映画制作裏話「クローバーフィールド/HAKAISHA」

「クローバーフィールド」/HAKAISHA」映画チラシ■作品基礎データ
「クローバーフィールド/HAKAISHA」
2008年 アメリカ映画
監督:マット・リーヴス
脚本:ドリュー・ゴダート
出演:マイケル・スタール=ディヴィッド
               

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2008年1月18日の全米公開を間近にして、
各インターネットサイトを利用し、
海底油田の採掘場が何者かによって破壊されるという偽のニュース映像を放出
という宣伝か行われます。
イタリア語版やドイツ語版、スペイン語版など、
それぞれ少しずつ違った内容となっており、特に英語圏の映画ファンたちは、
何が語られているか解読するのに躍起になったようです。

実在する企業のように作りこまれている
タグルアト社のWEBサイトニュース映像によると、
その油田は「タグルアト」という日本企業のものであり、
その企業サイト(tagruato.jp)には、社史からプレスリリースまで、
あたかも実在する企業のように作り込まれる。
そのサイトによると「タグルアト」は石油会社で、
傘下には、深海の生物資源調査を行う「ヨシダ・メディカル・リサーチ」、
中毒性の高いソフトドリンクを販売する「SLUSHO!」、
宇宙開発から武器開発まで行う重工業メーカー「BOLD FUTURA」、
石油化学会社「Para FUN! WAX DISTRIBUTORS」などがあるという設定。
鍵となる油田採掘会社が日本の企業であるのは、
そもそも本作が、
プロデューサーのJ・J・エイブラムスが「M:i:III」のPR時に来日したとき、
原宿のキディランドで見たある物から着想を得ているからだとか。
その他、映画の主人公が赴任する予定だった場所も日本であったり、
随所に日本が登場しています。

全米公開。週末3日間で約4100万ドルを稼ぎ、ボックスオフィス首位デビュー。
この約4100万ドルという数字は、
「スター・ウォーズ 特別編」(97)の3590万ドルを抜いて、
1月公開作では歴代1位の記録。
キャストは無名、製作費は約2500万ドルという低予算ながら、
興行的には大成功となります。
また、ほぼ時を同じくして、「クローバーフィールド/KISHIN」という漫画が
日本で製作され、WEB角川にて“立ち読み”できるようになります。
その漫画は、主人公が日本人の少年に変えられており、
日本向けに独自に描かれたもの。
先述の日系企業「タグルアト」なども登場します。
全4回配信で、現在は第2話を配信中
(配信されるのは最新話のみで、バックナンバーは見られないので要注意)。

1月下旬、
上映館で乗り物酔い観客が続出し全米公開館に警告文が出されます。
1台の家庭用ビデオカメラで撮影したかのような迫真のドキュメンタリー風スタイルが
特色の同作だが、
全編においてブレブレの手持ちカメラで撮影されているため、
乗り物酔いと同じ症状を訴える観客が続出。
配給を手がけるパラマウント映画は急遽、
全米の公開館に
「独特な撮影手法を用いているため、『クローバーフィールド』をご覧になる方は、
ジェットコースターに乗った時のような乗り物酔いの症状を煩う恐れがあります」
との警告文を出すのですが、警告文というより、
新手の宣伝コピーですね。笑

2月には早くも続編製作が決定されています。
続編は、別の視点からニューヨークの惨状を追ったものになるといい、
マット・リーブス監督が再びメガホンを取るそうです。
3月1日には
日本でも誇らしげに“警告文”が出されます。
劇場に張り出された警告文アメリカでの状況を受けて、
日本では公開1カ月前から先述の警告文が劇場などに張り出されることになります。
そして日本でも本編が公開。あとは皆さんご存知の通りです。

余り期待しておらず、パスする気でしたが、
なかなかに好評で見に出かけています。
予備知識として…

③全編が手ゆれカメラなので、カメラ酔いしかねない。
④冒頭の20分、事件は起こらない。

この二点を踏まえた上で鑑賞したのは、私自身としては正解だったと思います。
同じ劇場の同じ回で、場内が明るくなった時に吐きそうな顔をしていた若い子が
幾人かいました。
その人たちは本当に何も知らずに見たのでしょう。
製作者側は、予備知識など入れず、完全な白紙の状態で観客に鑑賞してもらい、
その衝撃度を楽しんでもらうことも入場料のうちという考え方なのでしょうが、
体調を崩してしまうようでは元もこうも無いので、
①と②位のことは押さえておいた上で鑑賞したほうが、
作品を隅々まで楽しむ上では良かったように感じます。

衝撃度といま書きましたが、
この衝撃度、という言葉は劇場用映画ではなかなかに曲者の言葉です。
私は劇場用長編映画は、テーマパークの体感シアターのソフトとは、
基本的に別物であるというスタンツです。
先日、神戸に出張し、帰りにユニバーサルスタジオ・ジャパンに立ち寄りました。
USJはオープンした夏に2日かけて全部のアトラクションを見学して以来です。
その後、増設されたスパイダーマンのライドや、
ミュージカル「ウィキッド」
(驚くことに劇団四季のやっているのと同じ奴のダイジェスト)の
スペシャルバージョンの上演等を見てきましたが、
セサミストリートの体感シアターでは、3Dメガネをかけさせられた上で、
数百席もある客席はゆさゆさ揺れるし、臭いがするし、シャボン玉は飛ぶし、
水を浴びせられるし、太ももをくすぐられるし
(…いったいどういう仕組みになっているのかと、明るくなってから椅子の下を覗いたら、
ピアノ線のようなモノが椅子の足から生えていて、
観客一人ひとりの太ももを背後からくすぐる仕掛けになっている。)
中身は無くとも衝撃度にはあふれているという代物でした。
聞けばアメリカでは同じ作品なら3Dバージョンの興業の方が数字を上げているとか。
そのうち全部のハリウッド映画が体感シアターのようになるのでしょうか??

話が脱線しました。
「クローバーフィールド」に話を戻しましょう。
内容は“無いよう”であっても、見せ方は上手いと思います。
ラストのセリフなどから逆算すると、
見せ方のほうに作品のテーマが有ったといってよかろうと思います。

カメラ酔いを防ぐ方法なのですが、
スクリーンの中央から視線を外し、
字幕を見つめることで防げそうです。
字幕の出る位置はカメラがどれほど揺れようと同じですし、
点滅するような出方をすることは無く、
ちゃんと人が読めるスピードで入れ替わりますので、
落ち着いて見ていられます。
セリフによって、あらすじも理解できます。

冒頭の長ったらしい日常生活のプライベートビデオ風も、
登場人物と相関関係の説明になっていますし、
ストーリーも無いようで有る。
マンハッタン島を
セントラルパークを見下ろすアパートメント→橋→下町
→地下鉄…、
といったあんばいに分かりよく徒歩で周遊していますし、
その間に時間の経過と、
騒動の進展(報道や軍の動静、暴徒の流れなど)
脅威の正体が少しずつ画面にクローズアップになっていく様子等が、
整然と並んでいます。

それでもって少々脱線ではないかと思われる部分も…。
でかい方だけではストーリーがもたないと製作者は考えたようで、
小さい方が中途にわさわさ出てきますが、
あれは本来、蛇足ですね。
シルエットで、血がどばーなんて、
元ネタまでばらしてしまっています。

「クローバーフィールド」には、J・J・エイブラムスはプロデューサーとしての
参加となっていますが具体的にはどの程度関わっていたのでしょうか?
本人はインタビューで次のように答えています。
「物語の着想からキャスティング、編集、サウンドミキシングに至るまで、
すべての過程に関わっている。
ただ、撮影のときだけは、あまり現場に行かれなかった。
新番組のパイロット版の撮影とスケジュールが重なってしまったんでね。
それでもラッシュ映像は毎日確認していたし、
マット(・リーブス監督)に助言もしていたよ」
宣伝戦術テクニックは、
「LOST」や「エイリアス」などのTVシリーズを宣伝していくうえで
培ったものなのだろうか?
「TVドラマを手がけて、インターネットを通じて視聴者と
“対話する”ことの重要さは認識していたつもりだ。
でも、『クローバーフィールド』に関しては、
シンプルなアプローチが効を奏したんじゃないかな。
この映画を作るにあたり、ぼくらは他人になるべく知られないように、
こそこそやったんだ。
ほら、普通に会話を交わすときなんかも、小声で話すと、
周囲の人は耳を傾けてくれるよね。
それと同じで、期待を煽る映像をちらっと見せると、
観客は『もっと見たい!』と思うようになる。
最近の予告編はあまりにも説明的で、
予告編だけですでにその映画を観てしまったような感覚にさせるようなものばかりだ。
予告編は、ティーザーとも呼ばれるけれど、
ほとんどの予告編はティーズ(tease=じらす)せずに、
説明してしまっている。ぼくらは、ティーズする道を選んだだけなんだ」
しかしインターネットを利用することで、
大きな反響を期待できると同時に、
ネタバレによってダメージを被るリスクもありますよね?
「たしかに、秘密を保つのは大変だよね。
でも、この映画の場合は、役者もクルーもみんな秘密を守るのに協力してくれた。
だから、ばれて困るようなことはほとんどなかった。
徹底した秘密保持主義が功が大成功したネタバレはたしかに嫌なものだし、
せっかく大事にしていた秘密がばれてしまうとがっかりする。
でも、情報を得ようとしたり、リークする人、
それについてコメントを寄せる人っていうのは、
みんな強い関心を持ってくれている、っていうのを忘れちゃいけない。
だから、いちいち気分を害したり、怒りを覚えるのはおかしい。
誰にも関心を抱いてもらえない事態と比較したら、
ネタバレされるほど注目されるほうが、よっぽど幸運なことなんだからね」
“正体不明の何か”の姿を一切公開していませんね。
「映画でその姿を確認してほしいからね。
ぼくは、映画館に行って、
はじめてその正体を確認できるようなタイプの映画が好きなんだ。
映画館に行くこと自体が、ひとつの体験となる。
期待をやたらと煽る映画に限って、
中身が伴っていない場合が多いけれど、『クローバーフィールド』は違う。
きっと満足感を味わってもらえると…

以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて「クローバーフィールド/HAKAISHA」の頁をご覧下さい。



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