「クレールの刺繍」DVD脚本レビュー

「クレールの刺繍」映画チラシ★映画基礎データー★
「クレールの刺繍」
2003年 フランス映画
監督脚本 エレオノール・フォーシェ
出演    ローラ・ネマルク

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曇天の下、赤毛の女の子が斜面の畑からキャベツをナイフでもぎとっている。
籠いっぱいにキャベツを入れ、汚れた手を牛の乳で洗う。
両親の畑から取ったキャベツをウサギの毛皮と交換してもらうのだ。クレール、17歳。
望まない妊娠をしていて、
親友のリュシルとの手紙のやり取りだけが孤独と不安を紛らしてくれる。
医者には匿名出産を薦められていた。
出産費用は無料で、産後すぐ養子に出す制度だ。
母親にも妊娠を打ち明けていないクレールだが、リュシルに書き綴る。
「でも私には刺繍がある」

クレールはスーパーのレジ係として働きながら、
小さな一間の下宿で黙々と刺繍制作に打ち込んでいる。
同僚から意地悪く「太りすぎじゃないの」と言われ、
思わず「癌なの。薬の副作用よ」と嘘をついてしまう。
お腹の子の父親は、スーパーの肉屋で働く店員のようだが、
彼には家庭があるらしく、「俺の子?」という反応。
クレールは「もう会いたくない」と告げる。

この作品は2004 年にフランス映画祭で紹介されており、
2005/09 にようやく一般公開の運びとなります。
フランス語原題「Brodeuses」は英語で
「Embroidering-Machines(刺繍ミシン)」ということ。
英語タイトルの方は「A Common Thread」となっており、
「共通の糸」という意味になります。
ふたりのヒロインの人生の転機という「共通の糸」を持ち、
お互いに相手を通して苦難を乗り越えるというところから来ているのでしょう。
刺繍のようにデリケートな心理描写が特徴の、カンヌ映画祭受賞作品です。

週末に帰省したリュシルに会いに行くと、家にはリュシルの兄ギョームがいた。
友人のイシュハンとバイクに2人乗りしていて事故に遭い、
ギョームは顔に大怪我を負い、イシュハンは亡くなってしまった。
ギョームは仕事を辞め、3年ほど外国に行くつもりでいる。
リュシルの母親に「アトリエに行って元気づけてあげて」と言われるクレール。
イシュハンの母親、メリキアン夫人は刺繍職人で、
クレールは1年前にアトリエを訪れたことがあったのだ。
髪をまとめてターバンを巻いたクレールは、
自分の刺繍作品を包んでメリキアン夫人のアトリエに行く
陰鬱な表情で戸ロに出てきたメリキアン夫人は「ミシンは使える?資格はある?」と問いかけ、
「急ぎの仕事があるから明日また来て腕試しをして」とだけ言って戸を閉める。
クレールは資格を持っていないが、気にかけていない様子だ。

翌日、どうやら合格したらしいクレールは、アトリエに通うことになる。
スーパーには10日間の欠勤届けを出した。
メリキアン夫人は高名なルサージュ氏から依頼された緻密な刺繍を制作中。
ルサージュ氏の店で12年間働いた後も仕事を依頼されていて、
ラクロワの仕事も請け負っているという。

ともに寡黙なクレールとメリキアン夫人は無駄な話は一切しない。
夫人はクレールのお腹のふくらみに気づくが、何も口に出さない。
クレールは夫人の見事な刺繍作品にうっとり見とれ、
自室に帰ると自分の作品づくりに没頭する。

だが、アトリエに通うようになって2週間ほどたったある日、
クレールはアトリエの床に倒れている夫人を発見する。
自殺を図ったようだ。救急車で病院に運び、一命をとりとめるものの、
夫人はクレールの面会を拒否し、看護婦にお金の入った封筒を託していた。

エレオノール・フォーシェ監督は、この作品がデビュー作となる新人監督ですが、
この長編デビュー作でカンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを獲得しています。
クレール役のローラ・ネマルクはこれが初主演作になるのだそうです。
すごい美人というわけじゃないし、演技も格別上手ということではないんですが、
クレール役ははまってます。
9歳の時、女優発掘の才能にかけては右に出る者なしの故ロジエ・ヴァデム監督に見出され、
同監督が手がけたテレビ・ミニシリーズでデビューし、今年やっと18歳を迎えるそうです。
相手役のメリキアン夫人を演じた、
『マルセイユの恋』などのベテラン女優アリアンヌ・アストリッドとの組み合わせは良いですね。
無愛想な女二人が延々と刺繍をやっていという、文字通りそれだけの話です。
それを映画として成立させているんですから、
監督の手腕はたいしたものです。
フォーシェ監督は
「植物も生えないような大地の匂い、
そしてクレールを花開かせようとメリキアン夫人がその大地を豊かにしていく、
そんな物語を描きたいと思いました」と語っています。
メリキアン夫人を演じたアリアンヌ・アスカリッドは、
監督が3年の歳月をかけて作り上げた脚本に惚れこみ、
それまでの庶民的で明るく強い女性の役回りとは正反対の女性を、
老けメイクを施して真摯に演じています。

救急車が舞台の村を走る場面が二度出てきますが、
そこ出て来るフランスの片田舎の風景が、印象派の絵のように美しいです。
メリキアン夫人は「12年間ルサージュさんのメゾンで働いたあとも仕事を依頼されている」と
クレールに語る場面がありますが、
ルサージュ氏はヨーロッパのオートクチュールの刺繍を支えている人で、
どのブランドも1点か2点はルサージュの刺繍を取り入れているほど老舗の刺繍工房だそうです。
映画にはクレールとメリキアン夫人が手がける刺繍がかなりの点数登場しますが、
フランス刺繍の高いレベルの作品群が出てきます。
なかなか一般には知られぬ珍しい世界ですので、
それだけでもこの作品は一見の価値があります。

古い田舎の風景や、古式ゆかしい刺繍の世界と現代っ子のクレールの取り合わせは、
バランスが良いような悪いような微妙さがありますが、
もともとこの作品は夫人からクレールへと若い世代に引き継がれる刺繍の糸が
テーマですので、その微妙さを味あわないことには。
エンドロールが出てきて「えっ、これでおわっちゃうの?」と
いっていたお客さんがいましたが、
微妙なところを語り終えるとさっさと終わってしまうので、そんな印象を
受けるんでしょうね。

フランス映画ですので、例によってエンディングのテーマ曲は、
日本人のセンスには合わないです。



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