Nepenthes gymnamphora  Reinw. ex Nees




独特な形と美しい色彩の袋を持つ高地生種です

ネペンテス ギムナンフォラ  本種は少なくとも、インドネシアのジャワ島に自生しています。本種に非常に近縁な種である、N.pectinataN.xiphioides と混同されてきました。
 袋は独特な形をしています。袋の色は通常緑色ですが、天然のものでは紫色の斑点が多く入っています。
 栽培品では非常に美しい サンゴのようなピンク色になるものがあります。

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 本種は、受けるに足るだけの注目を浴びることは滅多にない。おそらくそれは、自生地で本種を観察した人の多くが同定するのが非常に難しいので、本種固有の美しさが見落とされてきたものと思われる。ここで扱うように、本種は少なくとも 4つの分類群からなる。それは、N.pectinataN.xiphioides、そして、北スマトラの Sorik Merapi山産の未記載の種である。この 4つを一緒にするのは簡単だが、それではさまざまな解釈を理解するのが困難になる。以下に、それぞれの分類群について順に示すが、その中には 4つをまとめて N.gymnamphora とする説も含まれる。

N.gymnamphoraN.pectinata

 N.pectinata のページを参照のこと。

N.xiphioides

 N.xiphioides のページを参照のこと。

Sorik Merapi山産の未記載種

 この植物は 1998年に最初に観察された。N.xiphioides 同様、日照の強い開けた場所に自生しているが、大きさは N.pectinata と同じである。葉の基部は茎に沿って沿下し、葉身は基部に向かって徐々にあるいは急に狭くなる。上の袋はしばしば形成され、襟の内側の表面に非常に短い縁歯を持つ。下の袋はヒップの上が非常に長く、ロゼットは N.adnata と外見上類似している。色彩の点では、袋全体が淡緑色のものから褐色の色合いを持つ緑色のものまでさまざまである。毛の生え方は、N.pectinata と類似している。花序は 2001年の段階では知られていない。

4つの分類群を区別することの困難さ

 何回も試みたのにもかかわらず、これまでの説では、N.pectinataN.gymnamphora を違いを効率的に用いて、ジャワ産の個体群とスマトラ産の個体群をフィールドで区別することが出来なかったので、ここでは新しい説を示す。

 N.pectinataN.gymnamphora を区別する従来の説は、全てが不安定な性質によるものである。例えば、スマトラ(Singgalang山、Merapi山、Alahanpanjang から Sirukam など)のいくつかの個体群は、上の袋をつける。これ自身はとりわけ重要なことではないが、ジャワのいくつかの個体群では、そうではない。スマトラのいくつかの固体の上の袋の襟の内側に着く縁歯は、ジャワのものよりももっと長いが、他のものは短い。この特徴は、しばしば作られる空中の袋を区別するのに使用できるが、スマトラの植物の大部分は、それらを欠き、上の袋が長い縁歯を持つのか短い縁歯を持つのかを議論することが出来ない。上の袋が極めて短い縁歯を持つ個体群がスマトラでは少なくとも 3つ知られており、この性質は島全体で安定したものとは言えない。

 スマトラの植物の葉が葉柄に向かって徐々に漸尖形とは必ずしも言えない。この性質は多くの個体群で、一つ一つの個体によって異なる。植物の基部に向かって、ジャワ島のものと比較すると、葉の基部はしばしばもっと急に幅が狭くなる。しかし、上に攀じ登る茎では、反対のことが起こっている。Kerinci山より北のスマトラの多くの個体群では、葉の基部には幅の広い翼があり、茎にそって沿下する。しかし、Marapi山ではこの特徴は大きく変異する。葉の基部は短い茎では沿下するが、長い茎では沿下しないのである。Kerinci山の南とジャワ島の多くの個体群では、この特徴を示さないが、Gede山では多数の植物がそれを示す。そしていくつかは、葉の基部の一方のみが葉柄に沿って沿下し、もう一方の側は翼もなければ沿下もしないのである!N.xiphioides は、N.pectinata のシノニムとされたが、葉の基部が沿下することは決してない。葉の基部の構造は、それゆえに、ジャワ島とスマトラの個体群を区別する特徴にはならないのである。

 西スマトラ産の植物の毛は、ジャワ島産のものより概して濃い。しかし、Bukittinggi の北方の Barisan山脈の個体群は、N.xiphioides と同様、無毛である。Sorik Merapi山の個体群の毛は、N.pectinata と同様であるが、後者に見られるような上の袋の長い明瞭な縁歯はない。

 ジャンビのBelirang山と、Barisan山脈(N.pectinata の産地とされたところ)の植物は、ロゼットの袋をつけるが全体的に壷形ではなく、細長くてヒップの上が円筒形で、Sorik Merapi山のものに似ている。しかし、他のほとんどの点では、N.pectinata と同様である。

 これらの変異を持つ植物が、自生地で共生していた場合、しばしば区別するのは非常に困難である。訓練された目を持つものだけが、それらを適正に区別するチャンスを持つ。区別するための証拠が、そこに自生する植物の一般的な特徴に反する、たまたま例外的な植物に基づくことには議論の余地がある。しかしながら、これは事実ではない。提供されているサンプルは全て、それぞれの個体群を代表されると考えられた植物に基づいているからである。事実上、この議論は保留されている。植物標本館にある標本は、その突出した特徴から、すでに選抜されていると考えられるからである。これは、Bogor にある多数の N.gymnamphora の標本にも当てはまると思われる。

 N.pectinataN.gymnamphora を区別する多くの特徴は、地理的な分布の一方の端(ジャワ)からもう一方の端(北スマトラ)まで、徐々に変化するものである。スマトラの最南端の個体群は、ほとんどジャワ島のものと同じである。もし N.gymnamphoraN.pectinata から区別するのなら、前者がスマトラ南部にも存在すると仮定する必要がある。これが与えられたとすると、どこで N.gymnamphoraN.pectinata に取って変わられるのか、あるいは実際にとって変わられるのかを決定するのが困難になる。ジャンビと南スマトラ産の良い標本が存在しないために、標本館の標本だけでは、このことを効果的に決定することは出来ない。

1種類か 4種類か?

 これらの分類群の植物がいくつの種として認識されるのかは、主に 2つの問題にかかっている。まず N.xiphioidesN.pectinata のシノニムとするには、N.pectinataN.gymnamphora を区別するためにも重要ないくつかの余分な性質を検討する必要がある。二つ目に、N.gymnamphoraN.pectinata は多くの性質がオーバーラップしていて、変異が大きいので、矛盾なく確実に区別することは、常に困難である。Sorik Merapi山産の植物の外観が、二つ目の問題を悪化させている。

 この問題を扱うのには、少なくとも 3つの異なった方法がある。最初は、これら 4つの分類群を全て N.gymnamphora という一つの種に属するものとしてしまい、それが、北スマトラの Sinabung山から、ジャワの Tengah まで分布する、非常に変異の大きい種とする説である。二つ目の説は、N.pectinataN.xiphioides を独立した種として認め、Sorik Merapi山の植物は、N.gymnamphora の亜種とする方法である。しかしながら、本属全体を手がけたことのある多くの分類学者は、種のレベルの下に分類群があることを認識していない。その説に固執している限り、これらの分類群を種以外のレベルで区別できない。三つ目の説は、これらを 4つの異なる種として認識するものである。これにはいくつかの問題がある。N.pectinataN.gymnamphora から矛盾しないように区別するために使われる性質を見つけることは困難であることはさておき、スマトラ産の他の多数の分類群が、同じような理由で他の種のシノニムとして扱われてきたことは、矛盾を解決する上でも再検討されなければならない。その結果、スマトラ産の種の数はドラマティックに増え(おそらく 40種!以上)、それらの多くが外観上類似していて、少数の熱心な科学者にしか区別できないことになるであろう。

 ここでは最初の説を採るが、それはまだそれぞれの分類群についてもっと学ばなければならないし、矛盾なく確実にこれらの種を分類するために、充分な知識を得るための時間がもっと必要だからである。N.pectinataN.gymnamphora から矛盾なく明瞭に区別することが出来るようになるか、植物学者の間で、Nepenthes の種のレベルより下の分類群が認識されるようになれば、他の説も支持されるかも知れない。

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