「ヒトラー 最期の12日間」DVD脚本レビュー
★映画基礎データー★「ヒトラー 最期の12日間」 2004年 ドイツ・イタリア映画 監督 オリヴァー・ヒルシュビーゲル 脚本 ベルント・アイヒンガー 出演 ブルーノ・ガンツ |
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1942年11月、
ナチス親衛隊の将校に護衛されて数人の若い女性たちが夜中の欝蒼とした森を抜け、
ヒトラー(ブルーノ・ガンツ)のいる東プロイセンの指令本部“狼の巣”に向かっていた。
彼女らは総統の個人秘書候補で、
だれもが職務の重大さやこれから会う人物のカリスマ性に緊張を隠しきれずにいる。
そんな女性たちのなかから、
ミュンヘン出身のトラウドゥル・ユンゲ(アレクサンドラ・マリア・ララ)が
ヒトラーに気に入られ個人秘書の職を得る。
ナチス旗揚げの地であるミュンヘンは、
ヒトラーにとっても懐かしい思い出の地だったのだ。
それからおよそ2年半が経過した、1945年4月20日、ベルリン。
第2次世界大戦のヨーロッパ戦線も大詰めを迎えつつあった。
迫りくるソ連軍の砲火から身を守るため、
ヒトラーはごく限られた身内や側近らとともにドイツ首相官邸の地下にある
堅牢な要塞へ退却、ユンゲもそのなかにあって“歴史の証人”となった。
映画『 ヒトラー 最期の12日間』のドイツ語の原題と英語タイトルは、
DER UNTERGANG - HITLER UND DAS ENDE DES 3.
REICHS (ドイツ語)
THE DOWNFALL: HITLER AND THE END OF THE THIRD
REICH (英語)
といって、どちらも「没落: ヒトラーと第三帝国の終焉」という意味です。
「ベルリン 天使の詩」『クライシス・オブ・アメリカ (2004)』出演の
ブルーノ・ガンツがヒトラーに扮し、実在したヒトラーの有名な女性私設秘書の証言等を
元に、ヒトラーの死に焦点を絞った作品です。
タイトルにもある「第三帝国」とは…、
英語では‘ the Third Reich (サード・ライヒと発音)’といい、
英語とドイツ語の合成語らしいです。
「第三帝国」とはヒトラーが率いたナチス支配下のドイツのことで、
時代的には1933 - 1945 年の約 12 年間のドイツを指しています。
なぜ「第三」帝国なのかというと、神聖ローマ帝国
the Holy Roman Empire 、
ビスマルク帝国 Bismarck's German Empire に次ぐ、
民族主義に基づく第三の帝国だから。
その言葉はアルトゥール=メラー・ファン・デン・ブルック
( Arthur Moeller van den Bruck )が「 GERMANY’S
THIRD EMPIRE 」という
本で使って広まったのだそうです。
確認が取れていませんが『 ヒトラー 最期の12日間』は、アドルフ・ヒトラーの役を
ドイツ人俳優が扮した初めての映画になるのだそうです。
戦況は明らかに連合軍側優勢で、側近たちも敗戦を確信、
ナチス・ナンバー3の地位にあるヒムラー警察長官でさえ、
ベルリンからの逃亡を総統に勧めるほどだった。
客観的な状況判断を下す能力を失いつつあったヒトラーだけが、
実現不可能な大逆転劇のシナリオ(作戦)について熱く語りつづけ、
側近たちをますます動揺させていった。
そんな中、ヒトラーは56回目の誕生日を祝福すべく、
アルベルト・シュぺーア軍需大臣が官邸を訪れる。
建築家としてヒトラーの壮大なベルリン改造計画に関わってきたシュペーアを前に、
彼は今回の戦争でベルリンが焼け野原になることの唯一の利点は、
その後に新たな都市を建造しやすくなることだと語る。
ベルリンからの退却や降伏を頑なに拒絶するヒトラーに、
ベルリン市民の生命や財産を守ろうとする意志など皆無だった。
総統への狂信的な忠誠から、
ほとんど武器のない状態のままソ連軍の攻撃に立ち向かい、
首都ベルリンの防衛に当たる子どもを含めた民兵がいる一方、
それに参加しない市民は敵への寝返りを疑われ親衛隊の手で容赦なく射殺された。
ベルリン市内はさながら地獄絵のような様相を呈していた。
重厚な人間ドラマ中心の作品ですが、意外や市街戦の戦闘シーンも壮絶で、
その視覚効果には
モーリス・ケスター(『戦場のピアニスト (2002)
』『エイリアンVSプレデター (2004) 』)
トーマス・シール(『スターリングラード (2000)
』)
アレッサンドロ・チオッフィ(『 海の上のピアニスト (1999)
』『 トロイ (2004) 』)
Martin Zwanzger(『バイオハザード (2001)
』)
らそうそうたるスタッフが名を連ねています。
物語のキーとなる秘書役には『トンネル』(01)の
アレクサンドラ・マリア・ララが、
ヒトラーの愛人エヴァ役には『名もなきアフリカの地で』(01)のユリアーネ・ケーラーが、
それぞれ存在感ある演技でしっかりと脇を固めています。
監督のオリヴァー・ヒルシュビーゲルは、
日本でも大ヒットした前作『es』(01)に続き見事な演出手腕を発揮していますが、
実は取り扱いが非常に危険な題材ゆえ当初はこの映画に関わることを
家族から強く反対されていたそうです。
映像作家としての野心が彼を制作に向かわせたのでしょう。
地下要塞内に潜むユンゲの周りも次第に異様な空気がたちこめ始める。
大物側近らが次々と逃亡し姿を消していったのだ。
また、兵士たちの士気は下がり喫煙や酒盛りは日に日に度を越していく。
ついには側近中の側近ヒムラーやゲーリングらの裏切りが伝えられた。
ヒトラーは最終決戦を決意、
全ての兵力をベルリンに集結させるようゲッベルスに指示した。
しかし、すでに消耗しきったドイツ軍にそんな余力は残されてはおらず、
各地で孤立し殲滅されつつあった。
本作で描かれるもう一つの重要なテーマは、
組織の崩壊に直面する人々の心理的葛藤です。
ヒトラーにとって代わろうとの野望を最後まで抱き続ける
全ドイツ警察長官ヒムラー、
ヒトラーとともにベルリン改造計画に取り組みながらも
リアリストらしく冷静に総統との別れを決意するシュペーア軍需大臣、
さらにはヒトラーへの忠誠を最後まで貫き通す宣伝大臣ゲッベルス、
ヒトラーの後継者と呼ばれるほどの力がありながら
あっけなく敵に寝返るゲッペルス。
歴史上その名を知られたナチス幹部たちが、
それぞれ忘れがたい印象を見る者に残しています。
また、18年間も愛人としてヒトラーの身近にあったエヴァ・ブラウン、
総統の狂信的崇拝者ゲッベルス夫人、
帝国の最後を冷静に見守るユンゲなど、
帝国を影で支えた女性たちの肖像も物語に奥行きを与えています。
他方で、ベルリンの一般市民の悲劇にも視線を向けることを忘れておらず、
ヒトラーに同情されることもなく敵軍の砲撃に虚しく抵抗し、
逃げ惑う彼らの絶望と混乱振りは大量の群集シーンの投入や、
広大なオープンセットの破壊などにより、
思いのほかダイナミックにかつ残酷に描かれています。
要塞の中でどこかデカダンな空気に身を預ける上層部の絶望と混乱との対比は
みごとです。
ついに敗北を覚悟したヒトラーは、
18年にわたり彼の愛人だったエヴァと質素な結婚式を済ませ、
翌日、自室において二人でピストル自殺する。
第三帝国の末路を見届け、
ユンゲは少ない生き残りとともに地下要塞を後にする。
が、本当に凄惨な舞台はむしろ、総統の死んだあとから幕を開けるのだった。
ドイツ暫定政府はソ連軍と降伏交渉に臨むが、
ソ連軍は彼ら敗残の将を門前払いし、混乱極める市街地に放り出すのだった。
どうやって戦争を終わらせれば良いのか?
誰一人、その方法を見出せずにいた…。
トラウドゥル・ユンゲは
ベルリン映画祭で彼女自身の告白を綴ったドキュメンタリー
「Blind Spot,Hitler's Secretary」が上映されたまさにその当日、
全ての役割を終えたかの如く、劇的な生涯を閉じています。
映画のラストでは、そのドキュメンタリーの最後の部分が紹介されています。
2時間35分の長尺の作品ですが、瞬きする間も惜しんで見入った映画でした。
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