「チェンジリング」

「チェンジリング」映画チラシ■作品基礎データ
「チェンジリング」
2008年 アメリカ映画
監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド
脚本:J・マイケル・ストラジンスキー
出演:アンジェリーナ・ジョリー

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1928年、ロサンゼルス。
ある日突然、クリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)の息子
ウォルターが姿を消す。
5ヶ月後にイリノイ州で発見され、警察が連れてきた少年は別人だった。
息子だと言い張る少年。
クリスティンの訴えを聞き入れない警察。
いったいウォルターに何があったのか?
息子をこの手で抱きしめるまでは、決して諦めないと誓い、
様々な圧力と闘うクリスティンの元に恐るべき報せが届く・・・。

『許されざる者』と『ミリオンダラー・ベイビー』などの作品で
ハリウッドで最も多くの尊敬と期待を集める巨匠、クリント・イーストウッド。
アカデミー助演女優賞を受賞した『17歳のカルテ』から最新ヒット作
『ウォンテッド』までの9年間にハリウッドのトップ・スターの地位を築き上げた
アンジェリーナ・ジョリー。
アメリカ映画界を代表する2人が、
衝撃の実話を元にした感動作を誕生させた。


予告は見ていましたが、
それでもこういう話が実際にあったというのは驚きです。
当時のロス市警の評判の悪さは相当なものですが、
それにしたって「息子じゃない」と主張する母親を
精神病院に押し込むなんて、
とてつもない人権侵害です。
そんでもって、その精神病院の医者や看護士達が輪をかけてとんでもない奴らで…。

ヒロイン役はヒラリー・スワンクらもやりたがったそうですが
アンジェリーナ、戦う母を独り頑張ってました。
「ミリオンダラー・ベイビー」も戦う女だけど、
あれはイーストウッドとの関係あってのことだから単独主人公ではないですね。
「チェンジリング」も長老派教会の牧師なんかが支持者になって
戦ってくれるけど、
支持者が出てきた途端、彼女を拉致同然に病院に“保護する”
警察の狡猾さはぞっとします。

長老派の牧師というのがラジオ番組を持っていて、
マスメディアで政治の腐敗を市民に訴えるというのは、
1928年にして、今風の市民運動のハシリのようで興味深いです。
その牧師役が「マルコビッチの穴」のマルコビッチさん。
なんか久しぶりにこの人を見ました。
実は上映中は気がつかなくて、
帰りにキネマ旬報を見て「なるほど」と気づく始末。

しかし、この牧師。彼女の支えになっているのに、
その内面には入り込まず、脇役の領域を踏み越えないところが
さすがです。それがイーストウッドの演出の良さか、
マルコビッチの上手さなのかは定かではないけれど。

以下、ネタバレ改行です。




犯人役の俳優は、本物の犯人に外見が良く似た人らしい。
結構登場シーンが多い割りに、彼の内面を描こうとしないところも、
面白くもありますね。
子供を殺しまくって、いったい何がしたかったのか、さっぱり分からず仕舞で、
でも変に理屈をつけて、理解しやすくてしまうのは良くないです。
彼のした事はどうあっても許されることではないですからね。
いまなら精神鑑定を受けさせて、
もしかしたら死刑にはならなかったかもですが。

ラストには警察も市長も、相応の裁きを受けるし、
精神病院への収容は手続きが複雑化されるしで
まあ、それなりのカタルシスはあるのですが。

とは言え、なくした子が戻ってくるわけではないので、
やはり後味すっきりというわけには行かないですね。
5年もたってから一緒に殺されたと思っていた別の子が出てくるのにも
驚かされましたが、
あれもやはり事実なんでしょうね。
あんな風にマジックミラー越しに家族の再会を見て涙するというのは
脚色された事かもしれませんけど。
あの場面があって、アンジェリーナの最後の一言があるから、
未解決の事件でもちゃんと観客が納得できるんでしょう。

「許されざるもの」からこっち、イーストウッドの監督作品は
本当にアメリカっぽくてドライでクールで、ヒューマンだけど、
(それは「硫黄島からの手紙」でも変わりないけど)
こういう世界観の監督というのは、世界のどこにもいない、
イーストウッドは西部劇でも、戦争ものでも、スポーツでも、
ドラマでも、ほんの僅かでもブレない、どんなジャンルを描いても
イーストウッドはイーストウッドであるというのは、凄いです。

今年はもう一本、イーストウッドの作品が公開されるようです
本人の主演で、予告が一緒にやっていました。
そちらも期待したいです。


脚本家のJ・マイケル・ストラジンスキーのもとにかかってきた電話が
この作品の企画のきっかけとなっている。
「市庁舎にいる私の情報源から、古い資料が焼却処分になるが、
その中に是気読んでおくべき記録がある、という連絡があった。
それはクリスティン・コリンズ事件の市議会福祉聴聞会の記録だった。」
読み始めて、ストラジンスキーは思った。
「こんなことが実際に起こったとは思えない。何かの間違いに違いない」と
 ストラジンスキーは約一年をかけて、クリスティン・コリンズが真相を求めて
戦った約七年間を調べ上げ、
その過程で浮かび上がったのは、
児童誘拐殺人鬼ゴードン・ノースコットの犯行の詳細と
当時のロス市警の強固な権力と暴力の姿だった。

ゴードン・ノースコットはウォルター・コリンズの殺害について
何度も否定と肯定を繰り返し、関係者を最後まで惑わせる。
クリスティン・コリンズは息子の身に何が起きたか知ることなく、
1935年に亡くなった。

ストラジンスキーの執筆した脚本は
製作者ロン・ハワード、ブライアン・グレイザーの関心を引く。
ふたりは「ビューティフル・マインド」で実在の天才数学者で描き
アカデミー作品賞を受賞しているが、他にも
「アポロ13号」「シンデレラマン」といった事実、実在の人物の
ドラマに定評がある。
映画化権の獲得に乗り出したふたりは同時にイーストウッドに連絡する。

「脚本を持ってベルリンへ向かったんだ」とイーストウッドは振り返る。
「それを帰りの飛行機で読み、大いに気に入った。
戻ってすぐにロンとブライアンに「いいよ、やるよ」と電話をかけた」
するとアンジェリーナが脚本に興味があることを教えられ
「彼女だったらいいね、これまでの仕事も好きだし」と答えた。
さっさと話が決まったよ」

アンジェリーナの魅力をイーストウッドは
「彼女は四十年代の女優達、個性的で存在感のある
キャサリン・ヘップバーン、イングリット・バーグマンらを髣髴させる。」

アンジェリーナは当初は必ずしも企画に乗り気ではなかったようだ。
「マイティハート 愛と絆」で夫をさらわれる人妻を演じたばかりだったためだ。
が脚本を読み、その考えは変る。
「子供が誘拐される映画はやりたくなかった。
自分の内面や自分の世界に、ある種の厄災を持ち込んでしまう事があると
思うから。
でも結局、私の心を動かしたのは、
危機にさらされた時に見せたヒロインの強靭さだった。
このストーリーが好きなのは、
権力の座にある人たちの腐敗を暴いたという点よ。
タイミングがいいわ、現代でも私達はそれと戦っているのだから」

脚本ではヒロインの敵となるロス市警の関係者や味方となる
長老派の牧師達等、可能な限り実名で登場させている。

ブリーグレブ牧師役のマルコビッチとイーストウッドは
「シークレットサービス」で共演の経験があり、
イーストウッドは再び仕事をする機会を望んでいた。
マルコビッチは彼がラジオ番組を持っていて、
それを利用した事に興味を持っている。
「メディアを使って世論に訴えた初期の例だ。」

1920年代後半から30年代にかけてのロサンゼルス市街や
映像を再現するために広範なリサーチが行われた。
ヒロインの住む宅地の町並みは、ロス郊外のサンジマスの
オールドタウン地区で撮影された。

本作で衣装を担当したのは、
映画『男たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』で、
見事に太平洋戦争時の兵士たちの姿を復元させてみせたデボラ・ホッパー。
彼女は、本作で1920年代のアメリカに住んでいた人々の姿を再現させるため、
アメリカ中の古着屋から当時の衣装を1000着以上を集めたそうだ。
 ローウエストのドレスに、釣鐘型の帽子を深めにかぶり、皮の手袋をはめる。
現代と比べると、ずっとフォーマルで女性らしいシルエットを作り出すのが
1920年代の女性たちのファッションだ。
 アンジー自身が、
「20年代の服のデザインには、なにかすごくかわいらしいところがある。
そのおかげで、自分が少ししとやかで、ちょっと傷つきやすいように感じられるの。
すべてを内面に隠してしまうようなね。だからとても助かったわ」と
語っているように、本作の役作りをする上で、
1920年代の衣装を身にまとうことが良いきっかけとなったようだ。
 アンジー演じるクリスティンが働いている電話会社での衣装も
オリジナリティにあふれており、皮バンドつきのローラースケートで、
社内をスイスイと滑りながら仕事をこなしていく姿はとてもユーモラス。
ローラースケートを使ったこのワーキングスタイルは、
実際にあったことで、アンジーも
「ローラースケートをつけて滑り回る役なんて、私の芸暦の中でも一番おかしいものだわ」
と話しているが、多くのユニークなアイデアが生み出されていた、
当時のアメリカの様子も楽しむことができる。

アンジェリーナは宣伝のため来日しています。
そのときの記事を採録します。

「(2008年は)私と夫にとってすばらしい一年でした。
二人の間に健康な双子が生まれたし、とても良い映画に出ることができました。
時間をかけて、ハートを込めて映画作りに臨んでいました。
二人同時にアカデミー賞にノミネートされて、嬉しい限りです。
でも子供達に映画のことはあまり話しません。
子供達は(声の出演をしたアニメ映画の)『カンフー・パンダ』
しか出てないと思っているんじゃないかしら。」と微笑む姿は母親そのものだ。
「もしすべてを失っても子供達さえ健康で幸せなら、私は幸せですね。」と
子供への愛情を包み隠さずに語る。

しかし、“本作に向けて自分で準備したことは?”という質問を受けると
女優の顔に変わった。
「色々残っている資料を見ましたが、実は私の母親に似ています。
いつもは優しい母親ですが、ただし子供を守るための強さを秘めていました。
実はブラッドがこの映画を見たときに、私の母は2年前に亡くなっていますが、
彼は生前の母を知っていて、すごく母に似ていると言っていました。
撮影中、常にハンドバックの中に母の写真を入れていました。」

アンジーは自分の役柄を
「自分の子供への愛情、子供の喪失と同時に正義を貫き、
彼女の運動が制度さえ変えてしまう非常にユニークな女性です。
この時代に一人の女性が何もできないと思われていたときに腐敗していた制度を
変えてしまった。
そして彼女のおかげで法律が変わり、他の女性の立場も非常によくなりました。
彼女は私の中でヒーローですね。」と強いまなざしで語った。
また、国連難民高等弁務官事務所の親善大使でもあるアンジーは
「緒方(貞子)さんも私にとってヒーロー」と語り、北朝鮮の拉致問題にも興味を示した。

また、演技では感情を表現する計算が重要だったと語る。
「今回苦労したところは、この女性は最初と最後では別人になっていることです。
挫折と成長を繰り返します。強さを取り戻しても2倍つらい挫折を味わいます。
彼女の精神的な強さと弱さを計算しながら演じました。」
アクションができるアンジーだが、本作では演技派女優でもあることを
再確認することになりそうだ。

巨匠、クリント・イーストウッド監督と仕事することは
「少女のように喜んでしまいました。」とはにかむ。
「決断の早い監督でした。話がしたいと言うと、今この場でしようと言ってくれて、
数分後には解決しているんです。しかも笑顔で!」と監督への賛辞を惜しまない。

本作の魅力を
「無力だと思われていた一人の女性が…

以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて『チェンジリング』の頁をご覧下さい。



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