「AIKI」映画製作裏話
★映画基礎データー★「AIKI <アイキ>」 2002年 日本映画 監督・脚本:天願大介 出演:加藤晴彦 ともさかりえ |
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この「AIKI」にはまったく参りました。
車椅子の武道家という設定にまずぶっとびましたが、
これがフィクションではなく、実在のモデルがいると知って感激しました。
天願大介監督がデンマークの車椅子の黒帯オーレ・キングストン・イェンセン氏と出会って、
その出会いが「AIKI」という作品に結実するまで、実に十年の歳月を要したといいます。
題材をあたため熟成させるためそれだけの時間が必要だったということです
”天願大介”というのはふるった名前だなと思っていたら、この人は
今村昌平監督のご子息だそうですね。
『うなぎ』『カンゾー先生』『赤い橋の下のぬるい水』の共同脚本家でもあります。
なるほどペンネームと言うことなら分かります。
プロボクサーとして順調なスタートを切った矢先、
芦原太一(加藤晴彦)は交通事故に遭遇。
下半身麻痺となり、やさぐれた生活を続けますが、
脊髄損傷で車椅子生活を先輩の常滑(火野正平)、
巫女のアルバイトをしているサマ子(ともさかりえ)や
テキ屋の親分・権水(桑名正博)とのふれあいの中で、
次第に明るさを取り戻していきます。
そして神社で日本の古武術“合気柔術”を目撃したことから、
前向きに生きることを“受け入れる”ようになっていきます。
映画はあくまで青春モノのスタンツで描かれています。
障害者ものとしてはいささか脱線したエピソードなどがありますが、
躍動感が感じられむしろ面白いです。
火野正平、桑名正博、石橋凌の中年トリオがまず良いです。
常滑というのは太一と同じ病室の車椅子の先輩なんですが、
上手いアドバイスをする反面、当人はもろに社会から落ちこぼれてしまっている
ところがあって、なかなか演ずるのが難しい役どころです。
火野正平が悲しみと怪しげさの間をうまいこと泳いで渡る芝居で
見せてくれます。
「まず1年生きてみろ」と太一に立派なことを言ったかと思うと、
本人はわざと火傷を作って退院を引き伸ばしている。
病院を幾つも渡り歩いている様でブラックリストに載っている。
車椅子の自分が家庭に戻ったら女房子供に迷惑を掛けるというのですが、
なんだか社会復帰するのが嫌でドロップアウトしたような男にも見えます。
桑名正博の権水というのがまた変な奴で、テキ屋の親分ということになっている。
太一を気に入って仕事を紹介すると言って、
インチキ屋台の店番をやらせて、子供から小銭を巻き上げさせる。
石橋凌の平石師範と言う人物は、
道場を持たないサラリーマンの師範という役どころ。
ドラマ、映画に登場する武道家としてはユニークこの上ない人物です。
市民体育館のカルチャースクールの先生で、実は天下無双…というのはオーバーですが、
かなり強い人です。
作家の夢枕獏先生が、「こういう師匠なら自分も弟子入りしたい」と持ち上げていますが、
とんがったところが無く、穏やかに誠実に門弟達に語りかけ、
「自分もまた修行中の身」と実に謙虚で自然体が魅力です。
合気道と合気柔術とうのは別物だそうです。
「合気柔術は超能力ではありません。相手に触れなければ技は掛かりません。
相手に触れるためには、まず相手を受け入れねば」
理性的に太一を諭すのですが、相手を受け入れるというのが車椅子の彼には実に大変。
勝手流に生きてきた生き様ごと改め直す修行が必要になります。
映画の掲示板などで不満を書いている人の内容を読みますと、
太一の性の扱いなど、障害者ものとして脱線している部分をまず攻撃している。
青春モノなのだから恋愛があって当然で、恋愛があるなら当然セックスはありでしょう。
排泄の苦労とかちゃんと描いているのだから、
この作品はむしろフェアに障害と向き合ってると言える。
佐野史郎や永瀬正敏が通行人程度の顔見世をしているのがうっとおしい、
と言う人もいるけど、別のそんなのどの映画でもやってる話だしね。
それと加藤晴彦の演技が雑だと、演劇論的に不満を言う人はあります。
ともさかりえもだけど、感情表現の細やかさより、本人のキャラクターで押している
人物像造形によっているようですので、この意見にはある程度正当性はあります。
ともさかは「さすらいのギャンブラー」というもともと嘘か本当か判らないような
設定になっているので、あんまり文句を言っても仕方ないでしょ。
普通のリアリティとは別の所で成立しているキャラクターで、
それは彼女に上手くはまってると私は思いますが。
加藤晴彦は、この映画でプロボクサーと合気柔術と車椅子とみっつの課題を
全力でこなしてるので、
「感情表現が熟成してない」と切って捨てるのは余りに可哀想です。
セリフで語るより身体表現で訴えると言うのが太一という若者ですから、
その意味では身体も含めて目一杯、自己表現してますよ。
演武会で対戦する敵が空手をイメージさせる連中で、
いささかマンガチックな悪役に描かれています。
話にメリハリをつける意味でも、パターン化された悪役を主人公が投げ飛ばして
悪いと言うことは無いでしょう。
わたしはこの部分はむしろ「ベストキッド」風で好きなんだけどな。
でもこれは特にキャラクターの無い”記号としての対戦相手”を太一が
クライマックスに打ち倒すと言う演出はあり得たと思います。
それで別にカタルシスが無くなると言うことはなかったでしょう。
ストップモーションを使ってますが、特撮無しで車椅子の大立ち回りを見せてます。
加藤晴彦、全力で戦ってます。かっこいいですよ!
是非これを見て溜飲を下げてください。
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