「ハゲタカ」

「ハゲタカ」映画チラシ■作品基礎データ
『ハゲタカ』
監督:大友啓史 
脚本:林 宏司 
原作:真山 仁 『ハゲタカ』『ハゲタカⅡ』(講談社文庫)
『レッドゾーン』(講談社刊)        
出演:玉山鉄二


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あれから4年……世界金融危機前夜。
かつて瀕死の日本企業を次々と買い叩きながらも、
日本のマーケットに絶望した鷲津(大森南朋)。
海外生活を送っていた彼の元へ、大手自動車メーカー「アカマ自動車」を、
中国系巨大ファンドによる買収危機から救って欲しいと、
かつての盟友・芝野(柴田恭兵)が頼みに訪れる。
名門「アカマ」の前に突然現れたのは、“赤いハゲタカ”こと
劉一華/リュウ・イーファ(玉山鉄二)。
巨額の資金を背景に鷲津を圧倒し続ける劉。彼の本当の狙いとは何か? 
世界金融危機前夜に幕を開けた“ハゲタカVS赤いハゲタカ”の壮絶な買収戦争。
「日本が中国に買い叩かれる!?」という未曾有の危機に、鷲津はどう立ち向かうのか?

“ハゲタカ”鷲津にはドラマに引き続き大森南朋が扮し、
栗山千明、松田龍平、中尾彬、そして柴田恭兵らレギュラー陣も再結集。
そして鷲津の敵、“赤いハゲタカ”こと劉役に玉山鉄二。
さらに遠藤憲一、高良健吾を迎え、
人気・実力を兼ね備えた豪華出演陣が脇を固めます。
監督にはドラマ版でその演出力が高い評価を得た、
大友啓史(NHKドラマ「ハゲタカ」「白洲次郎」)。

思った以上に面白かったです。
企画制作がNHKエンタープライズです。
土曜ドラマ「ハゲタカ」は全話ではありませんが、
基本設定や人間関係が分かるくらいには見ています。

予告編で
「ハゲタカ VS 赤いハゲタカ」
と出てきて、中国の国旗を背負った悪役が
中国語で「日本を買い叩けっ」と檄を飛ばすシーンが出て、
こりゃ漫画以下だな、とずっこけたのですが、
本編の方はなかなかでした。

テレビドラマシリーズの後日談にして完結編、
というのは民放の公開中の映画と一緒だし、
NHKさんもそんな企画やるんだな。

一説では「篤姫」も映画にしたかったのだけど、
宮崎あおいに断られて断念したとか…。

劇場には思ったよりいろんな世代の人たちが来てました。
若い女の子達が互いを指差し
「金のない悲劇」と言ってけらけら笑ってました。
(本編を見た人でないとわかんないギャグです。)

“ハゲタカ”ファンドの戦いのドラマと言うと、
大抵、ホリエモンとか村上ファンドとかを思い描くでしょうけどで、
まさしくそういう人たちの札束攻撃の金融と株のドラマです。
(だからうちのコミニティに感情移入できる人がいない?)

バブルが弾けてこちら、
株屋さんが表舞台で荒稼ぎすると言う状況自体がなくなり、
主人公の鷲津ファンドの主催者 鷲津もリタイアして
南の島でのんびりやってるのだけど、
それが中華系資本の
敵対的買収にさらされる日本の大手自動車会社から
ホワイトナイトになって欲しいと救いを求める使者がやってくる。

サムプライムローン問題や派遣切りや、
巷の経済問題があれこれてんこ盛りに出てきて、
飽きません。

ただ、結局、どこが面白いかと言えば、
悪役の中華系ファンドのマネージャー劉一華に
尽きるじゃないのかな。

大陸の奥地、
砂漠も同然の荒地を耕すど貧乏農家の息子の前を
富の象徴、成功の証とも言うべき
きらきらの日本車が走りすぎていく。
見送る少年の憧れ、羨望、憎しみ…。

どん底から這い上がり、
「日本を買い叩く」と血の叫びを上げて
海の向こうから襲い掛かる敵役が、
説得力を持って描かれている
というところが魅力なのですね。

日本がこれほど憎まれ、
同時に愛されている、
何てことは日本人には思っても見ない話で、
そこが面白かったです。

利用するだけして放り出した派遣切りの犠牲者に
劉一華は、金を与え。
派遣社員が怒って札束を投げ捨てると
「拾え、お前のために拾えっ」
と喚きだし、
自ら床に這い蹲って札を拾う劉一華に、
派遣社員が恐れをなして、
一緒に札を拾うシーンは無茶苦茶でしたが、
圧倒されます。

再建を誓う新社長に「劉一華はあなただったんだ」と
鷲津が見せた自動車会社の分厚い再建計画書。
「愛している、共に成長したい」という言葉に嘘はなかった。

これは言ってみれば、
暴力的で破滅的な片思いのドラマだったのですね。
ネタバレ改行です。


「劉一華という男は別にいる」
というどんでん返しは怖かったです。
偽・残留日本人三世というのが報道されたのは知っています。
中国の一人っ子政策で
戸籍のない人がいるという話も聞いた事があります。
「お前は誰だ?」と鷲津に問い詰められて、
強気傲慢の劉一華が、一転、
雨に打たれた捨て犬のような顔になるところは哀れでした。

仁侠映画ならともかく、ハードな経済映画で
戦いに敗れた敵役が、失脚したたけではすまず、
暴漢、ホームレスに襲われ
雨の中、泥にまみれて死んでいくというのは、
不意打ちの幕切れでした。

ラスト、中国の農村の廃屋で鷲津が見詰める
壁に書かれた子供の車の落書きが痛切でした。

遠藤憲一&大友啓史監督のインタビューより
メイキングに関する部分を採録します。

遠藤憲一(アカマ自動車社長・古谷隆史 役)
1961年生。東京都出身。1983年、「壬生の恋歌」でデビュー。
以降、数多くの映画、TVドラマ、舞台に出演。主な映画出演作は、
『金融腐蝕列島 〔呪縛〕』(99)、『あずみ』(03)、『さくらん』(07)、『自虐の詩』(07)、
「クライマーズ・ハイ」(08)、『クローズZERO II』(09)など。
強烈な存在感を発揮する個性派として、日本映画界になくてはならない名優。

大友啓史(監督)
“ハゲタカ”の異名を取る天才ファンド・マネージャーが日本企業に次々と買収を仕かけ、
企業を再生させていく姿を描いて大反響を巻き起こしたNHK土曜ドラマ
「ハゲタカ」(07)を経て、今回の劇場版『ハゲタカ』で映画監督デビューを果たした。
近作に同じくNHKドラマスペシャル「白洲次郎」(09)があり、脚本と演出を担当した。

Q:遠藤さんが演じたアカマ自動車社長・古谷は悪の象徴に見えなかったです!
遠藤:悪というか、ワンマン。先代たちが大切にしてきた物作りの姿勢より、
営利を追求してしまった男です。
監督に一番最初に言われたことは、勝者や敗者、善や悪を前面に出さず、
必死になってくれと。これは全員のテーマでした。
彼だって大勢の社員を抱えて必死。強引な人だけど、
社員の生活を守る責任感が強い人なんです。
大友:『ハゲタカ』のような題材の場合、マネーゲームで買う買われるという話なので、
勝者や敗者の話で終わりになってしまいがち。
道徳的判断をしたいために、みんな白黒つけたがるわけです。
それって危険なこと。社長だって仕事をしているわけで、
ヘンな色をつけてしまうとおこがましい。無責任な演出はできないですよね。
遠藤:おかげで彼の人間的な回路に入っていけました。
監督のアドバイスがなければ、のし上げるだけの小さい人間になっていたと思います。
ただ、俺が自分の社員を励ますシーンはカットされてしまいましたけどね(笑)
大友:いや、それは単純に尺の問題なの(笑)。
社員のために必死になっている姿は伝わると思うので大丈夫!
Q:『ハゲタカ』はすべての登場人物に感情移入が出来る熱いドラマですよね!
大友:ええ。特定の人間に感情移入するのではなく、
その場に出ている人にその都度共感していただけると思います。
『ハゲタカ』は現実にモデルがいてもおかしくない題材なので、まったく茶化せない。
だから、出てくる人間たちをいい加減には描けない。
彼らとともにドラマの世界を生きないとダメで、伝わらないと思いました。
遠藤:1日中かけて撮影して気持ちを積み上げました。
それがだんだん体に染み込みますよね。
そのおかげで辛い気持ちにはなりましたし、
何度も撮るのは得意じゃないので苦しかったけれど、リアルな演技になりました。
遠藤さんが映画に出ると世界観が攻撃的になっていく
Q:おふたりは今回が初対面ながら、すごい仲がいいという情報を得ましたが?
遠藤:ノリが好きなんですよね(笑)。
ざっくばらんだし。近寄りがたい監督さんもいるけれど、大友さんは正直なので、
熱くなれる。
監督もなぜかフラフラになって撮影するんですよ。モニターの後ろで一緒になってね!
大友:ある脚本家のかたが撮影現場に来てくれたときに、
“大友さん、最高だよ!”って言ってくれたんです。
自分でもいい芝居が撮れたなとうなずいたら、“違うよ、アンタが”って言われて。
俺、そうなんだって(笑)
遠藤:監督自身が演出する役のテンションになってしまう、不思議な人なんです(笑)。
おかげで説明がわかりやすい。アカマの会議室で、
“このシーンに無駄な人は1人もいない!”って言うの(笑)。
難しい経済の話題もシーンごとに丁寧に説明してくれたので、とても演じやすかったです。
大友:僕が場所を提供しさえすれば、
俳優さんたちが自分で作ってくれると思っているんです。
あれこれ言わないでも、環境さえ整えればキックバックしてくれる。
逆に言うと、エキストラ1人でもダメな人がいたらダメ。
たとえエキストラでも、人生があってドラマがある。
主体的に動いてもらう気になってもらわないとダメです。
Q:遠藤さんの出演シーンで、大友監督の気に入っているシーンはどこですか?
大友:遠藤さんが切られるシーンは泣けますね。
男の哀愁というか。脚本を読み、こうじゃなきゃって論理で迫るのではなく、
アカマの社長を背負った遠藤さんが演技をしている。
それでいいじゃないかと。好きだな(笑)
遠藤:そうですか(笑)。自分の演技を冷静に観れないんですよ。
映画自体が最高というのはわかりましたが、試写会って苦手で基本的に行かないんですよ。
人と観るのが恥ずかしいし、でも、今回は観ましたけどね(笑)
大友:今回の『ハゲタカ』はとくに攻めの作品なので、
そこへ遠藤さんのキャスティングがあることで、映画の世界が広がっていった。
世界観が攻撃的になっていくんですよ! 良かったと思います。社長! ありがとう!
遠藤:監督は本当に乗せるのがうまいからなー(笑)。
“おい! 社長!”だなんて。こっちも乗っちゃうよ!
男たちが何のために働いているか女性に知ってほしい
Q:この良好な関係をいかして今後ご一緒に再び仕事をする予定はありますか?
大友:それはもうすぐに(笑)。
僕が演出するドラマに出てもらいました(笑)。
「白洲次郎」(09)で、「ハゲタカ」と同じNHKで8月に放送される予定です。
撮影自体は5月だったので、ご出演はすでに終わっていますよ。
遠藤:とてもうれしかったですね。『ハゲタカ』の打ち上げで初めて
一緒に監督と飲んだんですよ。俺のファンだっていうので、びっくりですよ(笑)。
ありがたい。いい出会いってありそうでなかかないものなんですよ。
Q:最後におふたりのメッセージをお願いいたします!
遠藤:こういう『ハゲタカ』のような骨太のドラマは、絶対にヒットしてほしい。
出来るだけ多くの人に観てもらいたいし、クチコミでガンガン広めてほしいです。
映画ってどんなに豪華なキャスティングでやっても、
いいものじゃないと観に来てくれないと思うんですよ。
『ハゲタカ』は最高の映画なので絶対に観てほしいですね。
大友:TVシリーズから共通している個人的な思いがありまして、
それはスーツを着ている男たちってカッコいいということ(笑)。
主婦のみなさんが、そういう視点で男たちを見直してくれるといいなと思っています。
男たちが毎日スーツをビシッと着て日中何をやっているのか、
奥さんたちには見えないじゃないですか。
何を守るために働いているのか知ってほしいんです。
意外とそういう視点って大事じゃないかと個人的には思っています。

大森南朋演じる“ハゲタカ”こと天才ファンド・マネージャーの鷲津政彦を
日本へ呼び戻す企業再生家・芝野健夫を、柴田恭兵が引き続き演じています。
そのインタビューです。

Q:今回の映画『ハゲタカ』を最初に観たときの率直な感想はいかがでしたか?
日本映画っぽくないといいますか、とにかく不思議な感じがしました。
もともと僕は自分が出ている映画は、1回観れば十分なところがあるのですが(苦笑)、
今回は本当に何度も観たいと思いました。
しかも、観た翌日ぐらいにもう一度観て、
大森さんや遠藤(憲一)君、中尾さん、
全員に会いたいという愛おしさを感じた映画でした。
Q:日本を愛する男たちのドラマに感情移入されたからでしょうか?
確かに経済問題を扱う内容で、
今回はたまたま中国が市場の買収を仕掛けてくるストーリーでしたが、
そういうことではなく、もっと人間くさい話になっているので、
それが良かったと思います。
映画全体としては個々の人間ドラマになっていると思いますね。
Q:では、テレビドラマから続く人気の秘けつは何でしょうか?
もう2年ほど前になりますが、
もちろんタイムリーな題材がウケたことはあると思います。
テレビドラマのときは宇崎竜童さん、冨士眞奈美さん、菅原文太さん、
それぞれのゲストのエピソードをはじめ、
一話一話がふくらみのある内容だったことも大きかったと思います。
魅力的なゲストの方たちが人間ドラマを盛り上げて、
それは中小企業だろうが、大企業だろうが同じことで、
そういう熱意が観ている人たちへと伝わったのだと思います。
Q:企業再生家・芝野として、役へのアプローチをどのように行いましたか?
企業再生家と聞くと仰々しい感じもしますが、
根っこの部分では企業も人間と同じ生き物で夢や希望も必要だという
芝野の芯(しん)がブレなければ、
演じ切れるのではないかと思って取り組みました。
スタッフ・キャストの間で、
観終わった後にちょっとでも元気になって映画館を後にしてほしいという話を
撮影前からしていて、
そのために芝野のセリフをギリギリまで粘って現場で考えたことも多かったです。
最後の最後までせりふをいろいろと考えていましたね。
Q:テレビドラマ版からの続投になりますが、芝野に対しての思い入れは?
今回の「この国も捨てたものではない」というセリフを言うために、
ドラマ時代から走り続けてきた感はあります。
ドラマ版では銀行を辞めますが、
そのときは銀行の方針と自分の方向性にズレを感じて辞表を出しました。
自分をごまかしてまで銀行員として生きていくのはつらいと。
単なる正義感だけではないと思います。
絶対に譲れないものを芝野は持っていて、
企業再生家としての目先の数字や利益だけではなくて、
先のことまで考えている男だと思うんです。
だからこそ有能なのだと思います。
ドラマ版では大空電機という大企業を再生して、
数年後に日本を代表する、日本の誇りである会社に雇われているわけですから。
人知れず頑張ったのでしょうね(笑)。
Q:当時の芝野が抱いていたような葛藤(かっとう)が、柴田さんご自身にもありましたか?
葛藤(かっとう)というか、俳優は個人商店。
その意味では社長であり社員ですが、
柴田恭兵という会社は一人では成り立たないわけです。
多くの人たちの助けがいる。
そしてその人たちの期待に応えられているのか、
応えなければいけないといつも不安でいっぱいです。
と同時に「ハゲタカ」のようなドラマに出会えたときのような喜びもある。
そういう気持ちは永遠に続くことなのだろうと思います。
もっともっといろいろな人や作品に出会いたいです。
Q:その意味でも芝野というキャラクターに入りやすかったのでしょうか?
そうですね。芝野は企業再生家ですが、
「ハゲタカ」の中では心情的なセリフを担当していた方だと僕は思っています。
演じることは難しかったですが、逆に楽しかったですね。
Q:派遣問題や金融危機を扱う本作は、現代において大きな意義がありそうです。
映画はいろいろな受け止め方があって当然だと思います。
僕は愛おしさと切なさを感じた映画でした。
観終わった後に、たくさんのことを感じ取ってもらって、
なおかつちょっと元気になってもらえたらうれしいですね。
Q:監督は、スーツの男たちはカッコいいと女性にもアピールしたいそうですが。
現場では執拗(しつよう)に撮っていたと思います(笑)。
そのお陰で余計な緊張感や力みがどんどんと抜けていって、
それぞれのキャラクターの本音まで浮き彫りになっていったと感じます。
Q:そもそも社会性やメッセージ性がある映画はお好きなのでしょうか?
いえ。結果的にそうなっているだけだと思います。
今まで社会性やメッセージ性を意識したこともなかったですし、
今回は脚本が素晴らしかった。
すてきな脚本に出会えたことは、俳優として本当に幸せなことだと思います。
Q:「ハゲタカ」との出会いで、最も心に残っていることは何でしょうか?
ドラマの撮影が始まり、いろいろなシーンを重ね、
3話ぐらい撮ったところで、僕にガンが見つかりました。
緊急手術をしなくてはいけない状態だったんです。
途中まで撮っておきながら手術をしなくては
いけないということになって申し訳ないとNHKの人に言いました。
場合によっては降板もあり得るという話を切り出したところ、
皆さんが「元気になって戻ってほしい。待ちます」と言ってくれました。
Q:柴田さん自身「ハゲタカ」に元気をもらった経験者ということなのですね。
ええ。その思いに応えるために病を克服して、
一刻でも早く現場に戻りたいと思いました。
関係者の皆さんからの励ましがあったおかげで僕も元気になれたし、
その応援に応えたいがために頑張ったことも事実です。
「ハゲタカ」は俳優として大きな転機になったドラマだったんです。
だからとてもうれしかったですね。
実際にすてきなドラマになっていろいろな賞もいただいて、映画にもなった。
今度は映画を観る人が元気になって、語り合ってほしいと思います。

次は、大森南朋のインタビューです。

おおもり・なお
'72年東京生まれ。
'93年、映画『サザンウィンズ日本編トウキョウゲーム』で俳優デビュー。
'03年に出演した『ヴァイブレータ』で数々の映画賞を受賞し、頭角を表す。
'07年より出演し、その演技に高い評価を得ていたドラマ『ハゲタカ』がついに映画化。
'09年公開の『笑う警官』にも出演。

「鷲津のキャラクターにすんなりと戻れたわけではなく、
ドラマ版とどこまで同じようにやるべきかなどを考えながら、
脚本を読んで作り直していきました。
撮影に入ってからは、メイクを済ませて、メガネをかけて現場に入ると、
そこには監督がいて、柴田恭兵さんもいる。その時点で完璧に戻れた感じですね」
鷲津はドラマ版で壮絶な運命をたどり、心身共に深い傷を負った。
映画版の出発点では、彼は南の島でブランデーをあおっている。
「日本を代表する自動車会社のアカマを買収しようとしている奴らがいて、
何か大きなことが起きようとしている。
あくまで鷲津は、アカマという言葉に引きつけられて帰国を決意したんだと思います。
もうひとつは、経済や金融の世界に“帰るべくして帰った”ということですね。
彼にとっては、その世界こそが最もいきいきできる場所であって、
南の島での生活なんてちっとも楽しくないわけです」
そもそもドラマ版で、大森南朋にメガネ&スーツ姿の
冷徹なファンド・マネージャー役という“意外な”オファーを出した製作陣の
発想があっぱれである。
「最初は僕が演じて成立するかどうか、想像もできませんでした。
しかし脚本には人間ドラマがしっかりと書かれていたので、
経済の難しい部分はスタッフにお任せし、
僕はその世界に生きている人間の感情を表現したいと伝えたんです。
ちょうどその頃、ホリエモンや村上ファンドのことがよくテレビで報じられていて、
役作りの面では村上さんに多少インスパイアされたかもしれません」
映画版の鷲津は
ますます謎めいている
ハードボイルドな外見の内側に複雑な感情を秘めた鷲津は、
演じるうえで“理解しやすい”のか、それとも“不可解”な人物なのか。
「ドラマ版では鷲津の過去を掘り下げるシーンがいくつかあったので、
彼が背負う悲しみや、自分の意思に背いた生き方などは理解しやすかったといえます。
今回の映画版にも、日本に戻って因縁のある芝野(柴田恭兵)と再会する…
…といった入り込みやすい部分がありましたが、
あえてそのわかりやすさを壊してみたい、
鷲津の理解されがたい部分を少し表現したいという思いもあったんです。
監督と相談しながらそれをやってみて、
映画版の鷲津はますます謎めいてきているような気がしますね。
複雑な群像劇を2時間にまとめたこともあって、
僕の中にはまだ鷲津という人間を完結しきれていない部分が残っています」
ドラマから映画へとスケールアップを遂げた『ハゲタカ』は、
大森南朋の堂々たる主演作であるうえに、作品の質も極めて高く、
誰もが認める彼の代表作となった。
「現場に凄い熱がありましたし、役者同士でガツンと闘うことができた貴重な機会でした。
様々な賞もいただいて物凄くありがたい半面、
役者としてはいつまでも『ハゲタカ』を引きずるわけにはいかない。
いつかこの作品を超えなくてはとも思っています」

そして大森南朋&栗山千明のインタビュー

Q:テレビドラマ「ハゲタカ」で主演のお話が来たときは、
どんな感想を持たれたのでしょう?
大森: 本当に僕でいいんですか? と。どういうつもりですか? って……(笑)。
Q:その「ハゲタカ」が映画化されることになって、
手ごたえのようなものは感じられていますか?
大森:僕は素直にうれしいと思いました。
不安もあったし、本当に面白いものができるんだろうか? 
テレビドラマのときのテンションをまた引き戻せるのだろうか? 
といろいろ考えましたが、
大きなスクリーンで「ハゲタカ」ができるってことが楽しみでもあったんです。
すべてひっくるめて、うまくいったと思いますよ。
みんなの協力もあって作品もよくできていると思います。
手ごたえはバッチリあります(笑)。
栗山: わたしもそうですね。
でも、ドラマのときに、胃が痛くなるほど緊張して撮影していたので、
今回は撮影するのが怖かったです。
Q:お二人はドラマに続いての共演ですが、久しぶりに共演されていかがでしたか?
大森:今回は同じシーンは少なかったんですが、僕が記者発表をする場面で、
会場に記者として座っていましたね。その感じが非常に懐かしくて……。
前にこんな場面をやったなあって。いてもらえるとホッとする、
そんな安心感がありました。
栗山:わたしも同じで、本読みとかで事前にお会いしているんですが、
カメラの前で一緒にお芝居して、あ、懐かしい……と思う瞬間がありました。
支えていただけるとわかっているので、安心しましたね。
Q:大森さんは再び天才ファンドマネージャーを演じていますが、
専門用語が多いので苦労されたのではないですか?
大森:それが、そうでもないんです。
僕は台本を信じていますので(笑)。
現場にはアドバイザーの方がついてくださったので、お話を聞くこともできましたし。
Q:栗山さんは経済ジャーナリストの役ですが、
ジャーナリストという職業にどんなイメージを持たれて役に入られたのでしょうか?
栗山:知的で、カッコイイというイメージはあります。
テレビシリーズから年月が経っているので、
由香は出世をして現場には行かなくてもいい立場になっているんですが、
あえて自分から率先して現場に行っているという感じですね。
気持ちは全然ドラマのときと変わっていないです。
Q:本作では鷲津の敵役の“赤いハゲタカ”こと劉一華(リュウ・イーファ)役で
玉山鉄二さんが出演されていますが、共演された感想は?
大森: まっすぐだし、好青年。
お芝居する力がすごくあって、誠実な芝居をされる方だと思いました。
栗山:わたしは(記者会見場などで)玉山さんがお芝居されるのを
見ているシーンが多かったんですが、見ていて大変だなあ~って思いました。
すごく集中力のある方ですね。
Q:大友啓史監督の撮影方法(長回しなど)は独特なものだったとうかがっていますが、
その方法がこの映画にどんな影響を与えていると思われますか?
栗山:今回、一般公募でたくさんのエキストラの方が出てくださっているんですね。
その人たちがずっとテンションを上げていられるようもっていく力が監督にはあるんです。
大森:現場では、監督が一番テンション高いからね。
僕たちはそんな監督を見ていて、いつの間にか芝居に入っていたということもあります。
Q:たくさんのエキストラが出演していて、そのハイテンションさに驚かされましたが、
どんな現場だったのでしよう?
大森: 大勢の方が出ているシーンは熱気もあるし、
撮影が長くなるので妙な虚脱感のようなものもあるんです。
栗山:会見のシーンや派遣工の集会の場面ではエキストラの方たちの勢いに押されて、
ぶつかったり、足を踏まれたり……、怖かったですね(笑)。
Q:「世の中は金だ、金が悲劇を生む」などの印象的なせりふがたくさんありましたが、
どんなせりふや場面が心に残っていますか?
大森:印象的なせりふはたくさんありましたね……。
面白かったのは、テレビドラマと同じセリフを録り直したんだけど、
完全に声が3年分老けていたんです(笑)。
栗山: え~っ!? 声って老けますか?
大森:前に録った声を聞いたら、自分で聞いても明らかに声が若かった。
今回はいい具合に大人っぽくなっていて、「よし!」って思いました(笑)。
栗山: わたしも大人っぽくなりましたか?
大森: 現場で「千明ちゃん、大人っぽくなった」って、話題になっていたよ(笑)。
栗山: 本当ですか? ありがとうございます!
Q:劉は幼いころの経験から将来の夢を持ちました。
お二人はどんなものから夢や希望を感じていましたか?
大森:僕は何になるかもわからず、漠然と生きていたころがありました。
それでも何か希望は持っていましたね。
それが何だったのかははっきりと思い出せませんが……。
早く大人になりたいという気持ちはあったかな。
栗山: わたしは何かあったかなあ……。
大森: 若いころからモデルだったでしょ? 「いつか女優に!」とは思っていなかったの?
栗山:全然なかったですよ。女優なんて、絶対に無理だと思っていました。
でも、あるときにきっかけをいただいて、
演じ始めてドンドン面白さがわかってきたんです……。
大森: ドンドン希望が膨らんできたんだね。
栗山: そうですね(笑)。
Q:最後に、この映画をどんな風に観てほしいですか?
栗山:人間対人間、上司と部下、敵対している企業同士とか、
何にでも当てはめてみることができると思うんです。それぞれが闘っているんですね。
観ているとドキドキしてくるし、身近な人間関係にも通じるものがあるんです。
硬い映画と思わないで、楽しんで観ていただけたら……と思います。
大森:経済の話ではあるんですが、
そこに生きている人間たちのドラマがしっかりと描かれています。
その点が評価されて映画化できたんだと思うし、
そんなことを感じて観てもらえればいろんなことが見えて…


以下はネタバレとなるのでmixi独身映画ファンコミュニティ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1299114
にて『ハゲタカ』の頁をご覧下さい。



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