「約三十の嘘」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「約三十の嘘」 2004年 日本映画 監督 大谷健太郎 脚本 土田英生 渡辺あや 出演 妻夫木 聡 |
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「約三十の嘘」は、
期待にたがわす面白く、
劇場公開の時はは妻夫木 聡ファンらしい女性客中心に満員御礼でした。
だいたい期待するとハズし、期待しないと結構面白いというパターン
が続いてましたので、それを裏切るものが出てきて喜ばしいことです。
以下、作品の紹介と感想です。
大阪駅構内。せわしなく行き交う人の流れ。一人二人と姿を現す詐欺師たち。
コーヒースタンドのカウンターに立つ三人の男。
洒落たスーツ姿の久津内(田辺誠一)は、
今回のプロジェクトのチーフで皆に声をかけた張本人。
社会心理学まで学んでこの日に臨んだ。
その隣、若いのに腕の立つヤリ手詐欺師・佐々木(妻夫木
聡)は、
昔から酒癖が悪く、酔って転んだのか鼻を白いガーゼで覆っている。
情熱家の彼は、
カウンターの端でボーッとしているもう一人の男を胡散臭そうに眺めている。
見られていることにも関心がなく、
のど飴をボリボリと噛み砕いている男・志方(椎名桔平)は、
かつて年に五億円以上稼ぐといわれたカリスマ詐欺師。
しかし、今はその面影もない。
ショッピングモールをビシッと決めたスーツ姿で颯爽と歩いてくる男と女。
キリッとした美貌の女詐欺師・宝田(中谷美紀)は、
昔の仲間との再会に心躍らせている。
傍らを歩く小柄な男・横山(八嶋智人)は今回、チームに初参加。
以前は霊感商法のグループに属し、小銭稼ぎの横山と呼ばれていた。
横山は宝田を「ババロアちゃん」と呼び、二人は今、組んで仕事をしている。
昔から宝田に密かな想いをよせている佐々木は、
横山の参加にイラつく。
そして、志方に憧れていた横山はその落ちぶれた姿にガッカリし、
宝田も戸惑いを隠せない。チームは微妙にギクシャクしている。
本作に登場する6人は、みんな嘘を生業として生きている詐欺師たち。
詐欺の儲けを裏切り者に猫ババされて解散したチームが3年ぶりに再び結集し、
豪華寝台特急トワイライトエクスプレスへ乗り込むところから物語ははじまる。
しかし闖入者がふたり。
ひとりは軽薄丸出しの横山。もうひとりは巨乳の女詐欺師、今井(伴
杏里)。
今井には前回の詐欺で裏切り者と通じていたのではないかという疑いがあった。
不安を抱えたままの北海道での
久々の大仕事は成功したが、その帰り
大金の詰まったスーツケースが走り続ける列車から消えた......。
疑心暗鬼で互いを疑う六人。さて犯人は? 消えた現金は?
劇場公開初日に渋谷シネクイントで舞台挨拶があったようです。
あんなせまっくるしいところで大谷健太郎監督、椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、
田辺誠一、八嶋智人、伴杏里、ゴンゾウ(着ぐるみ)が、
ぞろっと集まったそうですから、女性客で大変だったでしょう。
見に行けば良かったです。
題名の「約三十の嘘」とういのは、
「一つの嘘のためには三十の別の嘘を用意しなさい」
というサルパトーレ・ワコンの名言から来ています。
一度嘘をつくと、果てしなく嘘をつき続けなくてはいられなくなる、んだろうし。
登場人物のひとり志方(椎名桔平)は
「だから核心部分以外は、全部本当のことを言うのさ」とウソぶいています。
そんなに人間って器用に振舞えるものなんでしょうか?
志方自身はちゃんとウソと本当を使い分けているんでしょうかね?
騙し騙されるというんではなしに、
仲間や恋人を信じる信じないのことで。
この映画「約三十の嘘」は、土田英生作の戯曲「約三十の嘘」を
原作としているのだそうです
これを「ジョゼと虎と魚たち」の渡辺あやが映画用に脚色し、
「とらばいゆ」の大谷健太郎が監督していますって、
「とらばいゆ」見てないので、大谷監督の作品を見るのは
これが初めてです。
…テレビ関係やCM界の方々が最近邦画を監督されることが多く、
それぞれそれなりのレベルに仕上がっていますが、
その後、同じ方が次々に新作を演出されることはないようです。
当人が一本とって満足してしまったのか、もともとやる気がないのか、
興行的に2作目のメガホンを持たせるほどの力なしとプロデューサーが判断したのかは
知りませんけど。
そうしたなかで新作を作られたのですから、立派なもんです。
東京国際映画祭で「とらばいゆ」を見た小川プロデューサー
(「ピンポン」「真夜中の弥次さん喜多さん」)が
「ジョゼと虎と」で一緒に仕事をした保田プロデューサー(「黄泉がえり」)に
企画の共同開発を申し出た。
両者でネタ探しをする中で土田英生氏の名が小川プロデューサーから出て、
戯曲を読み漁って「約三十の嘘」で行こうという話になった、という経緯だそうです。
ですから生の舞台を見て判断したわけじゃない。
ネタとして戯曲を評価した、というわけです。
脚色に際して、
オリジナルにはなかった志方、宝田(中谷美紀)、佐々木(妻夫木
聡)の
恋愛三角関係が書き込まれています。
私は詐欺師同士の話でキャストは誰々という程度の予備知識で見ました。
冒頭のストーリー紹介でも書いてあるとおり、
大阪駅にメインキャストが集合するところから始まりますが、
アクションから入るとか、まず誰か騙されるとかいうイントロはありません。
これは詐欺師のハウツウものではないし、
「夜逃げや本舗」のような対決ものでもないので、
ごく地味な始まりですね。
怪しげな連中が旅支度で現れる。互いに顔見知りらしい。
イベントらしき仕事で出かけるらしいが、よく分からない。
ミステリーではない、という風に宣伝されていたので、
盗った盗られた、騙した騙されたは、つまんないだろうとタカをくくっていたのですが、
私としては結構楽しめました。
これは期待していなかったからかな?
そう凝ったものではありませんが、トリックはあるし、どんでん返しもある。
ただ、どんでん返しのためのトリックではなく、あくまでドラマ上の必然性で
出てくる話ですので、観客を驚かせることが狙いではありません。
ちゃんとドラマが始まるのが、
五人がコンパートメントの席についてから。
撮影について、監督らは走る列車の密室ドラマをセットで撮るか、
ロケで行くがで、結構悩んだそうですが、
セットで行くとして、窓外の風景の合成カット数を真面目に計算したら、
平成「ガメラ」より多くなる(!)ことが判明、コンパートメントは窓外風景なし。
食堂車とラウンジはロケと。
コンパートメントのやり取りで彼らの正体と、
集まった動機といった設定が明らかになるわけですが、
説明を説明に見せないせりふの組み立てが良いです。
はじめて詐欺に参加する横山の視点で見せているかというと、(よくある手ですが)
そうでもなくて、久津内というのが張り切ってメンバー再召集をぶち上げていて、
あれこれ語っている。
ここで互いの座る場所が会話の進捗でどんどん変わり、
人間関係が一筋縄でないことが分かる仕組みになっている。
この作品は群像劇。
しかも登場人物のほぼ全員が同じ客車のコンパートメントに座り込んで
延々と議論している会話劇です。
カメラの切り返しもしんどいような環境で35mmを
きっちり演出しきるのはなかなかの力技で、監督いわく「たいへん勉強になりました」。
お約束ですが、京都駅で第三の女、今井が乗ってきて、
さらに複雑な様相を呈してくる。
久津内は今井を呼び寄せたくてメンバーの再召集を図った。
久津内は単純馬鹿ですが、
他のメンバーはそうは問屋がおろさなくて、
たちまちみんなで互いの古傷をつつきあいになり喧々諤々。
みんなして北海道に偽羽毛ふとんの売り込み詐欺で総額一億円からの
儲けをあげようという計画が準備されます。
ところが映画では、
この羽布団を売る場面がなくて、
コンパートメントから話が食堂車に移ると、
もう仕事が終わって祝杯を挙げている。
ばったもんをイベント商法で盛り上げて売りさばくというそれだけの
詐欺ですので、トリックやどんでん返しとは関係ない展開ですが、
それにしても丸ごと出てこないとは、ずいぶん思い切りの良い演出です。
コンパートメント以外の電車内の様子は、
トワイライトエクスプレス内でロケされたのは前に書いたとおりですが、
これは実際に運行中の列車内で撮影されたので、
ロケ実施では、今度はトンネルとの戦い(!)があったようです。
食堂車、ラウンジの場面は走る列車一泊二日の貸切で強行撮影されたそうですが、
路線のトンネルに列車が飛び込んでしまうとそのシーン全部が撮り直しになるので
プロデューサーと助監督が分刻みのスケジュールを作って一同大奮闘だったとか。
映画は体力ですねぇ。
プロットがしっかり組み上げられているので、
現場の都合でシーンを飛ばすということができず、
完璧な撮影スケジュールの消化が要求されていたようです。
列車が舞台の邦画というと私は「新幹線大爆破」「皇帝のいない八月」、
洋画でも「オリエント急行殺人事件」「カサンドラ・クロス」に
スティーブン・セガール主演のアクションもの位しか思いつかないです。
あれらは密室ドラマであってロード・ムービーではないです。
列車ものすべてが撮影中のハプニングを許容出来ないものかどうかは知りませんが、
出発点と時間経過が重要で、目的地については到着しなかったり
変更されたりする場合が多い。
後半、トランクはどこへ行ったんだというんで騙し騙されの話になりますが、、
これは愛し愛されようとする様々な人間模様です。
裏切り、鞘当て、駆け引き、とやがて忘れたい記憶や本音までもが次々に明かされていく
仕組みです。
大切なのはお金か?愛か?
詐欺の話でお金と愛が天秤にかけられるのが可笑しいのですが、
まあ、本当にそうなるのです。
終着駅に近づくにつれ、人間のちょぴり切ない想いが浮かびあがっていく。
ついつい嘘をついてしまう、可笑しくも愛しい男と女。であります。
脚本のつめで監督たちが悩んだのが、
恋愛とチームワークの話でどちらにバランスを持たせるか、
あの鍵を全員で持つという話は戯曲の方には無くて、推敲の途上出て来たようですね。
あれを使って、宝田が泣きで見せてドラマを締めるという構成になってます。
映画の掲示板では中谷美紀を「胸は無いけど色っぽい」と
持ち上げる書き込みが多いのに対し、
今井役の伴杏里のことを「なんだあの素人の巨乳は」などと
ボロカスに書く人が結構いました。
他のキャストに比べてキャリア不足は確かですが、
アンサンブルとしても、四番バッターばかりの巨人の野球みたいにしてしまうと
つまらないはずですので、
キーパーソンに若手を持ってくることは悪い手ではないはずです。
「リリィテッシュのすべて」「GO」などにも出演しており、
決してセンスの無い子ではないです。
役者さんたちの密室会話劇についてのコメントが面白いです。
椎名桔平は、「大変だったでしょう?」というインタビューに、
舞台はみんな会話劇だから、特に驚くほどのものではない、とキャリアのある余裕を見せ、
実際、画面でも淡々とやってますね。
反対に中谷美紀は、コスチュームやメイクで作りこんでいくことがない分、
どう宝田を造形していくかが苦労だった、といっている。
「ケイゾク」「永遠の仔」などのドラマ、「リング」シリーズの映画など、
虚構性の強い作品ばかりに出ている彼女としては、“ほんのちょっぴり違う“
ところで泣かせたり笑わせたいりするは難しかったんでしょう。
監督も模範演技などをして見せるタイプでなく、
いろいろ配役と雑談など重ねながら一緒に作っていく人らしいです。
「これ」っていう見本を示されてそれに近づく努力をするほうが楽ですからね。
音楽のクレイジーケンバンドがどのくらいの知名度なのか
私は知らないのですが、この映画のどちらかというとベタな映画音楽は、
センスを感じ楽しかったです。
それとオープニングのアニメですね。
邦画ではアニメは少ないと思いますし、あまり成功した例が少ないように思いますが、
(名を挙げての攻撃は遠慮しときます)
この作品では大当たりでした。
ストーリーもそうですが、
登場人物たちの人間ドラマにしても、劇的さをウリにはしていませんので、
アップダウンをもとめちゃだめですね。
気持ちの「揺れ」みたいなものを楽しむ映画じゃないでしょうか。
いじましいと感じてしまうか、いとおしいと見るかで評価が正反対になりそうです。
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