「大日本人」脚本レビュー
★映画基礎データー★「大日本人」 2007年 日本映画 監督 松本人志 脚本 松本人志 高須光聖 出演 松本人志 |
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登場した週の週間興行成績で一位の
「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールドエンド」と
三位の「スパイダーマン3」の間に挟まった第二位です。
「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールドエンド」が
全国で8百館を超える史上空前の大公開であるのに対し、
「大日本人」は都内でも単館ミニシアター系でぽつぽつと公開されているのみ。
圧倒的に不利な状況をはじき返しての二位ですから立派なものです。
実際、新宿のミニシアターでは立ち見で見ました。
公開前、内容が非公開で作品情報がまるで無く、
“カンヌで公開された。”“どうやらコメディらしい”程度の事しかわからず、
怖いもの見たさで出かけました。
結論から言うと…面白かったです。
映画として面白かったのか、
松本人志のパフォーマンスとして面白かったかは微妙でしたが。
まっけんさんの書き込みを改めて読んで、主人公“大佐藤”が
既出の深夜番組のキャラクターである(らしい?)ことをはじめて知りました。
テレビのインタビューで松本監督本人が、
北野武監督のようにテレビとは一線を引いて映画を作るのではなく、
あくまでこれまでの芸風の延長で作品を作ると言っていたのを思い出しました。
テレビ情報誌で松本人志の映画評論を幾つか読んでいます。
連載モノでなかなか辛らつにハリウッド作品等を叩いてました。
自分がメガホンをとってちゃちなものを作れば、
当然しっぺ返しがあるだろうことは覚悟の上だったろうと思います。
結果論として、作品情報を一切出さない宣伝は大正解だったろうと思います。
それに引き換え、北野監督の「監督ばんざい」は、柱となるネタを披露してしまい、
いかにも不利です。
笑いに限らず、エンターテイメントは意外性がウリになっている要素が大きいです。
「大日本」の劇場では、パンフまで封筒に入っていて、
「見る前に読むな」と警告文が付いています。
キャラクターグッズも、真っ黒けのトイレットペーパー等、
正体不明、意味不明の品物ばかりで不気味に笑えます。
仮説ですが、これがカンヌにも出さず、内容を最初からバラした上で公開したら、
興行成績ベストテン入りどころか、まともに客が入ったかどうかさえ疑わしいです。
実際にはつまらない映画だから…ではなしに、断片的な宣伝情報だけでは、
この作品の面白さが正確に伝わらなかったのではないかと思っています。
冒頭、さえない中年男、大佐藤(松本)の日常と、
彼に寄り添うインタビュアーが登場します。
インタビュアーは男の声のみで姿を見せません。
回っているカメラ等も出てこないので、
インタビューが雑誌のものか、テレビか、ラジオか、一切不明です。
大佐藤は何か特殊な境遇にあり、そのために家族からも見限られている。
それが彼の職業によるものらしいのですが、
どんな仕事をしているのか具体的なことはわかりません。
その状態が十五分程度続きます。
最後にひとことあります。大佐藤の通う蕎麦屋の亭主にインタビュアーは尋ねています。
「あの人、“大日本人”ってご存知?」「へー、そうなの?」
カンヌの上映で、上映開始数分後に退室した客に松本人志は憤慨しています。
「もう少し見てくれ。あるところまで見てもらわんで、評価を下されてはかなわん」
言葉遣いはこのままではありませんが、言いたいことは上の通り。
ギャグをかます前のフリの部分で「見切って」出て行ってしまったお客に、
“もうちょびっと見てくれ。”
携帯電話が鳴り、大佐藤に出動要請が“防衛庁”から届きます。
スクーターに乗って大佐藤は郊外に。
沿道には大佐藤を罵る住民たちの看板や路上のペイント書きで荒んだ状況です。
そしてたどり着いたのは変電所。大佐藤は敬礼をして建物のなかに…。
ネタバレ改行です。
このあとの特撮、というかCGがかなり上手くできています。
監督によれば、そのCGの出来が一定レベル以上になると見込めたので
映画製作に踏み切ったとか。
ほんの数年前の「陰陽師」あたりのCGとは隔世の感さえあります。
公開前、笑いのセンスがシュールすぎて付いていけないのではないかと
心配していましたが、笑いのネタが巨大ヒーローモノのパロディだったので、
お気軽に笑えました。
大佐藤の別居中の奥さんや娘が出てきたりするのは、
あざといですが、
ところどころで脇役が、正義とは、命とは、を語ったり
するところでは松本人志の本音のようなものが垣間見える演出となっています。
まあ、演出でしょうね。
見世物としての“本音”ですね。あれは。
公開前にあらゆる番組にローラー作戦のように監督は出まくっていましたが
いくつかの番組で、なんで巨大ヒーローモノなんだ? と質問されて、
自分のなかの幼児性の表れ、と答えています。
ウルトラシリーズのパロディであることは明白で、
同じテレビ世代の人たちはフランス人であろうがアメリカ人であろうが、
笑える。
日本人向けに作った映画でフランス人も笑った、と監督自身カンヌを評していますが、
あれは日本人のために作ったのではなくて、
同じテレビ世代の人向けに作った無国籍お笑いなので外国でもウケたのです。
で怪獣(劇中では獣と呼ばれる)のキャストがへんてこで、
締メルノ獣 海原はるか(海原はるか・かなた)
跳ネルノ獣 竹内力
童ノ獣 神木隆之介
匂ウノ獣 板尾創路(お笑い130Rのボケ役)
出演している、というよりCG素材になっている、という変則的な出演です。
爺さんの“四代目”が巨大ぼけ老人になって、ガスタンクをすいかわりしそうになったり、
匂ウノ獣の“交尾”とかで、大佐藤の家がメタメタにゴミの山にされちゃうところとか、
悲しいほど可笑しい。
序盤から中盤、「ふれあい」にあわせて特殊部隊が大佐藤の家に突入して、
無理やり変身させちゃうくだりまでは、
結構映画的な演出もされているのですが、
なぜか突然、着ぐるみの実写になってくだぐたになって、エンドロールが流れる。
四代目が犠牲になって“北朝鮮(?)の獣”に大佐藤が勝てば、
それなりに物悲しく映画的なオチになった筈なのに、
そうはならない、いや、
松本人志はそんな決着のつけ方をしたくなかったんだろうけど、
でもなんか、映画を見ていた気になった観客に、
これってバラエティなんですよ、と最後に
頭からバケツで水を浴びせられた気になったことは確かですね。
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