「四月の雪」映画製作裏話

「四月の雪」映画チラシ★映画基礎データー★
「四月の雪」
2005年 韓国映画
監督脚本 ホ・ジノ
出演 ぺ・ヨンジュン

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照明ディレクターのインス(ぺ・ヨンジュン)は、妻の交通事故の知らせに、
コンサート会場を飛び出した。
光が交錯するコンサート会場とは一変して、やっとたどりついた病院の廊下の奥。
そこには、椅子の上にうなだれ座り込んでいる、
ひとりの女性ソヨン(ソン・イェジン)がいた。
不慣れな街で困惑するふたりに知らされる、事故よりも受け入れがたい事実。
車には、インスの妻とソヨンの夫が乗っていたのだ。

 インスとソヨンは互いの伴侶が残した携帯電話のメールを見て、
複雑な思いで看病を続ける。
そして苦しみや哀しみを共有していくうちに、こらえきれない思いが募り始める。 
互いの伴侶を看病しながら、互いの伴侶の犯した過ちをたどろうとする、傷ついたふたり。
目の前に立ちはだかる過酷な現実と、目の前に確実に存在する思いを寄せてはいけない人。
インスとソヨンは同じ“運命”に翻弄されながら、分かれ道の前で立ち止まった。 
月日が経ち、4月のおだやかな春には珍しい雪の日、
ふたりの“運命”が、もう一度動き出そうとしていた…。

“ヨンさま主演”というんでワイドショーが、
来日の様子などを面白おかしく報道したため、
まっとうな映画ファンには色眼鏡で見られてしまうことの多い作品ですけど、
『八月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』のホ・ジノ監督作品ですし、
「ラブストーリー」「私の頭の中の消しゴム」のソン・イェジンが、相手役です。
決してつまらん作品ではなかろうと思って見ました。
あのオチで良かったのか、否かは人により意見の分かれることと思いますが、
それなりによく考えられたホン(脚本)だし、演出だし、お芝居だと思います。

えーと、話をメインタイトルが出る前に戻します。
スクリーンに最初に映し出されるのは、
宇宙空間から地球の上空をなめるようにして現れるおなじみユニバーサル映画のロゴです。
ヨンさまの名は全アジアに知られており、
ホ・ジノ監督も欧米映画祭で高く評価されています。
2006年の2月に日本、台湾、香港、シンガポール、マレーシアの五カ国と配給契約が結ばれ、
5月のカンヌ映画祭の期間中にアジア10ヵ国と契約とのことです。

ところがですね、日本では大当たりだったこの作品も
本国韓国ではさっぱりだったという話です。
韓国版の原題は「外出」。で、ポスターがインスとソヨンが人目を忍んで
ひしと抱き合う姿。いかにも怪しい、妖しい、あやしい恋ですね。
なるほどこの映画は確かに不倫モノだけど、
日本のタイトル「四月の雪」のような“かなわぬ恋、不幸な愛”を強調し、
それぞれ物思いに沈むふたりの姿と降りしきる雪を描いた、
むしろ純愛映画として売り込んでいるのとは大違いです。
韓国版は、宣伝部の“禁断、スキャンダラス、劣情、不倫”を前面に押し出した
路線が硬派なお国柄の一般大衆のそっぽを向かれた、ということではないでしょうか?

撮影は2月4日から開始され、6月18日にクランクアップ
--5ヶ月間、寂寥感のある韓国東海岸の三陟市のロケや、
韓国の人気アーティストが出演する実際の野外コンサートでの撮影などが
話題となりました。
三陟(サムチョク)というところは、韓国ではなかなかに高名な観光地のようですね。
仁川国際空港からバスを乗り継ぎ5時間ほどの日本海側、海を臨む、
日本の熱海のような雰囲気の町で『春の日は過ぎゆく』をはじめいろいろな映画やドラマの舞台になっているそうです。
人口約7万5千ほどで、かつては石灰とセメント工場で栄えたようですが、
現在は多くの洞窟が散在する世界的な洞窟海岸観光都市として知られています。

劇中でもインス(ぺ・ヨンジュン)とソヨン(ソン・イェジン)が
洞窟見学に行く場面などがありますが、
ドラマ的にはねある日突然の事故連絡で駆けつけた見知らぬ冬の田舎町で、
そこが観光地であることは、話も中盤になってから分かることです。

事故の連絡があり、見知らぬ町の病院に駆けつける羽目になる。
インスとソヨンがはじめて顔をあわせるのは手術室の表の廊下なわけで、
互いに相手の存在なぞ、目に入ることもない。
私達観客は、事前の知識があってふたりが愛し合う関係になることを
知ってるわけで、どんな出会いになるんだろうかと固唾を呑んで見守ってる
わけですが、
そうそう甘いことにはならなくて厳しい展開になる。
警察に呼びつけられて壊れた車を見せられて、
パスやら携帯やらトレイに乗ったものを突きつけられて。
二人がはじめて口利いたのも「それうちのです」だったか、
「違います」だったか、とにかく、それまでの生活をぶち壊されるところを
一緒に経験するわけです。

なんでどうしてこうなったか、自分の亭主の、女房の、
気持ちをどうしてしっかり捕まえておかなかったのか!?
相手に恨み言をいう余裕も与えられぬまま、ふたりが行かなきゃならなくなるのが、
葬式です。
交通事故なのだから、当然相手がいる筈で、
不倫したカップルは対向車を運転していた若者を殺しているのだ。
その葬式に出て、遺族に「人殺し」と罵られる。「かえせ」「もどせ」と泣き喚かれる。

その帰り道、事故現場に立ち寄り、
冬の凍りついた道路にたたずんで、初めてソヨンは泣く。
このひどい状態を共有できる人は、インスとソヨンの互いしかいないと知るわけです。
インスの妻の父親も後れて病院に駆けつけますが、
インスは話を切り出せないでいるんですね。

なぜ彼は黙っていたか?
それはねえ、独り者の私には推測するしかないのだけど、
妻に浮気をされるというのは、夫にとっても人生の挫折なんだろうと。
裏切られて一方的に悪口を言えるのは、ハナから他人同士だと思っている場合で、
インスは妻と愛し合っていたと、妻こそ家族であると信じて、
家族、家庭を失ったから。
気持ちの整理が付いてないから、自分が決着の付いていないものを
人に説明できないから、ということではないかなぁと。

インスとソヨンが宿にしているのが町のモーテルです。
遊びに来たんじゃないのだから、
ビジネスホテルのような場所に泊まって当然と思いますが、
韓国のモーテルって言うのは、日本のモーテル、
今で言うならブティック・ホテルみたいな使われ方してるんでしょうかね?
何にも無いに近い部屋なんだけど、
ベッドヘッドがやけにでかくて目立つんですよね。
最初はふたりは廊下ですれ違うだけ。
いろいろあってふたりがインスの部屋で話しているところに、
妻の父が訪ねてくる。
インスはソヨンをバスルームに隠して、父親を外に出してから、
あわてて戻ってきてバスルームのドアを開く。
ふたりして真っ青のまま顔を見合わせるんだけど、
その時、ソヨンが言うんですよ、「私は大丈夫」。
自分達のやってることは、不倫なんだという現実を突きつけられる瞬間ですね。
なんとも痛ましくってね。

邦画の不倫映画(あえてタイトルは言いませんが)をきちんと見てる訳ではないので、
断定は出来ないのですが、
人に言えない不貞の恋愛というのは、
背徳の悦びというか、堕ち行く快感、快楽が映画的にはあるじゃない?
(現実の不倫が同じかどうかはまあ、置いとくとしてだね)
「四月の雪」に関してはそれが無い。
少なくとも妻や夫に対する復讐とか、世間を欺いてやるといった
動機でふたりは動いてない。

ぺ・ヨンジュンという人は、脚本を事前に検討して役作りに必要な支度を済ませて、
撮影に臨む俳優なのだそうですが、
「四月の雪」では脚本が書きあがっていない段階で出演契約をしています。
それだけホ・ジノ監督との仕事に掛けてるんですね。
しかし、現実の現場で、「インスとソヨンとして語り合ってください」といった指示だけで、
即興の演技を求められるのはやはり相当きつかったようです。
「これから生きるために何をすべきか、自分は本当に俳優なのか、俳優とは何か、
とまで考えたほどです。」とインタビューに答えています。
「私は常々、人生においてたいがいの事には答えがあると思ってました。ところが
ホ監督と出会ってからは答えに近いものもなければ、その輪郭すら描くことが出来ないと感じました」
うーむ、これは大変でしたね。

ソン・イェジンはというと、やはり「監督は「ひとつのシーンに対して答えはひとつではない」という人で、
俳優が自らそのシーンをリードしていくような演技をつけるやり方なので、当初相当戸惑った」と語っています。
演出プランの中に演技プランがしっかりあって、これこれという方法でカメラを回すから、
いったとおり芝居をしろ、というやり方をする監督ではないんですね。
こまごまと指示を受けてその通りやってる分には、トレースすること自体は辛くても、
あんまり悩むことは無い。そうではなくて
自分たちで考えるのだから、芝居はアドリブに近く、ライブのロケと一緒になる。
「以前は演技をしている時にそのシチュエーションを心から楽しんだということはなかったと思います。
自分が準備してきたこと、練りに練ったものをただ見せたかったのでしょう。
シチュエーションを本当に楽しもうとしたことも、そこから何かを作り出そうとしたこともありませんでした。」と
ぺ・ヨンジュンが控えめに言うには
「ですが今は、そうしたやり方で自分の演技に取り組む勇気と心の余裕が生まれました。」
と答え、これもまた成長の機会であったと前向きの発言をしています。

薬局の場面のみセットが作られています。
三興モーテルは一部に手を入れ、淡いトーンに統一して撮影に使われているそうです。
病院とは市内での位置関係まで考慮してロケ地を選定しているとの話です。
三陟病院は撮影後、改装工事に入ったそうですが、主要ロケの行われた病室等は
保存されているとか。
警察署のシークエンスも実際の三陟警察署で撮影されています。
現在は押し寄せる見学者のために近隣に小さな公園まで作られたとか。
インスとソヨンが逢瀬を重ねる浜辺のリゾートホテル、パレスホテルは
ロケ期間中は撮影隊の拠点として監督や俳優たちが宿泊し、
またホテル内の刺身料理店では、
インスとソヨンがはじめて外食する場面が撮影されている他、
関係者の会食にたびたび使われていたようです。

どうやら市を挙げて撮影に協力したようすが伺えます。
公共施設を含め多くのロケ地が現在も保存され、
フィルムに登場するメニューを特別メニューとして地元のレストラン、ホテル等で
来客に提供しているようです。
ロケ地ツアーを各旅行会社が企画し、多くの観光客誘致に貢献しています。
現在日本でも韓流映画・ドラマのロケ誘致が活発に行われ、
大阪府はじめ多くの自治体がしのぎを削っているという話も聞きますね。


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