「ラフマニノフ歌曲集」

作曲:Sergei Rachmaninov

編曲:藤森数彦


指揮:鎌田英紀(学生指揮者)

ピアノ:藤田雅



1.В молчанъии ночи тайной
  (ひそかな夜のしじまの中で)

2.Здесъ хорошо
  (ここはすばらしい)

3.Давно−дъ мой друг
  (昔のことだろうか、友よ)

4.Ау!
  (呼び声)

5.Весенные воды
  (春の流れ)




−セルゲイ・ラフマニノフとその歌曲について−

 ラフマニノフはチャイコフスキーに傾倒し、その豊かな旋律性と抒情性とともに19世紀ロシア音楽モスクワ楽派を受け継いだ作曲家であり、20世紀に生きながら、その作品には19世紀のロマン主義的気分を濃厚に残している。彼は偉大な作曲家であるとともに、精力的な演奏ぶりと超人的技巧を持ったヴィルトゥオーゾ・ピアニストとしても絶大な人気を誇った。ラフマニノフの歌曲をロシア歌曲史において極めてユニークなものにしている要因もまた、そのピアノ伴奏部であり、彼の歌曲においては、ピアノはしばしば声部から独立し、それに対してポリフォニックな進行を見せ、曲全体に豊かな奥行きを与えている。また、彼の歌曲の中でも特に抒情的作品における言葉の取り扱いには、チャイコフスキーの伝統とともにムソルグスキーの影響が色濃く表れている。それは、朗唱的な言葉の取り扱いと、アイロニカルな音楽そのものの語法についていえることである。反面、チャイコフスキーの作品においてはむしろ希薄であった東洋的なものへの憧憬が、彼の歌曲における非チャイコフスキー的要素を形成している。


−楽曲解説−

1.ひそかな夜のしじまの中で (6つの歌曲 op.4)

 A.フェートの音楽性あふれる叙情詩と、しみじみとした深みのあるピアノの叙情性が調和したこの作品は、ラフマニノフが心惹かれた遠縁のスカロンに献呈された。

2.ここはすばらしい (12の歌曲 op.21)

 ラフマニノフの創作意欲が最も旺盛な時期に書かれた歌曲集の第7曲。妻ナターシャに捧げられ、素直な美しさと哀愁を持つ曲である。女流詩人G.ガリーナの詩。

3.昔のことだろうか、友よ (6つの歌曲 op.4)

 都会的エレジーのスタイルで始まり、まず別離の悲しみが短調で歌われ、最後に再会の喜びが、長調に転じて、力強く宣言される。G.クトゥーゾフによる詩で、作詞者の妻に贈られた。

4.呼び声 (6つの歌曲 op.38)

 ラフマニノフの最後の歌曲集の終曲。これまでロマン派詩人のテキストを求めていた彼が、一転して象徴派詩人の詩を選んでいる。この曲もロシアシンボリズムの1人、バーリモントの詩による印象派調のピアノ伴奏が特徴。

5.春の流れ (12の歌曲 op.14)

 ラフマニノフの幼少期のピアノの師、オルナツカヤに献呈された。この曲のピアノパートは、まさに水の流れそのものであり、春への躍動が曲全体に感じられる。詩はチュチェフによる。


−第19回早慶交歓演奏会プログラムより−



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