「ティム・バートンのコープスブライド」DVD脚本レビュー

「コープスブライト」映画チラシ★映画基礎データー★
「ティム・バートンのコープスブライド」
2005年 イギリス映画
監督 ティム・バートン マイク・ジョンソン
脚本 パメラ・ペトラー
出演 ジョニー・デップ

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むかしむかし、19世紀のヨーロッパの片隅に、ある小さな村がありました。
この村の人々はみんな活気がなく、村全体が暗く重苦しい雰囲気に沈んでいます。
そんな村で、明日、1組のカップルが結婚式を挙げようとしていました。
男の名はビクター(声:ジョニー・デップ)。
魚の缶詰業で大儲けして成り上がったネルとウィリアムのバン・ドート夫妻
(トレイシー・ウーマン、ポール・ホワイトハウス)の息子です。
夫妻の夢は上流階級への仲間入り。
そのためのお金は余るほどありますが、
哀しいかな、彼らには“品格”というものが痛ましいくらい欠けていました。
一方、女の名はビクトリア(エミリー・ワトソン)。
由緒ある貴族、モーデリンとフィニスのエバーグロット夫妻
(ジョアナ・ラムリー、アルバート・フィニー)の娘です。
こちらの夫妻は品格はあるのですが、お金がまったくなく、
すっからかんの金庫にクモが巣を作っているような有りさま。
財産といえば家名と貴族という身分、そして娘のビクトリアだけ

何としてでも富を得て社交界に返り咲きたいエバーグロット夫妻は、
忌々しいバン・ドート家にビクトリアを嫁がせることを決意しました。
成金でも金持ちには違いない、というわけです。
もちろん、子供の頃から愛する人との結婚を夢みていたビクトリアの気持ちなんて、
ほんのちょびっとも関係ありません。

こうして互いの利害が一致した両家は瞬く間に婚礼の準備に入り、
興奮状態に陥りました。肝心の花婿と花嫁を除いては。
そして結婚式前夜、ビクターとビクトリアは初めて顔を合わせます。
それまでの不安はどこへやら、ふたりはひとめで相思相愛。

が、内気なビクターは、式のリハーサルで散々な失敗をし、
怒ったゴールズウェルズ牧師(クリストファー・リー)に、
セリフを覚えてくるまで結婚式は延期だ!と言い渡されてしまいました。

すっかり落ち込み、たった一人とぼとぼと暗い森の中へと入って行くビクター。
誓いの言葉を唱えて練習し仕上げに結婚指輪を取り出して、
地面から突き出た細い小枝にそっとはめました。
ところが彼が小枝だと思ったそれは、「骨だけの手」。
その「手」がビクターを掴んだ、その次の瞬間、
地面が割れてボロボロのウエディング・ドレスに身を包んだ死体の花嫁
=コープス ブライド(声:ヘレナ・ボナム=カーター)が現れたのです! 
そして一言、こう言いました ─ 「お受けします」。
ビクターはコープス ブライドと婚姻の誓いを交わしてしまったみたいです。
こうして「花婿」となってしまったビクターは、
コープス ブライドによって地中深くへ連れ去られます。

『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』でストップモーション・アニメという
「特別な芸術スタイル」にすっかり魅せられたバートンが、
イマジネーションを縦横無尽に羽ばたかせ、
実に10年という歳月をかけて映画化した最新にして究極のバートン・ファンタジー。
CG全盛の現代で、2秒撮影するために12時間もの時間を要する手間隙をかけることは、
大変な贅沢といえそうです。

ティム・バートンは東欧に「死体の花嫁」という民話があると伝え聞き、
大変興味をそそられたのが企画の発端とか。
ところがバートンは、民話の本を実際には入手できず、
「死体の花嫁」という言葉のみからイマジネーションを広げてストーリーを創作したそうです。
果たして、幻の原作とはいかなる内容であったのか??

反ユダヤ主義が東ヨーロッパを席巻していた時代、
19 世紀にウクライナで起こった実際の出来事です。
反ユダヤ主義の一団が、結婚式へ行く途中のユダヤ人たちを要撃することが
当時頻繁に起こったようです。
未来の子孫を残す存在の花嫁は、馬車から引き摺り下ろされ、殺害され、
そしてウエディング・ドレスを身につけたまま埋葬されたのでした。
「死体の花嫁」はその惨殺にまつわる伝承であって、
「死体の花嫁」そのものが活躍するという話ではないのです。
ですから、かえってバートンがこの原作民話の本を手にすることが無かったのは、
幸いだったのでしょう。
元の話はホラーファンタジーではなくて、
歴史ホラーそのものだったわけですから。

ビクターとコープス ブライドのふたりの
たどり着いた“死者の世界”は意外にも、地上の“生者の世界”とは対極的な、
活気にあふれた陽気で楽しい世界だったのです!
地上のどんよりしたグレーの空気はどこへやら、
お日様も差さないはずなのにどこかカラフルに輝く死者の世界。
そこでは1日中パブがオープンし、
見るからに“人生”を謳歌している死者たちが酒を飲んでは歌って踊って、
ハシャギまくっています。
骨しかないのに生きている人間よりもずっと明るい表情で、
リズミカルに跳び回るガイコツたち
─そんな彼らの生活に、息苦しい地上との鮮やかな対比を見出すビクター。
果たして彼は、無事に地上に戻り、
残してきた花嫁ビクトリアの元へと帰ることができるのでしょうか。
ビクターの運命は、そしてコープス ブライドの運命はいかに ─ ?

地上の世界をビクトリア朝イングランド風のモノトーンの世界にして見せる一方で、
“死者の世界”をファンキーな明るい世界に、というのは当初からの
美術コンセプトでしたが、炎の赤色など“地獄”をストレートに
イメージさせるカラーは注意深く避けられたといいます。

撮影はデジタル・スチール・カメラで行われています。
撮影内容はモニターで二時間後には確認でき、
現像が済まないとOKシーンとなるかどうか不明だった
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の頃より、
格段便利になったといいます。
デジタル技術の進歩は、
ストップモーション・アニメの対極にあるものではなかったのです。

人形の表情は、複数の首を交換してコマ録りする従来の方法ではなく、
パペット頭部の内側にギア装置を組み込み、目や眉、唇を六角レンチの調節で
動かしています。
表情は数段豊かになったのですが、
当然、頭が従来のものより大きくなり、身長がパペットとしては大きな
三十センチになったといいます。
そのため、パペットが立つセットの外周が4.8mに及び、
場面によっては9mもの高さになったものもあったそうです。
それでもなるたけセットを小さく作ろうと、
パースをつけ、
上に行くほど小さく作り、
遠近法の錯覚で上手くカメラフレームに収まるようにしたとのことです。

やっぱり一番大変だったのが花嫁衣裳が、
歩くたびに風になびいて軽がると揺れて見えるように演出することでした。
レースのなかに肉眼ではほとんど見えないほど細いワイヤーが通してあって
それを動かしたといいます。

大変な労作だけあって、技術的には申し分ない出来です。
オフチカル処理などで明らかにCGと分かるシーンも結構ありますので、
ストップモーション・アニメに敬意を表しつつも、
技術偏重主義に陥らず、映画としての表現を優先させたことはとてもよかったです。
綺麗な三角関係にしておきたかったことで、ビクトリアとコープス ブライトが等しく魅力的であった分、
ビクターが優柔不断で何を考えているのか、
分からないところがあるといった作劇上の欠点はまあ、あります。
余談ですが、
パペットよりフィギュアを作成したのは梶uジョイプラニング」です。
バートン監督の信頼も厚く、「ジャイアント・ピーチ」「スリーピー・フォロウ」
「猿の惑星」と手がけており、和田企画部長の弁によると、
ワーナーの信任を得て世界販売されているものもあるとか。
ほっしいですね。高そうだけど。


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