「CHANTS D'AUVERGNE」
 (オーヴェルニュの歌)

作曲:Joseph Canteloube

編曲:北村協一


指揮:畑中良輔

ピアノ:谷池重紬子

コールアングレ:浅岡克則



1.Bailero
  (バイレロ)

2.Chut,chut
  (チュ・チュ)

3.Brezairola
  (子守歌)

4.Lou Coucut
  (かっこう)

5.Passo pel prat
  (牧場を通っておいで)




−ジョセフ・カントルーブについて−

 カントルーブは1879年にフランス中央南部オーヴェルニュ地方の山地アノネーに生まれた。
 パリで作曲家ヴァンサン・ダンディ(1851-1931)の主宰するスコラ・カントゥールムに学び、ダンディ風の色彩感の強い管弦楽曲を書いていた。
 カントルーブが郷土の風物を詩的に描く自然の音楽に関心を寄せるようになったのは、彼と同じオーヴェルニュに祖先を持つ師匠ダンディの影響が大きかったようである。彼はオペラを2つと、器楽曲、声楽曲を数多く書いているが、そのほとんどは、オーヴェルニュ地方を舞台としたり、その民謡を取り入れたもので、徹底的な地方主義作曲家であった。
 1957年にパリで78年の生涯を閉じた。


−「オーヴェルニュの歌」について−

 カントルーブが故郷オーヴェルニュの地方主義に徹した理由には、この地方がフランスの中でも、歴史的にも文化的にもきわめて特殊な条件を持っていたことが考えられる。
 オーヴェルニュ地方の民謡は、純粋に歌だけの「グランド」と、踊りを伴う「ブーレー」がある。詩の内容は、大部分が羊飼いか貧しい農民を歌ったもの、特に牧草を求めて転々とする羊飼いの生活を歌ったものが大部分を占めている。
 テクストは彼自らが書きとめた、オーヴェルニュ地方の方言「オック語」によっている。オック語の起源は、ローマ人の占領時代に導入された口語ラテン語にさかのぼる。一時はオック語の使用を禁止されフランス語を強要されたが抵抗を続け、現在では大学などでも教えられるようになり、バカロレア(大学入学資格試験)には、7000人近い学生が第2外国語として受験している。オック語は、表現が明確で、簡潔で、その語彙の豊富さは、フランス語の5倍であるといわれており、そのために非常に表現力に富んでいる。
 カントルーブが民謡の編曲にあたって、次のようなポリシーをもっていた。
「民謡を単にそのまま採譜するのは押し花のようなものだ。死んでいて、からからに乾いている。民謡に生命の息吹を与えるためには、聴き手が本当に田園風景を思い描くことができ、芳しいそよ風を感じられるように書かなければならない。」
 昔から伝わる民謡を採譜して、それを作曲の土台にすることによって、その民謡を後世に伝えようとする姿勢は、ハンガリーの偉大な作曲家コダーイ・ゾルターン(1882-1967)やベラ・バルトーク(1881-1945)の考え方によく似ている。


−曲目解説−

1.バイレロ

 カンタル県ヴィック=スール=セール地方の歌。羊飼いと羊飼いの乙女が、4拍子ののどかな中に、川をはさんで応答する問答歌。

2.チュ・チュ

 リズミカルで軽快な歌。コミックとウィットが入り混じり、口さがないおしゃべりが快活されている。

3.子守歌

 なかなか寝つかない子供に、「眠りよ、おいで」と歌っていて、どこか間の抜けたようなところがおもしろい。

4.かっこう

 春を告げるかっこうを讃えた歌。かっこうの歌を「500のラッパの響きにも負けないちっちゃな鈴の音」と表現している。

5.牧場を通っておいで

 Lo lo lo の繰り返しによる、オーヴェルニュ地方の民謡に典型的な、グランドのスタイルによる曲。男が、かわいい女の子に呼びかけている。


−第122回定期演奏会プログラムより−



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