「シンデレラマン」DVD脚本レビュー

「シンデレラマン」映画チラシ★映画基礎データー★
「シンデレラマン」
2005年 アメリカ映画
監督 ロン・ハワード
脚本 アキヴァ・ゴールズマン クリフ・ホリングワース
出演 ラッセル・クロウ

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前途有望な若きボクサーとして、
強力な右ストレートを武器に栄光への階段を駆け上るジム(ジミー)・ブラドック
(ラッセル・クロウ「グラディエーター」でアカデミー賞受賞)が、タイトルを奪取するのは時間の問題と言われていた。
その手で愛する妻のメイ(レネー・ゼルウィガー「コールドマウンテン」でアカデミー賞受賞)と、
3人の子供たちの家族を守っているという自負が、
ジムを支えていた。
しかし、1929年、右手の負傷がきっかけとなり事態は一転。
その年、大恐慌が起こりアメリカ経済を壊滅状態にした。
多くの人が一夜にして財産を失った大惨事は、ジムをまた利殖の失敗で蓄えを失う。
彼は、ケガをおして出場してはいたずらに負けを重ね、
ケガと敗戦と貧困の悪循環へと陥っていった。
1923年。その夜も、完治していない腕で試合に臨み、結果、右手を骨折し惨敗。
マネージャーのジョー(ポール・ジアマッティ「アメリカン・スプレンダー」)の嘆願も虚しく、
ついにボクサーのライセンスを剥奪されてしまった。
国中に溢れかえる失業者のひとりとなったジムは、ケガを隠して、
過酷な肉体労働で日銭を稼ぐが、そんな仕事にすらありつけない日の方が多かった。
暮らしはさらに切迫するが、メイにとっては皮肉なことに、
愛する夫の生死を案じて心乱すことなく、傷だらけで帰宅する彼も見ずにすむ、
心の平安を得た初めての日々だった。

だが、次男が病に倒れたとき、
メイは家族を守るために子供たちを親類の家に預けることを決意する。
それは彼女の苦渋の選択だったが、ジムには許せなかった。
彼にとって、子供を手放すことは、家族を彼自身の人生を失うことに等しかった。
彼は、自分の最後のプライドを捨てることを選び、生活保護の列に並ぶ。
それでもまだ子供たちを連れ戻すには足りず、
かつて彼を見捨てたボクシング委員会へ赴き、援助を求めた。
どんなに貧しい家でも、帰れたことを心から喜ぶむじゃきな子供たち。再び家の中には、愛しい者たちの顔が揃う。
だが、明日の保証はどこにもない…。
そんな彼の前に、かつてのマネージャー、ジョーが現れた。
ジョーはジムに試合の話を持ってきた。
世界ランキング2位、今最も勢いのある若手成長株との試合だった。
対戦相手が見つからず、リングに上がって彼に打ちのめされてくれるならば、誰でも良い、そんな試合だった。
ジョーはすまなそうに申し出るが、その報酬はジムにとって何ものにもかえがたかった。
彼は心からジョーに感謝してその話を引き受けた。
それは、彼にとって、家族を救う最後の手段だった。
そして、運命の一夜。
ボクシングの殿堂マディソン・スクエア・ガーデンという最高の舞台での最後の大試合。
盛りを過ぎてしまった彼の本当の引退試合だ。
配給にあぶれて空腹を抱えたまま、ジムはリングに立つ。
誰もそんな彼に再起のチャンスがあるなどとは想像もしていなかった。
だが、その夜、奇跡は起こった。
利き腕をかばっての過酷な肉体労働は、いつしか彼に強烈な左パンチを与えていたのだ。
そして、まさかの逆転劇が起こる。
それは、これからアメリカ中が目撃することになる伝説の幕開けだった----。

予告編の冒頭で出てくる「奇跡の実話」のコピーも誇らしげな、
名匠ロン・ハワードの作品です。ロン・ハワードも「ビューティフル・マインド」でアカデミー賞をとっていますので、
この作品には3人オスカー受賞者そろい踏み映画であります。
企画段階よりアカデミー賞を狙っていたとも言われますが、さて、どうでしょうか。

ファイトシーンをどうやって撮影したのか?とMLへ問いかける投稿がありましたが、
次回作「ダ・ヴィンチ・コード」でもロン・ハワードと組む撮影監督サルヴァトーレ・トチノは
カメラマンにプロテクターを着せてリングに上げ、思うさまラッセル・クロウに殴らせています。
どおりで痛そーっです。

史実のジム・ブラドックは 1905 年6月7日にニューヨーク市で生まれています。
ボクシングに興味を持ったジムは、貧しい生活の中でアマチュアのボクサーとなって、
勝ちの多い強い選手でした。ミドル級で、右手の強力なパンチが売り物。
1926年にジムはプロのボクサーになる。
そして有名選手たちを対戦相手に勝利を重ねていきました。
しかし、 1929 年の試合でライトヘビー級王者のトミー・ラグランと戦って負けてから、
転落が始まります。
勝利をあせり、指の骨折を完治せぬまま次々に挑んだ戦いに破れ続けます。

映画では冒頭、調子こいて強敵をなぎ倒すジムから、一転して
最後の試合に負けて再び指を折った挙句にライセンスを取りあげられるジムに
話が飛びます。
冒頭ではお屋敷に住んでいるジムですが、下から這い上がる後半では、
ラストまで地下室住まいのままです。
再び成り上がっていく様子は見せません。
ファイトマネーを手に入れると、溜め込んだ家賃を払い、
律儀に生活保護局にもらった金を返しに出かけていきます。
見せ方として彼はあくまで庶民のシンデレラマンですから、
チャンピオンと戦うときも貧乏長屋から出陣していくわけです。
レストランで、チャンピオン、マックス・ベア(クレイグ・ビアーコ)と
ガンの飛ばしあいになったあとで奥さんのメイが子供たちのために、
テーブルのご馳走を“お持ち帰り”するシーンは、ちとやりすぎだと思うけど。

貧困は今の時代にもある話だけれど、昔話、という設定を設けることで、
ストレートに「貧乏は憎い」と主人公に叫ばせることが可能になっているようです。
アメリカはチャンスの国といわれますが、一度堕ちた者に
セカンド・チャンスが与えられることは少ないでしょう。
ロッキーのように、対戦相手に困った大物選手が、
無名選手と戦うなんて事が実際あるんですねえ。
ジョーがジムのところに現れるまでの経過は出てきません。
その前のところで、
ジムが恥を忍んでプロモーター協会にカンパをせがみに行くところがありますので、
そこでジョーがジムのその後に気が付いていることになりますが、
試合を振ったのが、哀れみなのか、実力を惜しんでのことなのかは、
ブラックボックスのままです。
ジョーに、なんか一言ほしかったんですけどねえ。

ボクシング映画というと、どうしても俳優がスタントで戦ってみるせいか、
どうやって勝ったのかモンタージュばっかりで、良くわかんない奴がほとんどです。
ラウンドがどんどん経過して、いつのまにか最終ラウンドになっている。笑
「シンデレラマン」は武道派ラッセル・クロウ主演だけあって、
劇中に占める試合時間がすごく長く、
それぞれ技の出し合い、駆け引きというのが見てわかるように演出されています。
リーチが長くて、アウトレンジで体重を乗せた重たいパンチを繰り込んでくる敵には、
上から打ち下ろされる砲弾の嵐をかいくぐって敵の懐に飛び込む
イン・ファイト戦法が取られる。
すると次の対戦相手は、背丈がジムと大して変わらず、蝶のように舞い蜂のように刺す、
ステップの達人が出てくる。
で、今度はどうやって相手の足を止めるかで工夫しなきゃならないようになる。
顔を殴って戦意を奪うってのは綺麗な戦い方とは言いがたいですが…。
こういった見せ方はアニメの「明日のジョー」やら「はじめの一歩」やらで初めて
可能な描写でしたが、それを実写で見せているのだからたいしたものです。
アニメ並み? 生身の人間がやるんだから大変ですって!

ラッセル・クロウは、豪州の元ヘビー級のチャンピオンで、モハメド・アリと二度、
対戦相手になったこともあるジョー・バグナーという本物の元ボクサーを雇ってボクサー体形を作ろうと努力したそうです。

顔面狙い撃ちもそうですが、
リング下の雰囲気も、現代のボクシングに比べて遙にやさぐれた雰囲気です。
どえらい人気ですが、決してかたぎの世界ではない。
メイは会場に出向くことはありませんが、会場はどこか血の臭いがし、
命のやり取りこそが本当の見世物のような印象さえあります。
闇、格闘技に付きまとう闇。
選手達にとって死はきわめてリアルな現実です。
妻子は、夫の父の無事の帰りを切に願っています。

「奇蹟の実話」というコピーの割りに作品の印象は地味です。
何かこう、とんでもない逆転劇があるのではないかという期待を持って劇場に行くと何となく、
肩透かしを食わされたような気になります。
これはジムの地道なキャラクターに由来するものと思われます。
けど、彼はやっぱりファイターであって、たとえ妻が止めようともチャンピオン・ベアとの戦いに心惹かれてしまうのですね。

ジョーは彼のために奔走して試合を取り付け、ジムは次々と強敵を倒していった。
そしてついに、ヘビー級世界チャンピオン、マックス・ベアへの挑戦権を得る。
一度は夢破れながらも、
家族のために、決してあきらめずに不可能を可能に変えてゆく父親の姿は、
暗い時代に絶望した人々の心を打ち、彼は“シンデレラマン”と呼ばれた。
ジムはいまや人々の希望と再生の象徴だった。
だが、世界チャンピオンのベアは、リング上で二人の選手を殺したことのある選手だった。
今まで彼の勝利を複雑な気持ちで見守っていたメイも、
今度こそ、試合を降りるようジムに迫る。
「選手としてのあなたを黙って支えてきたわ。でもジミー、この試合だけはやめて。
彼は2人も殺したのよ。何のために命を賭けるの?」
メイの悲痛な叫びは、ジムの心に届かないはずはなかった。
しかし、彼もメイに訴えかけるのだった。
「人生をこの手で変えられると信じたいんだ。」
それは、父として、夫として、家族に二度とつらい思いをさせたくない、
そう一途に闘ってきた彼の最後の願いだった。
そして、ジムはメイに「必ず帰る」と約束し、大観衆が待ち受けるリングへと向かう。

1935 年 6 月13日、ニューヨークはロングアイランドで、
ヘビー級チャンピオン、マックス・ベア(クレイグ・ビアーコ)と
戦われた試合は、のちに
「 the greatest fistic upset since the defeat of John L. Sullivan by Jim Corbett
(直訳:ジム・コルベットがジョン・L・サリヴァンを負かして以来の最大の拳闘のどんでん返し)」と
語り草になるような壮絶な戦いになります。

映画はそのたたかいで終わっていますが、
史実では、この二年後、“シンデレラマン”ジム・ブラドックは
第8ラウンドでKO負けをしてヘビー級チャンピオン・ベルトを失います。
1938年の勝利を最後にジム・ブラドックは引退を決意しました。
彼はそののち以下のような殿堂入りを果たしています。
1964年: the Ring Boxing Hall of Fame (リング・ボクシング名誉の殿堂)
1969 年: NJ Boxing Hall of Fame (NJボクシング名誉の殿堂)
1991 年: the Hudson County Hall of Fame (ハドソン郡名誉の殿堂)
2001 年: the International Boxing Hall of Fame(国際ボクシング名誉の殿堂)

ジム・ブラドックは 1974 年 11 月 29日にニュージャージー州ノースバーゲン
で死去した。七十年の生涯だったと伝えられています。


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