「電車男」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「電車男」 2005年 日本映画 監督 村上正典 脚本 金子ありさ 出演 山田孝之 中谷美紀 |
2004年10月に「2ちゃんねる」での実際の掲示板の書き込みをまとめた書籍
「電車男」が新潮社から発売されるやいなや大ヒットを記録、
今年に入ってからは5誌
(ヤングサンデー、Judy、ヤングチャンピオン、チャンピオンレッド、デザート)
で同時漫画化され、
3月に朗読劇が上演され、
2005年の6月。映画化されました。
このあとフジ系列にてテレビ連続ドラマ化もされています。
主演の電車男はドラマ「ウォーター・ボーイズ」「世界の中心で愛を叫ぶ」の山田孝之。
電車男憧れの美女・エルメスは「ケイゾク」「約三十の嘘」の中谷美紀が演じてます。
韓国映画で日本でもヒットした「猟奇的な彼女」はネットの掲示板で
“キョヌ”という男性が、超個性的な彼女との受難の交際の日々を一方的に
書き綴ったものだけど、
「電車男」は、本人がエルメスとの出会いの直後から、
悪名高き巨大掲示板“2ちゃんねる”の“名無しさん”たちに向かって相談事を持ちかけ、
それを無数の“名無しさん”たちが前向きにアドバイスしたり、
悪意的に揚げ足をとったり、励ましたり、おもちゃにしたりしながら
現在進行形で進む恋愛というところで、
多くのメディアに取り上げられ、それがさらに人気を押し上げています。
“2ちゃんねる”の書き込みを採録した新潮社「電車男」が原作なら、
それ以外の漫画も舞台も全部、脚色されたものです。
で、今回の映画版では
彼氏にふられた看護師(国仲涼子)や引きこもりの青年(瑛太)、
仕事に追われるサラリーマン(佐々木蔵之介)や倦怠期の専業主婦(木村多江)、
そしてヲタクな3人組(岡田義徳・三宅弘城・坂本真)といった
サイトの住人たちの姿を描き、
様々なアドバイスを通じて電車男との友情を深めていく設定にしてあります。
これは当然、制作サイドのフジテレビ側の意向ですけど、
映画の掲示板を見ますと、この人物の描き加えを、原作とは違う、と
憤激している人たちがいる。
私はこれは脚色の方法のひとつに過ぎないと理解しているのだけれど、
それが許せない、と攻撃している人が実際に存在するわけです。
彼らが、“2ちゃんねる”の常連書き込み者かどうか、手がかりが無いので判りませんけど。
「ケイゾク」「トリック」の堤幸彦が演出して武田真治主演する
舞台版もありましたが、そちらはエルメスを登場させず、ナレーションのみだったのだそうです。
当然、まったく別の世界が展開したことでしょう。
今度の映画版はテレビドラマ『恋ノチカラ』『白い巨塔』『東京湾景』
『ラストクリスマス』の村上正典がメガホンを取っています。
この人は、プロット段階で策を弄して視聴者をだまくらかそうとするタイプの演出
はせず、真っ向勝負派ですね。
初恋の甘く切ない胸の苦しみを、22歳で初めて体験する電車男の“男の純情”を、
ストレートに描いています。
恥ずかしい、といえばこの上も無く恥ずかしいのだけれども、
誰しも身に覚えのあるような思いをぬけぬけと映画館のスクリーンで
ドラマにして見せてのけてしまった心地よさがありました。
劇場公開の時には中学高校くらいのカップが多ったですけど、
女の子のグループ、男のグループもいる。
で、映画が終わると恋愛交際談議にそれぞれが花を咲かせています。
思い出の初デートの嬉し恥ずかし話なぞを語り合って「馬鹿だねーっ」て
みんなで盛り上がってます。
一人でしみじみ味わっても良い映画ですが、全編が
“最悪デート・マニュアル”みたくもあるので、
それを肴にわいわいやれるのですね。
村上正典監督はわずか二ヶ月ほどで、「電車男」を制作しています。
映画のスケジュール離れしているので、
自分たちのところに演出のオファーがあったんだろうと、インタビューに答えています。
悩んでいる暇の無いわけで、映画のコンセプトについては、
「原作の最後の方にみんなで「がんばれ!」と応援するスレッドがあって、
心に来るものがあったので是非表現したいと思い、
『二人の恋とそれを応援するみんな』という構図を思い浮かべました。」
と言っています。
書店の店頭で「電車男」を手にしたとき、
スレッドに延々と“名無しさん”が出てくるので面食らいました。
これは特定の人物ではなくって、
“名無しさん”というのは、
2ちゃんねる各板に無記名で書き込んだ時に表示される書き込み者の名前のこと
なのですね。
最初の“名無しさん”と次の“名無しさん”は別人なわけです。
自ら“匿名です”と名乗る老若男女が、
たったひとりの電車男を相手に延々と語り合っている。
「日本中、もしかしたら世界の色々なところから掲示板にアクセスしていて、
バックグラウンドも人それぞれだろうと思い、
その彼らにもスポットを当てたかったのです。」
ネットで繋がっている話ということもあるのだが、
例えば親子、夫婦、昔の恋人など、
コミュニケーションについても1つのテーマにしたいという思いがあり、
それがうまくいってない人を中心に“名無しさん”たちを配置したと言います。
結構ベタな人物配置でもあるので、
先の“原作とは違う”と書き込んだ人たちの苛立ちは、
そのベタさ加減に対する反発もあったのだろうと疑いますね。
あれが“2ちゃんねらー”なんだって決め付けられてはたまらない、
という反発。
山田君自身も冒頭でエルメスを助ける時の格好というのが、
こてこてのオタク姿です。
(“2ちゃんねる”では“ヲタク”と書くのだそうだねぇ)
もちろん、
こんなヲタク、ヲタクしたヲタクなんて現実に
そこいらを歩いているわけ無いだろう?
と石を投げるのは勝手だけれど、監督は
「原作は知っているが手には取っていない人や、
普段コンピュータとの関わりが少ない人にも是非見て欲しいです。」と言っています。
「というのは「電車男」に出てくるようなネット生活者は、
知らない人からするとすごく斜に構えて、
違う人種のようなイメージもありますが、
その彼らが最後にはものすごく熱く応援する意外性というのを自分も感じていて、
そこが心を動かしたところもあったので、
原作を見ていない人も見ていただける間口を広げようと考えて作りました。
欲張って、どちらの方にも見ていただきたいな、と(笑)。」
山田君の冒頭の“ヲタク”姿は、
世間が誤解しているオタク姿にワザと着飾って、
ネット生活者以外の観客、視聴者の関心を引こうとしているのではないか?
つまり狙った上でのコスプレなんだろう、と想像してます。
根が美青年の山田君がどんなコスプレしようが、
ヘップバーンが、「マイ・フェアレディー」でやっていたことと一緒なんだ、
ジュリア・ロバーツが「プリティ・ウーマン」の始まりで
街娼を演じていたのと同じなんだ、
と丸めてしまうのは極論過ぎますか?
山田君の方は、じつはそんなにたいした問題ではなくってですね。
本当に大変だったのは、エルメスの方ですね。
電車男が恋焦がれるマドンナは、実際には掲示板に姿を見せるはずも無く、
色ボケしてしまっている電車男の目を通して断片的にしか語られていないので、
いくらでも理想的に見えてしまう。
しかし女優は、自分自身の肉体を使って、
具体的に演じなければならない。
舞台版でエルメスを登場させないというのは、逃げなのだけど、
ある意味、正論なのですよ。
生身の女でなくて、女神様なんだから。
電車内で暴れる中年おじさんから若い女性を救った、ヲタク青年22歳。
彼女いない歴=年齢の彼は実家在住のシステムエンジニアで、
見るからにヲタクを地でいくタイプ。
電車で助けたその女性からお礼に高級ブランドのエルメスのティーカップをもらうも、
どうしていいかもわからない。
そして、そのお礼のお礼に彼女をデートに誘うべく、
モテない男達が集うインターネットサイトに助けを求める。
「めしどこか たのむ」
電車男自身がエルメスのルックスを
「女優でいうなら中谷美紀似」と書いてます。
本人をキャスティングしちゃうんですからね。
クランクインの前、中谷美紀当人は
「みんなの憧れの存在で暖かく優しく、
品良くその場に立っていれば成立する役だというふうにとらえていました」
ところが、いざ現場に立つと
「非常に難しい役でして・・・。」
たとえば劇中には
電車男に対して「一緒に食事をする人が居なくなっちゃっいました」と、
誘ってくださいと言わんばかりのセリフがあったり、
「実はカマかけてみたんです」なんて、
男性を翻弄するようなセリフが沢山あったりと、
彼女はいったいどんな奴なんだ!?
「いかにいやらしくなく言うかが非常に難しかったです。
エルメスという役を作り上げるのに、思った以上に時間がかかりましたね。」
「でも、裏があるわけではなくて、本当にこの人が好きなのでそれを言ってるんだなって。」
エルメスの衣装はツインニットが多用されている。
流行の最先端ではなく、反対にベーシックなもので、
きつい色は極力避けて暖かい柔らかい配色が工夫されている。
名前はエルメスだが、
ブランドものは一切身につけていない。爆笑
蛮勇を奮って彼女の会社に乗り込んでくる電車男の前で、
エルメスは外人と英語でしゃべって、電車男を劣等感の虜にするのですが、
“あまりキャリアOLに見えないように”
靴は多少ヒールはあるが低めのものを選んでいる。
視覚的な工夫も見てほしい。
映画のロケガイドを付録に付けときましょう。
エルメスが電車男に自宅で振舞うのがべノアティー。
映画では、実銀座松坂屋4Fにあるべノアティーのティーサロンでロケ。
掲示板や原作を読んで訪れるお客が増え、
売り上げは今までの10倍にも伸びたとの事であります。
ちなみにこの店のアフタヌーンティーセットはお値段1,890円也。
電車男とエルメスが初めてデートする“創作和食の店”というのは、
銀座2丁目にある「春秋鉄鍋銀座店」。
2回目のデート場所のオープンテラスは
渋谷の宮下公園前にあるPICASSOビル3階の「347カフェ」。
南麻布にあるレストラン「アガペ」にてエルメスの友達を交え食事をするシーンが
撮影されています。
どうよ、次のオフ会で行ってみるかい?
電車男とエルメスが初めてのデートの待ち合わせ場所にしていたのが、
新橋汐留シティーセンターの敷地内にある汐留旧停車場。
出てくる大きな時計台はセットです。
西神田にある千代田ファーストビル西館エントランスが
エルメスの勤め先のオフィスビル。
電車男の会社は、
神奈川県川崎市にある東信電気2階1フロアーを貸し切って撮影されています。
問題の電車のシーンは撮影所にごっそり二両分のセットを作って撮影したのですが、
走っている全景、ホームなども含めての撮影は
渋谷から1時間30分ほどの千葉県の矢切駅で実際の電車を7車両貸し切って
ホームも借り切って撮影されています。
乗客役に集まった人々は千葉フィルムコミッションの呼びかけで集まった人たちです。
トップページ(映画の日特選、小説と脚本の比較レビュー)に戻る。