「2046」映画製作裏話
★映画基礎データー★「2046」 2004年 香港映画 監督脚本 ウォン・カーウェイ 出演 トニー・レオン 木村拓哉 |
mixi(ミクシー)「独身社会人映画ファンコミュニティ」に入ろう!
『2046』は『欲望の翼』『花様年華』のウォン・カーウァイ監督が描くラブストーリーです。
日本の木村拓哉をはじめ、『インファナル・アフェア』のトニー・レオン、
『始皇帝暗殺』のコン・リー、
『恋する惑星』のフェイ・ウォン、
『LOVERS』のチャン・ツィイーらアジアを代表する俳優が勢ぞろいしています。
無名作家のチャウ(トニー・レオン)は、
将来の展望の開けないシンガポールでの新聞記者生活に見切りをつけ、
1960年代の香港に戻ってきた。
彼がかつて香港を離れたのは、
愛した女性と結ばれることなく別れたためだ。
その傷は癒えることなく、彼は今も人を愛することを恐れていた。
過去の思い出から逃げるように1000字10ドルの売文業で生計を立て、
夜な夜な女を引きつれ遊びまわる日々。
が、チャウはどこかで純粋な愛を渇望していた。
彼は過去を捨てて変わりたかったのだ。
「恋する惑星」の時のような軽快さはなく、重く粘着質な映画です。
トニー・レオンの冷静さが怖かったです。
現実の恋愛の力関係みたいなものをうまく演じすぎてて。
キャストが豪華ですが、間違ってもデートムービーにしてはいけません。
愛が燃え尽きようとしているときの、
ずるい男と女の駆け引きをずるずる2時間やってる映画です。
この作品の制作をいったん休止して撮り上げた「花樣年華」もずるずるですが、
まだキレが良いです。
金と時間をかけすぎたので
ウォン・カーウェイもいまさら放り出せなくなってしまったのかもしれません。
タイトルや予告編から連想されるようなSF映画では、まったくありません。
香港の長期滞在型ホテルに居を見つけたチャウは、ホテルの支配人の娘
ジンウェイ(フェイ・ウォン)に心引かれる。
彼女には日本人の恋人(木村拓哉)がいたが、父親ワンに反対され、
恋人は日本に帰ってしまったのだ。
かなわぬ恋に打ちのめされた彼女の姿はチャウの心を揺さぶる。
そこに彼は彼自身と恋人スー(マギー・チャン)の姿を重ね合わせていたのだ。
ワンは娘に恋人との文通すら許さなかったため、チャウは、
日本の恋人からの手紙をチャウ宛に出させてそれを彼女に渡してやることにする。
顔を輝かせて恋人からの手紙を読みふけるジンウェイを
チャウはいとおしく見つめるのだった。
さてさて、ここでキムタク登場になるのですが、
それがどうしてSF仕立てになるかというと、こんな風になるのですね。
チャウはジンウェイと日本人の恋人をモデルに
「2046」というタイトルの小説を書き始める。
それは“失われた愛”を取り戻そうと
“2046”から出発したミステリートレインに乗り込んだ男女を描いた小説だった。
「2046」は作家としてのチャウの創作物です。
木村拓哉さんに出演オファーがあったときは、「殺し屋の役です」という説明だった
と木村さん自身がインタビューで答えています。
駆け込み上映になってしまったカンヌ映画祭での上映バージョンでは、
どうもジンウェイと香港で恋を語らう日本人ビジネスマンの恋人のパートはなく、
あとから追加撮影されたようですね。
小説内の登場人物としてまずオファーがあり、
あとから香港の話が付け加えられたことになります。
ウォン・カーウェイはもともと脚本なしで撮影に望む監督で、
ドラマはどんどん変更されるのが通常のようです。
映像に出ないまでも、木村拓哉さんがフェイ・ウォンの恋人だったという設定が
もともとあったのかもしれないし、いやそうではなくて
木村拓哉さんはあくまで小説の中の人物だけだったのが、
カンヌあとで設定そのものが変更になったのかもしれないし…。
どちらが正しいのかは今となっては知りようもないことですが。
それと宣伝ではミステリートレインは「2046」に“向かう”、とされていますが、
劇中の字幕では「2046」から“出て”行く列車と書かれていたと思うのだけど。
チャウは、ストーリーを面白くするために、自分の知っている人たちを次々に
登場させる。
「2046」という番号は、彼のいたホテルの部屋番号でしかないのに。
書き続けるうちに「2046」は彼自身の物語になって行き、日本人の恋人が
モデルだったはずの
『男』はチャウ自身に変わっていった。
チャウはジンウェイに感情移入しますけど、
ジンウェイの心は日本にいる恋人に向いている。
ジンウェイは恋人と結ばれることはない。
そしてチャウの思いは彼女に届かない。そういうジレンマがあり、
それが『男』の言動にも影を落としていくようになる。
“『男』はチャウ自身に変わっていった。”と書きましたが、演じているのは
あくまで恋人役の木村拓哉です。
姿かたちは『男』で、こころはチャウになるという難しい変貌を遂げていきます。
チャウが「2046」を書き出す前から、他の女優さんたちが続々と登場してきます。
ダンサーのルル(カリーナ・ラウ)――チャウはかつて彼女の店の客だったが、
ひさしぶりに再会した彼女は恋人(チャン・チェン)に刺されてしまう。
2046号室にいたルルが死んだ後、その部屋に入ったバイ(チャン・ツィイー)も
水商売の女で、遊びの関係のつもりが本気でチャウを愛してしまう。
チャン・チェンという人は「グリーンディスティニー」でチャン・ツィイーを
追いかけて都にまでやってくる山賊の役をやっていた人です。
髪を茶髪にしていてちょっと目では彼とは分かりませんでしたが。
ルルもバイもみんな「2046」の登場人物になります。
彼女らは乗客の相手をするメイドのアンドロイドです。
“こころがないので恋をしない”ということになっています。
長年人間を相手にしていると、
感情のようなものが芽生えてくるというところがミソです。
チャウを中心にいろんな恋模様が出てきますが、いずれも希望の持てない不幸
な愛です。
ここいら辺の閉塞感に嫌悪を感ずる映画掲示板の書き込みが多かったです。
制作時期が前後し、同じくトニー・レオンが主役を勤める『花様年華』と
類似点が多いです。
『花様年華』のストーリーも紹介します。
1962年の香港。
新聞社に勤めるチャウ(トニー・レオン)と、
商社で秘書をするチャン(マギー・チャン)は、
アパートの隣同士の部屋に間借りしたことから知り合い、
ごく普通に隣人としてつきあっていた。
が、お互いの妻と夫が不倫関係にあることが発覚。
その秘密を共有することになったチャウとチャンは、急速に親密度を増してい
く。
チャウとチャンは、
お互いの妻と夫の不倫関係をシミュレートするような形で恋におちていく。
チャウはチャンの夫に、チャンはチャウの妻になりきって、
どっちがどっちを誘ったのかと想像してみたり。
あるいは、チャウがチャンの夫役になって、
浮気を問い詰める場面を練習してみたり。
自分は自分であると同時に相手のパートナーでもある
――そんな思いにかられながら愛を深めていくふたりの倒錯(とうさく)めいた心模様を、
カーウァイ監督は、鏡をシンボリックに使った演出で表現しています。
チャウという名が同じということでなく、
ストーリーは異なりますが、
不幸な恋愛であることは共通しています。
スリッパや赤いカーテンなどの小道具の扱いにもなまめかしい情感を漂わせ、
眩惑(げんわく)のムードをそそるカメラワークやコスプレも「2046」に
通ずるものがあります。
タイトルの『花様年華』とは、
「満開の花のように、成熟した女性がいちばん輝いているときのこと」だとか。
『花様年華』は不幸な恋愛であるからこそ、眩惑される魅力があるのですが、
「2046」は不幸は不幸でしかないです。
『花様年華』のチャウはアンコールワットに逃避し、
「2046」のチャウは未来の列車に乗って逃避していく、という点は同じで
すね。
どちらも現世の香港にとどまることはありません。
日本劇場公開版は大陸劇場公開版と同じだと聞いてます。
大陸版DVDは日本版よりトニー・レオンのラブシーンが少しカットされていたそ
うなので、日本公開版の方がやや長いようです。
日本公開版ではトニー・レオンとチャン・ツィイーのベッドシーンが出てきます。
ツィイーが脱ぐのはたぶん初めて…、なんだろうけど。
美男美女のベッドシーンて案外つまらないですね。
私は、あれを見て劣情なんてもよおさなかったぞ。笑
「2046」は1997年の香港返還の50年後という意味があるのだそうです。
未来都市のデザインが「ブレードランナー」からあまり発展してないので、
仰々しく登場する割にはつまらないです。
チャウが想像するレトロ・フューチャーの世界だと監督は説明していますが、
押井守監督の描くアニメの未来都市のほうがよっぽど魅力的です。