「大停電の夜に」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「大停電の夜に」 2005年 日本映画 監督 源孝志 脚本 相沢友子 源孝志 出演 田口トモロヲ |
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東京のクリスマスイヴの夜。
「僕は天体が好きだ。兄貴は、そんなことより恋をしろという----」
天体望遠鏡を覗く少年・翔太(本郷奏多)は、空に光る物体を発見する。
その物体の手前には、大学病院の屋上に立ち、
真下を見つめる患者らしき少女・麻衣子(香椎由宇)の姿。
「明日が来て欲しくない----。屋上から眺める空は、なんてきれいなんだろう」
「俺には母親はいないと思っていた。驚いた。死期の近づいた親父が望むんだ。
叶えてやりたい」
死期の近づいた周平が、息子の遼太郎(田口トモロヲ)に最期の“告白”をしている。
戸惑いを隠せないでいる遼太郎の携帯電話が鳴る。
「イルミネーションが嫌になる程、輝いている。
あの人に、今日こそ“さよなら”を言おう」
恋人たちが行き交う表参道に、ひとり佇む美寿々(井川遥)。
電話に出ない相手に対し、メッセージを残す----
「どうしても今日、会って話がしたいんです」。
「被女は、来てくれるだろうか。俺は、待っていてもいいのだろうか」
バー<FOOLISH HEART>のおんぼろドアには、本日付で閉店の貼り紙。
マスターの木戸(豊川悦司)が、受話器の向こうの人と話をしている。
「今夜、待ってる」----店の隅にはウッドベースがひっそりと存在している。
「お向かいさんは、いつも掃除をしていない。これじゃあお客も来ない。
でも、汚いバーの奥に佇むあの人は、いつもあの楽器だけは大切に手入れをしている」
バーの向かいのキャンドル・ショップ<WISH>の店長のぞみ(田畑智子)は、
窓越しに木戸の姿を見つめる。小さなブルー・キャンドルに火を灯し、
祈るようにささやく----「あなたに、素敵なことがありますように」
「あいつは、俺を待たなかった。けど、すべて俺が悪かったと思う。
一目だけでも会いたい」
刑期を終えた元ヤクザの銀次(吉川晃司)が、
昔の女・礼子(寺島しのぶ)の前に姿を現す。
銀次を捨て、結婚し、妊娠までしていた礼子は踵を返し逃げ去るが、
突然、銀次の前でうずくまる。産気づいたのだ。
「いま幸せだと患う…。ママは早くあなたに会いたいよ」
「夫は、いつもそうだ。そして私は、気づかないふりをする。そんな夫に。そんな自分に」 今夜遅くなる、
という電話を夫から受け取る妻・静江(原田知世)。
その夫・遼太郎は、タワーホテルの高層階の部屋で恋人と別れ話をしていた。
「車ばかり作っていた。定年後はゆっくり、お前と過ごそうと思う」
孫へのクリスマス・プレゼントの準備をしている国東義一と小夜子夫妻。
そこへ一本の電話がかかってくる。
「孫の喜ぶ顔が目に浮かぶわ…」
「遠い上海の恋人は、僕の帰りを楽しみに待ってくれているだろうか」
タワーホテルのエレベーターに泣きながら乗り込んでくる美寿々の様子に驚く、
上海からの研修生でベルボーイの李冬冬(阿部力)。
それぞれのクリスマスイヴが始まろうとしていた。
そんな時、すべての光が一瞬に消え、東京がかつてない暗闇に沈んだ。
ラジオからは、緊急ニュースを伝えるアナウンサーの声が流れる。
「12月24日午後5時過ぎ、東京を含む首都圏全域が大規模な停電に見舞われました」
見ず知らずの麻衣子を心配し、病院の屋上にやってきた翔太。
生意気な麻衣子の要求で、病院から抜け出し、
自転車で“小さな旅”に向かって走り出す二人。
エレベーターに閉じ込められた冬冬と美寿々。
いつしか、客とホテルマンの間に奇妙な友情が芽生え、互いの恋について語り始める。
真っ暗な部屋で、一人離婚届を見つめる静江。
そこへ、遼太郎が帰ってくる。
向き合うことの少なかった夫婦が、食卓のキャンドルに火を灯した時…。
銀次と礼子は、地下鉄に閉じ込められた。
いよいよ陣痛が激しくなった礼子を救うため、彼女を背負い、
地下鉄からの脱出を決意する銀次。
行灯の前で、義一(宇津井健)に“ある告白”をする小夜子(淡島千景)。
衝撃を受けた義一は、家を飛び出し、暗闇の街を彷徨う。
大繁盛する<WlSH>。
余りもののキャンドルを抱え、木戸の店にやってくるのぞみ。
初めて言葉を交わす木戸とのぞみの間に、あたたかな交流が生まれる。
いつしか木戸は、忘れられない“恋”のことを語りだす。
降る雪のなか、その人が現れるまでと…。
真っ暗な保育園では、幼い仁矢が“クリスマスの贈り物”を待っていた。
12人は、停電により向かい合った相手に真実を語りだす。
もう一度、明りが灯るまで、朝の光が輝き出すまで。
映画の掲示板に「ラブ・アクチュアリー」を彷彿とさせる、とありましたが、
そういえばそんな話ですね。
あっちでごにょごにょ、こっちでごにょごにょ。
中心らしきものもひとつではなくて幾つかある。
軽いユーモアと風刺っぽい人生の皮肉。
オチらしきものと、そうでないもの。
普通の意味で言うリアリティは微塵も無いです。
ファンタジーとしてみるとそれなりに面白い。
トリッキーな逆転劇は別に無いですけど。
監督は、ヒット作『東京タワー』の源孝志。
自ら構成・演出したNHKハイビジョン・ドキュメンタリー「N.Y.大停電の夜に」(03)
を元ねたに
北米航空宇宙防衛司令部“NORAD”が全世界の子供たちに贈る、
50周年を迎えたクリスマス・イベント「サンタクロース追跡レーダー」と、
ビル・エヴァンスの「マイ・フーリッシュ・ハート」という曲のイメージからドラマを
創作しています。
2003年8月14日午後4時にニューヨークをはじめとする北米で起こった
史上最大の「大停電」とくらべれば、この話は“ご町内小停電”くらいのスケール
ですけど、別にパニックを描こうというんではないですからね。
脚本は、TVドラマ「恋のチカラ」「めだか」の相沢友子と源孝志の
コラボレーション・ユニットである“カリュアード”です。
どうりでね、ここでも生活感とは別の次元で世界を語ってます。
「サンタクロース追跡レーダー」の現物はホームページの画像が、
冒頭に登場しますけど、
停電の始まり方が、なぞの隕石落下!みたいな感じで、
なんかどうもサンタクロースが落し物でもしたような風に見せてますね。
天体マニアの少年がもう少し気の利いた解説をしてますが。
撮影監督にはフランスから永田鉄男を迎えてます。
02年、フランス映画の最高峰セザール賞・最優秀撮影賞に輝いた人です。
でも画面の印象としては『ロスト・イン・トランスレーション』の和田雄二による照明の
方が目立っちゃってますね。
そんなにセット数は多くないんですが、
『ホテル・ビーナス』『恋の門』の都築雄二が美術監督で
真っ暗な中にも仄かに輝くジャズバーや向かいのろうそく屋のセットを作ってます。
フィーリングで楽しめばよいので、「そんなの嘘だよ」と言いだしたら見てらんないです。
とは言え、出来の良いエピソードとそうでない奴はあって、
遼太郎(田口トモロヲ)と小夜子(淡島千景)の秘密は見ていてつまんなくて。
逆に
突然の妻の告白にはじけちゃう義一(宇津井健)とか、
…アメ車を盗んで渋滞の夜の街暴走しちゃうのだから、
宇津井さんてそういう役こなすとは思わずギャップが楽しかった。
それは“のぞき”じゃないの?と痴女の疑いさえあるのぞみ(田畑智子)と
覗かれっぱなしなのに気もつかず人妻と浮気したい木戸(豊川悦司)とかは、
最初から最後まで面白かったし。
タワーホテルのエレベーターに閉じ込められる美寿々(井川遥)
とベルボーイの李冬冬(阿部力)は、
平凡だしエピソードのひとつとしても話が小さすぎる。
終わってみれば翔太(本郷奏多)と麻衣子(香椎由宇)のエピソードは、
他のエピソードとリンクされてなかったですね。
脚本的には駄目なんだけど、ふたりで渋滞の町を自転車で走り回り、
天文台でサンタクロース人工衛星(?)を見上げたりと、
撮影ロケ場面では一番美しいパートです。
香椎由宇。これまで強気でしっかりモノでリーダー格で、
といったキャラクターばかりでしたが、ここではまるでへなちょこの役で、
それはそれで新鮮でした。
銀次(吉川晃司)が、妊娠した礼子(寺島しのぶ)を背中に負ぶって
地下鉄構内を歩くのは、
東京メトロではありえないのだけど、
大停電で同じ地下鉄内に閉じ込められた乗客たちに激励されて出発するあたりは、
おそらく火付け、強盗、強姦の頻発するアメリカの都市停電事情と違ってくるんだろうし、
日本的で妙に微笑ましかった。
二股に分かれたトンネルの前でひとり「赤坂はどっちでぇ」とつぶやく吉川晃司は、
悲鳴を上げるほど可笑しかったです。
銀次がサンタのかっこうで子供にプレゼントを届けるくだりは、
いきなり子供が出てきたので見ていて「?」となったところです。
あとで一緒に見た連れに話を聞いて前後のつながりがわかったのですが。
劇場公開前に試写会で見てますが、普通の試写会でなくて、
スカパーの映画専門チャンネルの番組収録イベントです。
演劇で知られたシアターアプルの舞台にスクリーンと対談ブースを設営して、
出演の阿部力とパーソナリティーの中井美穂のトークをビデオ録画していました。
彼は台湾出身で役名の李冬冬というのは彼の台湾名なのだそうです。
先日までTBSでやっていた「花より男子」のF4のひとりをやっていましたね。
こういう趣向もまた面白かったです。
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