「アレキサンダー」DVD脚本レビュー

「アレキサンダー」映画チラシ★映画基礎データー★
「アレキサンダー」
2004年 アメリカ映画
監督 オリヴァー・ストーン
脚本 オリヴァー・ストーン クリストファー・カイル レータ・カログリディス
出演 コリン・ファレル 、アンジェリーナ・ジョリー

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DVD販売の前、劇場公開のときにオリヴァー・ストーンの新作「アレキサンダー」を
としまえんのユナイトシネマのウィンプル・シート初体験で見ました。
地下鉄のつり革に宣伝が出ていて
「横に揺れるは大江戸線、縦に揺れるはウィンプル・シート」とコピーがついてました。
(まじです。)
客席の椅子の脇に専用コインの投入口があって、
そこにカウンターで二百円出して購入したコインを入れると振動します。
肘掛の内側にオンオフ・スイッチがあって切り替えできます。
「アレキサンダー」は三時間を越える大作です。
全編戦争の連続で、
何十万人規模の兵隊に馬やらくだ、象の戦車が出てきて終始
「ずどどどどどどどどぉぉぉぉっっっっ」系の効果音。
BGMが重厚なシンフォニック・オーケストラで
ことあるごとに「ずずずずずずずーーんんんんっっっっ」系。
肩こり腰痛に効きそうなウィンプル振動ですが、
延々とやられると疲れることも確か。
スイッチを切りたくなる人もいることでしょう。
私は最後まで電源を入れたままでしたが、うちに帰ってからぐったりでした。
二時間くらいが限界だなぁって思いました。
スクリーン8は客席数は四百名台ですが、スクリーンの大きさは都内最大級だそうです。
中央の席に座って前を見ると視野のほぼ全部がスクリーンになります。
これで振動付ですとかなりのインパクトがあります。


アレキサンダーが32歳の若さで亡くなってから、40年後。
部下だったプトレマオス(アンソニー・ホプキンス『レッド・ドラゴン』)は、
王の生涯を記録に遺そうとしていた。
父の死の真相、母の企み、反対された結婚、禁断の愛、暗殺未遂、
そして前人未到の世界征服の旅。
果たしてアレキサンダーが遺したものとはなんだったのか? 

紀元前356年、マケドニア王国にて、
王フィリッポス(ヴァル・キルマー『ウィロー』)とその妻
オリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー『トゥームレイダー』シリーズ)と
の間にアレキサンダーが生まれる。
しかし、両親は絶えず争いを続け、母は我が子を王にすることだけに情熱を燃やしていた。
−−数年後、やがて10代半ばとなったアレキサンダーは、
ヘファイスティオンをはじめとする同年代の友人の友情に心の平安を見出していく。

紀元前336年。
フィリッポスが何者かに暗殺され、
20歳の若さで即位したアレキサンダー(コリン・ファレル『フォーン・ブース』)は、
ペルシャ帝国を攻略すべく、アジア各地に進軍、24歳でエジプトの王となる。
そして、ガウガメラの地でペルシャ帝国との会戦を迎える。
味方は4万、対するペルシャ軍は25万。
アレキサンダーは標的をダレイオス王ただひとりに定めて、
大半の味方を囮と王の包囲網の引き離しに投入し、
自らいっさんにダレイオス王の指揮戦車目指して切り込んでいく。
一点必殺のマケドニア軍の奮闘に恐れをなした
ダレイオス王は一目散に逃亡する。
紀元前331年、世界最強のペルシャ帝国は壊滅する。

戦いに勝利したアレキサンダーは、
世界征服を目指しさらに西へと向かう。
最初は取り逃がしたダレイオス王を捕らえるためだったが、
いつしかその理想は膨らむ。
「これからも制覇した国の人々を解放し、学問を広めて彼らの精神も解放したい」。

凱旋帰国を望む将軍たちを占領した辺境の総督に次々任命し現地にとどめ置いたり、
アジア侵攻の途中バクトリアの
王女ロクサネ(ロザリオ・ドーソン)を第一夫人に迎えたことで、
彼に対する側近たちの不満はつのる。
彼らにとってアジア人との子供が次の王になるなど、理解のほかだった。
そんなある日、
差し出された酒の香りに異変を感じたアレキサンダーは、
命を狙われたことに気付く。
暗殺の首謀者たちを処刑し、さらにインドへ遠征の旅は続く。

オリバー・ストーン監督は
90年よりアレキサンダー大王の生涯を映画化する企画を進めていたようですが、
なにせ世界征服の大戦争を起こした波乱の生涯の映像化なのでおいそれとは実現せず、
実際の制作は2000年にインターメディア社のプロデューサー、モリッツ・ボーマンが
脚本の第一稿を読んで以降だそうです。
社会派のストーン監督が何ゆえ十年もこの企画に執着したのかはよく分かりませんが、
ハリウッドでは、「ムーラン・ルージュ」のバズ・ラーマン監督が
レオナルド・デュカプリオのアレキサンダーと
ニコール・キッドマンの母オリンピアスで別のアレキサンダーの映画化も進んでいるとか。

ストーン監督も当初、トム・クルーズ主演を想定していたようですが、
もたもたしているうちにトム・クルーズも四十代に。
20代から30代の10年で世界征服を達成し、32歳で死んだ
アレキサンダーの主演には歳が行き過ぎてしまい、
若手で売り出し中のコリン・ファレルに企画変更したようです。

“教訓はあっても感動の無い”作風のオリバー・ストーン監督ですので、
「アレキサンダー」もすこぶるまじめに歴史の解説から始まっています。
ドラマの語り部が、
大王の死後四十年たったエジプトの老人王プトレマイオスです。
老人が自分のかつての主君の伝承記録をアレキサンドリアの図書館で
作るというプロットになっています。
話は、紀元前7世紀に、
ギリシア人の一派であるマケドニア人が、
ギリシア北方の平原地帯に建てた国「マケドニア国」の
フィリッポス(アレキサンダーの父)の身の上から解説が始まっています。

フィリッポス即位前のマケドニアは、
周辺諸民族との争いで弱体化し国は風前の灯火でしたが、
23歳で即位したフィリッポスは、ただちに軍を強化し、国を再建。
20年たらずでギリシアを征服した強引この上ない片目の王さまです。
お妃のオリンピアスはどうやら切り従えた小国の姫君だったようで、
フィリッポスとは夫婦仲がとことん悪く、
第二夫人に子供が生まれると、その子がマケドニアを継ぐのではないかと疑心暗鬼に
駆られて息子のアレキサンダーをけしかけます。
冒頭二十分ほどに、いろんな人物や複雑な歴史の背景がワッと出てきて、
ついていくのがしんどいです。
フィリッポスとアレキサンダーの親子が第二夫人の婚儀で怒鳴りあいの
喧嘩をする場面から、
アレキサンダー即位後のマケドニアVSペルシア帝国の決戦、
ガウガメラの戦場へ場面が飛んで、
新顔のマケドニア軍の将軍たちが説明もなしにぞろぞろ出てきて、
やみくもに4万対25万人の大乱戦にカメラが突っ込んでいくので、
大砂塵もろとも登場人物の顔と名前のわずかな記憶も吹き飛ばされてしまいます。
意識が遠のいても大音量の戦闘シーンの連続に眠ることさえ出来ません。

アレキサンダー即位のいきさつは、かなり後ろのほうになって、
まとめて回想シーンとして出てきます。
若い大王の内面の苦悩を語るためにはこの倒置法の方が良いと判断されたのでしょう。
後半が戦闘に継ぐ戦闘ではなしが単調になるので、
どこか大きく折り返した方が良いというアイディアは分からなくは無いですが、
その分、冒頭が理解しにくく感情移入を阻害してます。

それと恐ろしく広い範囲を旅して歩く大遠征ですが、
地図などが一度も出てきませんので地名と位置関係が不明のままです。
らくだと戦えばペルシャ、象と戦えばインド、位のことは分かりますが、
そんなどんぶり勘定ではせっかくの世界一大ロケーションがもったいなくってねえ。

ガウガメラの戦闘でマケドニア軍の長い槍が林のごとく出てきますが、
あれは
父フィリッポスが用いた長い槍を持った歩兵たちを
密集させて敵陣に攻め入る「密集歩兵部隊」をさらに進化させ、
騎兵隊と連動し
機動力、攻撃力ともにさらにパワーアップした「方陣」と呼ばれる
歩兵の戦闘フォーメーションだそうです。
どこかラグビーのフォーメーションを思わせる陣営ですが、
限りある兵力を有効運用するため一番効果的な方法のようで、
2300年前、ここまで完成度の高い戦闘組織を標準運用できたのは
アレキサンダーだけだったようです。
そこに彼とマケドニア軍の強さがあった。
ペルシャは物量作戦と大量の弓矢、足の速い馬車型戦車、
インドは地の利を生かしたジャングル戦と未知の野獣、象を使った戦車といった
新兵器で対抗しますがいずれも敗れ去っています。

アンジェリーナ・ジョリーの母親は冒頭のみの登場かと思ったら、
結局最後まで出てますね。
蛇をアレキサンダーの寝所に持ち込んだりして
なんだか必要以上にセクシー系のお母さん。笑
仲の悪かったダンナが死んだ後もアレキサンダーの頭痛の種になっちゃいます。
やれやれ。

コリン・ファレルははっきり言って顔の嫌いな男優さんだったのですが、
アレキサンダーに限っては適役だったです。
特に後半、地上最強の大王になりながら身内の将軍たちに疎遠にされて
鬱々と遠征の日々を送る風情がなかなか絵になっていました。

ヘファイスティオン(ジャレッド・レト『パニック・ルーム』)と
同性愛の関係にあるというのははじめて知りました。
それと王妃も含めて彼には、なかなか子供が出来なくて、
世継ぎ問題がくすぶっていたこととが浮世のストレスのひとつになっていたことも。

前550年にキュロス2世により建国されたのがペルシャ帝国です。
アレキサンダーの宿敵ダレイオス1世の時代には、
東はインダス川から西はエーゲ海北岸にいたる大帝国で、
当時は世界の5分の4を支配していたということになっています。
劇中に登場する都バビロンの豪華けんらんな美しさには目を奪われるほどで、
ここに凱旋するくだりがアレキサンダーの人生の絶頂期でした。
何が彼を敗残の将ダレイオス1世の追討に駆り立てたのかは分かんないです。
どこまでもしつこく追い回すうちに、
世界民族融合という別の夢を見てしまう。
なんとなく辺境の地のロケーションとバビロニアの美しさとに乗せられてしまうのですが、
アレキサンダーという人物のロマンの語りどころで、理解しがたい部分です。
おつきの将軍たちは普通に2300年前の将軍、ということは
マケドニア各地のご領主さまなので、別に世界の果てに行きたいなんて
思ってもみない。
心酔する大王の願いで、自分たちが天下無敵なんだという誇りもあるので
付き合いよく西アジアを戦いの旅を続けますが、
一体全体自分たちが何をしているのか理解できないし、
嫌気がさしてしまう。

歴史の時間に「世界の果てまで攻め取ってやる」といったアレキサンダーに
家臣が「もう戦う国がありません。ここが世界の果てです」と告げたら、
号泣して戦いをやめた、なんていう逸話を聞いたような気がしますが、
民族融合という美辞麗句に具体的にどのようなビジョンを持っていたのか、
八十あまりの都市アレキサンドリアの建設だけではよくわからんです。
結局そこいら辺がアレキサンダーという男の謎の部分なんでしょうね。
でもなんだか本人にもはっきり答えが無かったんじゃないのかな、
という風に見えてしまいます。
コリン・ファレル演ずる青年王には、魂の渇きというのがあって、
それを満たしてくれる何かが東にあるんじゃないかと夢想しているように
私には見えましたが。

死にまつわるごたごたは、実のところたいした謎になっていないようです。
映画の予告編を見るとそっちが謎のように見えてしまって、
「べつに問題ないじゃないの」とがっかりする人も少なくないようですけど。


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