「ブタがいた教室」
■作品基礎データ 「ブタがいた教室」 2008年 日本映画 監督:前田哲 原作:黒田恭史「豚のPちゃんと32人の小学生-命の授業900日-」 (ミネルヴァ書房) 脚本:小林弘利 出演:妻夫木聡 |
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4月。6年2組の担任の新米教師・星(妻夫木聡)は、
教室に1匹の子豚を連れてきた。
1年間、その豚を育てて、大きくなったら食べようという星先生に、
生徒たちは疑問をぶつける。
「なんで食べるんですか?」
「生きているものを食べるということの意味を、体で感じて欲しいんです」
星先生の考えに、教頭の仁科先生(大杉漣)は苦い顔。
しかし、高原校長(原田美枝子)は、星先生の熱意と覚悟を認め、
学校で豚を飼う許可を出す。
6年2組の生徒たち26人は、みんなで校庭に小屋を作り、
当番を決めて「Pちゃん」と名付けた子豚を飼いはじめる。
池沢先生(田畑智子)のクラスが育てているトマトをPちゃんが食べてしまったり、
お母さんたちが豚を飼うのに反対したりと、
困ったことも起きたが、クラスのみんなは力をあわせてPちゃんの世話をし、
ときには一緒に遊んで楽しく過ごしていく。
夏休みも過ぎ、卒業まで4ヶ月となったころ、
6年2組の中では、Pちゃんを食べるのに反対する意見が増えていた。
育てているうちに、Pちゃんを食べるのがかわいそうになってきたのだ。
Pちゃんをどうするか、クラスのみんなは一生懸命に考え、
さまざまな意見を出していく。
しかし、クラスで話し合いを繰り返しても、
食べるか食べないかの意見はまっぷたつに分かれてしまう。
結論の出ないまま、6年2組の卒業は近づいてくる。
果たして、26人の子供たちと星先生がくだした決断は?
「食育」や「いのちの授業」が叫ばれる前、総合的学習時間もまだなかった1990年。
大阪の小学校の新任教師がはじめた実践教育が、日本中に波紋を投げかけました。
“ブタを飼って、飼育をした後、食べる”というものだった。
「Pちゃん」と名付けられたブタは、32人の子どもたちに愛され、
家畜ではなくクラスのペットとなっていきます。
食べるか。食べないか。
2年半の飼育の後、子どもたちの卒業を控えて、
Pちゃんの処遇を巡って大論争が展開される。
しかし、問題はそこで終わりませんでした。
その後、
子どもたちを追ったドキュメンタリーが1993年にテレビ放送され
ギャラクシー賞奨励賞、動物愛護映画コンクール内閣総理大臣賞を受賞し
大きな反響を呼んだのです。
視聴者からの反応は「残酷だ」、「それは教育ではない」という多数の批判的な声の一方で、
教師の情熱と、子どもたちが自ら考えて真剣に事態に向き合う姿に心を打たれ、
支持する人たちもいました。
その一人が、本作の監督:前田哲。
前田監督は10年以上前に見たドキュメンタリーの感動を胸に秘め、
動物や草木はもちろん、人間の命についても、
改めて考えることが必要とされている今、
この新任教師が挑んだ試みを多くの人に伝えたいと映画化に挑みました。
オーディションで選ばれた26人の子どもたちに手渡されたのは、
子どもたちのセリフ部分だけが白紙で、
結末が記されていない脚本だったそうです。
スタッフや、大人のキャストには通常の脚本が配布されており、
撮影現場には「子どもの脚本」と「大人の脚本」が存在していました。
それゆえスタッフや関係者は、余計な情報を与えないように、
子どもたちと注意深く接したといいます。
オーディションからの180日間、
モデルになった32人の子どもたちさながらに、
26人の子どもたちは、
ブタの飼育をしながら「ブタ肉は食べるけど、Pちゃんは?」を力の限り考え、
物語としての結末を知らないがゆえに自分の答えを見つけようと、
思いや意見をカメラにぶつけます。
「食べる13人、食べない13人」の真二つに別れ、
時には議論が白熱して大粒の涙を流し、
つかみ合いのケンカまでしたこともあった姿がスクリーンに登場します。
撮影を通して役を演じる子どもたちもまた、この授業を追体験したのです。
そんな子どもたちと、一緒に悩みながら成長をする新任教師・星先生を演じたのは
今回教師役に初挑戦の若手実力派No.1の妻夫木聡。
カメラが回っていない時でも「星先生」と慕われ、
撮影現場では子どもたちに優しく、時に厳しく「先生」として接したといいます。
撮影期間中、廃校になった小学校を借りて、
子どもたち、キャスト・スタッフが毎日登校し、
そして実際にブタを飼育したそうです。
実際には撮影用の十頭以上の「Pちゃん」がいたといいます。
1990年7月から1992年3月の間、
大阪・豊能町立東能勢小学校の新任教師だった黒田恭史氏が
担任クラスでブタを飼い、飼育を通して命を考える900日の実践教育。
ブタを選択したのは黒田氏が大学時代に出逢った教育者・鳥山敏子氏の
著書「いのちに触れる」の影響が大きいとされています。
鳥山氏は鶏をさばいて食べたり、ブタを丸ごと一頭食べる授業、
通称”鳥山実践”で知られます。
黒田氏はその”鳥山実践”を参考に、
実際にブタを飼うところから始めることを思いついたそうです。
この模様を番組制作ディレクター・西谷清治氏がカメラで追い、
その後の1993年7月12日にフジテレビ系の情報番組
「今夜は好奇心」で放送され賛否両論を巻き起こした。
同番組は、1993年度ギャラクシー賞奨励賞、
1995年に動物愛護協会主催映画コンクール「内閣総理大臣賞」を受賞。
2003年には黒田氏によって「豚のPちゃんと32人の小学生-命の授業900日-」
(ミネルヴァ書房)として出版されました。
2008年、東京国際映画祭で観客賞を取っています。
今年は「おりくびと」以上の作品はないなと思っていたです。
伝統的な日本映画の制作方法のライン上の作品としては、
「おりくびと」が最上と言う事で良いのだけれども、
新たしい監督が、新しい方法論で描ききった作品として、
「ブタがいた教室」はとても手ごたえの感じられる作品でした。
妻夫木聡演じる小学校の新任教師が6年2組の教室に
子豚を連れてきて「教室で育てて、大きくなったら皆で食べよう」と提案する。
「食べる」という結末の意味するところに余り自覚のない子供達は、
もろ手を挙げて賛成し、子豚にPちゃんという名を付け、
ペットとしてかわいがってしまう。
卒業の日、丸々太ったPちゃんを目の前に、
子供達はどのような結論を出すのだろうか?
きわどい話ですが、実話だそうです。
ドキュメンタリーとして放送されるはずのものでしたが、
制作のNHKが腰を抜かして逃げてしまい、
かわりに放送したフジテレビで、
しこたまドキュメンタリー関係の賞を取ったそうですが、
放送直後から「残酷だ」「これは教育ではない」と大騒動になったそうです。
そりやぁ揉めるわな…。
妻夫木聡はインタビューで、小手先の演技力より、
人としての資質を問われると、この作品では準備段階から
子役の子供達と如何に向き合うかで腐心したとのことですが、
そのスタンツは正解です。
1300人ものオーディションを勝ち抜いて選ばれた子供達26人は、
如何にも児童劇団の生え抜きらしい美少年美少女ぞろいですが、
ドラマの後半、
そんなものかなぐり捨てて、Pちゃんを食べるか食べないかで
議論伯仲し、泣きながら意見し、挙句掴み合いにまで
発展する子供たちの姿に感動します。
企画から制作まで十年かかったそうです。
それだけの価値はあります。
監督の、
きわどい話を見世物にせず、正面からがっぷりと
組みあった姿勢に感心しました。
妻夫木聡のインタビューから、制作の様子がわかります。
Q:本作への出演の決め手となったのはどんなところでしょうか?
この企画を聞いてから原作の本を渡されて、
読んでみると僕が考えていた教育というものを根本から覆すような内容だったので、
興味を持ちました。
Q:今回は実在の人物を演じるということで、何か工夫されたことはありますか?
今回ほど役者としての演技プランを考えなかったことはないくらい、
何にも考えないままで参加しました。
子どもたちと一緒に学んでいければいいという思いで始めたので、
演技プランを立てるということよりも、自分なりに教師とはどういうものなのか?
教育とは何か?
ということを考えて事前にノートにまとめたり、
いろんなドキュメンタリーを観たりしました。
僕自身はただ知識を植えつけるだけの教師ではなく、
子どもたちから何かを引き出してあげられる教師でありたいと思って演じました。
Q:たくさんの子どもたちと共演されていますが、大変ではなかったですか?
やっているときは、もう一生懸命であまり感じてはいませんでしたが、
終わった後はやっぱりドッときましたね(笑)。
子どもを育てるってほんとに大変だと思いました(笑)。
子どもたちはヒマさえあれば遊んでしまうので、その遊ぶタイミングですよね。
僕自身も一緒に遊んでいたら、子どもほど体力はないので撮影がもたないんですけど(笑)。
鬼ごっことか、ドッジボールとかをしました。
Q:ブタとの印象に残った思い出はありますか?
ポスターの撮影をしているときにおしっこを漏らされちゃって、
ビショビショになっちゃったんです(笑)。
「靴だけ変えましょう」ということになって、
靴を変えたら、今度はうんちをもらされまして、
しまいには強風が吹き始めまして、もうだめだなあ~ってなったときがありました(爆笑)。
そのときはもう笑うしかなかったです(笑)。
Q:子どもたちと大きくなったブタのPちゃんをどうするか
話し合うシーンが印象的でしたが、どんな現場だったのでしょう?
あの場面が一番の核になると思っていたので、
子どもたちの言葉をどうやって引き出そうかってことを考えました。
そこで本番が1回終わった後に、
「ちょっと子どもたちにいろいろ言ってもいいですか」って監督にお願いして、
カメラは回しっぱなしのままで、
僕自身の言葉で子どもたちと話せば、
子どもたちの素の表情を引き出せるんじゃないかって思ったんです。
Q:どんな話しをされたんですか?
「食べるってことはどういうことだろうね」と僕が聞くと、
「生きることです」と答えが返ってくる。
さらに「生きるってどういうことだろう?」と問うと、
「命をもらうことです」と子どもたち。「
じゃ、命って何だろうねえ?
Pちゃんも命だよね。スーパーで買って、食べる豚肉も命?」と聞いたら、
「命です」って答えが返ってくる。
「じゃあ、どこまでが命だろう? 植物って命だろうか? 動かないけれど……」と僕。
すると子どもたちが「でも、育つから命です」と答える。
「そうか。じゃあ水ってどうだろうね」と返すと、
「水は動かないから命じゃないです」答える子どもたち。
そして「でも、人間の体ってほとんど水でできているわけだし、
水だって置いといたら腐ってしまうし、
Pちゃんだってほかの動物や植物だって水がないと死んじゃうんだよね。
そう考えると水も命じゃないかな……」。
そんなやり取りが続いた後に、ある子どもが
「じゃ、人間って何なの? 人間って食べられないじゃん」と言ったのを聞いた瞬間、
ドキッとさせられたんです。
Q:本当の授業のようなやり取りですね。それをどう本番に役立てたんですか?
最後に僕が、
「もともと地球というものは自然が主役だったけれど人間が主役になって、
人間の都合で物ごとを考えるようになっちゃったよね。
今、食べる、食べないって話し合っていることも人間主体の目線で考えていることで、
その中で僕らは殺し合いをするわけにいかないし、食べるわけにもいかないよね。
でもこういう現状があるってことを、
命をいただくってことをこうやって話し合わなきゃいけないんだよ。
台本なんて無視していいよ、
今の素直な気持ちを自分の気持ちを言ってみて」って言って、
もう一度本番をやってみたんです。
そうしたら前回とは全然違う、いい表情になっていたんですよ。
いいものが撮れたと思います。
スイッチが入る瞬間ってやっぱりあるんですよね。
僕が子どもたちにそういうきっかけをちょっと与えてあげればいいんだと思いました。
Q:ほかに子どもたちと何か印象に残っている思い出はありますか?
撮影の最初のシーンで、カットになってしまったんですが、
子どもたちが食べ物で遊んでいて、それを僕が怒るシーンがあったんです。
本番以外の時間でも食べ物で遊んでしまう子がいたんで
「命についてもっともっと考えなければいけない作品を作っている僕たちが、
こんなことでどうするんだ!」ってガツンと怒鳴ってしまったんです。
そのときはシーンとなっちゃったんだけど、
そのシーンの撮影が終わった後で、食べ物で遊んでいた子が僕のところに来て、
「先生、さっきは本当にすいませんでした。今後はちゃんとします」
って言って謝りにきたんです。
「わかればいいんだよ、次から頑張ろうな」って言ったんです。
あの瞬間はほんとに気持ちが良かった。
僕と子どもたちの距離がぐっと縮まりましたね。
Q:映画を撮る前と後では、自分の中に何か変化は起きましたか?
それは、今はまだわからないことだと思うんですよ。
答えがないというような教育の仕方って、
形がない分どんな風に自分の実になっているのかわからないんですよね。
でも多分、将来フッとした瞬間に自分が何かにつまずいたときなんかに、
こういうことがあったということが強さになるんだろうと思います。
生きているって素晴らしいことだって、単純に思えると思うんですよ。
「生きているって、すげえことだぜ! いろんな命をもらっている集合体なんだ」って、
考えられるのはすごく強いことだと思います。
人生、いいこともあれば嫌なこともあるじゃないですか。
嫌なことってそのときはキツいけど、後になったら笑い話になることってありますよね。
考えようで、人生って楽しいって思えるんですよね。
僕は、常に日々の時間っていうのを大切にしようと思っているので、
ポジティブになれているんだと思います。
僕にとって、パワーの源って…
以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
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