百里基地反対運動のページ3

百里基地訴訟(百里裁判)

 百里裁判は激しい基地反対闘争の中で、防衛庁の土地横取り事件として起こったものです。管制塔の真正面に位置する約2ヘクタールの土地の所有権をめぐって、基地反対派の農民と国が争ったものですが、農民側は、国が航空自衛隊百里基地用地のために農民から土地を買収することは、戦争放棄、戦力不保持を定めた憲法9条に照らし憲法違反であり無効である、という主張を展開しました。第一審の水戸地裁は、自衛のためにあらかじめ防衛措置を講ずること、つまり軍隊を持つことを憲法は禁止していないが、今の自衛隊が憲法9条に違反しているかどうかは高度に政治的だから、国会や政府にその判断を任せて、裁判所は判断しないという自民党政府に完全に迎合した判決を出しました(1977年2月)。
 第二審の東京高裁は、現在の自衛隊につき、その土地買収行為は民法第90条のいう「公の秩序、善良な風俗」に反しないから、無効とは言えないという判断を示し、憲法9条の解釈と適用は避けてしまいました(1981年7月)。
 1989年6月、最高裁は国側の主張を支持し農民側の請求を退ける判決を下しました。最高裁の考えは「国が自衛隊の基地のために農民から土地を購入するのは、市民の間の通常の土地売買と同じことだから、憲法は関係ない」というもので、自衛隊の憲法判断を避けました。自衛隊を公式に認めることができなかったわけです。
 百里裁判は「長沼」や「恵庭」と並ぶ自衛隊の憲法違反を問う裁判であり、戦争放棄、戦力不保持による恒久平和の実現を目指す日本国民や人類の理想を実現させるための裁判でした。

      

       平和公園から基地を望む

            手前は平和公園内の石塔(日本山妙法寺)