「ブラザーフッド」映画製作裏話
★映画基礎データー★「ブラザーフッド」 2004年 韓国映画 監督脚本 カン・ジェギュ 出演 ウォンビン チャン・ドンゴン |
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アジアで大ヒットした『シュリ』のカン・ジェギュ監督が、
朝鮮戦争を舞台に切ない兄弟愛を描くスペクタクル・ヒューマン・ドラマ「ブラザーフッド」。
徹底的な時代考証の上に再現された戦場は、リアルで臨場感あふれる。
主演は『ガン&トークス』で映画デビュー、
甘いマスクで人気ブレイク中のウォンビンと『友へ/チング』で演技の評価も高い
チャン・ドンゴン。韓国の映画興行記録を全て塗り替えた話題作です。
運命の日、6月25日。
平和だったソウルの街は一瞬にしてサイレンの音と爆発音、
人々の悲鳴が渦巻く修羅場に変わった。戦争が勃発したのだ。
多くの人々とともにあわただしく避難の途につくジンテとヨンシンの家族。
しかし、避難列車に乗るために辿り着いた駅で、
ジンテとジンソクは軍人達により強制徴用され、軍用列車に乗せられる。
平穏な日常から、生死が行き交う戦場に放り込まれたジンテとジンソク。
二人は訓練を受ける余裕すらなく、
韓国軍最後の保塁である洛東江(ナクトンガン)防御線に実践投入される。
38度線を越えた朝鮮人民軍は、ソウルを陥落させて怒涛の進撃を続け、
韓国軍を朝鮮半島の南端に追い詰めていた。
絶え間ない砲撃にされされ、塹壕の中を逃げ惑う韓国軍の兵士達。
弟ジンソクと同じ小隊に配属されたジンテは、
ジンソクの召集解除を求めて大隊長に会いに行く。
大隊長との面談を通じて、
弟を除隊させるために何をしなければならないかを悟ったジンテは、
弟を救うために銃を取り英雄になることを決意する。
『シュリ』も純愛とテロリズムを強烈なアクションでひとつにしてしまった泥
クサさがありましたが、「ブラザーフッド」はそれを朝鮮戦争という大舞台に
持ってきて更に激烈に見せています。
肉体に突き刺さった砲弾の破片を素手でつかみ出す、といったグロな場面があ
たりまえに次々出てきますので体調が悪いと二時間半が拷問になります。
主人公の兄貴の戦いにかける情念というのは凄過ぎてスーパーマン的なので、
「ありえない」と拒否反応を起こす人もいます。
いまの韓国映画はアジアでは最後発組です。
他国の真似をしていてはアジア市場でも頭角を現すことはできません。
「猟奇的な彼女」のような恋愛映画にせよ、
情念の“濃い目”の人たちがパワフルに押し捲る作風で強引に国際映画市場へ
参入しました。
(ドラマ「冬のソナタ」も同じこと、ヨン様の微笑には“凄み”がある。)
私としては表現オーバーな部分も含めて面白く見たのですが、戦争悲劇と兄弟
愛という普遍のテーマでありながら、見る人を選ぶ、好き嫌いがはっきり別れ
そうな映画です。
映画冒頭のあらすじ紹介に史実の解説を加えます。
北の金日成は、武力による半島統一を決意し、
スターリン、毛沢東の同意を得て韓国に対する侵攻を着々と準備します。
ソ連からの大量の武器援助、中国からの朝鮮人兵士の帰国によって、
またたく間に強大な軍隊を作り上げ、戦争ぼっ発前、兵力は韓国の二倍、砲の
数では三倍の差をつけていました。(射程距離や破壊力等を加味すれば火力の
差は五倍に及ぶとされる。)
北朝鮮が240両の戦車を持っていたのに対し、韓国には戦車が一両もないばかり
か、韓国兵のほとんどが戦車を見たことさえなかったそうです。
1950年6月25日未明、北朝鮮軍は38°線の全線にわたって砲撃を開始、機甲師団
(戦車部隊)を前面に押し立てた怒涛の進撃を開始します。
奇襲攻撃を受け、有効な対戦車兵器を持たない韓国軍は議政府正面から崩壊
し、
わずか三日目の6月28日早朝、北朝鮮軍はソウルに突入しています。
このときの戦闘で漢江に架かる橋が誤って爆破され、
韓国主力軍と市民70万人がソウルに取り残されています。
将兵は川を渡って抵抗を試み、市民はソウルに残る者、南へ避難する者、北朝
鮮に協力する者などさまざまな人間模様が見られたと記録されています。
七月、アメリカ軍による国連軍が結成され、後に18カ国が戦闘部隊を派遣して
います。
だが北朝鮮の進撃を阻止することはできず、七月下旬、プサンとする朝鮮半島
東南一角に韓国軍国連軍は圧迫されます。
ここで負ければ海に蹴落とされるのみです。
一ヶ月半に渡る洛東江攻防戦は、
制空権のない北朝鮮軍が夜間攻撃で国連軍陣地を突破し、
夜が明けると国連軍が空爆と地上からの反撃で陣地を取り返すという
一進一退の消耗戦に突入します。
戦力を補うため北朝鮮軍は、占領した地域で強制連行した市民を戦線に投入
し、
韓国軍も若者を強制徴兵して対抗します。
未熟な兵による同族相争う悲劇の戦いとなるわれですが、
映画にもある兄弟の強引な徴兵も当たり前に行われたようです。
「ブラザーフッド」には大量の兵器・車両が動員されていますが、
韓国国軍は「脚本上、軍の描写に不適当な箇所がある」として撮影協力を拒否、
製作者たちは韓国映画史上空前の制作費127億ウォンを用意して、
朝鮮戦争時の南北両軍をスクリーンに再現しています。
ジンテの活躍もあって洛東江の防御線を守るのに成功した韓国軍は、
国連軍の仁川上陸作戦が成功したという知らせを聞き、ついに北進を開始し
た。
そんな中、
ただ弟の除隊を願うという理由だけでジンテはあえて危険な任務を遂行し続けるが、
そんな兄を理解できないジンソク。
二人の溝が徐々に深まっていくなか、ジンテが数々の任務を成し遂げ勲章を手にし、
ジンソクを家に帰らせようとするが、ジンソクは拒否し、二人の仲は決定的になる。
“トロイといいブラザーフッドといい、今年の映画のテーマは「だめな弟をか
ばう兄」なのか?”という映画の書き込みを見て笑いました。
5月に続けて見た「グッバイレーニン」「みなさん、さようなら」「ビッグフィッシュ」が
放蕩親父(または融通の利かない古い母)の臨終に振り回される長男の話ばか
りだったからです。
映画はすべて「対立と葛藤」でドラマが成立していますが、
その対立要因を成立させるためには、いろいろな枷を背負った主人公が是非と
も必要になります。そこで標的にされたのが、兄、長男なのでしょう。
時代が急速に変わる世の中で、古い世代(親たち)を背負い、己の女房子供と
自分の人生の幸福の追求も一切合財を両手に抱えて全力疾走しなけりゃならな
い彼らこそが、“いまどきの映画”でテーマを語る主人公に適当なのだろうな。
(姉、長女映画というのがもっとあってもよさそうなのだけど、これは意外と
少ない。
兄、長男の方が世のしがらみの拘束がきついので脚本が書きやすいのでしょう。)
9月15日国連軍は仁川に奇襲上陸して反撃に転じ、ソウルを奪還。
首都ピョンヤンは、韓国第一師団、米第一師団、米第二四師団の争奪競争となり、
韓国第一師団の手により解放されます。
取り残された北朝鮮軍は破壊された建物に立てこもって、韓国軍はその一つ一
つを潰す掃討作戦を行いました。
勲章欲しさに仲間の犠牲もいとわず指揮官逮捕に狂奔する兄の姿は、弟の理解
を超えます。
勲章を手にした兄は司令官と交渉し、弟の除隊約束を取付けますが弟は断固拒
否します。
弟の反発は感情的で見ている観客に「何のために軍隊に残るのか?」よく分か
らないという風に見えてしまいます。
ここは狂気に走り出した兄を弟が心配して軍に残る決意をした、
という風に持っていった方が泣けるのではないでしょうか?
さらにストーリーを追いかけますが、以下、ねたばれ改行しときます。
兄貴の狂気が露らなるのは更に北への進軍が進んでいってからです。
国連軍はそう追撃に移り、各部隊は鴨緑江を目指して進撃を続ける。
北朝鮮軍はソ連中国の国境線近くまで追い詰められます。
追い詰められた北朝鮮軍は途中の農村の村人を虐殺。
彼らの死体を盾にして逃走を企てますが、韓国軍兵士の怒りが爆発。
洞窟に隠れる北朝鮮兵を引きずり出し、
武器もなく命乞いをする彼らを惨殺しまくります。
その中に兄弟と一緒にソウルで靴磨きをしていた仲間がいます。
弟は銃口を突きつける兄を止め、彼の口から強引に北朝鮮軍に徴用されて
戦わされていたのだと聞き出し、捕虜にすべきだと兄を説得します。
驚いたのはこの後で、後方に送って捕虜収容所にでも収容するのかと思いきや、
主人公たちの部隊はこの捕虜たちを延々と戦いに連れ歩くのですね。
捕虜を収容するシステムが当時の韓国軍には無かったのかもしれません。
捕虜たちは韓国兵の慰みものになり、
仲間同士で殴り合いの喧嘩を強要され、負けた方に食事を与えない等の
見るに耐えないいじめがあります。
ところが10月25日、中部戦線の日米韓軍は中国軍の不意の攻撃に遭遇して、
パニック状態となる。
夜間にドラやチャルメラを鳴らし、
大歓声を上げながら波状攻撃を繰り返す中国軍の空前の人海戦術によって国連
軍は壊乱状態となり38路線まで総退却を余儀なくされた。
まもなく戦争は終わる、その期待は中国軍の参戦によって覆されます。
山野をおおう中国軍はCGで作られたものでしょうが、
「トロイ」の無意味な大軍の描写に比べてはるかに効果的です。
退却する部隊の中で捕虜たちが武器を奪って逃亡を企て、
背後に迫る中国軍とあいまって主人公たちと無残な殺し合いになります。
映画全体を通して気付くことは、
北朝鮮が絶対的な悪としては描かれていないことです。
韓国にとって、北朝鮮はやはり兄弟なのでしょう。
どんなに人の道を外れてしまっても、兄弟は兄弟。
彼らを憎むことは同時に自らの内なる憎悪と向き合うことになるのです。
北への侵攻とその惨めな敗走はそのことを如実に語っています。
ソウルに退却した主人公たちは、徴兵以来音信の途絶えていた家族と再会を果
たしますが、
兄の婚約者は北朝鮮の協力者だという疑いをかけられ、兄の前で
義勇軍に射殺されます。
さらに弟が憲兵に捕らえられ、北朝鮮軍の再度のソウル突入で
弟が収容された倉庫ごと韓国軍の火にかけられたと知った兄は絶望のあまり指
揮官を殺害、
北朝鮮軍に寝返ってしまいます。
イデオロギーも祖国愛もない兄弟の振る舞いは、
行き当たりばったりで身勝手にも見えます。
が、これは当初からの演出の狙いで、
共産主義も軍国主義もどちらも戦争に翻弄される庶民には共感し得ない脅威の
存在として
「ブラザーフッド」では捕らえられているのですね。
冒頭と最後に登場する戦争犠牲者の遺骨収集団体の発掘事業は、
初めて目にしました。
この作品もそもそもこの団体の事業で五十年ぶりに夫の遺骨と対面し、
嘆き崩れる婦人のドキュメンタリーに着想を得て制作されたものだそうです。
日本人にとって太平洋戦争がそうであるように、
韓国人にとっての朝鮮戦争も風化の危機にさらされているようです。
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