Nepenthes aristolochioides  Jebb & Cheek




袋の形が他の Nepenthes とは全く違い、ユニークです

ネペンテス アリストロキオイデス  本種はスマトラに固有の Nepenthes で、袋の形は極めて独特なもので、まるでキャンプで使う寝袋が、頭の方を上にして立てられて、つる の先に付いているようです。
 袋の口も上ではなく、横に付いていで、本当に寝袋そっくりです。
 本種の種小名は、捕虫袋がアリストロキアの花に似ていることから命名されました。  容易に入手できますが、海抜約 2,000m の蘚苔林に自生しているので、栽培は少し難しそうです。ユニークさでは N.lowii といい勝負だと思いますが、果たして普及するでしょうか?

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 本種は、最も奇妙な Nepenthes で、希少種の一つでもある。本種の驚くべき袋は、解釈を受け付けず、その地球外生物のような外観は、本種が Nepenthes に属していることを忘れてしまいそうである。空中に着く袋は、概して下の部分が漏斗形で、上部は小嚢状、口は正面につき、垂直である。色は緑色のかった白色で、無数の赤斑が外面のほとんど全てを覆っている。ふたは全体が深赤色で、概して、口から約 90°の角度で着いている。下の袋は小さなロゼットにしか着かないが、よじ登る段階に入るのが早い。空中に着く袋と対象的に、下の袋の口は傾いているか水平である。下の袋は厚い苔に埋まっていて、口とふたしか見えないという観察結果もある。本種の罠は単なる落とし穴式であり、そのために口が垂直にはならない様になっているとの説もある。しかし、空中の袋では事情が違う。正面から見ると、ふたと襟、それから袋の前の正面が暗く見えるが、袋の内面は明るく見える。ドームの屋根から光が射しこむからである。この獲物の捕らえ方は、北アメリカのピッチャープラント、Darligntonia californicaSarracenia minor と同様のものであり、それらもドーム状の袋を持っている。潜在的な獲物が袋に入ると、ドーム状の明るい屋根に引き寄せられ、出口を見失ってしまうのである。多くのケースでは、獲物はドームの中を這い回り、次第に底の方に落ちていって、消化液におぼれてしまうのである。本種の空中の袋の捕らえる獲物の大部分は小さなハエであり、それらは明るい光に強く引き付けられる。

 こんにちまで、本種の獲物の中に埋在動物は観察されていない。同じ自生地に生えている N.singalana には多量に捕らえられているにもかかわらずである。袋の構造から、他の普通の獲物と同様、埋在動物の成虫が現れるとすぐに方向を見失わせてしまうため、埋在動物はコロニーを作るのを避けているのかもしれない。

 本種は、1956年に ジャンビ の Tujuh山ではじめて採集された。しかしその後、この死火山は、近隣のスマトラの最高峰 ケリンチ山と誤って扱われ、本種が、Tujuh山に固有でないとの誤解を与えた。50年以上前に採集されたのに、この珍しい植物は 1997年まで記載されなかった。現在ではその自生地は広く知られるところとなり、過剰な採集によって絶滅の危機にある。自生地が国立公園に指定されているにもかかわらずである。この素晴らしい植物を自生地で観察するのは、疑いなくその地域の植物学的な目玉であり、全ての野生の個体が発見され保護されるように、手を尽くすべきである。

 本種は気難しく、険しい尾根の頂上や直下の、水苔が豊富にある深い鮮苔林にしか豊富に産しない。ほとんどは地生であるが、着生するものもあり、木の幹や枝に生えた苔の中に根を下ろしている。N.singalanaN.gymnamphora も同じ地域に産し、本種と N.singalana との交配種も観察されている。本種はケリンチ山では採集されていないが、この山の大部分は辺鄙なところで、ほとんど探検されていないことから、新たな個体群が発見される可能性が大と言える。

 本種の特徴的な形態から、ほかの種と間違えることはまず無いだろう。垂直に開いた口が、何よりの特徴である。本種が、N.talangensis と非常に類似しているとの指摘もあるが、口の開いている方向で容易に区別できる。加えて、N.talangensis の口は長く伸びて短い首を形成しているのに対して、本種は首を欠き、ふたが袋の前面に着いている。口もふたも N.talangensis の方がかなり大きい。この 2種は自生の様子も異なっていて、N.talangensis が地生でわずかしか攀じ登らないのに対して、本種は時に着生し、木々の樹冠まで高く攀じ登る。

 本種は、N.klossii ともいくつかの面で類似しているが、この 2つの種は地理的に隔離されており、非常に近縁とは言いがたい。両種のユニークな適応は、進化の結果の好例で、それほど近縁でもない 2つの種が類似した生態系でお互いに独立して進化した結果、同じような特徴を得たといえる。

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