「茶の味」DVD脚本レビュー

「茶の味」映画チラシ★映画基礎データー★
「茶の味」
2003年 日本映画
監督脚本 石井克人
出演 三浦友和 手塚理美
              

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山間の小さな町に住む春野一家。
高校生の長男・一(佐藤貴広)は片思いの女の子が転校してしまい、
ショックを受けていた。
一方、小学生の長女・幸子は、
時折姿を現し、自分のことを見つめる“巨大な分身”に翻弄されきっていて、
なんとか消す方法は無いものかと悩んでいた。

「茶の味」は日本の美しい里山を背景に、
ある一家の風変わりだが温かみのある日常風景を
独特のユーモアとファンタスティックなタッチを交えて捉えた異色ヒューマン・ドラマです。
監督は『PARTY7』の石井克人。
物語の中心となる春野一家の父ノブオを三浦友和が、
母美子を手塚理美が、母の弟アヤノを浅野忠信が、祖父アキラを我修院達也が、
娘幸子を新人の坂野真弥が、息子ハジメを同じく新人の佐藤貴広が演じている。
「下妻物語」の土屋アンナがはじめのあこがれる同級生の鈴石アオイ役で、
CMディレクター轟木一騎が漫画家・轟木一騎(笑)の役で出てます。
特別出演も果たしている和久井映見の優しいナレーションにも注目してください。

石井監督作品は前作「PARTY7」を見てますが、
そっちより俄然面白かったです。
カンヌの監督週間のオープニング作品として上映され、
スタンディング・オーベーションが五分も続いたとか。
今年に入ってから見たどの作品とも似ていません。
ハリウッドにはテコでも作れないオリジナリティがあります。
見終わった後の後味も大変よろしく、「結構なお手前でした」ものです、はい。

もっとも『PARTY7』より“ぬるい”、“きれがない”
とバッサリ言い切る人もいましたから、人の好みによるんでしょう。

予告編で、主人公の春野一(はじめ)君のおでこから、電車が飛び出したりす
るので、
ついていけるのかな?と心配でしたが、
本編では、初恋の人に転校され、電車で見送り、ひとり脱力する場面で
おでこから電車が出てきますので、
むしろ至極分かり良い場面でした。
電車が空のかなたへ走り去った後、呆然と見送るはじめくんの
おでこの真ん中に穴が開いたまま向こう側が見えるので二度笑えます。
全編、こんな調子で辻褄の合わない場面だらけですが、
心象風景で繋いで行くとごくシンプルに見えて良いです。

石井監督、「キル・ビル」に参加してます。アニメパートのキャラデザインだ
そうです。
「茶の味」の後半で美子(手塚理美)が原画を描いていたアニメがフィルムに
なって、
スタジオで上映されるですが、勝手に「日本昔話」風のアニメを想像していた
ら、
これがまったく違って宇宙もの(?)のアクションアニメ。
キャラも“汚い系”(というのがあるかどうか分からないのだけど)
だったので唖然としました。
登場して美子に花束を渡す演出家が「エヴァンゲリオン」「キューティーハニ
ー」の
庵野秀明監督、というのは出来すぎですが、
映写機の脇には何故かSMAPの草薙君がいて、一緒にアニメを語っています。
どうなっているんだい!?
以下、ねたばれ改行です。










石井監督は、「ちびまる子」を、“ふたひねりしたくらいの話”が
撮りたかったのだそうです。
なるほどそれで小学生の女の子にへんなジィさんが出てくるわけだ。
失礼ながら「PARTY7」は枝葉が多くて幹の細い
バランスの悪い脚本という風に見てしまったのですが、
「茶の味」は中心になる話というのがもともとない。
パッチワークのようにエピソードが繋がっていて全体で一個の作品になっている。
そういう作品はえてして時間経過が無意味になってしまうことが多いです。
途中で停滞感を感じた観客がいたのは、
この作品世界の構成の構造的な弱さからくるものです。

正直告白しますと、
帰省した浅野忠信のアヤノが何をぶらぶらしているのかぴんと来なくて、
よく分からんうちに中島朋子に「結婚おめでとうございます」なんて言って、
「やまよ、山よ」のレコーディング・ディレクターをやっている。
へんだなーっと思っていた。
パンフを読み返して、アヤノは昔の恋人アキラ(中島朋子)にお祝いを言いたくて、
でも言えなくて彼女の嫁ついだ八百屋に行く橋を渡れないでいる、
というのが分かりました。
二人が顔を合わせる場面を変に劇的な演出をしていないので、
ニュアンスがよく分からなかったのですね。
でも実際に昔の彼女にお祝いを言う場面になったら、
私でも浅野くんのような感じになるだろうなと思いますね。
ここはドラマの中で時間経過があって初めて登場人物が克服できる悩み事なので、
ぼんやり見てしまったため、途中でダレ感があった。
私の見方が浅かったんだろうなと思ってますが。

あの春野家はまるごとオープンセットみたいですね。
そこにあって当然に見えましたが。
セットセットしたんで無くて村の一部にしか見えないというのが理想なんでしょうね。
はじめくんの雨の中の万歳全力疾走は「いいですねぇ」です。
虹が出てくるとこはサービスのし過ぎかもしれませんが。
あれを“童貞の初恋”なんてこっぴどいこと映画の掲示板で書く奴がいましたが、
あのね、女の子見りゃすぐHしたいなんて思う方が、よっぽど“童貞”でないですか!?
そういう話は「パンツの穴」とか昔から邦画でも洋画でもいくらも先例がある
のでここで繰り返しても意味ないです。もっと風情を味わわなきゃ。

おじいさんのスケッチブックには恐れ入りました。
あれは動きがあって実に映画的だし、
それとラストの巨大ひまわりですね。

カンヌで正式上映会前にスタッフ試写をして、
映画祭のフランス人スタッフにおおウケだったことから、
オープニング上映が決まったそうですが。
でもアメリカ人に理解できるだろうか?って石井監督が悩んでいたら、
映画祭スタッフにアメリカ人もいて「わかりますよっ」てムッとされたとか。
“日本人にしか分からない世界”ではないですね。
あれは宇宙の端っこのインターナショナルな縁側でお茶をすする味わいの作品です。
ちゃんとオチがつきました。お後がよろしいようで。


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