「ボーン・アイデンティティー」

「ボーン・アイデエンティティ」映画パンフレット★映画基礎データー★
「ボーン・アイデンティティー」
2002年 アメリカ映画
監督:ダグ・リーマン
脚本:トニー・ギルロイ(「アルマゲドン」)
出演:
マット・デイモン

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海上沖で、イタリアの漁船が海に浮かんでいる一人の男を助け上げる。
男は虫の息で、背中に何発もの銃弾を受けていたが、乗組員の手当てにより回復する。
しかし、記憶を失っていていったい自分が何者なのか、まったく解らない。
手掛かりといえば、戦術、自己防衛能力にたけ、語学に堪能、そしてスイス銀行の口座番号だけ。
男は自分の正体を調べにチューリッヒの貸し金庫に行くが、
そこで目にしたのは各国のパスポート、多額の現金、自動拳銃、そしてパリの住所とジェイソン・ボーンという名前だった……。
「ボーン・アイデンティティー」はミステリー作家、ロバート・ラドラムのベストセラー小説を映画化したスパイ・アクションです。

原作の書かれたのがまだ米ソの冷戦時代だったので、
それをアメリカ一国主義の現代に移し、主人公を十歳若返らせるなど、脚色に相当手を入れているようです。
ジェイソン・ボーン・シリーズは3作目まで小説が書かれており、
すでに続編「ボーン・スプレマシー」も公開済み。

最近ハリウッド映画はCGに金を掛けることはあっても、
海外ロケに資本を投入することに興味を失ってしまった様で寂しかったのですが、
本作品ではフランスを中心にふんだんにヨーロッパロケが敢行され、画面がとてもリッチに見え、
美しい街並みに苦悩する無敵美青年となかなかに"眺めの良い"映画に仕上がっています。

なるほどね、劇場を見渡せばデイモン・ファンとおぼしき若い女性でいっぱい。
付き合いで劇場に来た男性もカーアクションに後半のパイロアクションの連打にそれなりに満足してます。
ラブストーリーではないのに、もってこいのデートムービーです。
男同士で見てもも、女独りで見ても違和がないと言うことは、幅広く客を集める上で強い武器となります。
同じ脚本でもアメリカ国内が舞台で、スティーブン・セガールあたりが主演だったらベストテン入りはとても無理です。
お話そのものはシュチュエーションで見せるアクションのみですので、たいしたことはありません。

マット・デイモンの相手役マリーは、ミニシアターでロングランヒットした『ラン・ロ−ラ・ラン』のフランカ・ポテンテ。
さらにネームバリューのある女優を使えばもっと客は来たでしょうが、
ひとつ間違えばブラピとジュリア・ロバーツの「メキシカン」みたいな映画かと思われてしまう。
ここいらへんはキャスティングの難しいところです。
マリー役は"おいしい役"です。騒動に巻き込まれてデイモン君と逃避行する。
宿で変装のためセミロングの髪をデイモン君にバスルームでちょきちょきやってもらうのですが、
濡れ髪でうすッ暗いバスルームで2人きり。
脚本ではけっこう「むふふ」なシーンとして書き込まれている筈ですが、
相手がデイモン君だからか、ダグ・リーマン監督(「go」「スウィンガーズ」)は淡白な人なのか、
あっさり通りすぎてしまいます。二人の関係はむしろ"戦友"ですね。

敵役が「遠い空の向こうに」の頑固おやじクリス・クーパーです。
今回は「アメリカン・ビューティー」で見せた軍国主義の困った隣人に近い雰囲気でCIAの陰険捜査官を演じています。
笑顔より怒った顔が似合うと言うのは、役者として良いことなのか不幸なのか…。

ジェイソン・ボーンの使う「カリ」はフィリピンの伝統武術。
素手での攻撃、防御はもちろん、映画では出てきませんが棒(スティック)を使用した 技が特徴的な格闘技です。
映画ではCIA諜報員の護身術という事になっていますが、本当は米連邦捜査局(FBI)の訓練に採用されているそうです。
デイモン君は3ヶ月ほどですが稽古を受け、カット割のすばやさも手伝って、それなりに見られるレヴェルで戦っています。
棒を使うとボロが出るので使わなかったのでしょう。

ボーンは直感的に行動しているように見えて、
しっかりした状況分析と少ない選択肢の中から最善と思われる方法で危機を乗りきる対応が出来る人で、
それをセリフに頼らず、アクションの中でピッチを上げて展開する前半から中段にかけては、なかなかに見せます。
が、クライマックスからエンディングに描けては、これが見事に失速してしまい、私が見た回も、
5、6人連れの女の子たちがラストは笑いっぱなしでした。
劇場マナーに反しますが、「あれでは仕方ない」と思えたのも確かです。

スパイもの、というのは言ってみれば全体がパズルゲームなのですが、
クライマックスでいきなりゲームを投げてしまっているので、いけませんねー。
ねたばれ改行です。





007でもそれなりに基本ルールを守っているので、
どんなに漫画チックな展開でもついていけるのですが、あれではゲーム続行の放棄です。
パリのCIAのアジトの潰され方が単純過ぎますし、
クリス・クーパーが死んだ途端に、上司が「次は××作戦でーす」はないでしょう。
現実のCIAは、手に余るから続行は不経済という理由で作戦を撤収することもあるとは思います。
フセインの暗殺だって散々失敗しているのですから。
でも映画でそれをやってしまっては、見ている方はしらけます。

ボーンの最初の標的のだった黒人。
私は彼をジャーナリストか、経済犯のような人物と思っていたのですが、パンフを読むと国家元首だそうです。
とてもそうは見えないなー。的が小者と言うのは話を小さく見せます。
それと船に潜入したボーンが殺害をためらう理由が
「子供がいたから」というのは三十年前のスパイ映画の発想です。
そんなので返り討ちにされる主人公は馬鹿に見えます。

まとめてケチをつけましたが、
美しい街並みに苦悩する無敵美青年と"眺めの良い"映画であることには違いありませんから、
見る価値はありますし、更に続編では脚本そのものを良く検討し、頑張っています。



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