は「DEPのほか、NOxや二酸化炭素も除去する効果があり、そのメカニズムを解明したい」と話している。
 精油を取り出すヒノキには、間伐材が使われるため、間伐材の有効利用を通し、森林保全にも貢献できる。西本社長らは現在、高知県と協力し、日本最後の清流と呼ばれる四万十川上流のヒノキ林を保全するプロジェクトにも参画。この間伐材を使った浄化装置を、ディーゼルエンジンの公用車約四十台に取り付け、効果を追跡している。

DEP 浮遊粒子状物質(SPM)の一種で、ディーゼル排気に含まれる黒いすす状の物質。都市型のぜんそくの原因物質であることが一九九三年に確認され、以後、肺がんの原因、アレルギー症状の増幅、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)作用などが指摘されている。エンジン内での燃焼温度を高くすればDEPは減少するが、窒素酸化物が増加してしまい、両者の低減が技術対策の大きな課題だ。
 自動車排ガスによる健康被害をめぐり、川崎市、兵庫県尼崎市など全国各地で、国や道路公団を相手に損害賠償訴訟が起こされており、「東京大気汚染訴訟」も、今夏に判決が予定されている。