男声合唱組曲「わがふるき日のうた」


作詩:三好達治

作曲:多田武彦


指揮:最上聡(学生指揮者)



1.甃のうへ

2.湖水

   アンファンス・フィニ
3.Enfance finie (過ぎ去りし幼年時代)

4.木兎

5.郷愁

6.鐘鳴りぬ

7.雪はふる




−作詩者 三好違治について−

 三好達治は、明治33年8月23日、父政吉と母タツの間に長男として大阪市東区南久寶寺町一丁目番外22番地で生まれた。大正14年、第三高等学校を経て東京帝国大学文学部仏文科に入学。27歳の時、「青空」同人に参加し「乳母車」「甃のうへ」を発表。昭和5年、処女詩集「測量船」を刊行。同9年、堀辰雄・丸山薫と共同編集で「四季」を創刊。以後約15年間詩壇の主流となる。同14年、「春の岬」「艸千里」を刊行。同27年、芸術院賞受賞作「駱駝の瘤にまたがって」を刊行。同37年、「定本三好達治全詩集」刊行。同39年4月5日朝、心筋梗塞にて急逝。
 三好達治の作風は、処女詩集「測量船」で口語自由詩以来失われていたリリシズムを都会的感覚でうたいあげ、「南窗集」「濶ヤ集」等により自然な感情を実験的手法による四行の平易なことばでうたった。更に、「艸千里」以後は文語的定型を守って、独自の古典的詩境を作りあげた。昭和期を代表する叙情詩人の一人で、随筆・評論にも見るべきものがある。


−曲目解説−

1.甃のうへ

 4分の3拍子 前半は、明るい春の陽射しをうけてつつましくも軽やかに歩を運ぶ少女らを描写した流動的で長閑な叙景を詠う。後半では、哀傷を含んで主情的な叙景を詠っている。

2.湖水

 4分の2拍子 不安と焦燥感に満ちている曲。この散文詩は客観的で平静な、そして視覚的に鮮明な詩境を実現している。

3.Enfance finie (過ぎ去りし幼年時代)

 4分の4拍子 時がゆっくりと流れているような表情豊かな曲。詩人三好達治の少年期から青年期に移りゆく哀傷を詠っている。

4.木兎

 2分の2拍子 素朴な中にも自由な雰囲気がある曲。この詩で口語自由詩を、より自在な自己の全体的表現の道具とすることに成功している。

5.郷愁

 4分の2拍子 第一次世界大戦直後に日本に流入してきた「モダンニズム」を三好流に消化して生まれた直訳調の詩。

6.鐘鳴りぬ

 4分の4拍子 荘厳であるが、どこかもの悲しい雰囲気を醸し出している曲。「つねならぬ鐘」とは太平洋戦争を暗示する暗比喩であり、「牧人の鞭にしたがふ仔羊の足どりはやく小走りに」は戦争の危機に処する内心の焦慮と意志の表現であろう。

7.雪はふる

 8分の12拍子 理想郷への想いを措いているような曲。詩文は文語七五調の琴歌風な古雅な小曲。


−第125回定期演奏会プログラムより−



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