「8人の女たち」映画製作裏話

★映画基礎データー★
「8人の女たち」
2002年 フランス映画
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン(「まぼろし」
出演:
カトリーヌ・ドヌーヴ

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1950年代のフランス。
 クリスマス・イブの朝、雪に閉ざされた大邸宅で一家の主が殺された。
 集まっていた家族は一転、全員が容疑者に・・・・
 お互いが疑心暗鬼に陥るなか、
 怪しくも美しき8人の女たちの秘密がつぎつぎと明かされる。
 犯人は、誰・・・・・?

『まぼろし』が高い評価を集め注目されるフランスの新鋭、
フランソワ・オゾン監督の作品「8人の女たち」。
フランスを代表する新旧の女優8人が繰り出す好演と歌と踊りが楽しいです。
オゾン監督は当初、
1939年のジョージ・キューカー監督の「ザ・ウーマン」(日本未公開)の
リメイクを考えていたそうですが、その作品は長年、
ジュリアン・ロバーツとメグ・ライアンが再映画化権を握っていおり、
60年代にロベール・トマの書いた「8人の女」を映画化したそうです。
古い脚本ですので、映画化に当たっては大筋を活かして、
推理そのものは単純化し、その分キャラクターにふくらみを持たせています。
8人の女優が唄う歌は、いずれも五十年代のシャンソンで、
映画のオリジナル曲というのはひとつもありません。
今風に女優の顔に直接ライトを当てる方法を避け、
全体光、背後光、スポットライトにより、
往年のテクニカラーの色合いを出すべく工夫されています。

この映画のレビューはイコール8人の女優について語る方がよさそうです。

母ギャビー(カトリーヌ・ドヌーヴ)
本編の主人公です。
ラナ・ターナーの「母の旅路」「悲しみは空の彼方に」の参考に衣装を決めています。
唄う場面が後半にありますが、
演出としては崇高さ、カーテンを効果的に使ってグラマラスの頂点を狙ったそうです。
曲はシルビー・バルタンの「あなたは決して」。
カトリーヌ・ドヌーヴは貫禄で見せていますが、
その実、ギャビーは全体の狂言回しのような役割で、あんまり本筋に関わってない様なのですよね。
でも被害者、
つまり彼女の夫との関わりは他の7人の女たちと夫との関わり全体を象徴してますので、
ギャビーを語ればそれで8人の女たち全体像を俯瞰できます。

長女スゾン(ヴィルジニー・ドワイヨン)
ドラマ的には、彼女がひっそりと屋敷に帰ってくるところから映画の幕が上がる。
「麗しのサブリナ」ヘップバーンの衣装そっくりのいでたちで現れます。
67年「モナムール、モナミ」という曲を歌って踊りますが、
妹と二人で左右対称の時計仕掛け人形の動きになってます。
一番、振付セバスチャン・シャルルのオリジナリティが出ているそうです。
「モナムール、モナミ」を歌ったマリー・ファオレは「太陽がいっぱい」で
アラン・ドロンの相手役でも知られる人です。
前半、妹と組んで探偵役を演じてますので、そのまま突っ走るのかと思いや、
後半、まったくの別行動。
セバスチャン・シャルルはスゾンのイメージが1番掴み難かったと言っていますが、
紙に書かれた脚本上のスゾンよりヴィルジニー・ドワイヨン本人の方が魅力がありそうです。
映画にはまれにそういうことも起こり得るのです。

次女カトリーヌ(リュディヴィーヌ・サニエ)
「巴里のアメリカ人」レスリー・キャロンのファニーフェイスをインスパイアしてあるそうです。
ドラマ上はハイティーンの設定らしいのですが、
リュディヴィーヌ・サニエは撮影時点で二十歳過ぎでした。
この娘は1番はじめにフランスのポップ・シンガー、シーラの歌に合わせ踊ってます。
歌は1963年のシーラが歌った「パパは流行おくれ」。

祖母マミー(ダニエル・ダリュー)
ラナ・ターナーの「母の旅路」から衣装イメージをとっているそうです。
車椅子で登場し、あるところから急に立ち上がって歩き出す。
愉快なおばあちゃんを大御所ダニエル・ダリューが楽しんで演じてます。
単独で唄うシーンはありませんが、
フィナーレのカーテンコールでは他の女優達とともに唄い踊ってます。

父の実妹ピエレット(ファニー・アルダン)
「素足の伯爵夫人」のダンサーのエヴァ・ガードナーから。
彼女は"招かれざる客"ということなのでしょうか?
映画の冒頭には登場せず、唯一、屋敷の外側からやってくる謎多き人物です。
ドラマ中盤、母ギャビー(カトリーヌ・ドヌーヴ)と張り合う当たりは
女優同士の貫禄合戦でなかなかに見物です。
アメリカのグループ、スタイリスティクの75年「愛のすべて」のカバー、
ニコレッタの「自由に生きてなんになるの」を唄い踊ります。
演出では"ジャズとセクシー、スポットライトを効果的に"。

父の妹である叔母オーギュスティーヌ(イザベル・ユペール)
ダグラス・サーク「心のともしび」ジェーン・ワイマンのオールドミス等からイメージされています。
アンニュイ(憂鬱)な雰囲気がブームとなった73年のワーズ・アルデイの「告白」を、
イザベル・ユペール自身が出演した舞台「オルランド」からイメージした振り付けで唄っています。
攻撃的ですが割と分かり易い人物で、はじめに容疑者第1号となり、
次第にコメディリリーフであることが明らかとなる役どころです。
後半の変身は唐突ですが、可笑しいと言えばやっぱり可笑しい。

黒人家政婦のシャネル(フィルミーヌ・リシャール)
「風と共に去りぬ」の黒人メイド、ファニタ・ムーアのイメージで、
イタリアのダリダ「一人で暮らさないために」を唄ってます。

新しいメイドのルイーズ(マニュエル・ベアール)
ブルニュエルの「小間使いの日記」ジャンヌ・モローのイメージだそうです。
動物的で激しいタップをおどります。
これは当人のアイディアによるオリジナルで、
セバスチャン・シャルルいわく「8人の中で一番ダンスが上手い」。
87年「表か裏か」を唄ってます。
この表裏は「丁か半か」というコインの裏表のこと。
マニュエル・ベアールは8人の中では若手の無名俳優ですが、
それだけに野心満満で他の先輩女優の芝居に切り込んで行きます。
役柄とダブって興味深いです。


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