「すべては愛のために」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「すべては愛のために」 2003年アメリカ映画 監督 マーチン・キャンベル 脚本 キャスピアン・トレッドウェルーオーウェン 出演 アンジェリーナ・ジョリー |
「すべては愛のために」というセンスを疑う邦題で、
このドラマに関するイメージが著しくゆがめられて一般に伝わったのではないかと
首をひねっています。
タイトルだけでは、やわなラブストーリーのように聞こえますが、
難民救済の最前線で格闘する男と女のボーダレスの愛の姿を追っています。
英国社交界の美しい人妻サラ(アンジェリーナ・ジョリー)は、
飢えと貧困が蔓延する国で救援活動をする青年医師ニック(クライヴ・オーウェン)に
影響を受け、
援助物資を届けるためにエチオピアへと向かう。
想像を絶する過酷な現実の中で、ふたりは次第に惹かれ合っていくのだが…。
オリバー・ストーン監督が5年も暖めていた企画だそうです。
が、難民救済の最前線の現地ロケにこだわり、
費用の膨張を恐れた映画会社側と決裂、
メガホンはマーチン・キャンベル監督に引き継がれました。
「マスク・オブ・ゾロ」「バーティカル・リミット」「007ゴールデン・アイ」
等を監督している人です。
監督交代劇にはプロデューサー達にも言い分があります。
「人権侵害だ」というものです。
キャンプでほどこしを受けている
難民達を劇場スクリーンに登場させるのは、
それが社会正義に訴えるものであっても、
「さらしものにした」と非難を浴びそうです。
本来、報道以外では撮影に耐えないとする
考え方の方が普通に思えます。
オリバー・ストーン監督は「JFK」からこっち、
“怒りの社会派”らしく振舞っていますが、
それならドキュメンタリーに転身すべきではないでしょうか?
ともあれ、次回作「アレキサンダー大王」に期待しましょう。
エチオピアの砂漠の難民キャンプのエピソードは、
ナミビアの海辺のリゾートであるスワコプムントから
40分ほど北部にあるナミブ砂漠に広大なオープンセットが組まれ、
述べ2000人のエキストラが動員されて撮影されました。
サラが丘の上に立って、はじめてキャンプを見下ろす場面は、
なかなかに壮観です。
ここでサラは難民の子を拾い、ニックに「どうせ助からない」と診療拒否されて、
衝突する場面があります。
そこに登場する、
報道写真でしかお目にかかった事の無いような、
骨と皮ばかりの子供に胆を潰しました。
「これで演技に耐えられるのだろうか?よく問題にならなかったな」
が、これはCG処理された子役だったそうです。
ほっとするとともに、脱力しました。
CG技術をこんな風に使うとは思ってもみませんでした。
この不意打ちはルール違反だなぁ。
救済の場は、ポルポトの圧制に苦しむカンボジア、
(撮影はタイ、バンコク)
ロシアと交戦中のチェチェンと点々とします。
(撮影はカナダ東部のケベック州)
サラとニックに特定のモデルはない様ですが、
サラはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)で働き、
ニックもまたUNHCRの協力関係下で救済活動に追われています。
(劇中からニックの正式な所属団体・身分等は判らない。
個人のボランティアとは思えないが、
過激な人物なので、わざとぼやかしているのではないか?)
ドラマの中で、10年の歳月が経過するのですが、
ふたりが老けたりはしていないので、
この時間の経過はイメージしづらいです。
2時間7分の映画で場所がくるくる変わりすぎる印象があります。
舞台に現実のモデルがありながら、
紛争そのものを描こうとはしていないので、
「何を好き好んで苦しんでいるのか」というみも蓋も無い書き込みを、
映画の掲示板で見かけました。
人間的成長と偽善、自己満足は紙一重です。
サラはイギリス社交界の貴婦人として登場しますが、
資産をなげうってエチオピアに乗り込む影で、
失業した夫ヘンリー(ライナス・ローチ)は、求職活動で青息吐息。
離婚もしないで家族に尽くしているのですから、
放蕩女房より、けなげな夫の方に同情したいです。
プロットの段階で脚本を国連のアナン事務総長に送ったそうです。
事務総長の奥さんが高等弁務官の仕事をされていたそうで、
内容のチェックを依頼してます。
事務総長は
「救済キャンプが劇映画の舞台となることは初めての事と思う。
国連の活動が広く世界に知られる事は素晴らしい事だ」
とこの作品を賞賛してます。
UNHCRのお墨付きの脚本となりました。
ですから、現場での“駆け引き”というのも、実際にある
話なのでしょう。
地元の政治家、権力者、武装勢力とニックは取引し、
銃を付きつけられたり、
略奪団と戦ったり、場合によっては、
武器運搬まで引きうけたりと。
映画公開時の宣伝コピーがまた最悪で
「1度だけ抱かれた男に命を捧げる。
たとえ道に背いた愛だとしても」
この言葉を裏付けるが如く(!?)
サラは、ニックの消息を知ると幼い我が子をロンドンに
夫とともに置き去りにして、
カンボジアへ、あるいはチェチェンへとためらい無く
飛んで行ってしまいます。
子供の事は多少後悔する様ですが、
ダンナの事は思い出しもしません。
こう書いていくと、果てしなく悪口ばかりが続きそうです。
ラブストーリーの部分を切って、
サラが難民救済を通じて成長する話と割りきって
描いた方が共感しやすかったと思います。
難民救済活動に大いに共感したアンジェリーナは
撮影中、アンゴラからの難民の子を養子に向かえ、
さらにその後、今日に至るまで
UNHCRの親善大使として活躍しています。
もっぱら広告塔代わりの様ですが、
それ自体は立派な事です。
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