「デビルマン」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「デビルマン」 2004年 日本映画 監督 那須博之 脚本 那須真知子 出演 伊崎央登 伊崎右典 |
「デビルマン」はコミック版に対する思い入れ、熱心なファンの存在とかいろいろあって、
なかなかに作品紹介のむつかしい映画ではあります。
同じ高校に通う不動明(伊崎央登)と飛鳥了(伊崎右典)の二人は、幼馴染だった。
明は4年前に両親を亡くしクラスメート美樹の家・牧村家に引き取られ
平和な家族で普通の幸せな生活を送っていた。
研究者である飛鳥教授を父親に持った了は、
金銭的には不自由無く育ち何をやっても学校で一番だったが、
超然と振る舞い、明以外の者と打ち解けようとはしなかった。
飛鳥教授は、新エネルギーを求めた南極地底湖のボーリングに成功するが、
冬眠状態にある未知の生命体「デーモン」を発見してしまう。
デーモンは人類が発生する前からこの地球に存在した生命体で、
他の種族の体を乗っ取り、繰り返し進化し続ける知的生命体だった。
地底湖から蘇ったデーモン達は次々と人間を乗っ取り始める。
飛鳥教授もまた犠牲となり、非業の死を遂げた。
明は、飛鳥教授が残したビデオを通じてデーモン復活を目撃した。
映像の中で語る飛鳥教授の体が突然爆発し、
新生児の頭ほどの精子・デーモン最強の勇者「アモン」があらわれ、
明に襲い掛る。
明の体に電撃が走り瞳孔が光る。
アモンによる凄まじい侵食の中、
デーモンの邪悪な心に明の素直な心が打ち勝った。
が、その姿は邪悪なデーモンの姿に変わっていた。
人間の心を残しデーモンの姿を持つデビルマンに変身した明には、
普通の人間ではなくなった悲しみとは逆に、
デーモン本来の闘争本能と驚異的な力があらわれはじめた・・・
「デビルマン」は、1972年6月「週刊少年マガジン」に連載開始、
同年7月からNETテレビ(現・テレビ朝日)でアニメーション放映されています。
私が解説するまでも無いことですが、
そもそもアニメ制作の東映動画(現 東映アニメーション)より、
永井豪先生に対し、同氏が雑誌に連載、中断していたコミック「魔王ダンテ」を
下敷きに、悪魔の力をもった正義のヒーローもののテレビアニメの企画要請があり、
テレビアニメの制作を応援する形でコミック連載が開始されました。
しかし、
アニメーションの物語が「ヒーロー物」を目指していたのに対し、
連載マンガは、勧善懲悪を超え、
アニメとは全く違うストーリー、
正義と悪=神と悪魔の二極対立を覆した、
複雑な構造のドラマとして進んでいきました。
元ネタの「魔王ダンテ」は、
はるか昔、神は実は地球の侵略者で、
その神によって滅ぼされた人類のうち、
能力をもった変異体となって生き残ったものが悪魔族という大胆な解釈をした
作品です。
住んでいた地球を取り戻すために長き眠りより目覚め、ダンテは神に戦いを挑む。
神の正体は現在の人間の中にある霊魂エネルギーで、
その集合体か忌まわしい侵略者・神となる。
人類は自らが神の一部であることを忘れている。
あるいは前世の記憶を封じている。
かくて神を倒すために人類全員を抹殺するために魔王ダンテをはじめとした
悪魔族が立ち上がる。
と、人類相手の全面戦争をダンテと魔族が宣言したところで原作は中断してます。
テレビ版「デビルマン」の第一話はこんな話です。
「ヒマラヤの氷にとざれていた地球の先住民族・デーモン族は長き眠りから復
活し、
地球を征服せんと企む。
その先兵として魔王ゼノンは親衛隊・副隊長のデビルマン、ダルミ、フェイラスの
3人の内、戦いによって勝った者にその任をまかせる。
勝者のデビルマンはヒマラヤに父と共に登山に来ていた高校生・不動明の肉体に
のりうつり人間界に入り込むが、
居候宅の牧村美樹を好きになりデーモン族を裏切る。
裏切り者デビルマンに対して次々とデーモン族の刺客が送りこまれる。」
分かりやすいですねえ。初恋で同族を見限るデビルマン。笑
最終回では、愛する美樹に正体を知られ、彼女の前で変身。
バックにはクラッシックのBGMが鳴り響き…。
おやおや、君はウルトラセブンかい。
コミック版はよりシリアスに、
デビルマンが守ろうとした人間の心の闇に潜む残虐な生存本能が、
人間同士の闘いに発展し、
デビルマンは『悪魔』だけでなく守るべき『人間』とも闘う宿命を背負いま
す。
少年マンガで<神と悪魔の最終戦争>、
つまり<ハルマゲドン>を正面から描いたのはおそらく本作品が初めてでしょう。
永井豪先生が描いた正義と悪、登場するキャラクター造形は、
当時としては革新的であることから「デビルマン」は伝説として語り継がれ、
日本マンガ界に革命をおこし大きな影響をあたえました。
今回の製作は、
東映と東映アニメーションの共同制作体制がとられています。
製作にあたり、VFXプロデューサー・特撮監督に「魔界転生」の佛田洋、
CGプロデューサーに映画「デジモン」シリーズの氷見武士、
CGスーパーバイザーに「スピーシーズ」「エアフォース・ワン」に携わった
野口光一、
絵コンテ・CGアニメーションディレクターに「ドラゴンボールZ」(原画・作
画監督)の
宮原直樹らを迎え、
さらにアクションコーディネーターに「デアデビル」
「リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い」などハリウッドで
活躍している野口彰宏が、
アクションパートを担当しています。
関係者はデジタルとアナログが融合する世界
D−visual(デビジュアル)―を目指すと謳っています。
デビルマンの原作は多くの国々で海賊版を含め翻訳版が出回り、
多くのファンを獲得しています。
そして旧アニメ版もフランスなど四十カ国あまりで
放送されており、今回の映画版も本邦公開前に海外配給が
決定しています。
永井豪先生によると、デビルマンの海外での実写版の制作の話は、
以前からあったようですが、デビルマンを悪のヒーローと割り切り、
超絶パワーで暴れる怪人とした企画ばかりだっので、版権使用を承諾せず、
今回、アニメ版製作より縁のあった東映及び東映アニメーションより、
原作のモチーフを十分尊重した作品作りを約束され、GOサインを出したとの
ことです。
映画脚本が原作コミックのダイジェストになってしまったのは、
このような背景によるところが大でしょう。
ヒーロー・デビルマンに変身してしまう不動明役に、
人気ユニットFLAMEの伊崎央登。
サタンに変身する飛鳥了役を、
FLAMEのメンバーで双子の兄・伊崎右典が演じ
ています。
髪を片方が脱色したり、劇画に合わせて髪形をセットしたりで、
ふたりが双子とは気が付きませんでした。
聞くところによると、撮影直前までどちらがどちらを演ずるか
決まっていなかったとか。
そりゃどっちがどっちでもリスクは同じですからね。爆
ルックスからキャストされただけあって、
ドアップでカメラに向かってガンを飛ばしているようなアングルは、
ナカナカに決まっています。
が、いかにせん演劇経験が皆無のふたりですので、
静かな場面はかったるく、
叫ぶ喚くの場面ではただただ声を張り上げるばかりで
魅力がありません。
まあ、若いがゆえの新鮮味はありますので、全部が全部否定するものでもない
のですが。
デビルマン・明がデーモンとの闘い、
人間との闘いの最中に守ろうとするヒロイン・美樹役に
『バトル・ロワイアル2 鎮魂歌』の酒井彩名がキャストされています。
ええとテレビの「エースをねらえ」で加賀のお蘭をやってなかったですかね。
クラスメート・ミーコ役は
02年第八回全日本国民的美少女コンテストグランプリ受賞の渋谷飛鳥。
この子もへたっぴいですが、
登場場面が比較的多くドラマ的に理解しやすく描き込まれているので、
得をしています。
原作でも人気の美しきデーモン・シレ―ヌ役にスーパーモデル
冨永愛がキャストされています。
この人は八頭身どころか九頭身くらいありそうなナイスバディなのですが、
デビルマンとの戦闘シーンは顔以外フルCGらしく、
そうなると全裸よりHっぽい例の宣伝ポスターも、アイコラ疑惑が…。
十分インチキ臭いですねー。笑
できちゃった婚で近々ママになるとか噂で聞いてます。
ま、いい女は売れるのも早いですね。
デーモンの被害を世界に伝えるニュースキャスター役としてボブ・サップが
出ています。
他に小林幸子とか、ワンシーンのゲスト出演が両手の数以上いるのですが、
そんなことに金と時間を使う余裕があるなら、
本編の方を何とかして欲しかったです。
映画初共演の宇崎竜童・阿木燿子夫妻が牧村家夫婦役です。
思ったより目立つ役ですが、特に良くも悪くも無かったです。
監督は「ビーバップ・ハイスクール」「ピンチランナー」の那須博之、
脚本は吉永小百合111本目主演作品「北の零年」の那須真知子が担当。
おふたりはご夫婦で「ビーバップ・ハイスクール」で、
ずっと一緒に仕事をしているのではなかったですかね。
「ビーバップ」なんかは割りと泥臭いギャグを見せていますが、
「デビルマン」でも冒頭の学園ドラマの部分は泥臭いですね。
学園のなかに機動隊が突入してからが勢いが出てきますが、
その後のデーモンにのっとられた人々が教会に立て篭もってばたばたやるあたりが
また垢抜けない。
人間の美しい心とデーモンの邪悪な魂の葛藤から生まれた新生物がデビルマン、
という設定ですが、
原作でも明とアモンがひとつのからだの中で主導権を奪い合うとか、
内面の葛藤があるとかは出てきません。
長年、このことを不思議に思っていたのですが、
永井豪先生によると、人間が生身のまま武装化したのがデビルマンという着想で
描かれたのだそうです。
ですから個としてのアモンははじめから存在しないことになります。
デビルマンに心を封じ込められたアモンを呼び起こそうと、
すっ飛んでくるシレーヌは、
はなからとんだ無駄足を踏んでいたこととなります。
デビルマンの中でゆれているのは、明だけなのですね。
シレーヌのエピソードは、原作に出てくる“シレーヌを愛するカイム”が未登場の
ため尻切れトンボです。
「俺は人間を守る為、愛する美樹ちゃんたちを守る為にデビルマンとして闘う。」
と明は誓った。
しかし、いまや日本中にデーモンの脅威がひろがりはじめていた・・・。
次に現れたデーモンは、
背中の強大な甲羅に喰われた者の最後の意識を映した「ジンメン」。
この人喰いデーモン・ジンメンとの戦いで、
明は「サタン」の存在と思惑を知ることになった。
デーモンによる憑依・殺戮・侵食・・・の中、
明は変化した自分の姿を美樹に隠し、
牧村家の人々とだけは普段の生活を送ろうとしていた。
とどまるところを知らず、憑依しつづけるデーモンの脅威は、
やがて世界にまで被害をおよぼし人類の終焉が近づこうとしていた・・・。
この全世界への被害の拡大を伝えるのがボブ・サップなのですが、
なんか全体に報道画面がチープなので人類滅亡という危機感が伝わらないのが
残念です。
いちおうネタバレ改行です。
うろたえた人間たちは、<悪魔摘発>が認められたことで、
人間と悪魔の区別もつかないまま互いに殺しあうという「悪魔狩り」を始める。
そして、人間を滅亡から救おうとするデビルマン・明もまた、人間から命を狙
われていく。
「すぐそばに神様はいるの・・・」美樹の言葉が頭をよぎる。
そのとき、この憐れな闘いに思いがけない「サタン」が姿を現した。
それは一緒にデーモンと闘っていたはずの了だった。
いかにも唐突なサタン登場ですが、
これは原作も唐突なので仕方ないですね。
予告では「悪魔狩り」の一部とCGが使われていましたが、
狭いところでごちゃごちゃもめている感じがあって、
あんまり良い場面とは言い難かったです。
まあ、陰惨なエピソードですので演出の狙い通りかもしれないのですが。
美樹の死については映画の方が比較的描きこまれていたように感じたのですが、
私の思い違いでしょうか?
原作の方は、彼女の扱いに困ってクライマックス前に抹殺したように感じたの
ですが。
ついに明と了の闘いが始まる。
「神はいたか。人間は守る価値があったか?明」
人間を守る為の戦いは果たして正義なのか・・・そこに価値はあるのか・・・。
そして、その戦いの行方は・・・。
というんで、イメージとしてのハルマゲドンがあって、あとはエンディングですね。
これは原作も同じです。
好き好きの話ですが、
9.11後の私たちの現実があまりに殺伐としすぎて、
ドラマでまで殺伐としたハルマゲドンをカタルシスを持って見れないなー、
という素朴な感想を持ちました。
原作の発表時は日本が高度経済成長の真っ只中で、
「このままではイカンぞっ」というアピールはそれなりに力がありましたが。
映画のラスト手前に出てくるデビルマン化したミーコが
人間の少年の手をとって廃墟の町の地平線のかなたへ立ち去っていく。
その先の再建のドラマこそ、今の世界に、今の日本に必要なのではないかと思
います。